#1866 〈太陽猫聖獣・ヨウネル〉の継続ダメージ!
〈太陽猫聖獣・ヨウネル〉、通称〈ヨウネル〉。
端的に言えば、〈よう寝る〉である。
なんだか〈幼若竜〉が〈ようわかる〉をもじった名前だったのと似てるね。
なかなかタイミングが無くて『看破』し損ねていたが、ようやく名前が判明。
その名前から、色々察するものがあるな。
大きさは、尻尾を抜いて40メートル級はある、〈バトルウルフ(最終形態)〉よりもかなり大きな猫だ。
「あの猫自体が、太陽ということでしょうか?」
「そう考えて良いと思うぜ。光に炎、それが〈ヨウネル〉から噴出していた。今後もっと火力が上がるはずだ」
「となると、重要なのはヒーラーですわね」
「私たちの出番ね!」
リーナと俺で素早くそう計算して弾き出す。
すると、ヒーラーと聞いてラナがキリッとした顔で一歩前に出た。
ラナ……! ラナってヒーラーって自覚があったのか! てっきり最近は忘れているとばかり思ってたんだぜ。
「ニャアアアゴォォォォォォォ―――――!!」
「形態変化が終わるよ!」
「みなさん、おそらくこのボスは近づくだけでダメージを負う継続ダメージ型のレイドボスですわ! ヒーラーが常に回復しますので、ダメージを恐れないでくださいまし!」
さすがはリーナだ。良いことを言う。
そうお察しの通り、〈ヨウネル〉は近づいただけでダメージを受ける太陽のようなボス。
ダメージを受けすぎてHPがゼロになった場合、当然もの凄い熱いと感じると思うことだろう。実際は〈敗者のお部屋〉に転移するんだが、そんなのは試したくないだろうしな。
ダメージを受けるのを怖がって攻撃できなくなるメンバーに活を入れ、安心を告げる意味があるセリフだった。
「よーし頑張るよー!」
「うん! サチっちがんばって!」
「私たちは後方から応援してるね」
「が、頑張るよーー!!」
なお、前衛だけリスクがあるのでちょっと言葉だけでは厳しい。故に。
「ラナ殿下! オリヒメさん、エリサさん!」
「任せなさい! 『楽園の雨』!」
「なんだか久しぶりにヒーラーに集中できますね――『リジェネプロテクト・オールキュアバリア』!」
「私だってヒーラーだってこと、思い出させてあげるわ! 『ダーククイーンヒール』!」
「みなさん、回復は任せてくださいまし!」
ヒーラーを実際に行動させて安心させてあげるのだ。
そして、ついに形態変化が終わる。
「ニャアアアゴォォォォォォォ―――――!!」
「形態変化が終わりましたわ!」
「来る――いや来ない!?」
「って寝てるですのー!?」
「このニャアゴォーっていびきかよ!?」
さすがは〈ヨウネル〉。
形態変化の強い光と炎が明けると、そこには丸まっていびきをかくデカいボスが寝ていたんだ。形態変化時に寝ているとか初めてのパターンだよ! しかし。
「これはまた溜めてドーンするパターンだよね!」
「ダメだクイナダ、戻って来い!」
「え?」
「ワオオオオオオニャアアアアアアア!」
「!! 寝起きの大暴れですわ! みんな離れてくださいまし!」
「アルテ! クイナダを回収!」
「『ユニットスイッチ』!」
なんということだ。
あの寝は周囲を油断させるための罠。
寝ている猫(巨大)を前にしたら、そりゃ油断するというもの(?)。
思い出してほしいのは第一形態の時の寝起きの大暴れだ。そう、この寝は〈ヨウネル〉の超強力な攻撃が来る前触れなんだよ!
