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#263 思わず頷きそうになってしまう学園長話術?




「久しいの。ゼフィルス君と呼ばせて貰っても良いかの?」


「お久しぶりです学園長。はい、構いません」


「うむ。そしてそちらの令嬢はヘカテリーナ嬢か、遠路遙々この迷宮学園までよく来たの。歓迎するぞい」


「ありがとうございますわ、学園長先生」


 中に入ると豪華な学園長室が目に入る。

 中央には長テーブルとソファーが置かれ、部屋の四隅には学園のエンブレムの旗が飾られている。

 俺から見て両端には壁を埋め尽くす勢いで棚が置かれいくつものトロフィーやエンブレムが飾られていた。


 これは全てこの学園で優秀な成績を残して卒業していった学生たちのものなのだとか。

 卒業記念にこうしてギルドエンブレムなどを学園に納めていく学生は多い。


 そしてテーブルの向こう側には社長なんかが使っているイメージの豪華なデスクが設置され、学園長が座っていた。


 ちなみにここ〈ダンジョン公爵城〉は領主の城ではあるが、基本的に学生が領主様を呼ぶ時は学園長と呼ぶのが通例だ。

 ただし、とあるイベント時、ここでは無く3階の当主の部屋に通された時のみ御領主様と呼ぶ決まりだ。その時はこんな学生に向けるような優しい目では無く、当主としての視線を浴びせてくるぞ。


 閑話休題。


「まずは座りなさい」


「はい。失礼いたします」


「失礼いたしますわ」


 学園長に勧められソファーに座ると、テーブルを挟んで向かい側の席に学園長が腰掛けた。

 そこに、ここまで案内してくれたクール秘書さんがお盆を手に現れお茶菓子を置いていく。一体いつの間に用意したのだろうか?

 それが終わりお茶を頂くと、学園長が世間話を始めた。


「ゼフィルス君の事はフィリスから良く聞いておる、誠に素晴らしい優秀な学生だとの。またギルドの活動も非常に活発で、すでに中級下位ダンジョンを攻略しているとも聞いておるぞ」


「はは、ダンジョンは楽しいですからね、つい夢中になってしまいました」


 ちなみに学園長とフィリス先生は祖父と孫の関係だ。最初聞いた時は驚いた。

 まあ担任がフィリス先生なら俺の情報も筒抜けだろう。ちょっと恥ずかしい。


「ヘカテリーナ嬢も、先日【姫軍師】に転職されたとのこと。【姫軍師】は公爵家の切望じゃ。祝いの言葉を贈りたい、誠におめでとう」


「そ、そんな。それはすべて——、いえ、その、ありがとうございます…」


 学園長に【姫軍師】への転職を祝われ、リーナが一瞬余計なことを言いそうになったが、(すんで)(ところ)で呑み込んだようだ。危ない危ない。


 しかし、学園長は情報通だ。俺だけなら目立っているからともかく、新メンバーのリーナのこともご存じとは恐れ入る。

 しかもリーナは今日急に一緒に来ることになった。あらかじめ調べておかないと、こうは対応出来ないだろう。


「そうじゃ1つヘカテリーナ嬢に願いがあっての」


「わ、わたくしにですか?」


「うむ。実はワシの直系の孫娘が来年ここに入学する予定での。できればヘカテリーナ嬢から指導して貰えぬかの? 孫も【姫軍師】に就きたいと切望していての」


 ほう? 「公爵」のカテゴリー持ちが入学すると? それはいい情報を聞いた。

 いやいやいや、ちょっと待とうか俺よ。思わず反応してしまったが違うぞ。よく考えるんだ俺。


 学園長が仕掛けてきたぞ。自分の孫を【姫軍師】に就かせてくれだとさ。

 しかも話の流れを逆らわずに自然な感じでお願いをするのだから侮れない。思わず頷きそうになってしまったぞ。危ない危ない。危うく引っかかるところだったぜ。

 リーナよ、頷いてはダメだぞ。

 俺は横目にリーナに視線を投げる。


「いえいえ学園長のお孫さんでしたら優秀な御方でしょう。わたくしが指導するまでも無いと思いますわ。今は高位職の研究も進んでおりますし、きっと実力で【姫軍師】に就けますでしょう」


「ほっほ。そうかの。ふむ、では我が孫が困っていたら少し力になってやってもらえるかの」


「ええ。相談に乗るくらいでしたら構いませんわ、わたくしもとても苦労しましたもの」


 おお、リーナやるなぁ。

 学園長からの指導のお願いを、相談に乗るくらいまで引き下げたな。

 これならたとえお孫さんが【姫軍師】に就けなかったとしても角が立たないだろう。上手く躱したな。さすがお嬢様だ。


 しかし、今の学園長の話術は危なかった。

 おそらく学園長は〈エデン〉が高位職ばっかりで構成されていることや、研究所に情報をリークしたのが俺だと知っていて今の質問をしたのだろう。

 俺が職業(ジョブ)の発現条件を本当に知っているのか確かめる狙いがあったのだと思われる。


 しかも話を俺では無くリーナに聞いたのはうっかりボロを出させるためか。

 しかし危なかった。もし俺に聞いていたらうっかりが出ていたかもしれない。

 リーナに聞いてくれて良かったよ。


 これからも何気ない会話の中で情報を取られるかも知れないな。


 俺は気を引き締め直した。


「さて、では本題に移るかの。ここに来たのは例の学園長クエストの件で間違いないかの?」


 そら来たぞ。




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― 新着の感想 ―
ゼフィルスは化かし合いに向いてないから、ほんと危なかったなw 普通なら公爵令嬢より村人の方が場慣れしてないって考えるだろうけど、ゼフィルスが普通じゃない(謎だらけ)からヘカテリーナの方にふっかけたんだ…
[一言] 油断ならねーな学園長
[一言] これはもう、貴族間のやり取りの胡散臭さが漏れ漏れ。 主人公はそれに慣れてるはずはなくー リーナはすんでのところで気づいたようで。 本当に良い「軍師」が手に入りましたね、 エデンの行く末や方…
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