#1887 ランク3―〈天住の聖界ダンジョン〉に突入だ!
ハンナとデートした帰りにシエラとばったり出会い、服装の追及をされるも『直感』さんの「パジャマの話題をだせ! 服装と言えば例のパジャマで早速寝てみたんだけど~、の話題で乗り切るんだ!」という的確なアドバイスによってなんとか躱しきったが、あれからシエラの目が厳しい気がする。
もしかしてヤバい? このままでは、いつハンナとデートしたことを白状させられるか分からない。あのジト目に問い詰められると、全部答えたくなってしまうんだ。
あまりにも危険がいっぱい。
あとなんだか無限ループに入り込んだ錯覚を覚え始めている。このままではいけない。このループから脱出せねば! あとそろそろダンジョン行きたい。
そこで俺は、一計を案じることにした。
「〈聖界ダン〉に潜ろう!」
「!! ようやくランク3ね! もう、とても待った気分よ! 私を待たせるなんてとんでもないことだわ!」
「…………」
いつものギルドハウスの席で俺はそうギルドメンバーに提案した。
内容は最上級ダンジョンのランク3、〈聖界ダン〉の攻略だ。
攻略中は気が抜けないために、例の追及も下火になると見込んでの案である。
なお、シエラは盛大にジト目を向けてきている模様だ。
くっ、なんかドキドキする!
「つい最近〈猫界ダン〉が攻略されたばかりですのに……」
「さすが〈エデン〉のメンバーは違いますね!」
ちなみに〈エースシャングリラ〉も同席中だ。
フェンラが目を丸くし、クラがはしゃいでいる声が聞こえてくるな。
うむ、まだ〈猫界ダン〉を攻略し終わって日が浅い。というか1週間も経っていない。
ということで〈エースシャングリラ〉の育成に力を注ぐべきではないか? という考えもあったのだが、とある不測の事態に〈聖界ダン〉の攻略を決めたのだ。
聞く人が聞けば「そんなことで決めないで!?」と言われてしまう気がする。
いや、きっと気のせいだろう。
「〈エースシャングリラ〉のみんな、あまり手ほどきをしてあげられなくて悪いな」
「いえ、大丈夫です! 僕たち十分強いですから!」
「だね~。それに私たちも今上級下位ダンジョンを攻略中だし」
「うん。まずはダンジョンを自力で攻略してみたい」
「なるほど」
ミツル、ソア、シオンの言葉に俺は納得して頷く。
4月の時点で、俺は〈エースシャングリラ〉を〈学園春風大戦〉でAランク戦に出場させ、尚且つ勝たせるために盛大に色々とパワーレベリングした。
2年生なんて全員上級職でLV15まであげて、1年生も全員上級職になっているほどだ。
その弊害で上級職の動きにまだ慣れていないため5月は1ヶ月使って上級職の運用に慣れつつ、上級下位ダンジョンを攻略中だ。
強くなった腕前でどこまで通じるのかを見るため、そして1年生たちにダンジョン自体に慣れてもらうため、今は自力での上級下位ダンジョン攻略を目指している、とのことだった。
よし〈聖界ダン〉を攻略したら、今度こそ〈エースシャングリラ〉に手ほどきをしよう。その頃には7月も近いだろうし、〈エースシャングリラ〉もだいぶ上級ダンジョンに慣れているだろうからな。
「まあ、〈エースシャングリラ〉は2年生と1年生の合同ギルドでやがります。先輩という面では2年生が1年生の面倒を見てくれやがるでしょう。――お前たち、しっかり後輩の面倒を見てやるでやがりますよ!」
「へい!」
「任せてくださいモニカ!」
おう。【賊職】メンバーにモニカが発破を掛けているな。
確かに今の〈エースシャングリラ〉は1年間ダンジョンで鍛えた2年生もいる。
手探りなこともそれはあるだろうが、1年生にとっては教えを請える環境が整っているということだ。なら、もう少し様子を見るのもいいだろう。
「私はリーナ様に手ほどきを受けたいのですが」
「それなら夜に時間を取りますわ。ユナさん、夜に私の部屋に来てくださいな」
「あ! ありがとうございます!」
【姫侍】から【後陣の姫大名】に〈上級転職〉して〈エースシャングリラ〉の指揮官になりつつあるユナはリーナにぞっこんだ。俺が教えるよりもリーナから教えられる方が良いらしい。なぜだぜ? まあ良いけどさ。
貴族舎の3階以上なら男子禁制の女子寮だし、夜に部屋に行くのも容易いだろうしな。むしろ夜に俺の部屋に1人で来られたらシエラが……うん、やっぱりユナのことはリーナに任せよう。
「ゼフィルス! もう決まりよ! 早く〈聖界ダン〉にいきましょう!」
「だな。――よし、みんな異論がなければこれより〈エデン〉は〈聖界ダン〉に入ダンする! 前人未踏のダンジョンに、俺たちが最初の足跡を残してやろうぜ!」
「「「「「おおー!」」」」」
よし、みんなの意識が未踏破のダンジョンに向いたぜ! これで勝つる!
