#1964 上級職ランクアップ! ナゴ編!
たったの10日、それだけでテルニアたちのLVをカンストまで持っていった俺は、いよいよみんなお楽しみ、〈上級転職〉の時間が迫って来たぜとほくそ笑んでいた。そんな時のことだ、いつもの朝のハンナの時間、俺はびっくりする報告を受けていた。
「それでね、セイカちゃんたちのLVが30を突破したんだよ」
「錬金術師の新米たち、もう五段階目ツリー開放だと!?」
そう、レイドボス素材と〈失敗挽回の錬金グローブ〉を使った、生産職たちの高速レベルアップ。〈失敗挽回の錬金グローブ〉は現物1つしかなく、人数も人数なのでもう少し時間が掛かるだろうと思っていたら、なんとわずか10日で五段階目ツリー開放まで持ってきたというのだから驚きだ。
1日24時間、8人3時間交代で効率よく進めたらしい。
マジか。こりゃ、そう時間も掛からず六段階目ツリーも開放できそうだな。
「もう学園からの依頼もね、少しずつ任せてるんだよ~。おかげで私たちも余裕ができてきて、その分の時間を〈天聖祝福のオリハルコンメタル〉作製に回すことができてるんだ~」
「とっても良い流れができてきてるな!」
錬金術師の新米たちの育成は、ハンナの後任。つまり、ハンナの仕事を引き継いでくれる人材に育てるのが目的だった。
それが、少しずつ果たされているという報告を受けて、こりゃハンナが最強装備に掛かりきりになれる日も近いなとほくそ笑む。
なんだかハンナの朝食がいつもより美味しく感じるぜ。
今日のテルニアたちの〈上級転職〉が、俄然楽しみになってきた。
ハンナの美味しい美味しい朝食を味わって食べ、俺は意気揚々とギルドハウスに出発した。
「あ、ゼフィルス先輩。ハロー」
「おはようテルニア! よく眠れたか?」
「いやぁ。それがドキドキしてあまり眠れなかったんだよ~」
「分かりみが深いな!」
ギルドハウスに到着すれば、すでに5人とも集まっており、テルニアがハローと挨拶をくれる。
ここ数日ですっかりこのハローが耳に残ってしまったぜ。
僅か10日でLVカンスト、しかも今日は朝から〈上級転職〉をすることが決まっていたテルニアは、若干寝不足の様子だ。とても楽しみにしていたんだというのが分かって大変良きである。
他のメンバーを見ても、グラジオラ以外はちょっとみんな落ち着きが無い様子だな。これから〈上級転職〉ということで、ワクワクしているのだろう。
「ゼフィルス、取ってきたわよ」
「シエラ、ありがとう」
続いて〈エデン店〉の〈リンゴとチケット交換屋〉からシエラがやってきて俺にあるものを手渡してくる。
みんな注目している中、それを俺が預かった。
これが何か知りたいか? ふふふ、ならば教えよう。これがみんなを〈上級転職〉させる! その名も〈上級転職チケット〉だ!
俺は枚数を数えるフリをしてペラリと5枚見せた。
「「おおーーー!!」」
歓声が上がった。
「おっと手が滑ってしまったぜ」
「嘘おっしゃい」
シエラが的確なツッコミとジト目をプレゼントしてくれるので俺のテンションは上がる一方だ。
「みんな見たか? これがみんなをこれから〈上級転職〉させてくれる〈上級転職チケット〉だ。ちゃんとみんなの人数分あるから安心してほしい。――みんな、上級職になりたいかーー!!」
「な、なりたい!」
「なりたいです~」
「よく言った! その願い、俺が叶えてやる、みんな今から測定室に行くぞーー!」
「「「「「おおーーー!!」」」」」
こういうノリとテンション、大事。
俺はテンションとテンポをさらにあげ、軽い足取りで測定室へと向かったのだった。
なお、大所帯で向かったため測定室の鍵を借りにいった職員室で「ま、またか?」「な、何人いるんだ?」「5人? この前〈錬金術課〉の子を8人も〈上級転職〉したばかりなのに、また5人〈上級転職〉するの?」と先生方をざわめかせてしまったのは仕方のないことだったんだ。
それにまだメーレイとロイだって控えている。〈上級転職〉はもうちょっと続くぜ!
ガチャリと測定室の鍵を開ける。
「テルニア、グラジオラ、ナゴ、キャロル、エミメナ、いよいよだ。付いてこい!」
「うん!」
「ついに〈上級転職〉ですなぁ! 我、ここにありと示すときですぞ!」
「上級職。これでサトル先輩に少しは近づけますか」
「ドキドキしますね~」
「緊張でお腹減ってきた。測定室ってお菓子食べられたりする?」
みんな気合い十分な様子だ。若干1名腹ぺこ娘がいるが、もちろん〈測定室〉でお菓子は食べてはいけませんと言っておいた。
緊張でお腹が減るとか、初めて聞いたぞ?
