#1863 マリー先輩店オープン!お祝いに度肝を抜け!
30.5層を攻略し終えると、俺たちはその足でとある場所に訪れた。
もちろん、マリー先輩の店だ。
「マリー先輩いるか~」
「いるで~」
店に入ると早速マリー先輩が現れてくれる。とってもありがたい!
「まずは祝わせてくれ! マリー先輩! お店オープンおめでとう!!」
「ん、おめでとう」
「おめでとうございます!」
「ありがとうな! ようやく店をオープンできてうちも嬉しいわ!」
そう、マリー先輩のお店だが、ついに本日オープンしたのだ!
これは祝わなくてはと来店した次第。
これには〈エデン〉メンバーのみんなも賛同して、結果全員で来店したのだ。
もちろんマリー先輩には初日に行きますと連絡しておいたよ。さすがに〈エデン〉全員で突然来店はびっくりするだろうしな。
ちなみに全員が〈スッキリン〉でダンジョンの汚れや猫毛なんかも払拭済みだとここに記載しておく。
ダンジョンから帰ったらまず温泉、という女子メンバーもみんなマリー先輩を祝いに来てくれたんだ。
また、〈アークアルカディア〉や〈エースシャングリラ〉のメンバーも呼んでいるのでそのうち来ると思う。まさに〈エデン〉全員集合だった。
「わぁ! 新しいお店だ~」
「どこもぴっかぴかだよ!」
「どこから見ようか?」
「よーしラクリッテちゃん、上から順に見ていくよー」
「はい! とても楽しみです!」
「マシロンは私たちと3階行ってみよう! コスプレ系がたくさん揃ってるんだって! 着せかえさせて!」
「いいですよ~」
「あ、それなら私は――」
「はいはいエフィもいくよー」
「シヅキ、力強い。なぜ?」
メンバーがそれぞれ思い思いの場所に散っていくな。
デパート探索を楽しんできてくれ。
「しかし大人数やな!」
「まだまだ増えるぜ、〈エデン〉はこんなもんじゃない!」
「なんの自慢やねん! いや、ここまで大人数連れられるのは〈エデン〉しか居らんけども!」
人数的には〈エデン〉が50人、〈アークアルカディア〉が11人、〈エースシャングリラ〉が24人、合計で85人。
大所帯になったなぁ。また近々〈エースシャングリラ〉のメンバーを増やす大面接をしようって話しているところだけどさ。100を超える日も近いな。
「しかし、もっと賑わっているのかと思ったが、そうでもないんだな」
「ここはレベルが高すぎるからなぁ。というか、基本先生方と〈エデン〉限定のお店やから他の学生は利用せえへんし」
「あ、やっぱりそうなのか?」
学園では、学生は基本学生のお店を利用することとなっている。
じゃないと企業が良い製品を売りまくって、生産職の学生が作った製品なんて売れなくなってしまうからな。
故に企業も基本は買い取りがメインだった。
とはいえ、スポンサー制度もあり、青田買いをしたい企業が特定の個人と契約して装備を渡すということもできる。これには学園への寄付や許可が必要なのでそう多くはないが。
要は企業と学生のやり取りは絶対にダメということではないというわけだ。
そしてこのマリー先輩の店も、〈エデン〉と専属契約を結んでいるがそれ以外のギルドとはやり取りできないルールとなっているみたいだ。もうマリー先輩のお店も企業だからな。
「とはいえ、他のギルドも最上級ダンジョンに入ダンできるようになれば許可は下るはずやけどな。最上級のもん作れるのはここか〈エデン店〉くらいしかあらへんし」
「なるほどなぁ」
マリー先輩のお店を学生が利用するには、最上級ダンジョンの入ダンが条件のようだ。
多分、世界で一番厳しい制限のデパートだと思う。一見様の比じゃないぜ!
デパートをよく見てみれば、買い物客はみんな大人、しかも仕立てのよさそうな服を着た人が大半だった。
きっとどこかの大企業の方々が目を肥やしに来たに違いない。製品を見る目が芸術系の展覧会を見る人のそれなんよ。
あと、こっちをちらちら見る人も多い。
「それでマリー先輩、本題なんだが」
「もちろん分かってるで、こっちや兄さん」
ここではいつものノリができん!
というわけで、俺はVIPルームへご案内だ。ふっふっふ。
マリー先輩が連れて行ってくれたのはVIPなルーム――ではなく、なぜかドデカい台が何個も設置されていた作業部屋だった。
そこに、Aランクギルド〈ワッペンシールステッカー〉時代によく見た〈総商会〉のメンバーだった方々が大勢並んでいる。これは!
「さあ兄さん、ここなら大量に素材を出しても大丈夫や、いくらでも吐きだしていくがええで!」
なんてこった!
さてはマリー先輩、俺のために専用の買い取り部屋を作りやがったな!!
俺のいつもの素材のシャワーに耐えられるだけの部屋を作って万全の状態で待ち構えていたというのか!!
