#298 ギルドで提案! ゲットしたQPを使おうぜ!
「さて、色々あったが無事全員が集まれてよかった。今日は皆に報告したいことがある」
「ゼフィルス君、疲れた顔をしているけど何かあったの?」
教室の一件を終えて現在〈エデン〉のギルド部屋。
いつも通りの位置で俺が立つとハンナが不思議そうに聞いてきた。
うむ。顔に出ていたらしい。
ちょっとハードなスケジュールをこなしてしまった弊害だ。
サターン君たちが再び逃げようとしたため無駄に疲れてしまった。まったく、勇者からは逃げられないと言うのに。
ゲームの勇者は魔王がどこに居ようとも追いかけて倒すんだぞ? 勇者からは逃げられない。これゲームではお約束。
結局ミサトの応援もあってサターン君たち自ら練習場へ向かってくれたから良かったが。その分ハードになった。
それと、ミサトには俺が考えたサターン君たちの特別メニューを渡しておいた。「迷惑掛けたし、しっかり監督をしておくね」とミサトは引き受けてくれたよ。メニューの内容を見た顔が少し引きつっている様子だったが。
そして俺は、後はミサトに任せてギルドに来れたのだ。
「ちょっと朝トラブルがあってな。とりあえずそれは済んだから大丈夫だ。それよりも皆に連絡だ。この前受けた〈学園長クエスト〉の一つを無事クリアすることが出来た。報酬は52万QPになったぞ」
「52万、すごい数字ね」
「そんなに高いの? あまりすごく聞こえないのだけど?」
俺の報告にシエラが感心した声を出すが、ラナにとってはピンと来ないらしい。
まあ、いつも報酬をウン百万ミール貰っているからな。
今更数十万と言われても実感しにくいかもしれない。レートは1QPで約1000ミールなんだが。
しかも、52万というのは、EランクギルドどころかDランクでもまずお目にかかれない数字なんだぞ?
「QPの利用価値は高いぞ。何しろ普段手に入りにくいアイテムや素材、装備の交換を始め、学園の設備や施設の利用、他にも様々なことに使用出来る。ギルド部屋は学園の借り物だが、ここにより良い設備を置いたり、もしくは豪華に改築することも可能だ」
フィリス先生にその辺のことはしっかり聞いておいた。改装時間もゲーム時代と同じく2日くらいで終わるらしい。スキルってすげぇ。
「とはいえ今改装すると、ギルド部屋を引越しするとき元に戻すための改装料も取られるので、Cランクになってギルドハウスが与えられるまでは基本的に改装はしない予定だけどな」
追加で今後の改装の予定も話しておく。勝手にインテリアにQPを使われたらたまらないからな。
「むう。残念ね。部屋をもっと可愛くしたかったのに」
「ぬいぐるみだけで十分じゃね?」
ラナのセリフになぜかルルを初めとした何人かの女子が頷くが周りをもう一度見渡してほしい。
いつの間にやら、ギルド部屋には動物系のぬいぐるみからデフォルメされたモンスターのぬいぐるみまで50個くらいの可愛らしいぬいぐるみが置いてあった。
端にはどこから持ってきたのかぬいぐるみ用の衣装ケースや棚までセッティングされている。
毎回ギルドに来るたびにぬいぐるみが増えている気がするのは気のせいではない。
「ぬいぐるみ、もう増えない。〈モコモコ毛玉〉なくなっちゃった」
「犯人はカルアだったのか」
そういえば〈デブブスペシャル〉を狩ったときにぬいぐるみ素材の〈モコモコ毛玉〉が10個ドロップしていたっけ。攻略に熱心な〈ダン活〉プレイヤーなら売っておしまいなそれを、カルアはきっちり全部ぬいぐるみにしたらしい。
どうりで、良い素材使ってんなぁというぬいぐるみが多いはずである。
〈モコモコ毛玉〉は一応レア素材なのだ。俺にとってハズレ枠だが。
話がずれたがすでにギルド部屋はぬいぐるみ空間。これ以上可愛くされたら男子の肩身が狭くなってしまう。
せめて部屋数が多くなるギルドハウスに引っ越すまでは絶対やらせないと決めた。
「それでゼフィルス、QPの使い道は決めてあるの?」
「ああ、せっかく一仕事終えたんだ。もう一つの〈学園長クエスト〉もシエラたちは頑張ってくれているし、これを使ってちょっとした慰労会でもしたいと思ってな」
そこで一旦言葉を止め、ギルドメンバーに提案する。
「QPを支払うことで利用できるエクストラダンジョンの一つ、〈食材と畜産ダンジョン〉。ここで取れる贅沢な食材を使って豪華なパーティをしたいんだが、どうかな?」
〈エクストラダンジョン〉。
それは等級に縛られない、資源が豊富なダンジョンの総称だ。
数が少なく、国に厳重に管理されているため入るには許可が必要なのである。
そして学びやとしての迷宮学園では、QPを支払うことで入ダンする許可が降りるのだ。
また、通常のダンジョンとは違い、基本的にギルドメンバー全員で入ダンし、資源を採集するダンジョンでもある。
そういう意味でも特殊なダンジョンだな。
この〈食材と畜産ダンジョン〉ではモンスターは一応登場するが、初級中位程度と弱く、数も少ない。
その代わり家畜にされる動物などがたくさん登場するダンジョンである。
〈採取〉では、誰も育てなくても生き生きと育つ野菜や果物などを取ることが可能だ。
深層に行くほど食材のグレードが上がっていくので、今回はこの深層にある食材をゲットしに行きたい。
また、〈エクストラダンジョン〉によっては、海が一面に広がるビーチなダンジョンなんてのもある。
海で遊ぶもよし、漁をしてもよしなダンジョンだ。
ここのダンジョンのためなのか〈ダン活〉にはちゃんと水着装備も準備されていたりする。
ゲーム時代、攻略をメインにやってた時は利用しなかったが、攻略ではなくキャラのスクショをメインにゲームを進めていたときはよく利用していた。
攻略サイトの掲示板にも「我こそ最高のサマーバケーション」とかの題名でよくスクショが上がってたっけ。懐かしい。ここは一度しかないリアルなんだし、夏休みに行ってみるのもありだな。
閑話休題。
「いいわね! 美味しい食材が私を待ってるのよ!」
「ん、美味しい、大好き」
「ルルも大好きなのです! 是非参加させてください!」
「腕によりをかけて作るよ」
上からラナ、カルア、ルル、ハンナと、諸手を挙げて賛成してくれる。
良かった。初めてQPを使うなら何にしようか悩みまくっていたが、概ね気に入ってくれたみたいだな。
「シエラはどうだ?」
「そうね。いいと思うわ。美味しい料理はやる気アップにも繋がるわね。毎日練習とダンジョンだと、その辺を心配していたのよ。あなたが真剣にギルドのことを考えていたのだって伝わってくる提案だわ」
シエラも賛成のようだ。少し照れる。よし、じゃあこれで決まりだな。
俺も、毎日同じことの繰り返しでは飽きが来ないかを心配していた。
特にやる気の低下、テンションの低下はゲームをやる上で深刻な問題だ。
「効率とは飽きとの戦いだ」とは誰かが言ったセリフだ。
たまにはこうしてはっちゃけるのもいいだろう。(たまには…?)
〈食材と畜産ダンジョン〉は20層のダンジョンなので探索するなら1日フルに使う必要があるな。
土曜日は〈学園長クエスト〉の最後の素材を回収しに行くので、エクストラダンジョンには日曜日に行くことに決めたのだった。




