#243 初めて見るショートカット転移陣!
「ねえゼフィルス君、今日は最奥まで行くの?」
「おうよ。今日は最奥のボスを倒して〈丘陵の恐竜ダンジョン〉をクリアするぞ!」
「ついに中級ダンジョンを攻略ね、楽しみだわ!」
ハンナの問いに答えると、ラナもそれを聞いて満面の笑みを浮かべた。
楽しみだよな! 俺も楽しみだ!
中級ダンジョンの攻略は初級ダンジョンの時と比べ、格段に難易度が高い。
何しろ初級上位の3倍近く広いからな。
これだけでも相当難易度が上がっているというのがわかる。
俺たちも2日掛けての攻略だ。
最初は中級ダンジョンの感覚を掴んでほしいという気持ちでメンバーを連れて来たが、やっぱりやり始めるとハマってしまうよな! そのまま攻略まで突っ走りたい!
なぜ先週日曜日にダンジョン挑んでしまったのかと若干後悔したくらいだ。
一週間我慢はマジ長かった。
というわけで早速〈中下ダン〉にやって来た。
そのまま〈丘陵の恐竜ダンジョン〉の門へ向かおうとすると、横から影が現れた。
ここの説明役のゼゼールソンさんだ。
「ようギルド〈エデン〉、期待の星たちよ。今日も〈ジュラパ〉か?」
「そうよ! 今日は最奥まで行く予定なの。初の中級攻略よ!」
「おいおい、もう攻略する気か? まだここに来て一週間だろう?」
「正確には2回目ね!」
ラナの答えにゼゼールソンさんは驚愕の表情だ。
とても信じられないといった感じだな。そのリアクションにラナがふふんとドヤ顔をしている。
「ゼゼールソンさん、今日〈ジュラパ〉に入っている組はいますか?」
「ん? 今日はまだ誰も入ってないぞ。やっぱりモンスター自体強いからなあそこは、進みづらくて1日掛けても10層の転移陣までたどり着けずなんてこともザラだから人気がないんだ。本当に2回で攻略する気なのか? 普通は何度も挑戦し、マッピングをして最短ルート割り出してからやっと攻略に入るものだぞ? 最低でも6回は掛かるが」
おお! ゼゼールソンさんからもっともな感想が出た。
そう、ダンジョンを攻略するには、普通ならそうやってマッピングをするところから始めなければならない。
初級ダンジョンと比べて格段に広い中級ダンジョンではマッピングも一苦労だ。
次の階層へ向かう道なのか分からないため、まずは手探りでマッピングしなければならない。
ゲーム時代はオートマッピング機能があったため一度通った道は画面の端に勝手に記録されていたが、リアルだと自分たちで描く必要がある。そのためもっと時間が掛かるようすだ。
しかし、そうやって描き込んでいくと、マッピングがある程度出来上がる頃にはバッグが一杯になったり、消耗しすぎたり、時間的余裕が無くなるなどの理由で一度帰還しなければいけなくなる。ダンジョンゲームあるあるだな。所謂持ち物いっぱいという状態。もしくはリアル時間タイムリミット。
つまり2回目でようやく10層へ攻略する形になるのが普通だ。
そのため普通の攻略では、1回目探索orマッピング、2回目本番攻略、といった感じに10層ずつ進めていくのがベター。
これを1セットとし、中級下位ダンジョンだと最下層が30層なので3セット行って少しずつ攻略を進めていくわけだな。
まさかゼゼールソンさんも俺たちが最初の1回目で20層を攻略しているとは思っていなかったようだ。当たり前だが。
俺が最短ルートを全て網羅しているからこその攻略速度である。
ラナの横で俺もドヤ顔しておこう。
あと、今日はまだ〈丘陵の恐竜ダンジョン〉を攻略しているパーティはいないとのこと。
こりゃラッキーだな。やっぱり貸切のほうがリソースの取り合いをしなくて済むし気持ち的にも楽だからな。
最後まで半信半疑といった表情だったゼゼールソンさんにお礼を言って、その場を後にし、全員で門を潜った。
一瞬の浮遊感の後、俺たちはいつも通りダンジョンの中に立っていた。
しかし、辺りをキョロキョロと見渡したハンナが不思議そうな顔をして聞いてくる。
「あれ? ゼフィルス君、ここ1層だよ?」
「ああ、ほら、あそこを見てみ?」
「んー? あ! あれって転移陣!?」
「そうだ。ここから20層の転移陣に飛ぶ」
地上の門と繋がっているのは全て1層だ。
そして門の近くにはいくつかの転移陣が光っていた。ここにあるのは2つ。
それぞれ10層と20層に繋がっている転移陣だ。
基本的にショートカットするにはまず1層に来てから、各転移陣の置かれた階層にジャンプする形だな。帰ってくる時は門に直行なんだが。
ちなみに、この転移陣は起動した者にしか見えないし利用できない仕様だ。
誰かパーティメンバーの1人がこの階層をクリアしていたからってキャリーすることはできない。
俺も最初に来た時に今光っている場所を確認したが、その時はショートカット転移陣なんて見えなかったからな。どういう仕組みになっているのか少し気になる。
「なるほどね。噂には聞いていたけど見るのは初めてね。これがショートカットの転移陣なのね」
シエラが興味深そうにその転移陣を見る。
転移陣に書いてある絵は幾何学模様で俺にはよく分からないが、シエラは何かわかるのだろうか? そう聞いてみると、
「いいえ。ちょっと気になっただけよ。さすがに分からないわ」
との事だった。そりゃそうだ。何しろ複雑怪奇すぎる。
「ねえ、早く行きましょ! まずは復活したフィールドボスに挑むのよ!」
「おっと、そうだった。んじゃ行きますか!」
ラナの声に皆で転移陣に向かう。
まずは10層からだ。
ゼゼールソンさんの話では誰も攻略者は入っていないとのことなのでフィールドボスも復活していることだろう。フィールドボスは時間リポップなのだ。
せっかくなので10層の〈ジュラ・サウガス〉と20層の〈ジュラ・ドルトル〉も狩って行く事にした。行きがけの駄賃ってやつだな。また〈金箱〉でもドロップすれば……ふはは!
ちなみに、ラナは〈ジュラ・ドルトル〉戦で不完全燃焼だったので純粋に再戦したかったらしい。むっちゃ燃えていた。
その後、特に危なげなく2体のFボスを屠り、俺たちはいよいよ21層にコマを進めたのだった。