#1860 30.5層―〈溢れる猫津波・タイダルネーコ〉!
「こ、これは……!」
「猫がいっぱい、いっぱいすぎる……!」
見渡す限り猫だらけ。
こっちが50人なのに対して、猫は何匹居るの?
普通の猫サイズから1メートル級まで、それはそれは多くの猫が俺たちを出迎えてくれたんだ。きっと歓迎してくれているのだと思う。歓迎の仕方が武闘派だけど。
「「「「「ニャー!」」」」」
「可愛い……」
「可愛いのです!」
「ええい、今回は俺が『看破』を掛ける! 『看破』! 出たぞ――こいつはレイドボス・連型〈溢れる猫津波・タイダルネーコ〉だ!」
「〈タイダルネーコ〉!?」
「〈猫津波〉なのです!?」
今回、あまりの光景に誰も〈幼若竜〉を使えなかったためにメルトが『看破』。
こういう時のためにメルトに〈幼若竜〉を渡しておいて良かったよ。
しかし、『看破』の結果に驚愕。
〈猫津波〉は本当に居たんだ! むしろボス名だったんだよ!
おかしいと思ったんだ! 〈猫津波〉はボスクラス。それだけで多くの人が納得していたんだよ!
え? こんなの勝てる人おるん?
実はこの〈猫津波〉、おそらく最も〈ダン活〉プレイヤーを敗北に追い詰めたと言われているボスだったりする。
名前から察するとおり、こいつらはあの〈猫ダン〉や〈猫猫ダン〉の猫津波と同じようなものだ。集団で襲ってくる。むしろ飲み込んでくる。
津波に勝てなければ勝利はない。猫に勝てなければ勝利はない。普通の人類では勝てない二重の強敵を相手にしなければいけないのだ。
ここで〈猫津波〉を制した者だけが、この先へ進めるのである。
「く、来るわよ!」
心なしかシエラの声が震えていらっしゃる気がする! 気のせいだと思いたい。
「ヴァン! 拠点を建設だ! シャロンはフォローを!」
「! 了解したであります! 『第二拠点建造』! 『防御に勝りし壱ノ城』! 『気合いで打ち勝つ弐ノ城』! 『最後の砦の参ノ城』!」
「う、うん! 『防壁召喚』!」
こういう時に頼りになる男子のタンクがヴァンしかいないのが難点!
即で津波に抗う要塞を建てなければ!
「「「「「ニャー!」」」」」
「う、動きましたわ!」
「怯んでいる場合じゃないぞ! みんなヴァンの第二拠点へ急げ!」
動いたら早い。
猫たちは一気に拠点へと突っ込んで来たのだ。
「ぬ、ぬぅ!」
「シャロン、〈六ツリ〉のランパートだ!」
「『ゴッドオリハルコンランパート』!」
「助かったであります! 『超極防壁の四ノ城』! 『1000年轟け五ノ城』!」
「はわわ! 私もやります! ポン! 群がるは幻の甘い夢の蜜! ――『甘夢幻二塔盾』!」
「援護歌っちゃうよ~♪ 『プリンセスアイドルライブ』!」
あまりの光景に初動が遅かったメンバーたちもなんとか再起動。
ラクリッテやノエルを皮切りに〈猫津波〉とのバトルが巻き起こる。
「猫の大群なのです! 大行進なのです!」
「あの中に飛び込んではいけませんよルル! 一瞬で飲み込まれてしまいます! 『大精霊様二大降臨』! 『トニトルス』! 『ルクス』! トニトルス様、ルクス様、お願いいたします――『陽光の驚き・エレメントソル』!」
「「「「「ニャー!」」」」」
「もう囲まれてるんだけど! というか、地面が猫なんだけど!」
「見てサチっち! 一応倒せるみたいだよ!」
「倒したらHPが減る。その辺は〈フェアリークイーン〉の時と同じみたい」
サチの言う通り、俺たちの拠点を中心にすでに地面が猫だらけ。
だが拠点から攻撃を放つことは可能で、猫は撃破できる。
その場合、上空にあるHPバーが減っていくのが確認できたのだ。
なお、地面に降り立った場合は――。
「フラーミナ、ラヴァを頼む!」
「ええ!? わ、分かったよ。ごめんよラヴァ、君のことは忘れないから! 『召喚盤よ。我が軍勢に入れ』!」
起動するはフラーミナが持つ〈溶岩大帝の召喚盤〉。