シエラも俺に向けていたジト目を解除し、前向きの表情になっている。
少し寂しいのはなぜだろう?
いや、これでいいんだ!
その後、俺たちは着替えてハンナ特製ポーションがこれでもかと入っている〈空間収納鞄〉をいくつも受け取り、〈聖界ダン〉へと出発した。
ダンジョン門に到着すれば、先に連絡を取っていたため、すでにケルばあさんが待機していてくれたんだ。
「おやおや、ついこの前〈猫界ダン〉を攻略したばかりだというのに、もう次に行くのかい?」
「はい! 新しいダンジョンに行くの、すごく楽しみなんです!」
「そうかい。うん、今日もみんな綺麗なもんさね。はい、パーティの登録も済ませたよ。気をつけて行ってきなね」
「ありがとうございます!」
ケルばあチェックも無事クリア。
こうして俺たちはランク3の門へと移動する。
「はぁ、ドキドキしてきたわ。どんなところなのかしら?」
「分析するに、〈聖界ダン〉は〈聖ダン〉の上位ダンジョンの可能性が高いらしいですからね。手強いダンジョンになるかと思われますよ?」
「ドンと来いよ!」
ラナが頼もしすぎる!
エステルの見解通り、ここはあの上級中位のランク4、〈聖ダン〉の上位ダンジョンだ。
あの音に反応し大量の天使系が襲ってくる、物量型ダンジョンだな。
つまり、このダンジョンも物量型の可能性が高いとなる。
よし、ここは俺が今一度発破を掛ける場面だな。
「みんな! 今から俺たちはランク3――〈天住の聖界ダンジョン〉、通称〈聖界ダン〉へ入ダンする! ここはまだ誰も入ったことがないダンジョンで、中になにがあるかは誰にも分からない。常に警戒してくれ! また、ここは〈聖ダン〉と名前が似ている。〈聖ダン〉の上位ダンジョンの可能性が高い。みんな〈聖ダン〉のことを思い出してほしい!」
最上級ダンジョンはこれまでも、どこかのダンジョンの上位タイプのダンジョンだった。
ランク1の〈樹界ダン〉は〈狼ダン〉や〈階ダン〉、〈巣多ダン〉の上位ダンジョンという印象だったし、ランク2の〈猫界ダン〉はもろ〈猫ダン〉や〈猫猫ダン〉の上位ダンジョンだった。
そしてランク3の〈聖界ダン〉は、〈聖ダン〉や〈教会ダン〉の上位ダンジョンと呼ばれている。両方とも物量系のダンジョンだった。
それをみんなに意識させ、どういうものが待っているのかをイメージさせる狙い。
「おそらく登場するのは天使系のモンスターだろう。今まで天使系は〈聖ダン〉や〈教会ダン〉で登場したな。あの物量で攻めてくるダンジョンだ。今回も物量で攻めてくるダンジョンの可能性が高い。十分考慮して挑んでほしい!」
そう、言い聞かせる俺の言葉をメンバーは静かに聞いている。
こういう時、みんな俺の言葉を聞き逃さないようにしっかり耳を傾けてくれるんだ。
なお、ダンジョン門の入り口付近では、俺たちが〈聖界ダン〉に潜ると知ってなにやら騒がしくざわざわざわざわしているが、気にしないでおこう。
「では出発するぞ! みんな準備はいいか!?」
「「「「「おおー!」」」」」
「〈エデン〉、出発だー!」
宣言して〈聖界ダン〉のダンジョン門を潜る。
そうして景色が一変すると、俺たちは神の住む聖域にでも入り込んだかのような領域に出た。
幻想的な自然の風景、雲の上にでも立っているかのような足場。
そして遠くには世界樹と見間違うような巨大な樹。
その周囲には、やはり多くの天使たちが控えていた。




