#1927 人類の頂き!LV100到達者〈エデン〉の初注文!
7月12日。
昨日恐れていた(?)ことがついに成された。
そう、ゼフィルス率いる〈エデン〉メンバーたちが、宣言通り、LV100になって帰還したのである。
「昨日宣言したばかりなのに、早すぎる……!(猶予が1日ちょっとって、時間が足りなすぎるんだけどーーーー!!)」
「いや、これでもまだ猶予があった方じゃカイエン君。少し前なんか、気が付けば偉業が為されておったからのう。――ほっほっほ」
「学園長お気を確かに~。現実を見据えてください。LV100到達者が50人も出たのですよ?」
「いえ、ゼフィルスさんの話ではほぼ同時にハンナ様もLV100になったらしいですから、51人みたいです(51人の頂きってーーーー!? え? これ教科書とかに載っちゃう!? テストで51人全員の名前を答えよとか載っちゃったりするやつじゃないかなーーー!?)」←カイエン心の中では錯乱中
「…………カフンッ」
「学園長ーーーー!! (学園長がまた逝ったーーーー!?!?)」
過去の思い出を語りながら現実逃避していた学園長も、コレットに言われ、現実を直視して、この通りだ。またどこかに旅立っていった。もちろんコレットがあらかじめ用意していた素敵なお茶で連れ戻していたので心配は無用。
ただカイエンは何もかもが新しい経験。とても忙しそうにしていたという。
◇
一方、ゼフィルスたちがLV100になって凱旋(?)したと聞いて燃える者も多数いた。
「聞いたかいな。兄さんたちがついに人類の頂きに届いたそうや!!」
「「「「おおー!」」」」
「つまり、その装備を手がけるうちらも、同じくLV100が求められるっちゅうことや!!」
「「「「おおーーーー!!」」」」
「そんでもって兄さんも、うちらのお店の価値を分かってくれとる! すでに素材も運ばれ始めとる! さっさとうちらもLV100に追いついて、最強装備を作ったるんや!! 世界最強のギルド〈エデン〉の装備を手がけた者として、歴史に名が刻まれるで!!」
「「「「「おおおーーーーーーーーー!!!!」」」」」
そうマリー先輩のお店、〈トップマリー〉である。
従業員が集められ、そこでマリー先輩が壇上に上がり、胸を反らして鼓舞していた。
〈エデン〉の装備を手がけるのは、自分たちしかいない!
自分たちが最強のギルドを支えるのだ!
さすがにハンナの領分は難しいが、他の服飾や彫金はまだ参入できる。
彫金はタネテだけじゃ全く〈エデン〉相手の作業量に追いつけていないので、現在急ピッチで育成中だ。なにせ鉱石や宝石だけはなぜかいっぱいある。
とにかく今は生産職が輝く時代だ。生産職たちの熱意も凄まじく、ガンガン六段階目ツリー保持者も増えてきている。
それもこれも〈エデン〉が適当に大量採集してきたものがとんでもないレベルの採集物だからだ。今、生産職はウハウハ状態でレベリングしまくっていた。
〈エデン〉の役に立つのはこの私だ、と言わんばかりに今生産職のみんなが鎬を削っている。
「うちのLVも97。兄さん、すぐ追いついてやるで!」
そう不敵に笑うマリー先輩。だが、そこへ眠たげな瞳のメイリー先輩がやってくる。
「マリー、しごと~。〈エデン〉が〈海ダン〉行って素材採ってくるから、水着作ってくれ~って」
「…………」
なお、〈エデン〉がLV100になって最初に注文したものが水着装備だったのは、マリー先輩とメイリー先輩しか知らない話だったりする。
◇
「ハンナー! アルルー! また〈鉱ダン〉でいっぱい採ってきたから使ってくれ!」
「わわ!? 〈空間収納倉庫〉9箱分!? またたくさん採ってきたんだね!?」
「レイドボス素材もこんなにか!? これだけあればうちだけやのうて、アルストリアはんにシレイアはん、それにタネテはんだってLV100に到達するやろな」
これでもマリー先輩に半分近く納品してきたのだが、〈彫金ノ技工士〉に回す分もたんまりあるな。
一先ず生産職メンバーはこれでかなりレベル上げができるはずだ。
「ゼフィルス、〈トップマリー〉に水着の注文をしてきたぞ。素材を集めに行くのはいつにする?」
ギルドハウスの大部屋へ戻ると、ちょうど戻ってきたメルトから連絡を受けた。
例の水着素材集めの話だな。
「早ければ早い方が良いな! 次の土曜日はどうだ?」
「分かった。男子メンバーにそのように通達しておこう」
俺が忙しそうだからと、連絡役を買って出てくれたメルトには感謝である。
こうして土曜日は水着素材集めに決まった。
「水着。なんだかドキドキするね! ミツル君、がんばってきてね!」
「多分姉ちゃんより僕の方がドキドキしていると思うよ? まさか先輩たちと合同探索とか!」
もちろんこれは〈エースシャングリラ〉男子も参加なので、ミツルや騎士男子4人組、それに【賊職】男子2人にサンダダとメーレン、ロイも一緒に向かう。
いやぁ、一昨年は3人で向かい水着素材集めに難儀していたが、去年は10人に増え、今年はなんと20人! 男子が20人だ! 新たに【錬金術師】で〈アークアルカディア〉に加わった3人も合わせれば23人もメンバーがいるのだ!