そこから出てきたのは上級上位ランク9のレアボス〈溶岩大帝・ラーヴァエンプドドラゴン〉だ。
全身から溶岩が流れていて、物理ではとても太刀打ちできそうにない。猫相手にはこれ以上のボスは居ないだろう。みながそう思うに違いない。しかし。
「ってええ!? 猫たちがものともせずに〈ラヴァ〉に襲い掛かった!」
「〈ラヴァ〉が飲まれていきます!?」
「おい猫たち! そいつは山じゃねぇぞ!?」
「ねこさんたち熱くないの~!?」
召喚されたラヴァは勇ましかった。なにせドラゴンだからな。だが、それも一瞬だった。
強烈な大量のネコパンチに膝をやられ、ダウンを取られたかと思うと、まるで登山のように猫たちがラヴァの上に登り、そして〈猫津波〉に呑まれてしまったのだ。
あんな巨大なドラゴンを飲み込む津波とか尋常じゃ無かった。
「ラ、ラヴァが良いところなしで光になったんだけど!? ユニークスキルをぶっ放す暇も無かったよ!?」
フラーミナが嘆くがドラゴンスレイヤーな猫たちは止まらない。
ヴァンとシャロンの強固な防壁がミシミシ言う。
「よし、ここだ! ヴァン! シャロン!」
「は! 『難攻不落の六ノ城』!」
「『誘導路』! 『迷宮通路』! 『防壁強化』!」
「「「「「ニャー!?」」」」」
だがラヴァは全く役に立たなかった訳では無かった。ラヴァが猫たちを引きつけていた間にヴァンとシャロンへの作戦通達が完了していたんだ。
ズドーンと最後の城が建つ。
建った場所がポイント。さらにはシャロンが誘導路や迷宮通路などを設置。
〈猫津波〉を十分に引き寄せたところで建てたため、城を建てた前後で分断することに成功したのだ。
「リカ、いく!」
「う、うむ! 心で負けてはいかん!」
「私も参りますわー!」
「お嬢様!? 今回は本当に危険ですから、ここで遠距離攻撃に徹していてください!」
〈猫津波〉を全て相手にするのは難しいが、一部ならば何とかなる。
故に誘い込んでヴァンの城とシャロンの防壁で分断し、各個撃破する作戦だ。
「カタリナ、頼めるか!」
「おまかせくださいまし! 『拠点を覆う大結界』! 『拠点を守る二重巨大結界』 ! 『拠点を守る三重奏巨大結界』!」
さらにはダメ押しのカタリナの結界で中に入った猫たちを逃がさない。
完全に分断したな。
「それでも猫たち、多分50はいるよ!」
「近接アタッカーは〈猫津波〉に呑まれないように注意しろー! まだ数は十分多いぞー!」
「ああああ!?」
「リカー!?」
「きゃー!?」
「お嬢様ー!?」
「リカさんとノーアさんが呑まれましたわー!?」
「アルテ救出ー!!」
「『パーティスイッチ』ー!!」
ここでちょっとしたハプニング。
50でも〈猫津波〉だ。まさかのリカとノーアが猫たちの津波に呑まれてしまう。
だがすぐにアルテに攫ってもらったので2人とも無事だった。HPはノーアが3分の1くらい吹っ飛んでるけど。
「私の刀が止められた隙に呑まれた。恐ろしいぞ〈猫津波〉は。でもちょっと幸せだった……」
「ん!」
「わたくしも、油断しましたわ。カウンターをした直後の隙を突かれて呑み込まれましたわ! でもとても良い経験でした」
「お嬢様! 本当に、ほんっっとうに前には出ないでください! 今回は本当にですよ!?」
まさかの物量にリカとノーアが呑まれる事態だからな。でも呑まれた本人がちょっと幸せそうだったんだ。カルアが膨れてリカに抗議(?)してるし、クラリスなんかプルプル震えながらノーアの肩をガクンガクン揺すってるぞ。あ、ヴァンがぶっ倒れそうになってるからそれタンマ!
「ナイスだアルテ! ―――みんな! もし〈猫津波〉に呑まれてもアルテが助けてくれる! 安心して戦闘に集中してくれ!」
「え!? 〈猫津波〉に呑まれてもいいのです!?」
「故意に呑まれちゃダメですよ!?」
あの〈猫津波〉に対して一瞬で助け出せるアルテが超優秀。対〈猫津波〉特効は、アルテだ!
でもだからって自分から〈猫津波〉に呑まれないようにねルル?
