#1899 〈ケルビム〉の大剣は防御破壊だ気をつけろ!
身体を覆う無数の翼、そこから少年の顔を出し、6枚の翼を開いている姿が〈ケルビム〉の第二形態だ。
いや、足も出ているな。よく見ればさっきまで浮かんでいたはずの身体が地面に降り立っていた。つまり、踏みつけなんかも気をつけなくてはいけない。
身長は35メートル級に成長した10歳ほどの少年第二形態だ。
「カッ!」
そして〈ケルビム〉が目を見開くと、空間が歪み、俺たちに何かが掛かったのが分かった。
「これ、状態異常だよ! 状態異常の全体攻撃! ってデバフも付いてる!?」
「マシロ、ミサト、癒しを頼む!」
「はい! 『オールエル・ヒール』!」
「デバフの回復なら私の出番だよ! 『スペリオールエクスヒール』!」
〈ケルビム〉の初手は様々な状態異常とデバフだった。
特に〈混乱〉〈気絶〉〈睡眠〉〈恐怖〉を強めに与えてくるんだ。さらに全ての能力値にデバフが掛かるという、下手をすれば全滅するレベルのことを全体攻撃で使ってくる。これでバフ打ち消しもしてくるというのだからマジやべぇ。
何人かがこの状態異常に掛かったが、マシロが状態異常を、ミサトがデバフを全体回復で使ったのでセーフ。
「やば! ちょっと〈気絶〉してた!」
「私は〈恐怖〉が直撃してMPがヤバかったよ~!」
「私なんて両方だよ。――『神装武装』!」
サチ、エミ、ユウカみたいに状態異常になったメンバーもすぐに立ち上がり臨戦態勢に戻る。よし、被害無し。
「ゼフィルス、次あれは食らえないわ」
「分かってるぜ! ――マシロとミサトはそのまま無効化を頼む!」
「はい! 『セイクリッド・ヘヴン』! 『アストラル・ヴィータ』!」
「たは! 『ノットアドミッション・ベルシール』! そして『色欲の愛情』!」
今のとんでもやべぇ初手にさすがにシエラが危険を促してくる。
もちろん俺はそれに頷いてマシロとミサトに対策を発動してもらった。
マシロは天国顕現。
今までLV不足だったが、今は『セイクリッド・ヘヴン』と『アストラル・ヴィータ』は共にLV10。この両方が『魔法LV10』の時、パーティ全員に『状態異常無効』を付与するのだ。〈エデンの園〉がモチーフになったフィールドと噛み合ってすごい神秘的な絵になってる。パナイ!
さらにはミサトは全員を透明なベールで包み込む。ここに愛情が加わって対策万全。
『ノットアドミッション・ベルシール』と『色欲の愛情』、これも両方が『魔法LV10』の時、パーティ全体に『デバフ無効』が発動するのだ。もちろん先日両方が『魔法LV10』に届いたため、もう俺たちに状態異常もデバフも効かない。
さらにラナのバフ打ち消し無効のおかげで天国と愛情が打ち消されることはないのでもう怖いものなし。
さすがは〈エデン〉自慢のヒーラーたちだぜ!
「みなさん、あとは任せました!」
「私たちは無効化に集中するからね!」
「頼んだぜ! 『ゴッドドラゴン・カンナカムイ』!」
これで憂い無く戦闘に集中できるというものだ。攻撃開始!
