#204 再び来た素晴らしい銀箱ドンッ!さらに倍!
「シエラ! ラナ! 大丈夫か!」
「ええ。問題ないわ」
「でも少し危なかったわよ、なんだか良くない類の汗をかいたわ」
どうやら2人とも無事だったらしい。
モクモクと漂う煙から出てきた2人は割と元気だった。ラナは若干青ざめていたが。
思えばラナがボスのタゲをまともに受けたのって〈クマアリクイ〉のミス以来か。思いっきり攻撃されたためか、いつもの元気が無くなっていた。
シエラはHPをかなり削られていたのにも関わらずラナの回復のおかげでピンピンしている。
思いっきり銃の、いや棘の乱射を浴びたのにクールなすまし顔だった。ちょっとカッコイイ。俺も涼しい顔して今の乱射を切り抜けてみたい。
「でもごめんなさいね。〈ユニークスキル〉『完全魅了盾』が使えれば良かったのだけど、距離があって無理だったのよ。もう少し相手の近くで盾をするべきだったわ」
シエラがポツリと呟く。
【盾姫】の〈ユニークスキル〉『完全魅了盾』はタゲ強制固定、たとえあの時〈サボテンカウボーイ〉がラナに攻撃の向きを決めていたとしても強制的にシエラに向かせることが出来た。
しかし、遠距離攻撃型を相手にしていたためシエラと〈サボテンカウボーイ〉の間には結構な距離が有り、近距離攻撃の『完全魅了盾』の射程外だった。
『完全魅了盾』は射程が短いのがネックなんだよな。タゲ固定だからかなり強いんだが。
確かにあのタイミングで『完全魅了盾』が決まればラナを危険な目に遭わす事も無かっただろうが、俺的には完璧な対応に見えたので反省するシエラをフォローする。
「ま、今のはミスでも無いしそこまで気にすることでも無いさ。結果良ければそれで良しだ。2人がなんともなく切り抜けたので問題なし」
俺が2人の無事を確認している間にリカとカルアも追いついてくる。
「2人ともご無事で何よりだ。さすがシエラ嬢だな」
「ん。あの攻撃を受けきったの、すごい」
「そ、そうかしら。別にそこまで大した事はないのだけど…」
おお、リカとカルアに褒められてさっきまでのクールシエラがテレシエラに変わったぞ。
これはレア顔だ。頬をほんのり赤くしてテレるシエラが普段とのギャップもあってすごく可愛く見える! 素晴らしい。くっ何故リアル〈ダン活〉にはスクショ機能がないんだ! 仕方ないので網膜に焼き付けておこう。
「あまり見ないでくれるかしら」
「ああ、いつものジト目に戻ってしまった。残念」
シエラのテレタイムはすぐに終わってしまった。また今度テレさせてみようと決める。
「ん、ゼフィルス、〈銀箱〉4つある」
「ビューティフォー!!」
素晴らしいの連続だ! 思わず叫ぶ。
カルアの報告に目を光らせて首をぎゅるんと回すと銀色に輝く宝箱4つが目に入る。
銀箱ドンッ! さらに倍!
〈幸猫様〉の恩恵〈ビューティフォー現象〉がそこにあった。
「宝箱4つね! 私が開けてあげるわ!」
「いや皆で開けような!?」
ラナも目を光らせて走り寄ろうとするのを両手を広げてインターセプト。
やらせはしないぞ!
「ど、どうしたというのだラナ殿下もゼフィルスも」
「放っといていいわよ。ただじゃれて遊んでいるだけだから。いつものことよ」
「そ、そうなのか? あのラナ殿下とゼフィルスがか?」
俺たちの突然の奇行にリカが戸惑いの声を上げた。しかしシエラは見慣れた光景なので冷めたものだ。
久しぶりの〈ビューティフォー現象〉だぞ? シエラももう少しはしゃごうぜ!
「ん。ゼフィルス、早く早く」
「おう。今行くわー」
「あ、カルア、先に開けちゃダメだからね!」
ラナは今真っ先に開けようとしていなかっただろうか?