近くで溜め技しようとすれば逆にやられてしまう。なんて恐ろしい猫の罠。
「大丈夫ですかクイナダ先輩!?」
「わわわ!? 助かったよアルテ!」
クイナダは無事アルテが回収して無事だった。
〈猫界ダン〉ではアルテが輝いてるな。
「グニャアアアアアアアオオオオオオオオ!!」
「大暴れが終わった。行くぞ! 『天空絶光・疾駆無秒閃々』!」
「こいつ、近づくだけでダメージを受けるのにアクロバティックに動きまくりっす! 『破壊王の鉄槌』!」
「近づくと、眩しい! 『森界・ヴィクトリーストロング・ベアード』! あ、避けられた!」
「機動力に注視しろ! 超接近系の攻撃はなるべく総攻撃のために温存しておくんだ! 中距離攻撃できるものを意識して使え! 『天光勇者聖剣』!」
「了解です! 『スラストゲイルサイクロン』!」
目覚めた第二形態の〈ヨウネル〉の動きはかなり俊敏。しかも一箇所に留まらず、じゃんじゃん移動する。
タンクが受け止めようとヘイトを稼いでも、あっちいったりこっちいったりしながら突撃してくるのだ。まるで避けタンクがタゲを受け持っているようなアクロバティックすぎる動き。遠距離攻撃も回避されまくりだった。
「なにこのボス! 動きすぎなんだけど! 『神宝本・セイクリッドレター』!」
「単体攻撃だととても当たりにくい! 『神宝弓・サジタリウスミサイル』!」
「あ、また継続ダメージだけ与えてそっちに行って!? ちょっと待ってよー! 『神宝剣・テンペルトソニックブレイド』!」
ボスを一箇所に留めておけないのでみんなで追いかける事態に発展する。
動きがあっちこっち行くくせに近づくと継続ダメージを受けるものだから非常にやりづらかった。これが〈ヨウネル〉の戦い方だ。レイドボスなのにヒットアンドアウェイ+継続ダメージ型とか、今まで無かったパターンだな。
「ですが」
「ああ。ラナの継続回復は伊達じゃないな」
これは継続対決。
ラナの継続回復が勝つか、〈ヨウネル〉の継続ダメージが勝つかの戦いなのだ。
そして軍配は、間違い無くラナに上がっていた。
ラナの下級ユニークスキルは〈〈回復〉を付与したとき、追加で継続回復を付与する〉である。
さらにこの効果は重複するので、普通に付与する継続回復にも効果が発揮される。
つまり二重の継続回復が可能だ。
相手が継続ダメージを与えてこようが、片っ端から回復が上回ってHPを戻していく姿はさすが聖女、否、【大聖女】だ! これこそが【大聖女】の力だよ!
「ですが、〈ヨウネル〉は攻撃も仕掛けてきます。そこは他のヒーラーの出番ですわ! ミサトさん!」
「はいはーい! 『オールヒール』!」
「続いてノーアさんとクラリスさんへ!」
「『ハイヒール』! 『エクスヒール』!」
「グニャアアアアアアアオオオオオオオオ!!」
「きゃあ!?」
「フラウ!?」
「カグヤ、後方は召喚獣でフォローしてくれ!」
「分かりました! 『お稲荷召喚・カンザシとモミジ』! 進化して『セット・シールダー・プロミス・モミジ』! 『セット・ヒーラー・プロミス・カンザシ』! さらに進化して『王狐・モミジ』! 『聖鳥・カンザシ』!」
だが〈ヨウネル〉の攻撃方法は物理のみにあらず。
身体の炎をブレスのようにぶつけてくる場合や、〈火属性〉が乗っている爪を振るい、炎の爪を飛ばしてくる場合もある。
おかげで後衛も少なくないダメージを受けているな。
カグヤに頼んでモミジとカンザシに後衛の護衛をしてもらう。
王狐モミジは盾。結界を張って炎を寄せ付けず、聖鳥カンザシはヒーラー。後衛が受けたダメージもすぐに回復させてしまう。
「レグラムさん被弾!」
「余り無茶をしないでくださいレグラム様――『満天の星空の小夜曲』!」
「深追いしすぎたか。ありがとうオリヒメ」
「ミジュさん被弾!」
「私がやります! 『世界樹の加護』!」
「エフィさん被弾! 突っ込みすぎですわ!」
