#1820 上級職ランクアップ! ソア・ミツル・シオン
と、いうわけで。
新しく採用した〈エースシャングリラ〉のメンバーには上級職になってもらいます! 俺は早速行動に移した。
「ひょわ~~~。ねえミツル君ミツル君、私、夢見てるのかな? み、見てよこれ、【幼女賢者様】が発現しているんだよ!!」
「ちょ、姉ちゃん落ち着いて! ガクガク揺さぶらないで! つねるなら自分のほっぺにしへ!?」
「そ、そう。落ち着いてソア。こういう時こそ冷静に、クールダウンを心がけるの」
「シ、シオンさん、頼りになります! ――ほら姉ちゃん、シオンさんを見習って!?」
「シオンだって震えてるよ! ほら、足足」
「これは仕方なかった。これは震えがくるというもの。私は悪く無い」
「なんでもいいから姉ちゃんを止めるの手伝って!?」
打ち上げが終わったら――みんなで〈上級転職〉タイムだ!
10人全員を引き連れて色々条件をクリアしてもらったのち、近場の測定室へとやって来たんだ。
まずギルドマスターであるソアから〈竜の像〉に触れてもらって今に到る。
良い反応だ!
心配で付き添っている弟を片手でガクガク揺らし、ほっぺをつねり、またガクガク揺らしている。
シオンは足をやられて動けなさそうだ。他のみんなからもどよめきが伝わってくる。
それも当然なのかもしれない。
現在ソアがタッチし続けている〈竜の像〉からはジョブ一覧が現れ、そこに上級職、高の上、【幼女賢者様】が現れていたからな!
ちなみに下級職の【魔法幼女】は〈姫職〉ではなく高の中だったので、【幼女賢者様】のSUPは35だ。こちらも〈上級姫職〉ではない。
「子爵」の魔法職の〈上級姫職〉は【雷子姫】の系列だけなのだ。
おっと、そろそろ止めるかな。
「まあ落ち着けソア」
「お兄さん!」
「じーん――じゃなかった。こほん、ミツルがそろそろノックダウンしそうだからその辺にしてあげてくれ」
「あら? ミツル君、何寝てるの?」
「姉ちゃんに振り回されたからだが!?」
まさか〈竜の像〉を片手でタッチしながらもう片方の手でミツルをノックダウン寸前まで追い詰めるとは、幼女が相変わらず強い。
なお、傍から見ていると幼女とショタがなんかじゃれていて可愛いしかなかった。そのせいで助けが遅れたのは秘密なんだぜ。
さて、問題はここからだな。
「では改めて、ソアには上級職【幼女賢者様】に就いてほしい! 様までが職業名だ。ロリータ系特有のデバフ系が非常に強力な魔法使いで、攻撃にデバフを載せられる。さらに【怠惰】のようにデバフを重複し3回まで相手の能力を低下させることができるのが最大の強みだ。〈エースシャングリラ〉に是非その力が欲しい」
「もちろん! 私も協力するよ! デバフ魔法使いなんてとても強いもの! これでガンガンボスを倒すわ!」
「よく言ってくれた! それじゃあソア、【幼女賢者様】をタッチしてくれ!」
「うん! タッチよ!」
タッチした瞬間【幼女賢者様】がソアの頭の上に光る。〈上級転職〉の輝きだ!
「ううう~~! やったわ!」
「おめでとうソア! 【幼女賢者様】の誕生だ!」
拍手喝采!
この調子でどんどんいくぞ!
「次! サブマスター候補、ミツルいくぞ!」
「は、はい! よろしくお願いします!」
現在Fランクギルドの〈エースシャングリラ〉には厳密にはサブマスターは決まっていない。サブマスターはEランクギルドからだからな。
しかし、ほぼ内定が出ているに等しいのでミツルが2番手だ。
「ミツルには【ヒーロー】の上級職、【プリンスヒーロー】になってもらうぞ!」
「僕が【プリンスヒーロー】に……!」
これはミツルが望んだ方向だ。
ぶっちゃけアリスがいなければ、ソアを〈雷属性〉特化型の【豊雷の稲妻姫】へ、そしてミツルを【黄金のショタ】へ〈転職〉&〈上級転職〉させるという手もあった。
この2職はコンボ攻撃が鬼強いのだ。レグラムとオリヒメさんのようなコンボ攻撃である。
「男爵」と「子爵」は、男女でこういうコンボ攻撃を持つのが非常に優れた特徴だったんだ。かなりの高火力が期待できるぞ。
だが、「子爵」の場合、コンボ攻撃が〈雷属性〉なのだ。〈雷属性〉ならすでにアリスが居る。そのため単独でも普通に強い【幼女賢者様】と【プリンスヒーロー】へ〈上級転職〉させることにしたのだ。本人の希望でもあったしな。
【プリンセスヒーロー】があるんだから、当然【プリンスヒーロー】もある。
上級職、高の上。能力は逆にバフ使いだ。
これがかなり強力で、ヒーローというのはダメージを受ければ受けるほど強くなるイメージというのがあるだろう? あれをタンクの【プリンスヒーロー】が可能なのだ。ダメージを受ければ受けるほど防御力と魔防力の上昇値がどんどん上がっていくという、非常に耐久値に優れるタンクになる。
またアタッカーとしても優秀で、バフを使い、ステータスを上昇させて戦うこともできるのが最大の強みだ。【プリンセスヒーロー】と【プリンスヒーロー】、ゲーム時代、2職を並べて戦わせる動画は多かった。
もちろん【プリンスヒーロー】はミツルの希望なので、即で発現条件を整えて〈上級転職チケット〉を渡した。
そしてミツルが〈竜の像〉にタッチすると、現れたジョブ一覧にはしっかり【プリンスヒーロー】の名が入っていたのだ。
「あ、あった! 【プリンスヒーロー】!」
「ミツル君、慌てないで、しっかりね!」
「姉ちゃん……! うん! いくぞ、タッチだ!」
現れたジョブ一覧に躊躇なくタッチするミツル。すると他の候補がブラックアウトし、【プリンスヒーロー】の文字だけがミツルの上に輝いていた。
俺はスクショをパシャってから拍手を贈る。
「おめでとうミツル。これでミツルは今日から【プリンスヒーロー】だ」
「は、はい!!」
「やったわねミツル君! 【プリンスヒーロー】、ずっとなりたいって言ってたもんね!」
「ありがとう姉ちゃん! 僕、【プリンスヒーロー】になれたよ!」
「な、なんて眩しい姉弟愛! う、目にゴミが」
「大丈夫かシオン?」
「うん、なんとか。ちょっと感動で涙がホロリしたみたい」
「さっきは目にゴミがとか言ってなかった?」
こっちも面白いキャラしてるなぁ。
良いことだ。これで未来の〈エデン〉も安泰だな!
