#1867 〈ヨウネル〉の〈金箱〉では無欲のロリが勝つ
「おお! やったぞーーーーーー!!」
「なかなかに手強い相手だったわ」
「最後くるんと丸まって、ちょっと可愛かったです」
「分かるわ! おやすみって言われているかと思っちゃったわよ!」
レイドボス・大型、60.5層ボスである〈ヨウネル〉を討ち取り勝ち鬨を上げる。
今回は、なんだかいつもとは別ベクトルでみんな達成感のようなものがあったようだ。
あと最後の丸くなる姿も好評な様子。エステルがなんとなく名残惜しそうなんだ。
「ん、あんなに動き回るレイドボスは初めて」
「うむ。私なんてなかなか追いつけなかったからな」
「ルルもなのです! ひっさーつをしようとしたらしゅるりと逃げられてしまったのです!」
「逃げられちゃったの~」
「タンクも、相手が素早すぎてなかなか集中できませんでした」
「あたいのデバフでも素早さ全然鈍らねぇのな! どうなってんだ!?」
「でもHP自体はレイドボスの中でも低い方でしたね」
「なんだか初めて全力でヒーラーできた気がする!」
「あ、それちょっと分かるわ!」
カルア、リカ、ルル、アリス、キキョウ、ゼルレカ、シェリア、カグヤ、ラナと、〈ヨウネル〉の感想を言い合ってるな。
お察しの通り、〈ヨウネル〉は素早さと継続ダメージに特化したレイドボスだ。
その分HPは低いが、素早さに翻弄されてもたもたしていると、継続ダメージで燃え尽きてしまうという、レイドボスにあるまじき短期決戦を強いてくるボスである。
対処法としてはタンクを上手く使い、攻撃してきたところを囲い込んで、第三形態にしたように逃がさないようにして一気に削るのが有効だな。
継続ダメージが痛いので、基本短期決戦の攻め攻めスタイルが正解、時には捨て身になって一気にダメージを与えていくのもいいだろう。
HPが比較的低いボスなので、嵌まればかなり勝ちやすい。
あの〈猫津波〉と違い、こっちは非常に周回向きのレイドボスと言えよう。
ゼルレカのデバフがあまり効かなかったのは、あの移動速度がステータス依存ではなくスキル依存だったからだ。
移動系のスキルを常に使い続けて移動しているため、デバフを当ててAGIを下げても効果がいまいちな結果になっているというわけである。要は『ソニック』系のスキルを連打しているような戦法だったわけだな。
その移動系のスキルも数が多く、1つくらい禁止にしても他のスキルで補えるので全然効果が無いというアンビリーバボーなボスである。
「なんだか新鮮だったわ~。あんなに回復を回したのは、もしかしたら初めてだったかもしれないわね!」
「確かに、〈エデン〉のヒーラーが全員回復に掛かりきりというのも珍しい光景だったな」
ラナは今回、攻撃魔法はあまり撃てなかったみたいだが、回復魔法を撃ちまくれたので満足そうだ。
ラナってもしかしたら、単に魔法を撃ちまくりたいだけなのかもしれない。回復魔法だけだと撃つ機会が少ないから、それで攻撃魔法を撃ちまくっているのでは? と今回のことで思った。
「でもやっぱり宝剣を撃つ余裕が無いのはいけないわ。もうちょっと攻撃魔法も撃ちたかったわね!」
いややっぱり気のせいだったようだ。
ラナは攻撃魔法が大好きだ。間違い無い!
「それじゃあ早速〈金箱〉を開けるぞーー!!」
「〈金箱〉なのですー!」
「アリスも開けるのーー!」
「ん!」
今回ドロップした〈金箱〉は――3箱。うむ。
もちろんみんな公平にクジ引きをして、赤色という栄光のクジを手に入れた人が開けることに決める。
また俺の手に来てください栄光の色! お願いします〈幸猫様〉!
「あ、赤色なのです! ルル、当たったのです! ルルが当たりを引いたのです!!」
「また当たったの~!」
「ん! 赤来た!」
「嘘だろ?」
赤クジを今回引いたのはルル、アリス、カルアだった。アリスとか〈猫津波〉でも当たったのに、まただと!?
あれ? 俺は? 〈幸猫様〉!?
「早速開けるのです! ルルはこれに目星を付けていたのです!」
「アリスもこれがうめぼしさんなの~」
「ん? 梅干し?」
「ア、アリス、梅干しじゃなくて目星ですよ!」
「目星さんなの~!」
すぐに3人とも進んで〈金箱〉の前に配置してしゃがみ込む。
アリスは何をどう勘違いしていたのか気になるところだが、キキョウに訂正されて言い直していたな。さっきのピリッとしたクジ引きの空気が霧散し、ちょっと和やかな雰囲気が流れる。
「ゼフィルス様」
「分かってるからシェリア、後ろに立つな? ルルの〈金箱〉を開ける姿はちゃんとスクショに収めるから」
「アリスさんの分もお願いしますね」
「……了解だって」
相変わらずシェリアは神出鬼没で困るぜ。俺はスクショを構えて準備した。
もちろんカルアも撮ろう。
「それじゃあ年長のルルがまず開けるのです! 〈幸猫様〉〈仔猫様〉〈愛猫様〉、どうかルルに良いものをお願いするのです! あとでいっぱいなでなでしてあげるのです!」
神棚の主をなでなでしたらあかーん!? そう思ったのだが。
「アリスもなでなでするのー!」
「ん。私もする!」
なでなでが他の2人にも伝播!?