「回復します~『エルヒール』!」
「だって逃げるんだもん。ありがとマシロン」
ヒーラーが大活躍だな。
こうなると、崩れる心配は無い。
なにしろ〈エデン〉のヒーラーが全力でヒールしているからである。
あの、普段は他のことにも手を出しているヒーラーが、全力でヒーラーしているのだから崩れる心配は皆無だ。
それにサブヒーラーができるメンバーもいるので余裕もある。
60.5層レイドボスの〈ヨウネル〉との戦いは、少々やりづらかったものの、〈猫津波〉と比べるとかなり楽勝で第三形態へと移行した。
「やっと第三形態だよ!」
「継続ダメージだけじゃなく、攻撃がレイドボスの強さだから、割と効く」
「だからエフィは突っ込みすぎなんだって!」
「今回はヒーラーに感謝だね」
〈ヨウネル〉はあくまでレイドボス。
継続ダメージも強いが、普通の攻撃も十分強い。しかもアクロバティックに動くものだから追いかける側も予測できず結構被弾していた。しかも時間が経つに連れて継続ダメージまで負っていくのだ。
まさに、このボスはヒーラーを揃えていないと突破できないボスだな。
ヒーラーというのは数が少ない。
故にヒーラーを十分揃えていないとなかなか手強いボスなのだ。
だが、攻略法はある。
「リーナ、シエラ、エリサ、ヴァン、シャロン、カタリナ、モニカ、集まってくれ」
「はい!」
「なにか策があるのね」
「私も?」
「じ、自分もでありますか!?」
「このメンツ、何をするか分かったかも!」
「はい。そういうことでしたら、私も全力で抑え込みますわ」
「なんですなんです? ゼフィルス先輩は何をしようとしてるでやがりますか?」
おっと、どうやら俺が集めたメンバーを見て察した人も居るみたいだな。
だが、やはり〈エデン〉に加入したばかりのモニカみたいに分からない人もいるので軽く説明する。〈ヨウネル〉の形態変化が終わるまでもう時間が無い。
「動き回るなら、動きを制限すれば良い。だから、まずはあいつの動きを誘導し、封じ込めるぞ!」
「そういうことね! 任せてご主人様!」
「了解であります!」
「モニカは炎のブレスを吸収する担当だ」
「よく分からねぇでやがりますが、ゼフィルス先輩の指示に従えば良いってことでやがりますね!」
「おう! ――みんな! 指示が出たら一斉攻撃だ!」
「「「「「おお!」」」」」
「ニャアアアゴォォォォォォォ―――――!!」
打ち合わせが終わった瞬間、ちょうど良いタイミングで第三形態の変化が終わる。
「って、また寝てるぞ! 離れろ!」
「ワオオオオオオニャアアアアアアア!」
寝起きの大暴れも3度目ともなれば引っかかるメンバーは皆無だ。
だが、その大暴れは今回、少し毛色が違っていた。
「こいつ、空を飛んだ!?」
「翼が生えてるですの!?」
そう、なんと〈ヨウネル〉の背中には、炎でできたなんだかかっこいい翼が備わっていたのである。眉毛とお髭もメラメラと燃え、身体の至る所で光って燃えている。まさに最後の形態にふさわしい姿に変化していた。
地上だけで無く、空中でも大暴れ。なんとも凄まじい寝起きである。
あ、収まってきたな。
「シエラ、ユニーク!」
「『完全魅了盾』!」
「グニャアアアア!?」
大暴れが終わったタイミング。
この瞬間ならば逃げられる心配は無い。
シエラもそうなると分かっていたようで、一瞬で小盾を飛ばしてタゲを固定していた。その瞬間、身体を炎に包んだ〈ヨウネル〉が、シエラに向かって特大のブレスを放ったのだ。
「モニカ頼む!」
「『大強欲吸覇城占盾』!」
遠距離攻撃ならばモニカの出番。
〈六ツリ〉の城みたいな巨大で強力な盾を顕現し、ブレスをブロック。さらにはドレインしてHPを回復させる。
「グニャアアアアアア!!」
続いて身体に炎を纏わせた〈ヨウネル〉が、二度フェイントであっちへいき、こっちへいき、三度目にシエラに向かって駆けてきた。
そして激突。ここだ!
