#1831 〈エースシャングリラ〉VS〈無敵の剣士〉!
「両者、互いに礼!」
「「「「よろしくお願いします!」」」」
第四アリーナ会場、そこで〈エースシャングリラ〉と〈無敵の剣士〉が15人ずつ並び、向かい合って挨拶をしていた。
「良い感じに緊張してるな」
「ゼフィルス、あの子たちは勝てそうなの?」
「付け焼き刃でも基本は教えた。作戦も練った。後はなるようになるさ。負けても次がある」
「その顔、全然負けると思ってないわよね?」
隣に座るラナの言葉に俺はニヤリと笑ってそう答えると、反対に座るシエラからツッコミをもらった。
俺の表情が読まれている!? まあ、実際負けるとは思っていませんとも!
2年生は、レベル上げが上限に届いたあとはずっとギルドバトルの練習をしてもらってたしな。それに、攻略法はすでに伝授してある。
「第四アリーナ、〈12つ星〉フィールド。ここも懐かしいわね」
「ああ、俺たちにしては珍しく2回も戦ったフィールドだしな」
場所は〈12つ星〉フィールド。
第四アリーナの代表的なフィールドで、〈エデン〉は過去、〈テンプルセイバー〉戦や〈ディストピアサークル〉戦で使用したことがある。
「つまり、相手は何かしら奥の手があると見て良いな」
「ええ。〈エデン〉が得意とする、使用したことのあるフィールドをわざわざ指定してくるということはそういうことでしょうね」
フィールドを選ぶのは防衛側の〈無敵の剣士〉だ。
シエラの言う通り、〈エデン〉が2回も勝ったフィールドをわざわざ選んだことから、何かしらの作戦や奥の手を用意しているものだと考えていた。だが、
「試合開始ね!」
「思ったよりも順調な滑り出しだよ!」
「はい。良い小城取りの連携です。スピードも落ちていない。みなさんしっかり動けてます」
「いいぞいいぞ! そのまま4城くらい取ってやれ!」
ハンナの言うとおり、試合は順調な滑り出しから始まった。
エステルも感心しているな。さすがにこの短期間に3回目ともなるランク戦なのだから、〈エースシャングリラ〉の2年生たちはもうだいぶ慣れてきている感じだ。
今回、〈エースシャングリラ〉の先陣は2年生のツーマンセルが務める。
1年生は今回が初試合、まずは後続で続き巨城をアタックさせるだけの簡単な役割を任せたので、出だしはスムーズに見えるのだ。
将来的には「獣人」系の多い1年生を先陣に配置することが多くなるはずなので、しっかり見ておくように言ってある。
特に【邪竜騎士】と【竜騎士】男子が操る〈走竜〉という騎乗モンスターが優秀。空を飛べない代わりに凄まじく走るスピードが速い〈竜〉種だ。
〈走竜〉に騎乗するこの2人のツーマンセルが速い速い。
ちなみにこの〈走竜〉はアイギスとアルテ、フラーミナがテイムしてきた上級上位ダンジョンのモンスターである。
さらに同じ「騎士爵」の【ジャッジメントタンクナイツ】男子は〈馬〉を、【完全装甲魔装騎将】男子はエステルと同じく〈足特装型戦車〉を装備していてこっちもかなり速い。
こちらも上級上位級の装備で身を包んでいるな。
これが〈エースシャングリラ〉の高速で走る騎士のツーマンセルたちだ。
この2組が先頭を走り、〈南東巨城〉と〈北西巨城〉へマスを敷いていく形。
Cランク戦は〈15人戦〉なのに最初に狙うべき巨城が4つあるという難しさ、なかなかの難易度である。〈無敵の剣士〉が何かを狙うとすればこの辺りが怪しいが。
「〈無敵の剣士〉、何も仕掛けてこないわね」
「いたって普通の巨城確保です」
「あ! 〈南東巨城〉を取りましたよ! やったぁ!」
最初に先取したのは白チームの〈エースシャングリラ〉。
白本拠地の方が距離が近いため、〈南東巨城〉の確保にまず成功したのだ。さらに、
「あの、〈北西巨城〉も取ってしまいましたが?」
「ちょっと〈エースシャングリラ〉、強すぎじゃないの! いいわよ、もっと巨城を取りなさい! 相手には渡しちゃダメよ!」
赤本拠地が近いはずの〈北西巨城〉まで確保してしまったのだ。
〈無敵の剣士〉涙目である。いやぁ〈エースシャングリラ〉が速い。
ここからさらに〈中央西巨城〉と〈中央東巨城〉確保の戦いになるのだが、〈無敵の剣士〉は対人戦を選択してきた。
「お! 〈無敵の剣士〉が仕掛けてきたぞ!」
「このタイミングで仕掛けるというのは悪く無い判断です」
「私たちの時もやりましたわね。ここで〈テンプルセイバー〉を1名仕留めるに至った有効な戦法ですわ」
リーナの言う通り。つまりは以前〈エデン〉が〈テンプルセイバー〉に使った作戦の焼き回し。
だけどそれ、〈エデン〉が使ってた戦法なんだけど?