これはマズい。しかし俺が訂正する前にルルが〈金箱〉を開けてしまう。
「いざ、オープンなのです! こ、これは、伝説のレシピさんなのです!」
レジェンド。それは伝説と読む。レジェンドレシピより伝説のレシピと言われた方がなんか凄い感があるのはなぜだろう? 不思議!
「『解読』しますね――〈幼若竜〉、『解読』です!」
「読めるようになってきたのです!」
ルルの〈金箱〉から出てきたのはレジェンド色に輝くレシピ!
すぐに〈幼若竜〉を構えていたエステルが『解読』すると、ルルがまん丸のお目々をさらに丸くして驚いた。
「これは、装備のシリーズ全集なのです!」
「防具シリーズですか!」
「いったいなにが当たったのです!?」
ルルが当てたのは装備シリーズ全集だったようだ。
レイドボスからドロップするものは現物が少ない代わりにレシピが多い。
だが、装備のレシピがくる機会はそう多くないのだ。
なにせ、防具が当たる場合、レイドボスではその全てが全集でドロップする。個別にドロップすることがないので非常にありがたいのだが、その代わり確率が低く設定されているのだ。
「これは大物を釣った予感なのです!」
「ゼフィルス様、今の、撮りましたか?」
「あ、いや、レシピの方が気になってな」
「何をしているのですか、私に貸してください」
「ダメ」
シェリアがいつの間にか俺の側から離れない!
でもスクショは渡さないぞ?
「中に入っていたのは、〈太陽猫王装備シリーズ全集〉のレシピなのです! 「猫人」専用装備で、ダメージを受けると相手に〈火属性〉の反撃ダメージを与えると書いてあるのです!」
「これは、凄いですよシェリア。防具が頭から足まで5箇所あるので、反撃ダメージが相当なものになります。これは接近戦を仕掛けづらいですね」
「私も見ます」
あ、エステルの言葉にシェリアが離れた! しかも今アイコンタクトされたぞ。
きっとルルのレシピを覗き込んだところでルルとのツーショットを撮れという意味に違いない。なんで俺、シェリアのことがこんなに分かるのだろうか? パシャパシャ。
しかしこれまた中々の当たりだ。相手に反撃ダメージを与える装備。これを着けていると問答無用で相手にもダメージが蓄積していく。まあ接近戦のみだけどな。
これはあの〈ヨウネル〉の効果を引き継いだ装備だな。
問題は「猫人」専用装備というところだろう。
カルアはすでに〈フェアリークイーン〉からドロップしたレジェンド級を装備している。また、カルアは回避型の紙装甲なのでこの防具との相性は悪い。
これ、『ブラッディ』系を操る【ハイクルニャイダー】や【怠惰】と相性の良い装備だからな~。
【怠惰】となればゼルレカしかいないが、ゼルレカはすでに〈怠惰悪魔シリーズ〉を装備しているから更新するか悩ましいところ。
まあ、そのうち更新する可能性は高い。なにしろレジェンド装備である。
「ルルお姉ちゃんの凄いの! でもゼルレカの装備はアリスが当てたかったの~」
「まあ、残念だったなアリス。だが、ルル先輩に負けないもっとすごいものを当てればいいじゃないか」
同じくゼルレカに着せることを考えたアリスがちょっと凹んでいたが、ゼルレカに励まされたことで気を取り直してお祈りする。
「ルルお姉ちゃんに負けないもの出ろ~なの!」
そう可愛く言ったアリスをパシャパシャしながら見守ると、中から出てきたのはレジェンド色のレシピ。早速『解読』する。
「あ、これは「猫人」専用装備のアクセレシピだって書いてあるよ~!」
「お、マジか!?」
「見せてくださいアリス!」
「いいよ~。あ、名前は、〈お昼寝の癒し猫リング〉って名前だったよ!」
「うわ、HPの最大値を+1000!? それにバトルヒーリング効果付き!? なにこれ!?」
「完全にライフバーストやブラッディ系と相性の良い装備じゃねぇか!」
これまたアリスが当てたのは「猫人」専用装備のアクセ系。しかもレシピだ。
かなり強力な効果で、特にライフバースト系持ちのゼルレカに持たせるとすごく重宝する、非常に優秀なアクセ装備をツモったのだ。
これは大当たりだぞ! ゼルレカのHPが超大台の5000を突破する予感だ!
「ん。次は私が当てる。すっごい猫人専用装備が当たる気がする」
「あ、カルア――!?」
そ、それはフラグだぞ!?
そう俺が止める間もなく真剣な表情でパカリと〈金箱〉を開けるカルア。(ちなみにお祈りはもう済んでいる)するとそこには――。
「ん?」
入っていたのはレジェンド色のレシピ。
だが『解読』したところでカルアが首を捻っていた。
「どうしたのだカルア?」
「見てリカ」
「なになに? 〈伝説猫作製レシピ〉?? ってなに!? ぬいぐるみやゴーレム作りのレシピか!?」
カルアに読ませてもらったリカが最初はハテナマークだったが、読み進めると目を丸くして驚いたのだ。パシャパシャ。
そう、それは【ぬいぐるみ職人】系統が作製できるレシピだったのだ。
または伝説の猫ゴーレムも作れたりする。こっちは【闇の魔女】などの案件だな。黒猫の相棒が作れるぞ。
くっ! おしいっ! こっちのぬいぐるみじゃないんだ!
「これは、またぬいぐるみを作ってもらわなければいけないな」
またフラーラ先輩に依頼してぬいぐるみを作ってもらうとリカが息巻いている。
ああ、ギルドハウスに飾るぬいぐるみが、また増えてしまうなぁ。




