#1922 ハンナのほっぺと朝。そして新メンバー加入!
「ゼフィルス君~? 朝だよ~? 朝ご飯食べて、学園行くよ~?」
「むにゃ?」
朝。いつもの朝だ。
自室のベッドで目覚めた俺が目を開くと、まず目に入ってきたのは可愛くも美しい、まるで女神のような――ハンナの顔だった。
普段は慣れているのでそのまま起きるのだが、この日の俺はどうやら疲れが取れていないのか、とても寝ぼけていたらしい。
「ああ、ハンナだ~」
「ひゃ!? ゼフィルス君!?」
俺の手が暴走した。
いつの間にかハンナの柔らかいほっぺに手を添えて堪能していたんだ。
ハンナの柔肌とぷにっとしたほっぺたの感触が凄まじく気持ちいい。まるで夢みたいだよ。そうさ、こんなの夢と現実の区別がつかなくても仕方ないんだよ!
「ゼフィルス君、くすぐったいよ」
「ハンナ……。あれ? ハンナ?」
「ゼフィルス君?」
しかし、夢はいつか目覚めるもの。
だんだんと頭が覚醒してきたことで、ここは夢じゃないんじゃないか? と思い始めてきたんだ。
いやいやそんなばかな。これは夢だよ。だってハンナのほっぺが、こんなに柔らかいんだもん。お触り許されてるもん。な? 夢だろ?
そんなことを思う天使な俺と。
ふっふっふ。ならば確かめてみるがいい。本当に夢ならばなにをしても問題無いはずだ。勇者ならば、勇気を見せてみろ!
と悪魔な俺が脳内で囁いてくる。
悪魔はなんてことを言いやがるんだ! もしこれが現実だった場合、別もんの勇者になってしまうぞ!?
そして天使と悪魔な俺ともう1人「その手を離し、今すぐ起きなさい」と言ってくる『直感』さんの囁きも聞こえた気がした。
俺は『直感』さんの言うことに従った。
「……おはようハンナ。起きたよ」
「おはようゼフィルス君……」
ほっぺの手を離してゆっくり起き上がる。
あ、あぶねぇ。あのまま夢と現実の区別がつかなかったら、とんでもないことになっていた予感! 『直感』さん、朝からご出勤ありがとうございます!
でもほっぺから手を離されたハンナがどことなく残念そうに見えるのは、俺の目がまだ寝ボケているのだろうか?
すぐに顔を洗ってしゃっきりした。キリッ!
「待たせたなハンナ。どうやら今日はいつもよりも寝ぼけていたみたいだ」
「そ、そうなんだ。でもいつでも寝ぼけてくれてもいいんだよ?」
「そう言ってもらえると助かる。今日はほっぺに触っちゃって悪かったな」
「べ、別にそれくらい全然大丈夫だよ」
なんだかハンナが俺を甘やかしてくる。
ハンナが部屋に来ていても寝ぼけられる空間。これは俺が相当安心しているからに違いない。
そんな一緒に居て安心させてくれるハンナには感謝しかない。
あとほっぺは寝ぼけたときなら触ってもいいらしい。いやいや、安心させてくれるハンナに無遠慮に触ってしまうのはいけない! いけないぞ!
俺はもうちょっと気を引き締めることを決意した。
席に着いて朝食だ。
なんだかハンナが最初照れ照れしていた感じがして大変目の保養だったのだが、だんだん落ち着いてきて、たわいない話に移る。
「それでね、1年生の子たちは初めてのテスト期間でしょ? でもずっと勉強しててちょっと心配なんだよ」
「ああ。適度に息抜きもしないとな。なら、先輩のハンナが率先して錬金しているところを見せればいいんじゃないか? それなら、後輩だって、合間に錬金しても大丈夫なんだ、って思うだろ?」
「あ、そうだね! うん、やってみるよ!」
今日は――例の〈鉱ダン〉を攻略して4日が経過している平日だ。
すでに1学期の期末テスト期間に突入しており、俺たちはともかく1年生たちは現在必死にテスト勉強に明け暮れているらしい。
理由は明白、〈エデン〉は勉強もトップクラスだからだ。
それを聞いて、成績が落ちれば脱退させられると考えているのかな? と思ったのだが、どうやらそれは違うらしく、自分たちが〈エデン〉の下部メンバーとして相応しい存在になれるように、順位の高い成績を自主的に獲得しにいっているようなのだ。
これは戦闘職メンバーも生産職メンバーも同じだな。
自分は〈エデン〉に連なるギルドのメンバーとして、胸を張れる存在になるために頑張っているというのである。
くぅ、なんて素晴らしいメンバーたちなんだ!