その下部組織である〈エースシャングリラ〉が当然知らないはずもなく、対策していない訳も無かった。
「反攻作戦ですわ!」
「ふっふっふ、ここで仕掛けられた場合の対処法はすでに伝授済みよぉ」
「ゼフィルスが悪い顔をしてるわ!」
そ、そんな顔してないぞラナ? きっと見間違いだ。
「あ、あれってシレイアさんの錬金爆弾かな?」
「罠を仕掛けたのね。2人ほど吹っ飛んだわよ?」
「それだけじゃありません。西側では蜘蛛の巣トラップとモチッコモチモチ罠も仕掛けられていますね。動けなくなってますよ」
「ねぇ最後のトラップの名前可愛すぎないかしら!? なにそれ!?」
東側で大きな爆発。あれはハンナの言うとおり、シレイアさんの錬金爆弾だな。
〈城取り〉というのは〈空間収納鞄〉の持ち込みができないせいで罠の類いは持っていきづらいのだが、故に罠の可能性に気が付かず引っかかりやすいのだ。
特に調べたところ〈無敵の剣士〉というところは直接対人系が得意のギルド。搦め手には弱いという確信があった。故に少量だったが罠を渡しておいたが、見事に決まったようだな。全部上級上位級の罠だ。そう簡単には逃れられないぜ。そうして罠に嵌まった相手を〈エースシャングリラ〉の面々が逃すはずもなく。
「一斉攻撃決まりましたわ!」
「〈無敵の剣士〉側、3人退場です!」
「おっしゃあ!」
迎撃成功! いや、大成功!!
罠で足を止めて遠距離からの一斉攻撃は、〈無敵の剣士〉のメンバーを3人も仕留める破壊力があった。
流れが完全に〈エースシャングリラ〉に向いたな。
「〈エースシャングリラ〉をできたばかりのギルドだと甘く見たな! 実はその装備も、アイテムも、作戦も、〈エデン〉の援助を受けているのだ!」
「なんか上級職になったばかりにしては足が速いと思ったら、あれって上級上位級装備!?」
「バックが大物過ぎたわね」
「おそらく、分かっていてもどうしようもなかったのではないでしょうか?」
あまり強い装備を使わせるのは、正しく成長するにはよくない。
でもこういう時くらいはいいよね? 俺たちだって昔はギルドバトルの時だけ足装備を『移動速度上昇』の付いたやつに変えてたし。その延長線上だよ!
