#267 〈プラよん〉のプライドは並じゃない。
「ふはははは! ついに明日だなゼフィルス! 貴様に虐げられるのも今日までだ!」
「ふふ。首を洗って待っていてくださいね」
「俺たちは君を倒すため猛特訓をしている。負けることは、ない!」
「俺様の本気を見せてやる! ギルドバトルを楽しみにしておくんだな」
水曜日、朝登校したら横一列に並んだサターン君たち〈プラよん〉から宣戦布告された。
相変わらずすごい自信だな。
クラスメイトたちも遠巻きに見ているが誰もツッコもうとはしない。むしろまたか、とか面白そう、みたいな視線をビシビシと感じた。
俺をそのカテゴリーに入れないで欲しいと切に願う。
あとサターン君、俺がクラスメイトを虐げているなんて嘘を広めないでくれるかな?
しかし、訂正する前に彼らは背を向けて去ってしまった。もうすぐ朝礼だが、どこに行くのだろう?
「ゼフィルス、明日が楽しみね! けちょんけちょんにしてやりましょ!」
「お、ラナか。おはよう」
とりあえず席に荷物を置いているとラナが近寄ってきた。挨拶もそこそこに〈プラよん〉をけちょんけちょんにしようと息巻いている。とりあえずちゃんと挨拶しようか? 後ろのシズが鋭い視線をラナに向けているから。
「ラナ様?」
「あ、そうよね。おはようゼフィルス」
「ふう。おはようございますゼフィルス殿。明日はよろしくお願いいたしますね」
「シズもおはよう。こちらこそよろしくだ。後、今日の午後空いている時間あるか? 明日の打ち合わせとクエストについて話をしておきたいんだが」
「いいわよ」
「こちらも構いません」
ラナとシズから許可を取る。シズは初めてギルドバトルに触れるため改めて打ち合わせは必要だろう。それにまったくの作戦無しで勝てるほどギルドバトルは甘くない。
むしろ最初の作戦が勝敗を分けるといっても過言ではないのだ。勝敗とは始まる前に決まっていると言うのがギルドバトルの常識だった(〈ダン活〉プレイヤーの常識です)。
その後、一緒にいたリカとカルアにも提案するとオーケーをもらえたので放課後は一度ギルドに集まることになった。
クエストについてもメンバー全員に周知したかったが、残念ながら用事がある人が多い。
とりあえずチャットで通知しておこう。
やっぱり平日は集まるのが難しいな。
チャイムが鳴り、授業が始まる。
「今日ダンジョンについて教える副担任のラダベナだ。よろしく頼むよボーイアンドガールズ」
今日の授業は初級ダンジョンについてのノウハウだった。
実際に〈熱帯の森林ダンジョン〉に入り、〈轟炎のラダベナ〉先生から直接の指導を受けるという形だ。
やはり今年の1組は全体的にレベルが高いらしく、初級下位程度、クラスのみんなは余裕なようだ。
ラダベナ先生も嬉しそうに教えている。
俺にとっては当たり前に知っている知識になってしまうので退屈かもしれないと危惧していたが、実際はリアル話が多く、中々面白かった。〈轟炎のラダベナ〉先生は自分の武勇伝を織り交ぜて話すのがすごく上手い。
「次はパーティ戦だよ。2人から5人のチームを作りな」
モンスター戦ではいくつかのパーティを組んで順番に挑む。
ラダベナ先生は経験豊富な知識で学生にアドバイスをする。
俺はクラスメイトに有望な人材はいないか目を光らせてそれを見る。もし良い感じの人が要れば〈エデン〉に誘おうと思っていた。しかし、
何人かは目に留まるが、しかしそういう子たちはすでに上級生のギルドに加入してしまっているらしい。
さすがに〈戦闘課1年1組〉という実績は上級生も放っておかないと言うことだろう。
まあ、中には上級生からの誘いが来ていない、もしくは蹴った人もいるわけで、
「ふはははは! 見よ、これが【大魔道師】の力だ! 『メガフレア』ァァァ!!」
「ふふ、派手ですが、相変わらず狙いがなっていませんね。最強なのはやはり僕のようです。『パワースラッシュ』!」
「はん。威力が全然足りてないな。本当に最強の攻撃っていうのはこういうものを言うんだよ! 『アックスボルト』ォォ!!」
「俺様を忘れてもらっちゃ困るぜ。攻撃力だけあっても意味はねぇ! 敵の攻撃を受けきって勝ってこそ最強だ! 『ファイターボディ』! からのぉぉ『カウンタースマッシュ』!」
その筆頭枠がこの4人だ。
しかし、確かに先週より切れが増している。ように見える。ごめん、俺はそこまで動き方に理解が深いわけじゃないから分からないんだ。
ただ一つ言えることは、初級下位のモンスターにそんな大技は必要ないと言う点だな。俺も教えたが全然直らなかったようだ。
「こらあんたたち、こんなモンスター相手にイキってんじゃないさ。そもそもそんな大技ばっか使ってるとすぐMPが尽きるよ。相手に合わせた最適な動きを考えな!」
ほら、先生にも言われてやがる。
俺だけじゃなくラダベナ先生からも言われたらさすがに彼らも改めるだろう。
そう思っていたのだが、〈プラよん〉のプライドは並じゃなかったようだ。
「なんだと!」
「ふふ。最強には最強なりのやり方があるのですよ?」
「お、俺たちは間違っていない。」
「そうだ。獅子はウサギを狩るのにも全力だ!」
アホだこいつら。いや、人をアホ呼ばわりしてはいけない。
しかし、まさか言い返すとは。プライド高っかいなこいつら!
だが、ラダベナ先生は経験豊富だ。すぐに言い返す。
「相手に合わせた最適な動きをしろって言っているのさ! まさか出来んのかい!」
おお、ラダベナ先生が煽る。
すると当然プライドの高いこいつらは乗ってくる。
「なんだと!」
「ふふ。まさかここまで僕たちが舐められるなんて、いいでしょう」
「最強の攻撃力を誇る俺にその言葉は許せないぞ! 力を制御なんて朝飯前だ!」
「証明してやろう。俺様が最も優れているということをな!」
こいつら乗せられやすいな!
ラダベナ先生、上手いな。さすが多くの学生を導いた実績を持つお方だ。
先生に掛かればプライドの高い学生の扱いも慣れたものなのだろう。
育成する者として俺も見習わなくては。
残念ながら新しいメンバー候補は見つからなかったが、授業は中々充実していた。




