表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
313/2066

#287 やられてないから!どこでそんなセリフ覚えた!




「もーゼフィルス! やられてしまうなんて情けないわ!」


「どこでそんなセリフ覚えた!? というかやられてないから、ダウンしただけだから!」


 ボス戦終了後、俺が普通に起き上がっているのを見たラナの第一声がこれだった。


 だが、全力で否定させてもらう。

 たかが中級下位(チュカ)のボスごときに戦闘不能になるなんて俺の沽券に関わる!


 というかマジでそのセリフどこで覚えたし。

 王女に言われる勇者って、某ゲームの有名なシーンを思い出したわ!

 まさかとは思うが、今後もやられる度にラナから同じセリフを頂戴するのだろうか?

 くっ、ちょっと言われてみたい俺がいる。ゲーマーの(さが)だ。


「ゼフィルス、無事だった。よかった」


「ああ、カルアにも心配掛けたな。俺がやられるはず無いから今後はラナの言うことを鵜呑みにしないようにな?」


「ん」


「ちょっとゼフィルスそれどういうことよ!」


 カルアの純真な眼に心が洗われるようだ。

 ラナが何かを求めているが、俺にそれを答えるだけの言葉は無い。


「まあまあラナ殿下も、ゼフィルスが無事でよかったではないか。まさかあそこまであっさりボスを倒してしまうとは思わなかったが…。確か私が聞いた話では徘徊型のボスは非常に強く、出会ってしまうと全滅する確率がかなり高いと言われたのだが…」


「間違ってはいないな。徘徊型は基本的に奇襲戦法を得意としている、妨害型とも言われるほどだ。最奥のボス部屋にそう簡単に行かせないため立ちはだかる試練、しかもいつ出現するのか、いつ奇襲を食らうのか不明な状態での遭遇戦になるから全滅のリスクが高いんだ」


 今の戦闘は、なんというかパーティの役割(ポジション)を完全に無視した、全員がアタッカーになって一気に押し込んで勝利した特殊なものだった。

 一歩間違えば全滅していてもおかしくはなかったが……、女子が凄く強いです。さすが〈ダン活〉。

 なんだったんだ今のボス戦は。俺の常識の範囲外にあるボス戦だった。

 〈ビビルクマジロー〉もタゲを俺に固定していたくせに女子達の攻撃にさらされて何も出来ずに沈んだからな。訳が分からなかっただろう。逃げる暇も、怒りモードになる暇も無かったからな。


「今回だって、俺が最初に飛び出してタゲを取っていなければ戦闘準備も無しに遭遇戦に突入していた。体勢を立て直せずに全滅していたかもしれない。決して今のボスは弱くは無かったんだぞ?」


 特にエステル。

 あのまま全力でボスが馬車を襲えば最初にHPを全損させられていたのは間違いなくエステルだからな。

 さらにHPの保護が無くなれば〈サンダージャベリン号〉は普通の馬車(アイテム)と変わらない。破壊されて乗車していたメンバーも襲われ、立て直しも出来ずに全滅する事もありうる。


 ゲーム〈ダン活〉時代は〈乗り物〉装備のキャラが戦闘不能になった場合、乗車していたメンバーは弾かれてその辺に放り出されてしまう仕様だった。

 リアルでは検証していないのでまだどうなるか分からないが、危険なことに変わりはない。


「なるほど。ゼフィルスの最初の対応に私たちは救われていたのだな。感謝するぞ」


「良いって事よ。ピンチの時に駆けつけるのが【勇者】ってものだ」


 まあ、【勇者】タイムは数秒で終わってしまったがな。

 あれは悲しかった。


「ゼフィルス殿、素材の回収が終わりました」


 と、そこへエステルがやってきた。

 彼女はクールにも1人で素材回収をしていたらしい。

 エステルは俺がダウンしていただけだって知っていたからな。


「ああ、ありがとう。悪い、手伝えなくって」


 俺は最初の奇襲の目を逸らしただけで後は寝ていたからな。

 エステルにだけ任せてしまって少し罪悪感。

 しかし、そんな気持ちもすぐに吹っ飛ぶ。


「宝箱は〈銀〉でした。ゼフィルス殿、開けられますか?」


「もちろんだ!」


 気がつけば即答していた。


 宝箱の前には多くの事項が劣後(れつご)される。


 宝箱を開ける、とは全ての事柄より優先されるのだ!

 〈木箱〉以外はな。


 さっきの〈銀箱〉二つは惜しくもカルアとラナに取られてしまったが、今回は俺のターンだ!

 ラナとカルアが何か言いたそうにこちらを見ているがサッと目を逸らす。あ、あげないよ?

 そのままササッと素早く〈銀箱〉に向かった。


 今回もきっと良い物が入っているに違いない。

 徘徊型ボスは守護型に比べ難易度が高いので報酬は〈銀箱〉以上、入っている物もレアボスクラスだ。

 さて何が出るかな?


「じゃ、御言葉に甘えて開けさせて貰うな。〈幸猫様〉良い物ください! お願い致します!」


 柏手打って祈りを捧げると、パカリと宝箱を開け放つ。


「………ふう」


 そしてそっと宝箱を閉じた。


「さっさと開けなさいよ!」


「おおっ!?」


 いつの間にか後ろにラナが居た。

 俺が見なかったことに出来ないだろうかと思った宝箱を再度パカッと開く。


「何これ? 甲羅?」


「………服装備の〈ジロー鱗甲板(りんこうはん)〉だな」


 俺は遠い目をしながらラナの質問に答えた。


 そこにあったのは〈ビビルクマジロー〉が背負っていた(?)アルマジロの鱗甲板(りんこうはん)だった。装備すれば君もアルマジロの仲間入りだ!


 これをどうしろと?





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゲーム世界転生〈ダン活〉1巻2022年3月10日発売!
― 新着の感想 ―
[一言] 甲羅っぽいし、背負って修行する?
[良い点] 主人公がやられてからの流れがちょっとギャグっぽいところ。 [一言] 主人公君、下手に言い訳せずに反省しようね(オブラート
[一言] アルマジロの鱗甲板が、亀の甲羅のようなものだと考えると ヒーロー系や忍者系の職業が装備すれば、 タートルズプレイっぽいのができそうだな。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