#199 新メンバー〈バトルウルフ〉戦で苦戦する
「【戦場メイド】がLV20になりました」
「右に同じデース! 【女忍者LV20】になったデース!」
「オーケー! じゃ、早速最強流を伝授していこうか!」
あれから6周してシズとパメラが職業LV20になった。
2段階目ツリーの解放だ! 彼女たちには悪いが正々堂々の〈バトルウルフ〉戦はかなり難易度が高いので、速攻で全部振ってもらった。
ワクワクが少し減ってしまってすまない。
そこからさらに5周。
シズとパメラに新しいスキルの感触を試してもらったのち、正々堂々の〈バトルウルフ〉戦だ。
俺は相変わらず〈『ゲスト』の腕輪〉で監督役。
エステルは一度転移陣で帰還した。なにやらすることがあるらしい。
「じゃ、がんばってな〜」
「がんばるです! ルルは無敵のヒーローなのです!」
「なんだか含みを持った言い方が少し怖いですね。それほど違うのでしょうか?」
「私はコツを掴んできたデース! 次こそ『巨大手裏剣の術』を当ててやるのデース!」
「パメラ、先ほどゼフィルス様から薫陶を頂いたでしょう。まず練習をしてからになさい。実戦ではまだ早いと思われます」
「ではゼフィルス様、行ってまいります」
俺が手を振って見送り、上からルル、シェリア、パメラ、シズ、セレスタンの順に意気込みを入れる。
5人とも12周目のボス戦だというのにやる気は十分だ。
俺は壁に背を預けると、5人の戦闘を見守った。
「ガウッ!」
「ウォーン!」
まずお供の〈ウルフ〉と〈リーダーウルフ〉が駆けてくる。
先ほどまではパメラ、もしくはセレスタンがヘイトを稼いでこれらを引きつけ、その間にルルが突破して〈バトルウルフ〉に斬りかかり分断していた。
しかし今回のオーダーは5匹纏めて相手をするなので分断工作はNGだ。
故に、まずはルルが〈ウルフ〉たちの間に敢えて飛び込みタゲを取らんとした。
「とーう『ヒーローはここにいるの』!」
ルルがバシンッ! と片手剣を上げるポーズで挑発スキルを決めると〈ウルフ〉と〈リーダーウルフ〉のタゲが向いた。そして、一瞬でルルを取り囲んで攻撃してくる。
「からの〜『小回転斬り』!」
「キャン!?」
「ガウッ!?」
囲まれるの上等とばかりに自分を中心とした周囲範囲攻撃で〈ウルフ〉たちを切り払うルル。度胸とかだいぶ場慣れしてきているな。今のはむちゃくちゃヒーローっぽかったぞ。
「『精霊召喚』! 『エレメントブースト』! 『エレメントアロー』!」
「『連射』! 『グレネード』!」
シェリアが精霊を召喚し、自己バフの『エレメントブースト』で威力を上げ、速度の速い『アロー』で〈リーダーウルフ〉を狙う。
シズは2段階目ツリーで開放された銃撃スキル『連射』と『グレネード』でもう一体の〈リーダーウルフ〉を狙わんとした。
しかし、
「バウッ!」
「「ウォーン!」」
「な!」
「速い!」
2人の攻撃を〈リーダーウルフ〉は先ほどと違う素早い動きでこれを回避した。
〈バトルウルフ〉が一言「バウッ!」と発しただけで『統率LV4』スキルが発動。この影響で〈リーダーウルフ〉が強化されてしまったのだ。
「「ウォーン!」」
「「ガウガウッ!!」」
「な、これは拙いですね」
続いて〈ウルフ〉に〈リーダーウルフ〉からの『統率LV1』の強化が掛かった。
これで〈ウルフ〉は『統率LV4』と『統率LV1』が重ね掛けされた状態だ。
最適化された戦法の初手で分断するのはこの『統率』をさせないためである。これをされると倒すのに時間が掛かるどころか、まず倒せるかすら分からなくなってしまう。
さあ、こうなるとやっかいだぞぉ。どう対処する?
