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#231 夜の部屋訪問。パジャマ姿のエステル現る。




 初めてリアルで中級ダンジョンに挑んだその夜のことだ。

 1人のとても発育の良い女子が俺の部屋へと訪れていた。


 少し落ち着きなさそうにソワソワしながらチラチラと部屋を窺う彼女。

 その部屋にいるのは1人の男子と1人の女子しかいない。

 こんな時間に1人で男子の部屋にお邪魔するなんてどういうつもりだろうか。


 しかも、その格好がいつもの姿と違いすぎる。

 なんと彼女はピンクのパジャマ姿だったのだ。とても夜の男子の部屋にお邪魔する格好ではない。いや、むしろ正装なのだろうか? 俺には難しすぎて判断がつかない。ごくり。


 俺が部屋で寛ぎつつ日課の情報収集をしていると、アポ無しで部屋がノックされ、開けて見ると今の格好の彼女がいた。なんの前触れも無かったから驚いたものだ。

 さすがにその格好では立ち話もなんなので部屋に招きいれて今に至る。


 果たしてどんな用件だろうか。いや、最初に言われたから分かっている。だが、部屋に訪ねるための建前という可能性もある。ごくり。

 若者がハイになる、夜という時間にパジャマ姿で男子の部屋に訪れたのだからな。別の理由も無きにしも(あら)ず、そう想像を膨らませるには十分だった。しかし、現実は違った。


「ラナ様との仲直りの方法を伝授してほしいのです」


 本当にそれだけらしい、思わず「帰れ」と言いそうになった。


「エステル。男心を(もてあそ)んで楽しいか?」


「??」


「いや、なんでもない」


 主共々天然すぎやしないだろうか?

 なんてことは無い。ただの相談であった。

 ※〈ダン活〉は年齢制限B(12歳以上)のゲームです。

 ふぅ。ちょっと落ち着こう。


 エステルは小首を傾げていてさっぱり今の状況が分かっていない様子だ。さすがラナの従者。(きよ)い。


 エステルは従者という立場上、普段は俺たちのパーティでも1歩下がった位置にいる。

 それ故に目立つことは無いが、普通に美少女である。しかも女性が10名も在籍する〈エデン〉で一目瞭然な圧倒的発育力を誇る美少女だ。とある攻撃力でもトップに君臨している。

 普段はドレスアーマーという装甲に隠された人類の装甲はパジャマをダイナミックに押し上げていた。とても目のやり場に困る光景だ。


 そんな彼女がパジャマ姿で部屋にやってきたのだから期待するなと言う方が難しい。

 結局思い違いだったみたいだけど。


 まあ、頼られること自体は嫌いじゃないので追い返すことも無く相談を聞くことにした。


「それで、まだラナとは喧嘩中なのか?」


「い、いえいえいえいえ! 喧嘩なんて滅相も無いです。ただ少し仲違いというか、口を開けていただければ「も〜、も〜」と言うばかりでして。その」


 どうやらラナはご立腹(りっぷく)過ぎて牛になってしまったみたいだ。

 王族(ラナ)と喧嘩という言葉にエステルがすごい勢いで否定する。

 しかし、ラナが落ち込んでいるのは継続しているらしく、エステルは怒られてばかりなのだそうだ。


「その、も〜と怒られるのも、新鮮で良いのですが」


「お、解決か? 相談は終わりだな」


「い、いえ。申し訳ありません。とても困っております。どうにかラナ様に普通に口を利いていただけるように伝授していただきたいと参上いたしました!」


 なにか寝ぼけた発言が飛び出したがエステルが困っているのは本当らしい。

 まあ、最近エステルは御者ばかりさせてしまいすごくお世話になった。

 困っているというのなら助けてあげたい。

 ただちょっと、満更でもないというか、少し楽しそうなのがなぁ。本当に困ってる?


 …まあいい。


「今の話を聞く限りラナは落ち込んでいるだけだろう。だから無理矢理にでもテンションを上げることができれば解決しそうだな」


「さ、さすがゼフィルス殿。すばらしい洞察力です」


 ふ、褒められるのは嫌いではない。

 むしろもっと褒めて良いまである。


「問題は下がったテンションをどうすれば上げられるかだが」


「それならラナ様の好きな物で釣ればいけそうですね」


「エステルも釣るとかいうんだな」


「いえ。今のは言葉の綾です。忘れていただければと」


 とりあえずご機嫌取りをすることに決まった。

 ということでプレゼントを選ぶ。


「そういえばラナって何が好きなんだ?」


「そうですね、…実はラナ様は、かわいい物が好きです」


 知ってます。


 そんな、意外にも…、みたいな雰囲気出されても周知の事実だからなそれ。


「あとは恋物語全般がお好きですね。毎日必ず何かしらのご本をお読みになられています」


「へぇ、毎日読むほどか、そいつは知らなかったな」


 恋物語が好きという話は以前小耳に挟んだが毎日読むほどというのは初耳だった。

 そういえばラナたちがいつも何をしているのかとか何も知らなかったな。

 今度はその辺のコミュニケーションも取ってみようと決める。


「じゃあ恋物語の本でもプレゼントするか。ラナが好きな物の方向性は分かるんだろ?」


「それはもう、護衛の嗜みとして。ですがラナ様の積読(つんどく)はかなりの量でして。ダブってしまわないか心配です」


「あ〜。なるほど。じゃあ別のにしておくか」


 護衛の嗜みかは分からないがエステルはばっちりラナの好みは把握しているらしい。しかし蔵書(ぞうしょ)量までは把握していないとのこと。仲直りのためのプレゼントがすでに持っているやつとか目も当てられない、やめておいた方が無難かな。

 ちなみに積読(つんどく)とは蔵書している未読の本のことである。


「じゃあ、可愛いものでも贈ろうか。確かシエラがルル用にってたくさんのぬいぐるみを買っていたはずだから分けてもらったらどうだ?」


「あ、そうですね。それは良い考えです。早速行ってみます」


「おう、気をつけてな。というかその姿を他の男に見られるなよ〜」


 貴族舎は1階と2階が男子部屋、そして3階と4階が女子部屋である。同じ寮なので行き来は出来るがこの時間に女子部屋のある階に男子が潜入するのはよろしくない。

 ということで俺が出来るのもここまでだ。

 あとは、エステルにその格好(パジャマ姿)を不用意に他の男子に見せないよう言っておいた。あまり理解しているようには見えなかったが。


「?? はい。ゼフィルス殿、ご相談に乗っていただき誠にありがとうございました」


「いいっていいって気にするな。じゃあまた明日な」


「はい。また明日、教室で」


 そう言ってエステルは去っていった。

 なんだったんだろうか今の相談は。無駄に緊張した。主にエステルの格好に。

 まあでも解決しそうで良かったよ。

 ふう。



 その後の話である。

 結局エステルはあの後、言われたとおりシエラの部屋に行きぬいぐるみを譲ってもらい、ラナにプレゼントしたらしい。


 そして無事に気に入ってもらえて仲直り出来たそうだ。良かったなエステル。





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