「カッ! ―――!」
続いての〈ケルビム〉の攻撃は、さきほど第一形態がしていた全体光属性攻撃――を連打。
「シエラはドア! ルキアは次のを止めろ!」
「『プラネットドアヘヴン』!」
「『クロノス』!」
「ラウ、ノックバックさせて攻撃をキャンセルだ!」
「任せろ! 『獣王の拳を防げる訳無し』!」
「ガガガ!?」
「ここで『天光勇者聖剣』だーー!」
「ガッ!?」
ズドドドドン。
全体攻撃は溜めが大きい。それを連打とか、強いがとっても隙が大きいのだ。
ここだと思ったね。1発目はシエラにドアで吸い込んでもらい、2発目を使用するところでルキアが『クロノス』で強制ストップ。
追撃でラウの強力な王者の拳が直撃した。『獣王の拳を防げる訳無し』は防御スキル破壊に加え、強力なノックバックを与えるスキル。
レイドボスともなるとノックバックも一瞬だが、俺はタイミングを見誤らずにぶった切ってノックバックダウンを捥ぎ取った。
「ダウンだ! 総攻撃ーーーー!!」
膝を付いてダウンする少年〈ケルビム〉へ総攻撃。
第二形態の魔法攻撃はとんでもなく強力だし、全体攻撃の連打とかとんでもない攻撃をしてくるので直撃したら俺たちでもヤバいのだが、ぶっちゃけあっちこっち移動する〈座天使・ソロネ〉よりもやりやすい。
状態異常とデバフとバフ打ち消しに対策モリモリ積んでおけば、あとはタイミング良く攻撃すれば勝てるのだ。〈エデン〉の敵ではない。
「ガガガ!?」
「ラクリッテ、シャロン、ヴァン、トモヨ、モニカ、防御!」
それからも〈ケルビム〉は全体攻撃やら10メートルはありそうな特大魔法を連射してきたが、全てを受けきったり防ぎきったりしてボコボコにし、全体攻撃の連打が来そうになったら隙に差し込みで攻撃を繰り返して失敗させる。
それを繰り返していると――ついに本番、第三形態へと移行した。
「2本目のHPバーが消えたぞ! 次が本番だと思え! 今のうちに補給だ!」
相手が形態変化している間は俺たちも休憩。
グビッとアイテムでMPを回復して準備万端。
「形態変化が終わるわ!」
「わわ! 何あれ、すごくその、豪華になってるじゃないの!」
「神々しいです……!」
今回の形態変化は1回目の時とずいぶん変わっていた。
1回目は成長、だったが、2回目は進化、と言えばいいだろうか。
1回目は翼の繭に赤ちゃんが引っ込んだら10歳くらいの少年になっただけだったが、今回は翼ごと光の繭に包まれ、繭が弾けると、そこには金属と羽根のハイブリッドな天使の翼を2対4枚背中から生やし、教皇が着ていても不思議では無い純白の法衣を着ている、どこからどう見ても第一形態と第二形態とは隔絶した姿になっていた。まさにここからが本番という感じ。
頭の上には天使の輪、というには機械的すぎる輪が存在し。輪の下にあるのは、なんと4つの頭。天使、獅子、牡牛、鷲の顔が存在する。人の顔がこっちへ向き、獅子は俺たちから見て左、牛は後ろを、鷲は右へ首が伸びていた。
本体はおそらく天使で、姿は人型。2本の腕で持っているのは20メートルを大きく超えている大剣――〈ケルビム〉の武器、〈回炎剣〉だ。
そう、今まで魔法使いだったのに、第三形態は魔法剣士なんだよ。
「来るぞ!」
「オオオオオオ!」
「止めます! ポン! 今こそ現れるは最強無敵の盾狸王――『幻獣霊最強・狸王様完全盾』!!」
大剣に〈火属性〉のエンチャントをしたように見える〈ケルビム〉が、それを振りかぶる。瞬間現れるのは30メートル級のラクリッテの狸王様、お腹の盾が今日も凜々しい。さあ相手は狸王様が務めるぞ!