「聞くところによれば、〈無敵の剣士〉の上級職は3人です。後は下級職で、こちらは全員がレベルカンストという話でしたが」
「さすがはエステル、正解だ。上級職を3人持っている〈無敵の剣士〉は破格のCランクギルドで、上級ダンジョンにも潜れる。ここのエースも、今は〈岩ダン〉攻略中でLVは23から26らしい」
「あの、〈エースシャングリラ〉にはLV15の上級職が10人居るのですがそれは?」
「うむ。上級職だけ見るなら、向こうの3倍以上だな!」
とはいえギルドバトルにはレベルだけでは計れない経験という要素がある。
〈無敵の剣士〉はそれなりに歴史のあるギルド、蓄積されたデータから打ち出される〈12つ星〉フィールドの対策や、経験に裏打ちされた高レベルのエースたちの戦闘力は驚異的、だと思っていた。
「その相手の上級職、2人ほど退場しちゃいましたが……」
「これは俺も予想外だった」
さっき退場した3人だが、確認してみたらうち2人がエースだったんだ。
いや確かにチャンスがあればエースを狙えと言っておいたが、ここまで上手くいくとは……。というかエースをすぐに見分けるとか、うちの子たちが予想以上に優秀!
「〈中央西巨城〉と〈中央東巨城〉も〈エースシャングリラ〉が取ったわ!」
「残りは〈救済巨城〉である〈北東巨城〉と〈南西巨城〉だけね」
「〈12つ星〉フィールドの〈救済巨城〉は特殊で行き止まりに存在する。故に無理は禁物だが……」
「あ! あの子たち、〈南西巨城〉を狙うみたいよ!」
「全巨城確保を狙う気ですか!」
なんと東側の巨城を制圧したチームがそのまま南下、なんと〈無敵の剣士〉の〈救済巨城〉である〈南西巨城〉を狙ったのだ。
〈北東巨城〉は〈エースシャングリラ〉の〈救済巨城〉なので楽に手に入る、そのため相手の陣地に仕掛けたのだろう。
当然見逃すはずもない〈無敵の剣士〉の最後のエースが部隊を引き連れて必死に追いかけてきた。
これを落とされれば、ほぼ敗北が確定してしまうからな。
〈エースシャングリラ〉には〈南西巨城〉はリスクが高いとは教えていたが、攻めるなとは教えなかった。
こりゃ、かなりのドンパチが予想されるな! 会場が盛り上がってきたぞ!
「ぶつかります!!」
「だが、〈エースシャングリラ〉はちょっと気が焦りすぎたな。最後の巨城を取られまいとする必死さを予想しきれなかったか」
「あ! 〈エースシャングリラ〉から退場者が出たわ!」
「〈無敵の剣士〉の気迫ね」
〈南西巨城〉から5マスの地点でお互いのギルドが激しくぶつかったのだ。
結果〈エースシャングリラ〉から退場者が出た。
上手くいきすぎた弊害だな。欲が出ちゃったか。
その結果〈無敵の剣士〉の必死の抵抗にあってしまい、最終的になんと2人が退場。〈無敵の剣士〉からは最後のエースを含む4人の退場者が出て痛み分けする結果になった。
そして〈南西巨城〉からは〈エースシャングリラ〉は撤退。
〈無敵の剣士〉がなんとか確保した。
「これは〈エースシャングリラ〉も良い経験になったでしょうね」
「やっぱり対人戦となると〈無敵の剣士〉の方が経験値が上デスか? 下級職ばかりだったのに上級職とあそこまで接戦を繰り広げるなんて、やるデス」
「今回は必死さの勝利だと思うぞ。〈無敵の剣士〉が死に物狂いだったからこその結果だ。ま、ちょっと失敗があったほうが教え甲斐があるさ」
シズとパメラから見て、今のは決して悪い展開ではなかったようだ。
この経験は〈エースシャングリラ〉の伸びそうになっていた鼻をぽっきり折る結果になったようで、そこからは堅実なマス取り展開になった。
そして終盤、もう白本拠地を落とすしか勝ち筋がなくなった〈無敵の剣士〉と、白本拠地を守る〈エースシャングリラ〉という展開になり、激しい戦いが勃発。お互い2人ずつ退場した。
なんと〈エースシャングリラ〉は計4人も退場する結果になってしまった。
しかし、〈無敵の剣士〉は9人が退場してしまい攻めきることができず、最終的に〈エースシャングリラ〉がCランク戦に勝利した。
〈エースシャングリラ〉は、Cランクギルドになった。




