#1952 〈夜のモンスターハント〉の賞品授与回だー!
〈夜のモンスターハント〉もとい、肝試し大会(?)は大いに盛り上がった。
みんな、よく肝を試せたと思う。だが度肝を抜かれた者は居なかったようで良かったような、物足りないような、複雑な心境だ。
「なんや兄さん、なんでこっちを見るんや?」
「いや別にそんな見てないよマリー先輩?」
よし、今度特定の人の肝を試そう。今度こそ度肝を抜いてやるんだ!
そう決意していたところで全員が帰還する。
「お疲れ様ー!」
「お疲れ様です」
「すっごく楽しかったです! これまたやりたいですね!」
「骨さんいっぱい倒したよ~」
「お宝もザックザック手に入れちゃった! 楽しいねこのトレジャーハンティング!」
「姉ちゃんこれはトレジャーハンティングじゃないよ!? 肝試し……のはずだ!」
「怖かった~ぴえん」
「シオン先輩、全然怖がってなかったですよね??」
〈エースシャングリラ〉の面々も楽しめたようで、みんな明るい表情で戻ってきた。
だけどおかしいな。〈夜のモンスターハント〉のはずが、〈夜のトレジャーハンティング〉にすり替わっている気がする。え? あながち間違いじゃないって?
でも〈海ダン〉のお宝程度ではもう度肝を抜くことはできないんだぞ?
「ゼフィルスさん、結果発表をお願いしますわ!」
「任せておけ! ――それじゃあこれより結果発表を執り行なうぞ! みんな改めてお疲れ様! よく肝を試せたかな? 楽しかったようでなによりだ! だが楽しいのはまだ終わらない。最後にこの船から持ち出したお宝を全て鑑定し、ポイントを振っていく! ポイントの高かったチームが優勝だ!」
「「「「おおー!」」」」
盛り上がる夜の砂浜。
ライトアップされているので室内のように明るいこの場所で、台の上に大量のお宝が積まれていった。
「さあみなさん、やっと私たちの番ですよ! いきますよー!」
「「「「「おおー!」」」」」
そして選手たちよりもある意味盛り上がっているのは〈アークアルカディア〉の生産組。陣頭指揮を執っているのは、まさかのハンナだ。
ハンナがいくぞーと指を向けて宣言すれば、後輩錬金術師たちや生産7人衆にメイリー先輩。さらにマリア、サトルなどの営業支援メンバーも参加し、次々と鑑定しまくっていく。中々の手際だ。
パシャパシャ。
ちなみに今年の〈夜のモンスターハント〉中もしっかりみんなの活躍をパシャパシャしておいたぞ。水着姿でモンスターと戦うイベントなんて此所だけなので、入念にパシャパシャしまくった。時には転移まで使ってしまったよ。
だが、おかげで戦闘メンバー全員の戦闘シーンが撮れたと思う。ちなみに当初の狙い通りホラーに怖がるメンバーはこれから聞き取り調査だ。
「兄さん終わったでー!」
「さっすがマリー先輩、早いな!」
「毎回とんでもない素材を納品するお客さんに鍛え上げられたかんな!」
そうかそうか! それは俺のことだな? マリー先輩は俺が育てた! ふはははは!
「マリーはおかしい。本職の鑑定士よりも早い」
「うちじゃなく兄さんに言うて? うちをこんなにしたのは兄さんなんや!」
ふははははは!
「みんな手伝ってくれてありがとう~。――ゼフィルス君、これがチームのポイントを割り振った表だよ!」
「サンキューハンナ!」
「えへへ」
査定とか色々終わってその表が俺に届くまで僅か数分。
〈アークアルカディア〉もさすがだぜ。
「では結果発表! これから順位を発表する! これは査定額の順位だ! 金額が最も多かったチームが優勝だな! もちろん賞品は豪華! 好きな物を持っていくが良い! まずは3位からいくぞ!」
俺がそう宣言すると、ざわめいていた場が静かになる。
〈エースシャングリラ〉がどれだけ先行の有利を活かせたのか。
それとも経験者である〈エデン〉組の追い上げが上回ったのか。
運命の時だな。
「3位! 〈エースシャングリラ〉のソアチーム!」
「やったー!」
「やったぜ姉ちゃん!」
「超嬉しい。嬉しいが爆発しそう。むしろした。ユナのおかげ」
「ゼフィルス先輩の動きを見て隠されている場所に当たりを付けた甲斐がありました。あれで〈金箱〉が3連続当たったのが大きかったです」
ソアチーム3位入賞!