一瞬ルルの発言に多くのメンバーが「え、いいの?」みたいな気を起こしていた気がしたのは、きっと気のせいだと思いたいんだぜ。
「もう何やってるのよ羨ましいわね! 『大聖光の無限宝剣』!」
「そ、そうデス! いっくデース! 『大忍法・激炎龍爆楼』!」
「……連射で仕留めましょう――『メイド・フォーシス・バルカン・グレート』!」
「ラナに続け! 〈六ツリ〉一斉射撃だ!」
「アリスもいっくのー! 『雷神父アターック』!」
ここで遠距離メンバーズが〈猫津波〉たちを撃破だ。
相手が集団ならこっちも集団。タイミングを合わせて〈六ツリ〉で仕留めた。
各個撃破成功だ! さ、作戦通りなんだぜ!
「単体で挑もうとするな! 相手は津波といえど集団の猫、こっちも集団でタイミングを合わせた攻撃で行くぞ!」
「「「「おおー!」」」」
ようやく〈猫津波〉をどうにかする目処が立ったので作戦を決行する。
「天使部隊とレグラム、アイギス、フラーミナ、アルテ、シヅキがまず空から攻撃! 猫たちの気を逸らしながら分断する!」
「相手の猫はカイリさんが数えたところ、213匹でしたわ! 〈フェアリー〉の時と同じと考えると300だったのでしょう」
「猫は空に無力。空から殲滅すべし」
「カ、カルア? なんだかちょっと怖いぞ?」
どうやらリカを呑まれたせいでカルアがマジ狩るモードになっているっぽいな。
まあカルアの言う通り、空からの攻撃は有効なのでゴーサイン。殲滅開始だ。
「「「「「ニャー!」」」」」
「うわ! ジャンプ力高っ!」
「空中を足場にしてくる猫には要注意ですわ!」
「私とトモヨさんで弾き飛ばします。みなさんは攻撃を続行してください」
なお、全然無力じゃ無かった猫たちが空中ジャンプで空飛ぶトモヨたちに攻撃を敢行してきたが、それはトモヨとフィナで防御。
他のメンバーが次々攻撃で〈猫津波〉を攻撃すると、ヴァンたちの防壁を今にも破壊しそうだった猫たちが城から離れ、空飛ぶ部隊を追いかけていったのだ。
――よし、今だ。
「ここだ! 打って出るぞ! 後ろをとって一斉攻撃だ!」
「「「「「おおー!」」」」」
「「「「「ニャー!?」」」」」
「『インフィニティ・バニッシュセイバー』!」
「とう! 『ヒーロー・セイバー・モーメント』! 『ヒーロー・スターレイ』!」
「いっくデース! 『究極忍法・多重分身の術』!」
「私たちも! 『女神化』!」
「3人揃えば怖いものなし! 『女神化』!」
「いくよ 『女神化』!」
「「「『三柱神授神器・ジャストメイトジャッジメント』!」」」
レイドボス・連型は〈フェアリークイーン〉の時もそうだったが、ある程度集団で行動している。
なんと全軍でトモヨたちを追いかけて行ってしまったので、拠点から出撃した俺たちが〈猫津波〉の背後を取ったのだ。
ここが正念場、一気に一斉攻撃で猫たちを殲滅していく。
慌てて引き返してきた猫。さすがの俊敏力。
「相手を1匹1匹だと思うな! 相手は個にして群――レイドボス・連型だ!」
「おーいえーですわ! 『ビッグウェーブデトネーション』ですわー!」
「お嬢様、おとなしくしてと言いましたのにー!? ええい『ホーリーレイソード』です!」
あ、いつの間にかノーアがすぐ横に。
クラリスが必死に追いかけてきながら猫たちをなぎ倒してらぁ。
「ニャー!」
「にょわ!? とう! 『小回り回避』! 危なかったのです!」
「ニャー!」
「うおおお!?」
「ゼルレカが! ねこさんたち離れてー! 『電光雷轟』!」
「「「ニャー!?」」」
「わわ『パーティスイッチ』! みんな大丈夫!?」
さすがに無傷とはいかず、接近戦を挑んだメンバーが何度か〈猫津波〉に呑まれる事態もあったものの、すぐに別のメンバーがフォローして救出する連携力で脱し、〈猫津波〉第一形態を突破したのだった。
「『一本目のHPバーがゼロになりましたわ!』」
「よし! みんな一旦ヴァンの拠点に戻るぞ! 補給だ!」
いやぁ強い。さすがはレイドボス〈猫津波〉。
一歩間違えば戦闘不能者が続出していても不思議では無い。
〈ダン活〉プレイヤーを一番倒したボスの名は伊達ではないな。
だがここまで戦闘不能者はゼロ。
このまま第二形態、第三形態も突破してやんよ!
「「「「「ニャー」」」」」
そして第二形態登場。
その猫たちは、頭の上に天使の輪、背中にはやや機械的な小さな天使の翼を備えた猫。
そう、第二形態は――飛行型の〈猫津波〉なんだ。




