表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/2058

#033 くまなの?アリクイなの? 初のボスモンスター




 〈初心者ダンジョン〉とは違い、〈熱帯の森林ダンジョン〉のボス部屋は外だ。

 ボスフィールドと言った方がいいか。円形に広がったサークルの中央奥にそいつはいた。


「あれが〈熱帯の森林ダンジョン〉のボス。〈クマアリクイ〉だ」


「クマ…アリクイ? くまなの? アリクイなの?」


「………アリクイだ」


 分類上はな。


 〈クマアリクイ〉は道中に出た〈クイール〉のボス型だが、行動パターンはかなりクマに似ている。二足歩行で立つし、豪腕を振るって攻撃し、四足で素早く移動する。そして舌は使わない。

 正直、見た目がアリクイのクマと言った方が適している気がする。そんなボスだ。


 俺とハンナは最奥の救済場所(セーフティエリア)でハンナが作ってきてくれたお昼を食べながら、中にいるボスを観察していた。


「でも不思議だよね。こうして見えているはずなのに、触れないし入れないし反応もしないなんて…」


 ハンナが救済場所(セーフティエリア)からボス部屋へ手を伸ばすとバリアみたいな物に阻まれた。

 このように、フィールド型ダンジョンのボス部屋へは正規門を潜らなければ入れない仕組みだ。他にどんなスキルを使っても外からボスへダメージを与えることは出来ない。


「まあな。…おお! このおにぎり、中に卵焼きと焼き鳥が入ってるぞ!?」


「ふふ、美味しいでしょ?」


美味(うま)いなぁ」


 いやマジで美味いな。この組み合わせは予想外だった。

 今食べているハンナ特製の弁当は〈初心者ダンジョン〉で取れたドロップを使って作ったらしい。ハンナがドヤ顔でアピールしてきたのでむっちゃ褒めておいた。


「さて、このおにぎりには何が………、ハンナ、何も入ってないぞ?」


「あ、それはおにぎりの中、全部ご飯にしてみたの」


「それただの塩握(しおにぎ)りじゃん!?」


 勘違いかよ。あ、でも塩が利いてて美味しい。

 そもそも美少女(ハンナ)がその手で握ってくれたおにぎりだし、不満なんて無い。有るわけ無いわ。

 前世ではおにぎりを作ってくれる女の子なんていなかったしなぁ。


 微妙に感傷に浸りながらハンナのご飯を食べる、塩味が先ほどより強く感じた。






「んじゃ、やりますか。ハンナは手筈通りに後ろに下がって回復薬(ポーション)だけ準備しておいてくれ」


「うん。わかった。ゼフィルス君も気をつけてね」


「ま、俺もボスモンスターは初めてだから気をつけはする、けど所詮初級下位(ショッカー)だからな。ここで手こずってたら話にならないだろ」


 軽い口調でハンナを安心させるように言う。


 〈ダン活〉での〈クマアリクイ〉は行動パターンや攻撃パターンなどが多様で、対策のしにくいモンスターではあった。しかし、所詮は初級下位(ショッカー)のボスモン、ごり押しで勝ててしまうのが悲しい(さが)だ。

 初心者(チュートリアル)を抜けたばかりの初級者でも勝てるようになってるモンスターだからなぁ。

 初めてのボスモンスターの宿命だ。仕方ない。


 俺は〈天空シリーズ〉を構えて門を潜った。次にハンナも入ってくる。


 クマアリクイの赤い瞳がこちらを向き、今まで微動だにしなかったボスが動き出した。

 ほほう。リアルだとなかなかの迫力だ。ボスなだけあって俺より大きい、威圧力がある。


「んじゃ行くぜ。『アピール』!」


 俺は前へ出ると、〈クマアリクイ〉のタゲがハンナに行く前に『アピール』で決めポーズをシャキンと決めてヘイトを稼いだ。


「グルルルッ!」


 赤い目が俺を突き刺すように見つめる。

 これは、分かっていてもなかなか怖い物があるな。ゴブリンのときとは大違いだ。


「ガアァ!」


「開始早々の、『勇者の剣(ブレイブスラッシュ)』!」


 ある程度距離が空いているとクマアリクイはこっちに突進してくる習性がある。

 それを逆手にとって『勇者の剣(ブレイブスラッシュ)』を用意して待ち受けた。


 タイミングを見計らって、下からかち上げるようにして一閃。


「ガッ!」


「うおっ!」


 俺の『勇者の剣(ブレイブスラッシュ)』が見事に顔面に入ったが、そのまま怯みつつも突き進もうとするクマアリクイの突進を避けるのが少し遅れた。ノックバック失敗だ。

 足にかすってHPが4削れ、僅かに傷が出来る。


「っとと。なるほど、リアルでダメージ食らうってこんな感じかぁ」


「ゼフィルス君大丈夫!?」


「ああ、かすっただけだ! 全然痛くもないし問題ない!」


 ハンナにそう応えて返す。実際怪我の痛みとかはほとんど無かった。

 これはリアル〈ダン活〉ではHPがダメージの多くを肩代わりしてくれ、かつ痛みなどを軽減してくれるからだ。


 聞いていたのと実際に経験するのとじゃまるで違うが、取り乱すほどじゃない。


 構え直すとクマアリクイに向き直った。


 クマアリクイとの距離は遠くない、俺は盾を前に出しながら今度はこちら側が突撃する。


「ガアァ!」


 クマアリクイが立ち上がると両の手を振りかぶって切り裂いてきた。


 この攻撃方法は知っていたので、盾で受けてみることにした。

 ガツンッ! と盾を殴りつけられ大きな音を響かせるが、その音量に反して手に返ってくる衝撃は少ない。

 どんなもんかと思ったが、70を超えるSTRとVIT値に裏打ちされ、さらに天空装備に身を包んだ俺にとってあまりに弱い威力だった。


 これなら行ける。

 俺はまたクールタイムの終わったばかりの『勇者の剣(ブレイブスラッシュ)』を発動した。


 そして豪腕が来たタイミング、それを躱して懐に潜り込むと青く耀くエフェクトを一閃。


「はあっ!」


「ガッ! ガガガ……」


 お、クリティカルが入った。

 一気に大ダメージを負ったクマアリクイの動きが止まる。ダウンだ!

 チャンス!


 『勇者の剣(ブレイブスラッシュ)』はクールタイムの影響で使えないため通常攻撃で斬りまくる。


「ガガガガガガーーーーッ」


 そしてそのままHPが0になり、〈クマアリクイ〉が膨大なエフェクトに包まれて消えていった。

 天空の剣で『勇者の剣(ブレイブスラッシュ)』2発と通常攻撃数回か。ゲーム時代の〈クマアリクイ〉とほとんど変わらない手ごたえだったな。


 ボスモンスターとの初戦闘はこうしてあっさりと終わった。


 その後には大量のドロップが残されていた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゲーム世界転生〈ダン活〉1巻2022年3月10日発売!
― 新着の感想 ―
[良い点] なるほど、HPがゴリゴリ削られても平然と普段とか変わらない動きをするゲームに対する回答か 大体のRPGが死亡ステータスを持たなくなったしこれはいい設定かも
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