それはともかく、俺はドア側に固まる5人の前に出て〈竜の像〉の隣に立ち、改めて振り返って言う。
「みんな、よくこの短期間でLVをカンストまで持っていったな。これはすごいことだぞ? 確かにレベリングを優先しすぎてまだ自分の職業の力を十全に理解できてないという子も多いだろう。だが、夏休みなら時間はある。上級職にしたらゆっくり馴染ませよう。まずは上級職になってから考えれば良い」
「そうなの!?」
俺の断言にテルニアがびっくりした感じのなかなかいいツッコミをくれる。
おう。〈エースシャングリラ〉の子たちも1ヶ月で上級職になって、慣らしたからな。まずは上級職になってから慣らす。これで問題ないと証明されているぞ。
ちなみに〈エースシャングリラ〉の子たち同様、テルニアたちも最近急激にレベルアップした影響で動きがカクカクする現象に悩まされたりもしたが、これはノエルのおかげですでにだいぶ解消されている。慣れが大事だ。
「よし、それじゃあ1人ずつ行こうか。最初は誰が行く?」
「では僕が」
「おう。それじゃあナゴから行こうか」
俺が問うと、立候補したのはこの中で唯一の2年生であるナゴ。
年長者だしトップバッターとなるには良い人選だろう。
「ゼフィルス先輩、改めて、よろしくお願いいたします」
「任せろ。ナゴの職業は【秘書】。ここから上級職になるルートは大きく分けて3つある。【シークレットマネージャー】、【社長】、【必殺仕事人】だ。ちなみに去年まで〈アークアルカディア〉に居た方がこの【シークレットマネージャー】だった」
「はい。伺っています」
メリーナ先輩のことだ。今は〈ダンジョン商委員会〉と〈総商会〉の橋渡し役としてその敏腕を振るってらっしゃる。
「ちなみに希望はあるか?」
「はい。【必殺仕事人】を」
「あ、そっちに行く気なんだ。ちなみに理由を聞いてもいいか?」
「今後の〈エデン〉〈アークアルカディア〉〈エースシャングリラ〉の活動を鑑みた結果です。これからの時代、ダンジョンで活動することも増えるという判断から、隠れるタイプよりも護衛いらずな職業を選ぶべきと判断しました」
「なるほど」
【シークレットマネージャー】は隠密タイプ。シークレットだしな。
今の〈ダンジョン商委員会〉を見ても分かる通り、商人でもダンジョンの最奥に行く時代がきている。この時【シークレットマネージャー】ならば隠れながら最奥まで連れていくことが可能だが、絶対かは分からない。
【必殺仕事人】は【ワーカー】系ではあるものの、事務能力に加え、護衛されているときに戦闘能力に大きな補正が掛かる職業だ。
徘徊型の目を逸らしたり、簡単な通常モンスターなら撃破することも可能。しかも【商人】を含む【サポート】系職業の護衛対象がパーティに居るとき、その人数によって能力値が大幅上昇するというとんでもスキルを持っているので、戦闘もできる事務要員になれる。戦闘もできる事務要員とかセレスタンタイプだな。
【シークレットマネージャー】に就く者は結構増えてきているのだが、この【必殺仕事人】に就く人は今のところほとんど居ないのが現状だ。そりゃそうだ。文官は普通戦闘しない。
ナゴは今後の情勢を鑑みて、【必殺仕事人】も必要だと判断したようだ。
俺としては事務能力的な面では【シークレットマネージャー】も【必殺仕事人】もそう変わらないのでどっちでもいい。
あ、ちなみに【社長】は【商人】を含む【サポート】職の強化が得意だ。
【商人】を強化すれば売上アップを図ることができる。まあ、これはあまり必要無いかな。ゲームの時は強かったんだが、今は資金面ではかなり余裕あるからね。
「よし分かった。ナゴにもシルバー系を倒させておいて良かった。モンスターとも戦った経験もあるし、後は〈欲する心〉だけ取り込めば【必殺仕事人】になれるはずだ」
「ありがとうございます!」
俺はナゴに〈欲する心〉を渡す。
するとナゴは躊躇せずにそれを使い、俺から〈上級転職チケット〉を受け取って竜の像の前に来た。そして触れると――しっかりと【必殺仕事人】や【シークレットマネージャー】がジョブ一覧に載っていたんだ。
だがナゴは【シークレットマネージャー】には目もくれず、すぐに【必殺仕事人】をタップしていた。
他のジョブ一覧が消え、【必殺仕事人】だけがナゴの頭上に残る。
「おめでとうナゴ。これでナゴも【必殺仕事人】だ」
「ありがとうございます。ゼフィルス先輩。みなさんの期待に十全に応えられるよう、頑張ります」
まずは1人目、ナゴが上級職になった。さあ、この調子でどんどんいこう!