「今よ!」
「シエラ、ヴァン、シャロン! 三方向から囲い込め!」
「『アブソープション・ワン・フォートレス』!」
「『ゴッドオリハルコンランパート』!」
「『オリハルコン城』!」
すぐにヴァンとシャロンが城壁と城を出して左右から挟み込もうとする。
「エリサ、カタリナ!」
「猫ちゃんは家でおとなしくしてなさい! 『万魔宮殿』!」
「『あなたは囚われの籠の鳥』!」
エリサはヒーラーだが、今回は相手を『万魔宮殿』へ閉じ込めるためにがんばってもらった。
これは『睡眠無効』を〈封印〉してしまう宮殿だが、こうして中のものを一時的に閉じ込めるのにも向いているのだ。
ここでカタリナの上級ユニークスキルが炸裂。
これは中に入った者は出られず、中からなにかしようとすれば反射して自分に返ってくるというとんでもないユニークスキルである。
捕まったが最後、結界破壊を持ってないと無傷では脱出できない。
「グニャオオオオオオオオ!」
「閉じ込めた!」
「「「「おお!」」」」
相手がどっか行こうとして捕まえられないのなら、こっちに来てもらえばいい。
通常なら、シエラの『完全魅了盾』を飛ばしても回避されてしまっただろうが、大暴れが終わった直後のタイミングならば『完全魅了盾』は当たる。
あとは〈ヨウネル〉が突っ込んで来るのを待って捕まえてしまうのだ。
とはいえ、レイドボスを拘束し続けるのは難しい。
カタリナの結界にもすぐにヒビが入ったし、破られるのは時間の問題だ。
だが、問題は無い。
「結界、破られるわ!」
「『オリハルシステム排除ゴーレム召喚』! 『疑似ダンジョンシステムボス召喚』! 」
「いっくよー『犬力の犬』! みんな『我に勝利を取ってこい』!」
「今度はリベンジ! 負けないからね! 『大魔王の宴』!」
シャロンがゴーレムと30.5層の〈猫津波の召喚盤〉を発動。
さらにフラーミナのモンスター6体と、シヅキの6体の大魔王が囲い込む。
「いきます――『精霊王降臨』!」
最後は上をシェリアがカバーする。
6体の大精霊と1体の精霊王が現れ、真上から様々な攻撃を振り下ろした。
カタリナの結界が破られる。ここだ。
「今だ! 総攻撃だーーーー!!」
「グニャアアアアアアアア!?」
抵抗する〈ヨウネル〉だが時すでに遅し。
ゴーレムと猫津波と大型モンスターと大魔王たちと精霊たちに囲まれてはさすがに脱出すること叶わず、さらには他のメンバーたちの総攻撃も合わさって速攻でダウンした。
そこからさらにダメージを伸ばしていくと、〈ヨウネル〉がダウンから復活しそうになるが。
「却下! このまま逃がすな! ヴァンとシャロンは防壁を固めろーー!」
「『防御に勝りし壱ノ城』! 『気合いで打ち勝つ弐ノ城』! 『最後の砦の参ノ城』!」
「『神域の壁』!」
「ニャアアアアアアア、グニャウ!?」
ゴチーン。
ヴァンが〈ヨウネル〉の周りを城で囲うと、シャロンが『神域の壁』を発動する。
そして〈ヨウネル〉は、城を飛び越そうと大ジャンプを決め、見事に『神域の壁』にゴツンとぶつかって弾かれた。
「タンクは囲めーーー!! 逃がすなよーーー!!」
絶対に逃がさない。
逃げるから手間取るのだから逃がさないで討ち取るのが最善だ。
ぶっちゃけレイドボスの攻撃をタンクが受け止められるのなら、四方から囲んでしまえばボスは止められてしまうのだ。
普通のレイドボスなら破壊されて脱出されてしまうだろうが、〈ヨウネル〉は近づいたら常に継続ダメージというとんでもないパッシブスキルを持っているせいで、レイドボスの中ではそこまで怖いアクティブスキルを持っていないのだ。故に、ここまで組み付いて攻撃が可能。だがそれも。
「忙しいわね! 『ヴァース・フォーチュン・ゴッドブレス』!」
「みんながんばれー! 『スペリオールエクスヒール』!」
「じゃんじゃん回復するわ! 『ダークマターエネルギー』!」
「奥義いきます――『奥義・神使特大回復儀式』!」
「全体を回復しますよ――『ハイエルフの祝福』!」
「はい! 癒します! 『アルティメットハートヒール』!」
ヒーラーが超頑張っているからだな!
こうして〈ヨウネル〉は激しく抵抗するも戦闘不能者を出すほどではなく。また脱出も敵わずに最後のHPバーも削り取られてしまったのだった。
「グンニャイ……」
最後にはクルッと丸まりお昼寝するポーズでエフェクトの海に沈んでいく〈ヨウネル〉が、ちょっと可愛かったんだぜ。
最後まで〈ヨウネル〉だったな。