そんな気合いが見える召喚だったのに。
「カッ!」
〈ケルビム〉は狸王様の首をぶった切った。
「狸王様ーーーーー!?!?!?」
ラクリッテが絶叫すると共に狸王様が無念と消えていく。
狸王様がまさかの一撃必殺だった。
「ちょ、もしかして防御破壊の大剣!?」
「カーーーー!!」
「慌てるな! シャロン、ロゼッタ、ヴァン、キキョウ! 破壊無効の盾だ!」
「は、はい! 『完全防備』!」
「『神守盾』!」
「はっ! 『ロード・オブ・オリハルコン』!」
「え、ええい――『究極嫉妬盾』!」
瞬間俺たちを守るように展開された4つの防御破壊無効付きの盾たち。そこへさっきと同じく燃える〈回炎剣〉で〈ケルビム〉が攻撃しまくる。
「カーーーーツッ!!」
「こいつ今〈勝つ〉って言ったぞ!」
「たは! もしかしたら〈喝〉かもしれないよ」
「のんきなことを言ってるんじゃないゼフィルスにミサト! 俺が動きを押さえる『グラビティフィールド』!」
うっかりいつもの調子でツッコんでしまったぜ。
メルトが重力の塊を後方に置き、引き寄せに掛かる。しかし。
「モー!」
「う、牛だと!?」
後方を見ていた牛の頭が叫んだかと思えば、角から〈聖属性〉の光線を発射。
メルトの『グラビティフィールド』を破壊してしまったのだ。
「こっちの獅子は、なんだこれは!? パンチなのか!? ヘッドパンチか!?」
「ん! 獅子ヘッドパンチ!」
さらに左側では側面から攻撃しようとしたラウやカルアが獅子の頭に翻弄されていた。
獅子が下を覗き込むと、獅子の顔を模したエネルギー弾が飛んでくるのである。
ラウの『獣王烈震咆哮牙』に形が似ているせいでヘッドパンチに見えるわけだ。
「こっちは舞い散る羽根が厄介です」
「フィナちゃんならいけるって! はい『ダークヒール』! フィナちゃんいっけー!」
「姉さまを連れてくるんでした、身代わりに」
「え!? フィナちゃん今何か不穏なこと言った!?」
「言いましたが、なにか?」
「認めた!? なにかじゃないよ!?」
右側では鷲の頭が攻撃を繰り出していた。口から発射される『フェザーストーム』はほとんど竜巻ブレス。さらに顔中から飛び出す2メートル級の羽根が結構やっかいで、竜巻ブレスの合間に連射してくるのだ。右側からでもなかなか近づけない。
「四方向に個別に攻撃可能なボスだと? ゼフィルス、何か策はないのか!?」
「もちろんある!」
「あるのか!?」
「トモヨ、フィナ、ヴァン! 飛べる盾持ちは正面以外の前に展開!」
「分かったよ! 私は後ろ行くね!」
「私はこのまま右を担当します」
「自分は――」
「ここは俺が引き受けるから左を頼む!」
「はっ! 了解であります!」
「それぞれガンガン目の前の頭からヘイトを奪え! 高度は50メートルだ!」
「! そういうことだね! 『天使の敵』! 『宣戦布告』! 『敵対予告』! 『終わりの予告』! 『破滅の予告』 !『エル・フォース』!」
「やってみます――『エル・バランレード・ラグナロク』! 『天使転移』! 『神敵認定』!」
「承知! 『我、この城の主なり』!」
「そのまま上空50メートルを維持! 相手に上を狙わせろ!」
「「「了解!」」」
まず仕掛けとして天使のトモヨとフィナ、そして〈魔法使いの箒杖〉を持ったヴァンに空を飛んでもらい、40メートル級ボスのさらに10メートル上でヘイトを取ってもらう。
この顔たちは個別に攻撃を繰り出すことからも分かるように、ヘイトが別々になっているのだ。故に、個別にヘイトを取ってしまえば、それはもう1対1である。
しかもこの3つの顔は、〈ケルビム〉に付いている付属品みたいな位置づけなので〈ケルビム〉本体が何かしてくることが無いのが良き。