「それじゃあ次は――」
「はい。私が立候補する」
「それじゃあシオン、いってみようか」
「よろしくお願いします」
3人目はシオンに決定だ。
「シオンの希望上級職はもう聞いている。だが敢えて確認しよう! シオンが就きたいのは【思伝生誕の海姫】で間違い無いか?」
「うん。私が就きたいのは【思伝生誕の海姫】で間違い無い」
「それじゃあ、早速発現条件の最終段階を整えていくぞ!」
――【思伝生誕の海姫】。
希少な〈上級姫職〉ヒーラーの最後の1つ。いや、もしかしたら〈上級姫職〉自体これで全てかもしれない。そう言う意味でも最後の1つだ。
思いを伝え、届かせるヒーラー。その能力で注目すべきは、なんと〈白の玉座〉無しで3マス以内まで減退無しで味方を回復できるところだな。歌声が届くマスにいる者を問答無用で回復させる、そんな強力なヒーラー職だ。
ダンジョンでもそれは同じで、どれだけ離れていたとしても同じ階層にいるのなら超特大の遠距離から回復を飛ばすことができるのが特徴。
レイドボスなど、部屋が別空間の場合、うんっと限界まで距離を取って超遠距離から回復を飛ばすという方法が非常に強かった。
回復でヘイトが上がりすぎてしまい本来ならタゲが向くような状況でも、ボスから遠すぎてターゲットにならないのである。あれは強かった。
また、これはまだ検証前なのでなんとも言えないのだが、もしかしたらリアルでは思伝できるのは回復だけじゃない可能性もあるんじゃないかと睨んでいる。リーナの『ギルドコネクト』がそうだったように、もしかしたら思念的なものも遠くの相手へ伝えることができるのではないかと考えていたりするのだ。
実際、【思伝生誕の海姫】を知るシオンからはそのようなスキルが存在すると報告を受けている。これは是非試すしかない。
リーナの回復版みたいな性能が爆誕してしまうかもしれないぞ!
非常に楽しみである。
「よし、これでいいだろう。それじゃあ最後に〈上級転職チケット〉を渡すから、タッチしてみてくれ!」
「ごくり。いく――タッチ!」
―――おお!
測定室で少しざわめきが起きる。
なにしろ、しっかり【思伝生誕の海姫】が発現していたのだから。
これは先ほども言ったように〈上級姫職〉。
〈ダン活〉の数多くある職業の中でもトップクラスの性能と、同じく発現条件の難しさを持つ。
それを知っている騎士家の男子たちがざわめいたのだ。
「よし、いったれシオン!」
「シオンはクール、シオンはクール。よし、いく」
なんだか腕を胸に当ててクールダウンしていたシオンがついに震える指で【思伝生誕の海姫】をタッチする。
すると、シオンの上に【思伝生誕の海姫】が光り、同時に溢れる黄緑色のエフェクトがシオンを囲った。
「わ、わっふ!?」
「これは!」
「安心しろ、これは覚醒の光だ」
「これがあの有名な!」
「キレイ……」
新メンバーズは初めて見たのだろう。
そのエフェクトを纏ったシオンに驚いていたので覚醒の光と教える。
俺はもちろんスクショを構えてパシャパシャ。
「は、はずい」
「もうちょっと、もうちょっとだけだから。はい、こっちに視線向けて~」
「もうアウト」
「そうはいかない。覚醒の光は希少だからな、しっかり記念を残しておかないといけないんだ!」
「……ぴえん」
顔を赤くするシオンだが俺のパシャパシャは止まらず。
結局覚醒の光が消えるまでパシャられてしまったのだった。
「おめでとうシオン。これでシオンも【思伝生誕の海姫】だ」
「嬉しいのに、複雑な気分」
「ははは!」
こうしてシオンも無事終了。この調子で他の7人も全員を上級職にしていったのだった。