くぅ! なんて作戦! なんて計略! さすがはマリー先輩! マリー先輩はいつも俺を楽しませてくれる! ならば、俺は全力で応えてあげようじゃないか!
「任せろマリー先輩! その要望、全力で叶えようじゃないか! さあ、これが最上級ダンジョンのランク2! 〈猫界ダン〉の素材たちだーーーーー!」
「「「「「きゃあああああああ!?」」」」」
俺はマリー先輩のお言葉に全力で応える気持ちで〈空間収納鞄〉をひっくり返した。
そうして出てきたものを見て、〈総商会〉の卒業生たちが悲鳴を上げる。
ここで問題です。
〈猫界ダン〉で猫を撃破した場合、そのドロップはなにになるでしょう?
もちろん、マリー先輩のお店に卸せるような防具系の素材と考えてほしい。
まあ、普通の〈猫ダン〉や〈猫猫ダン〉なら猫の毛皮とかだな。
しかし〈猫界ダン〉でドロップするものは違う。
その名もなんと〈猫の抜け殻〉。
見た目はまんまぬいぐるみだ。〈依り代〉カテゴリーでは無い、ぬいぐるみになってしまった猫が大量にドロップするのである。
そのまま飾るも良し、加工して防具にしちゃっても良しだ。〈ウルフ〉系ではこんなこと無かったのに。このビジュアルに気を使った格差よ。
よって台の上には、大量の猫が山を築いたのである。
「可愛い!」
「なにこれぬいぐるみ!?」
「こっちのぬいぐるみは魚の骨を構えてるよ! 勇ましい」
「こっちは箱に入ってる! なにこれ、素材なの!?」
うむうむ、元〈総商会〉の方々も目を丸くしているな。
だが、肝心のマリー先輩がまだである。
「なんやこれ!? 1匹1匹が凄い力を感じんで!! これ、素材なんか? またいったい何を手に入れてきたんや兄さんは!」
それは開発陣に言ってくれ。
戦えば戦うほど猫の戦利品が増えていく。
〈猫界ダン〉はな、猫世界なのだ。
「まだだぜマリー先輩」
「はっ!? 兄さん、いつの間に背後に!?」
俺はマリー先輩の背後に回り込んだ。別に回り込む必要は無い。
「さあおののくがいい! 俺たち〈エデン〉は本日、浅層のレイドボス、〈猫津波〉を倒して帰還した! その時のドロップがこれだ! 〈猫津波〉を喰らえマリー先輩!」
「またまたこんなに手に入れてきてからにーーーーーーーーー!?!? ちゅうかなんやこの素材たちはーーーーーーーーー!?!?!?」
どばああああああ、っとマリー先輩の前に大量の猫を出してあげた。
気持ち的にはマリー先輩に猫シャワーを浴びせた感じ。疑似的な猫津波を体験してほしいという、俺の気持ちだ。
普通の〈猫の抜け殻〉と違い、こっちの〈猫津波〉は10匹1セット。
意味が分からないと思うが、〈猫の抜け殻〉が10匹くっついている、ワイルドであり今にも飲み込んできそうな猫たちのダッシュの姿のアートだった。いや素材だけど。
最初に見たときは度肝を抜かれたよ。俺が。
きっとマリー先輩の度肝も抜いてくれると信じていたが、大成功だったようだ。
「そして最後はこれ、〈猫界ダン〉で手に入れた、レシピの数々だーーーーー!!」
「レジェンド色のレシピが混ざってるやないかーーーーーーい!!」
素材があってもレシピがなければ装備にはできない。
俺はここまでに〈猫界ダン〉で手に入れたレシピ、そのほとんどをここに吐きだしたのだった。
レジェンドレシピは〈樹界ダン〉の時にすでに見慣れたものになっていたからな、マリー先輩も絶叫するだけですんだようだ。枚数もまだ少なかったしな。
「ええい負けるかーー!! レシピはうちが熟読しとくで! みんなはすぐに素材の鑑定と査定を進めるんや!」
「「「「アイマムマリー!」」」」
おお、かっこいい!
一度は肝を取られてしまったマリー先輩だったが、なんとか持ち直し指示を出していく。
その場で加工も試しているようだ。猫のぬいぐるみにスキルを発動すると、ポンっと一瞬でクロースなどの布製品に変化している様子は見ていて面白い。
「まったく兄さんは、なんで毎度うちを驚かせてくるんや!」
「楽しかっただろ?」
「そら楽しいけどな! まあええ、どれから作ったらええねん?」
「おっとそうだった。マリー先輩の店もオープンしてオーダーメイドもできるようになったし、そろそろ〈樹界ダン〉で手に入れたあれやこれなんかもできそうなんじゃないか?」
「それな。問題無いで。それじゃあ例のアレ、進めるっちゅう感じでええんやな?」
「おう! いっぱい作ってくれ! それとマリー先輩には例の防具も頼む」
「了解や! 久々の大仕事やな。腕が鳴るで!」
そう言って鳴らない腕をくにゃくにゃさせた後、マリー先輩は作業に取りかかっていったんだ。