「『ハートチャーム』! えっと、『チャームソード』!」
範囲攻撃力デバフ『ハートチャーム』をルルが使用し、強化を一部中和、そこから少し戸惑った後近くにいた〈リーダーウルフ〉に『チャームソード』で斬りかかりさらに攻撃力を奪わんとする。
だがルルのその行動、『ハートチャーム』は良かったが、そこから『チャームソード』につなげるのは良くなかった。
「は、速いのです!」
『チャームソード』が避けられる。『統率』を受けると部下の攻撃力と素早さが上昇し、さらに攻撃が避けられやすくなってしまうのだ。これが一番めんどくさい。時間が掛かるのもそうだが、単純に相手が強くなって消耗が激しくなる。
「あ、あう。ダメージが、HPがピンチです!」
ルルがピンチを叫ぶ。デバフが十分に掛かっていない状態で〈ウルフ〉たちの反撃に見舞われたのだ。ルルのHPが攻撃されるたびにガクガク減っていく。
元々【ロリータヒーロー】はタンクではない、タンクも出来るデバフアタッカーだ。条件が揃わない状況だとこのようにピンチに陥る事になってしまう、ルルがタンクをするには状況の見極めが必要だ。
さてルルがピンチである、しかしそこへ頼りになる執事が駆けつけた。
「僕とパメラさんで対処しましょう。『ストレートパンチ』! 『挑発』!」
「キャイン!?」
「まっかせるデース! 『忍法・影縫い』! 『忍法・囮影』!」
セレスタンが〈ウルフ〉たちに囲まれているルルとの間に割って入り右ストレートを見舞った。
さらに挑発スキルを使ってタンクをスイッチする。
パメラは『忍法・影縫い』で〈リーダーウルフ〉行動速度デバフを掛け、自身のヘイトを味方に渡す『忍法・囮影』でセレスタンへのヘイトをさらに集めさせた。
「ルル、来てください! 下がって回復するのですよ!」
「う〜、シェリアお姉ちゃーん!」
シェリアから指示を受けたルルが戦線から下がりポーションでHPを回復する。
「はう、ルルが可愛いです。ではなく。なるほど、ゼフィルス殿が言っていた通り一筋縄ではいきませんね。まさかこれほど違いが現れるとは。速すぎて狙いが…」
「シェリアさん、まずは〈バトルウルフ〉に牽制を! セレスタンたちの中に〈バトルウルフ〉が加われば前衛が崩壊しかねません! 『連射』!」
「了解しました! 『エレメントアロー』! ルル、行けますか?」
「回復ばっちりです!」
「ではルルはアタッカーで〈ウルフ〉の処理を……、いえ素早さを下げるデバフを多用してスピードを奪ってください」
「分かったのです!」
後衛のシズとシェリアは頭脳派だ。徐々にこの状況と対策の方法に理解が追いついてきたようだ。
シズはすぐに〈バトルウルフ〉を牽制しだし、シェリアも同じく牽制に加わった。〈バトルウルフ〉は2人の攻撃を回避するが、狙われているために思うように戦線に入り込めなくなる。
その間にルルが全回復した。
シェリアはルルのアタッカータンクの運用を一転し、デバフを多用してスピードを奪うことを指示する。
いいぞシェリア、正解だ。
『統率』の最も厄介な点はそのスピードと回避力。せっかくデバッファーが出来るルルがいるのだから厄介な点を奪ってしまうのが正解だ。後は煮るなり焼くなり好きにすればいいのだから。
「ルル、戻ってきましたです! 『キュートアイ』!」
「オン!?」
『キュートアイ』は周囲素早さデバフ。『ハートチャーム』の素早さ版だ。目に入れても痛くないほど可愛い魅力により素早さが低下する。(なんでかは知らん)
「今です! パメラ、〈バトルウルフ〉を抑えなさい! その間にお供を処理します! 『グレネード』!」
「が、がんばるデース! 『目立つ』! 『軽業』!」
シズの的確な指示によりパメラが〈バトルウルフ〉のタゲを取った。
その間に後衛がお供を処理する。スピードが低下した〈ウルフ〉たちなら遠距離攻撃を当てるのはそう難しくなく、セレスタンが避けに徹してタンクを受け持ち、ルルはデバフでスピードを奪い、後衛がアタッカーを担当して無事お供の〈ウルフ〉たちを倒すことに成功。
そうすればお供のいない〈バトルウルフ〉第一形態は大した事は無い。
先ほどと同じようにルルのデバフで攻撃力を奪い、後は煮るなり焼くなりで倒すことが出来たのだった。
途中危ないところもあったがなんとか勝利だな。
結局〈バトルウルフ〉とお供は分断させてしまったけど、今回は初めてだし大目に見よう。
とりあえず、反省会だな。