メンバーはソア、ミツル、シオン、ユナのいつもの4人組だ。
最初のスタートダッシュは遅れていたものの、最後の追い上げは凄まじく、なんと〈金箱〉3連続ゲットという運も味方して3位にランクインだ。
いやぁ、素晴らし素晴らしだぜ。俺たちはたくさんの拍手を贈った。
「では続いて2位の発表だ! 査定額第2位に輝いたのは――ラナチーム!」
「ええ!? 1位じゃないの!?」
「あれだけお宝を手に入れたのに2位ですか」
「一歩及ばなかったですね」
「残念デース。ラナ殿下どんまいデス!」
2位は〈エデン〉のラナチームだった。
もちろん、ラナ、エステル、シズ、パメラの4人チームだ。
かなり追い上げていたらしいが、シズの言う通り一歩及ばなかったというところだな。
まさかラナが2位とか、じゃあいったい1位は誰だ!?
「ではいよいよ1位の発表だ! 第1位は――」
ここでドラムロール。いや、実際にドラムロールは流れていないが、俺の脳内には響いた。一瞬溜め、みんなが息を飲むのを見届けてから、ジャカジャンと発表する。
「第1位は――ノーアチームだー!」
「! やりましたわ!」
「本当に1位でしたか」
「やっぱり! ぼくの言ったとおりだっただろう!」
「ニーコもノーアも立派立派。優勝おめおめ~」
――わああああ! と沸く海の砂浜。
1位はなんと、〈エデン〉の2年生、ノーアがリーダーを務めるノーア、クラリス、ニーコ、エフィチームだった!
お、俺のチームじゃないだと!?
いや、うん。ちょっとシエラと色々あって出遅れてしまってな。あれは抗いがたかった。ナイスこんにゃろー! 他にもパシャパシャ案件もあったから仕方なかった。
「ニーコ、宝箱感知系のスキルは使って無いよな?」
「もちろんさ。でも使わなくてもなんとなくどの辺にありそうとかは分かるのだよ!」
「くっ、さすがは【トレジャーハンター】!」
そうニーコの技能、あるいは職業補正におののいていると、それだけじゃないとハンナが来る。
「あと、1位は撃破数も多かったんだよ? 査定額はモンスタードロップも計算されているから。ほらここ、ボスを6体も撃破してるんだよ」
「ノーアの輝けスキルは優秀。モンスターホイホイだった。なかなか楽しいイベントだった」
「エフィ、饒舌じゃん」
どうやらニーコがお宝担当。ノーアはモンスター引き寄せ担当。そして殲滅担当がクラリス、エフィで、じゃんじゃん引き寄せては屠りまくったのだという。ついでに中ボスに近い大型モンスターも6体倒し、そのドロップが評価されたようだな。
うん! エフィはちゃんと〈夜のモンスターハント〉してる! 1位入賞も納得だよ!
「シヅキが空からの監視員になっちゃったから組む人どうしようって思ってたけど、今度からこっちに入ろうかな」
「え!? エフィ冗談だよね!? 私、捨てられちゃう!?」
「ごめんねシヅキ。私はもっと戦いたいの」
「今度大魔王様たちと模擬戦させてあげるからさ!」
「……シヅキ大好き。私はいつまでもシヅキと一緒」
エフィ、チョロ……。
でも無双って楽しいよね。分かるよ。
俺も『アピール』しまくれば良かったか。そうすればもっとシエラがくっついて来たかもしれないのに……くっ!
「…………ゼフィルス、何か変なことを考えてない?」
「何も考えてないさ! ――さあ、今度は賞品の授与だ! 1位チームは前にカモン!」
「…………」
シエラは勘が鋭くていけない。いや、今はジト目だ! 全然いけなくなかった!