しかし、ハンナが面倒を見ている〈アークアルカディア〉の新メンバーたちは、かなり自分を追い込んでいるらしくハンナが心配している、という話だな。
根を詰めすぎているようなので、息抜きの仕方を教えていたところだ。
ハンナも、昨年は1個下の錬金メンバーがいなかったため、今年が初めての後輩だ。故に、息抜きのさせ方などが分からずこうして相談してきた形だな。
「やっぱりゼフィルス君は頼りになるなぁ」
「おう。そういう相談ならいつでも乗るぜ。特にハンナの相談は最優先だ」
「も、もうゼフィルス君ったら~」
ふっ。ハンナから頼りにされて思わず思い切り決めてしまった。
だが、俺の本音でもある。ハンナの相談事なら最優先で解決してあげたいのだ。
「それで上手くいかなかったら言ってくれ。また相談に乗るからさ」
「うん。よろしくね! あ、そろそろ出発しなきゃ」
「おっともうこんな時間か」
いつもの朝の一時も瞬く間に過ぎていき、通学の時間。
テスト期間はダンジョンが閉まっているので平和なものだ。
放課後はいつも通り、〈エデン〉のギルドハウスに向かい、そこで勉強会。
「あ、ゼフィルス先生!」
「ゼフィルス先生が来ました! みんな席に着いてください!」
「時間を無駄にしちゃう子は、メッだよ~」
そこでなぜか俺はゼフィルス先生をしている。もちろん1年生メンバーに対してだ。
俺がとある部屋に近づくと、見張り(?)をしていたクラとフェンラがすぐに部屋の中に引っ込んで指示を出していく声が聞こえてくる。あとマルティの声も聞こえるし手伝っているのかな?
「やぁ、みんなお待たせしちゃったかな?」
「「「「よろしくお願いいたしますゼフィルス先生!」」」」
俺はちょっと先生風なロールをしながらその教室に入室する。
いや、だってみんながゼフィルス先生って言うんだもん。ちょっとかっこつけてみたかったんだ。
なんで先生と呼ばれているのか? もちろんここで臨時の授業を開いているからだ。
「それじゃあ今日のテスト勉強を始めるぞ! みんな、ちゃんと息抜きはしてきたか!」
「はい! シエラ先輩たちがよく行くというファンシーショップに連れていってもらいました!」
「あこがれの先輩に連れて行ってもらえて、楽しかったよね~」
「ぬいぐるみをたくさん買っちゃったよ!」
また〈エデン〉のぬいぐるみが増えたらしい。
チナノ、マユ、メナの表情がキラキラのツヤツヤだった。どうやらシエラたちは、後輩に気分転換をさせることに成功したようだ。
テスト勉強は根を詰めるだけではダメだ。息抜きもしっかりしないとな! なお、息抜きの方がメインになったら終わりだ。気をつけろ?
最近はこんな感じで1年生の勉強会を俺が担当している。
マンツーマンが良いというメンバーはまた別の部屋で勉強も教えているぞ。
そうして1年生のメンバーの勉強を見る中、俺はとあるメンバーに声を掛ける。
「そっちは慣れたかメーレイ、ロイ?」
「ようやく、というところです」
「ありがとうございます! 俺たちを気に掛けてくれて、嬉しいです!」
「新しい仲間なんだから当然さ」
そう、それは――〈エースシャングリラ〉の新メンバーだ。
両方男子。
覚えているだろうか? 第四回大面接――と言うには小規模なものだったが、入学式の日にミサトが連れてきた候補の中で、最終選考まで残っていた2人、【精霊魔弓】の「エルフ」男子と【彦スター】の「男爵」男子だ。
「エルフ」男子はフルネームがセウメーレイ、愛称でメーレイとみんな呼んでいる。
シェリアと同じ黄緑色の髪と瞳をしており、後ろで髪を1本に縛っている長髪だ。
エルフだからかクール系。シェリアやシュミネのように表情があまり変わらない冷静沈着系の男子である。
「男爵」男子はロイ。
アッシュブラウンのショートヘアで、キラキラエフェクトと笑顔が非常に似合う。
セリフはびっくりマーク多めの明るい系。性格はやや目立ちたがりで頑張り屋。まさに【彦スター】がよく似合うアイドル系男子だ。
2人ともかなり顔が整っていてイケメン。乙女ゲームのヒーローから出張してきたのかな? と一瞬思ってしまうほどの顔面をお持ちだ。もしくは配信なんかで見るVの人かもしれない。
聞けば2人とも1年生のトップイケメンランキングの3位以内常連なんだそうだ。なにそのランキング!? そんなのあったの!? でも不思議と違和感ないんだぜ。
立場的には最近加入した新入り。
少し前に加入したばかりである。
前にあった〈学園春風大戦〉が終わってAランクになったときに声を掛けていたのだが、それから入学始業式が始まり、1年生たちの授業が開始され、新たな環境にてんやわんやしているうちに〈エデン〉では新たな最上級ダンジョンへ攻略に向かったりと、まあ色々すれ違ってしまった。
おかげで〈エースシャングリラ〉に迎えたのは6月に入ってからになってしまい、育成もまだまだ進んでおらず、下級職のまま。
夏休みに入ったらしっかり育成しようと考えている。
今は他の1年生に混じって勉強中だな。