トモヨ、フィナ、ヴァンはヘイトを稼いだ後、逃げ回ったりして3つの頭の攻撃を逸らしてもらう。攻撃は上を向いて発射されるので下に影響が無いという寸法だ。
「側面と後方に隙が出来たぞ! 上に注意しながら攻撃再開!」
「「「おおー!」」」
「〈ケルビム〉は大剣を使っているが、おそらく全体攻撃をまたしてくる! シエラとルキアは備えてくれ!」
「分かったわ」
「責任重大だよこれ!? 私が居なかったらどうするの!?」
「その時はタイミング良くノックバックしたり『聖剣』でぶった切って行動を強制キャンセルさせるさ!」
そんな感じで指示しつつ、大剣による攻撃は全て防御破壊無効スキルを使ったタンクで受け止め、トモヨたちには引き続き上空で3つの顔を引きつけてもらい、アタッカーがアタック。
そんな地道な攻撃をしていると、やはり全体攻撃しようと溜め始めたので、この隙は逃さない。
「翼が光る、全体攻撃ですわ!」
「シエラ来るぞ!」
「ええ、任せて」
「全員、変身・覚醒スキルを許可する! 反撃チャンスを逃すな!」
「「「「『姫騎士覚醒』!」」」」
「「「「『大天使フォーム』!」」」」
「「「『女神化』!」」」
「ルルもお空飛んじゃうのです! 『変身・プリンセスメイクアップ』! からの――『究極変身・ヒーロープリンセス』なのですーー!!」
「『全軍一斉攻撃ですわ』!」
「カッ!」
「『プラネットドアヘヴン』!」
再び〈ケルビム〉がやってきたのは散々俺たちを苦しめ――られず、自分が苦しんだ全体攻撃の――連打。溜めている隙は第二形態の時よりも小さくなっているが、来ることが分かっていれば対策は容易い。
シエラがドアで8割方防ぎきり、そして。
「ルキア、今だ!」
「『クロノス』!」
「カッ!?」
「総攻撃だー!!」
『タイムストップ』のさらに強力バージョン。ルキアのユニークスキルの『クロノス』があれば2発目は撃たせない、むしろ撃っても止まる。この隙に超強力な攻撃を叩き込むのだ。
ズドドドドドドドドドドドドドドドドンと強烈な攻撃が響きまくった。
「ガガガッ!?」
これが原因でダウン2回目。更なる総攻撃でガンガン削ると、〈ケルビム〉のHPがレッドゾーンに突入する。
「カッ! カッ! カッ!」
「効かん効かん! 効かんわーー!」
あの強烈な状態異常とデバフコンボを連打で発動する〈ケルビム〉。
さらにバフの解除までしてこようとしたが、マシロ、ミサト、ラナに対策を取られているから効かない。
「カッ!」
「回復します――『満天の星空の小夜曲』!」
「今だ! クールタイムが終わった端から攻撃連打だーーー! 削りきるぞーーーー!!」
最後は10メートル級の特大魔法を発射しながら〈回炎剣〉をダイナミックに回してぶった切ってくるという、超魔法剣士スタイルで暴れまくる〈エデンの園〉を守る天使。
だがこれはタンクとヒーラーが居れば問題は無い。多少狸王様の首がまた吹っ飛んだ程度で戦闘不能者無しで乗り切ることに成功。
もう残り少ないHPだ。ここで一斉攻撃を叩き込めばいける。
「続けーー! 『天光勇者聖剣』!」
「ガガガ!?」
怯んだ〈ケルビム〉に容赦なくメンバーほぼ全員から総攻撃が加えられ、ついにそのHPがゼロになる。
「―――」
そして膨大なエフェクトを発しながら〈智天使・ケルビム〉は沈んで消えていったのだった。
もちろんその後にあったのは――〈金箱〉4箱!
フォーーーー!!
あとがき失礼いたします。お知らせ!
昨日よりコミカライズの最新話が更新されております!
気になる方は「TOブックス コロナEX ダン活」で検索してみてください!
今回はデブブの宝箱回、そして新キャラ、メイリー先輩が登場です!