男子、だいぶ増えたなぁ。俺、感慨深すぎてちょっとジーンときちゃったぞ! なお、女子の数は数えてはいけない。
全体で95人のはずなので、23引くと女子は72人……。あ、数えちゃった……。
ゲフンゲフン!
〈海ダン〉での合同採集、楽しみだなぁー(棒)。
俺たちが〈鉱ダン〉でLV100になった翌日月曜日、今日はテスト返却日だ。
ふっふっふ。今回も俺に抜かりはない。自信たっぷりにふんぞり返っていても抜かったフラグが立つこともないさ! そんなもの、全てへし折ってやんよ!!
「ゼフィルス君~、そろそろいくよ~?」
「おおー!」
今日も朝からハンナと出発だ。
俺はいつもよりも3割増しでキリッとしてハンナの視線を集めた。
「行こうかハンナ。テストの結果発表が、俺たちを待っている」(キリリッ)
「う、うん。でも、テストの結果発表でそんなにキリリッと決めるのはゼフィルス君だけだと思うんだよ」
「そんなことないぞハンナ。それよりハンナは――実技テストの時すでにLV100だったらしいが大丈夫なのか?(こっそり)」
「え、えっと?」
俺が後半こっそりそう聞くと、ハンナは視線を彷徨わせた。
俺たち51人は昨日、LV100になった。人類未到の領域に、初めて足を踏み入れた――ということになっているが、実際はハンナの方が少しばかり早かった。
だが、ハンナは自分が最初の到達者だとバレたくない様子。なので、俺たちが大々的に告知して――有言実行したのだ。おかげで昨日から学園はその話題で持ちきりだ。すんごい騒ぎになったからな。
もしハンナが本当の最初の到達者だとバレれば、そのすんごい騒ぎがハンナに向かってしまう。もちろんバレるようなことはない――と思っていたのだが。どうもハンナ、LV100の状態でテストを受けていたようなのだ。
「れ、LVは計ってないし、作品は精一杯やっちゃったけど比べることもできないし、大丈夫、だと思うよ?」
「じー……」
「だ、大丈夫です!」
「ふむ」
ハンナは作品に手は抜かない。いつも一生懸命だ。
故に、多分かなり強烈で強力な物ができてしまったようだが、そもそもLV100のデータなんか他に無いので比べることもできないだろうとハンナは予想している様子。
確かに、今まで散々伝説を打ち立ててきたハンナだ。「ハンナだしな」で高い能力のアイテムもスルーされる気がする。……歴史家の方々がどう判断するかは未来人に任せよう。
「まあいっか。ハンナも点数あとで教えてくれよー」
「う、うん」
なお、凄いのができちゃったハンナの点数が、これまた凄いことになってしまっていたのだが、〈生産専攻〉の校舎に近づかなかった俺には、分からなかったんだ。
「ゼフィルス様、おはようございます」
「おはようセレスタン! 相変わらずだな」
「恐縮です」
いったい何度目だろうこのやり取り。テスト発表の日は、セレスタンはいつも待ち構えているんだ。
相変わらずセレスタンを連れて校舎へと向かう。
掲示板の前は相変わらず凄い人混みだ。
みんな一喜一憂。上位1000位のみが掲載されるランキングにその名を見つけて喜ぶ者もいれば、赤点一覧の前で崩れ落ちている学生たちもいる。
ぬ? あれ? サターンたちを発見! だが、崩れ落ちてない、だと?
俺が見つけたサターンたちは心なしかキリッとした表情で赤点一覧を見ていたが、何事も無かったかのように1000位ランキングの掲示板の方にやってきていたんだ。見るべきものは見た。ということか。まさか、奴らに赤点者が居なかったのか? サターンたちも成長しているなぁ。
「はっ! 我にとっては当然のことだな!」
「ふふ、僕たちに掛かれば、この通りです」
「さて、俺は何位にランクインしているのかな?」
「俺様を忘れてもらっては、困るな」
まさか1000位ランキングに載っているのか? と思ったが、どうやら載っていなかったらしい。お迎えが来なさったのだ。
「サターンたちはこっちにこい。お前たちが1000位以内に載っているはずがないだろう!」
「なんだと!」
「ふふ、ムカルですか。その言葉、訂正するなら今のうちですよ?」
どこかで見たことがあるようなモブっぽい男子、あれは、そうかムカルか!
二つ名――〈ウェルカムのムカル〉。なんだか久しぶりに見た気がするぜ。
そしてムカルが〈学生手帳〉を出す。アレには学生の順位も載っているんだ。
掲示板が大混雑するが故に、〈学生手帳〉でも見られるようにしてあったりする。
俺は掲示板派だけどな。
「見ろ。これがお前たちの順位だ」
「な、なんだと……! バカな! この我が……」
「ふふ!? あれだけ勉強に集中した僕たちが、まさかこの程度だと!?」
俺の角度からでは点数は見れなかったが、サターンたちが目を見開いている。
何点だったのか、とても気になるんだが?
「ウェルカム~」
「うあああああああああああ!? その声をやめろおおおおおおおおおお!?!?」
そしてなんかトドメのセリフを突き刺したムカルが、ウェルカムして自分たちの教室に連れて行ったんだ。あの5人、3年生でも同じクラスなのか。仲が良いな。
「ゼフィルス様」
「おう。そろそろ大本命、見ますか!」
ついサターンたちに魅入ってしまったぜ。
さて、いよいよ俺の番だな。
掲示板の端。
順位の1位から50位までが掲示されている箇所まで来ると、俺は顔を上げる。
そこに書いてあったのは―――。
第1位・ゼフィルス 点数1000点
ふははははははははははは!!