足の速いカルアがまず真っ先に宝箱の前にたどり着き、そこへぞろぞろと皆で集まる。
さて、宝箱は4つだ。4つしかない。そしてこちらは5人。誰か余る。誰か開けられない者が出てしまうのだ。
ラナは開ける気満々だ。すでに品定めを終えて一つの〈銀箱〉の前に立っている。さすが。
本当なら待ったを掛けるところだが、さっき怖い目にあったみたいだしご褒美は必要か。
ということで残りの宝箱は3つになった。
「ん。宝箱、開けたい」
「許可しよう」
何気にあまり主張しないカルアが珍しくわがままを言ったので思わず許可を出してしまった。
チラッとリカとシエラを見てみるが異論は無いようだ、よかった。
「さて残り2つになってしまったな」
「そんなに真剣に悩むことなのかしら…」
俺の真面目版勇者ボイスにシエラの理解に苦しむような声が聞こえた気がしたが、多分気のせいだろう。
「もう2人で開けてしまいなさい。私は次にでも開けさせてもらうから」
「シエラ。恩に着るぜ」
「いえ、こんなことで恩に着られても困るのだけど…。だって次も〈笛〉使うのよね?」
なにかシエラが言っていた気がしたが俺にはもう宝箱しか目に入らない。
レアボスの宝箱だぁ。しかも〈ビューティフォー現象〉なので4回も引ける。確率的に良い物が当たる可能性が高いのだ。その良い物を引き当てるのが俺かもしれないと思うと俄然力が入る。
「決まったわね。では皆でまず〈幸猫様〉に祈るのよ!」
「ああ〈幸猫様〉〈幸猫様〉! 〈ビューティフォー現象〉をありがとうございます! 次は良いドロップもお願いいたします!」
「ゼフィルスはもっと感謝に心を籠めなさいよ!」
少々祈りで一悶着あったが準備完了。
全員で同時に宝箱を開いた。
「「レシピ!」」
同時に上がった声はラナとカルアのものだった。
どうやら先に宝箱を決めた2人はレシピをツモった模様。後でマリー先輩のところで『解読』してもらおう。
ちなみに今回のドロップだが、〈笛〉の回数代は俺とラナで割り勘することになった。
しかしドロップの所有権は宙に浮いた状態だ。まあ細かいことは後で決めればいい。
セレスタンに頑張ってもらおう。
次は俺の番だ! よっしゃ開けるぞー! パカり。
「お、おおお! 〈三段スキル強化玉〉だ!」
宝箱の中には掌サイズの赤色の玉が2つ入っていた。俺はそれぞれを片手で持ち、ガバッと掲げる。こいつはすげぇ当たりだ!
「それはどういったものなの?」
「良い質問だぜシエラ!」
近くに来てそれを見つめていたシエラに説明する。
アイテム名〈三段スキル強化玉〉。その名のとおり、装備、アイテムに付与されている〈スキルLV〉を3つ上げる使い捨てアイテムだ。非常に強力なアイテムだぞ。
3レベも上がるとか強すぎじゃないかと思うが、〈ダン活〉ではアイテムや装備の類がやたらと多いので、これでも全然足りないのだ。厳選してもまだ足りない。〈強化玉〉系はいくつか種類があるが、どれもむっちゃくちゃ欲しい!
ちなみにこれは〈スキル〉版だが、ちゃんと〈魔法〉版もあるし、段も1段から9段まで種類があるぞ。
本来なら中級ダンジョンからドロップし始める〈強化玉〉だが、初級上位のレアボスは中級ボス並の強さなのでレアボスのドロップでも1段から3段までの〈強化玉〉が混じっている仕様だ。
何に使うか早速検討しておこう。
「リカはどうだった?」
「ああ。これなのだが、ゼフィルスは分かるか?」
そう言ってリカが宝箱から取り出したのは緑色をした一冊の本だった。
「〈支援回復の書〉じゃないか!? それむっちゃ欲しかったやつ!」
「そ、そうなのか?」
「ちょっとゼフィルス落ち着きなさい。リカが困ってるわ」
「いいだろう! では説明する」
「本当に聞いてるのかしら?」
リカの当てた〈支援回復の書〉は武器に分類される本だ。主に魔法職が使う。そして効果だが〈支援回復の書:魔法力13『ヒーリングLV5』『プロテクLV8』〉である。
正直初級上位レアボスの〈銀箱〉産としてはかなり弱い。普段ならハズレの部類だろう。
しかし、今の〈エデン〉はヒーラー不足。回復魔法は喉から手が出るほど欲しかった。
それに〈支援回復の書〉は装備品なので当然『能玉化』可能だ。
パワーアップさせて〈魔能玉〉にしてハンナに装備させよう! そうすればハンナは爆弾攻撃に加えヒーラー担当に…。フハハ!
いやあ、楽しくなってきたぁー!