それはそれとして1位に賞品を授与する。
用意したのはもちろん―――去年と同じく大半がぬいぐるみだよ!!
「わぁー! これはいいですわ! 私、このシャーチにします! シャーチのぬいぐるみがいいですわ!」
「シャークは可愛くないですが、シャーチは可愛いですね。お嬢様は良い物を選ばれました」
真っ先にノーアが飛びついたのは、なんとシャーチのぬいぐるみ!
可愛くデフォルメされた足の無い40センチくらいのぬいぐるみだ。足無しとかもう普通のシャチである。
それを選ぶとはお目が高い。見ろ、メルトなんて目を見張ってるぞ。いや、あれは信じられないと言っている目だな。
メルトは小さな頃から「悪い子には海からシャークがやって来て食べられてしまうのだ」と言われて育ってきたとミサトから聞いた。なまはげかな? 故に見つけたら即殲滅対象のようなのだ。
「ちなみにこのシャーチホコはどうだ?」
「それは要りませんわ!」
「私も同じく」
シャーチホコ。矛というのだから武器? と思わせて実は金色に輝くシャチホコのぬいぐるみだ。
シャチホコはシャチとは無関係のはずなのに、〈海ダン〉のレアボスはなぜかこいつをドロップするのである。ちなみに、かなり派手に輝いているので、抱きしめると眩しそうだ。
そのままニーコ、クラリス、エフィがそれぞれ選ぶと、続いて2位のラナたち。
こっそりとフラーラ先輩作〈伝説猫〉のぬいぐるみも混ぜてあったのだが、ラナが真っ先にそれを取った。さすがだ。
「残ってくれて良かったわ! ずっとこれを狙っていたのよ!」
「良かったですねラナ様」
それ、最上級アイテムだけどな。
どうやらラナが1位になりたかったのは、この〈伝説猫〉のぬいぐるみを狙っていたかららしい。
1位組には選ばれなかったが、欲しいものはゲットできたようだ。良かったな。
エステル、シズ、パメラもそれぞれ選んで、3位のソアたちの番。
「わー! ぬいぐるみがいっぱい! これ、どれでも好きなもの選んでもいいの!?」
「すっごい。マシロンが賞品は凄いと豪語してただけはある」
「はい。可愛いです。目移りしてしま――はっ!?」
ふっふっふ、ソアもシオンもユナも強烈に食いついているな。
そう、〈エデン〉のメンバーがぬいぐるみ好きなように、〈エースシャングリラ〉のメンバーもしっかりぬいぐるみ好きなのだ! いや、可愛い物好きだな。
見ろ、あのクールな高官っぽい雰囲気のユナまで流されて顔を赤くしてる。どうやらぬいぐるみ好きだとバレたのが恥ずかしい様子だ。こういう光景もごちそうさまです……!
「あのゼフィルス先輩、僕もぬいぐるみが賞品なんですか!?」
「おっとそうだった。ミツルにはこっちなんかどうだ?」
「おお!? これ、剣? 新しい剣ですか!?」
ミツルは男の子だからな。
もちろん男子用にぬいぐるみではない、装備なども揃えてあった。
ミツルは最上級の天使ボスからドロップした片手剣を持っていったよ。
これも賞品だから贈与だ。
よし、次の発表だな。
「では4位以降も発表するぞ! まず〈エースシャングリラ〉から【賊職】メンバーで構成された――」
こうして4位から10位はぬいぐるみ、もしくは装備を選んでもらい、ランク外は残ったぬいぐるみから早い者勝ちで好きなものをプレゼントした。
あれだね、最後はちょっとしたプチ戦争だったよ。
ぬいぐるみが置かれた台の周りに女子を配置し、よーいドンしたんだ。
みんなすてきなぬいぐるみが確保できたようで、とても喜んでいたよ。
ついでに俺も大量のパシャパシャができて幸せです!
しかしシャーチホコにシャークのぬいぐるみよ、なぜ君たちだけ残っているんだい?




