表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2073/2074

#1810 ハッピービューティフォー現象メモリアル!!




「やったわ! 〈バルフ〉を倒したわよーー!!」


「おっしゃーーー!! 最奥のボスも攻略だな!!」


 膨大なエフェクトに消える〈バトルウルフ(最終形態)〉を見て、ラナと俺で勝ち鬨をあげる。

 すると、ようやく勝ちを実感してきたのか、そこら中から歓声が上がり始めた。


「倒しちゃった。すごい、こんな歴代のボスを召喚するレイドボスも倒しちゃうなんて……」


「やったなクイナダ! トドメの一撃、見事だったぜ!」


「ゼフィルス」


 今回のフィニッシュは俺の聖剣からの、トドメのクイナダのユニークスキルだ。

 最近の必勝パターン、フィニッシュコンボだな。


 だが、当のクイナダはやや放心状態。

 こっちに顔を向けているが、なんだか実感が無いような、そんな表情をしていたんだ。

 俺はそんなクイナダに親指を立てる。まさにグーな働きだった。


 膨大なエフェクトが収まればそこにあったのは――〈金箱〉が4つ!


「お、おおおおおおキターーーーー!! 〈パーフェクトビューティフォー現象〉だーーーー!!」


「ひゃああ!! 久しぶり! 久しぶりのビューティフォーよーー!!」


 これには俺もラナも悲鳴をあげる勢いで喜んだよ!

 レイドボスの〈金箱〉は基本3箱。

 だが、これは〈幸猫様〉のお力でも倍には出来ないのだ。

〈ダン活〉では、レアイベントを除き上限は4箱までと決まっているからな。

 ということで、『幸運』を得て今回は4箱である! それでも嬉しい!


「さあ、これは期待できるぞ! 誰が開けるか!? もちろん1箱は俺だよな!」


「1箱は私よね!」


「ん。ならもう1箱は私」


「ルルも開けたいのです!」


「ルルお姉ちゃんが開けるのなら、アリスも開けるのです!」


「いきなり5人以上が立候補!!」


 もちろん俺以外ではラナ、カルア、ルル、アリスだ。

 俺はギルドマスターだから当然として、後の3箱は公平に決めなくてはならないだろう。(公平?)


「あの、私もいいかな?」


「クイナダ!? クイナダが立候補するなんて珍しいな!」


 ここで更なる立候補、それはなんとクイナダだったんだ。

 俺とラナは素早くアイコンタクトを交わす。


「確かに、クイナダはこれが終われば、明日には出発だ」


「最後に最高の思い出を残していかないと、よね!」


 そう言って周りを見渡せば、まず近くに居たカルアが賛成してくれた。


「ん。賛成」


「ルルも良いと思うのです! 思い出はすごくすごく大事なのです! ハッピーメモリーなのです!」


「メモリアルなの~!」


 続いてルルもアリスも賛成の意を示し、ギルドメンバー全員が異存はなしと、〈金箱〉の1つはクイナダに決まった。かに思われた。しかし。


「いっそのこと全部クイナダに開けてもらうのはどうかしら!」


「それは絶対思い出に残るのです!」


「すごくいいよ~!」


「ええ!? いいのかな!? せっかくみんなで倒したのに」


「そうだな! 今回ばかりは俺も賛成しよう! なにせ、このダンジョンを1週間で攻略したのもクイナダの思い出のためだったからな!」


 それが〈樹界ダン〉を攻略しようと思った原点。

 これはいつものダンジョン攻略ではない。クイナダの思い出作りのためのダンジョン攻略なんだ! 今までちょ~っとだけ忘れていた気もしなくもなかったが、それだけ〈金箱〉の魔力が強かったということでどうか1つ。


 せっかくの最後のボス戦ということでみんなも賛成してくれたので、なんと今回は4箱全てクイナダが開けることになったんだ。


「さあクイナダ! どれから開ける?」


「どれも凄いわよ! これとこれなんかは最後に開けた方が良いわ!」


「なんでラナ殿下は〈金箱〉の中身を察知しているのかな??」


「それは俺にも分からん」


 ラナの勘は摩訶不思議。だが、クイナダはラナにおすすめされたとおり、まずは手前の2箱から開けることにした。


「そ、それじゃあ行くよ?」


「おう! みんなでお祈りだ! ――ああ〈幸猫様〉〈仔猫様〉〈愛猫様〉! クイナダはこれが最後の〈金箱〉開けになってしまうのかもしれないのです。どうかとても素晴らしいものをお願いいたします!」


「そのお願いっていいのかな!? えっと、よろしくお願いします〈幸猫様〉〈仔猫様〉〈愛猫様〉?」


 祈りは届く、念じれば届くのだ!

 クイナダに清き素晴らしいドロップを!


 そうしてクイナダがまず1つ目の〈金箱〉を開ける。

 そこにあったのは1つの首飾り。


「『解析』です! 名前は〈狼王の全てを貫く(きば)首飾り〉、効果は――【狼人】職専用アクセ? 【狼人】の斬撃の威力を特大上昇するようです!」


「【狼人】職専用装備か!」


 最初に当たったのは〈狼王の全てを貫く(きば)首飾り〉。

 アクセだ。しかも狼人専用で、斬撃の威力を特大上昇するという、かなりきわどいというか、ピンポイントな装備!

 とはいえそもそも「狼人」自体が斬撃に特化した職業(ジョブ)なので、こういう装備もある。さすがは〈バルフ〉のドロップ品だ!

 そして、〈エデン〉で該当するのは1人だけだ。


「これはクイナダ行きだな!」


「ええ!? 私、明日帰るのに!?」


「おう、貸与品を買い取るとき、〈エデン〉は格安にしているぜ?」


「た、助かるけど、いいの!? 最上級ダンジョン産だよ!?」


「かまわん! 俺が、いや、ここにいるみんなが許す!」


「!!」


 まさかの自分専用アクセとも言えるものがドロップした。だが、明日帰る身でこんな高価な物は貰えないと言うクイナダだが、さっきも言ったとおり、ここにはクイナダの思い出のために来たのだ。なにも問題は無い。

 むしろまた欲しければ周回すればいいんだしな! ギルドメンバーのみんなもまた、全く問題無いとクイナダにどんどん勧めていたんだ。


「あ、ありがとう、みんな」


 樹界に住む狼王の牙の首飾り。それを早速装備したクイナダは、少し戸惑いつつもお礼と笑顔を向けたのだ。

 だが、お礼を言うのはまだ早い。


「お礼を言うなんてまだ早いわよクイナダ! まだ〈金箱〉は3箱もあるんだからね!」


「あ、ラナ、それ俺が言おうとしたやつ!」


「ふふん! こういうのは早い者勝ちなのよ!」


「ふふ」


 くっ! 出遅れた! まあいい、まだチャンスはある。

 クイナダは可笑しそうに笑いながら続いて2箱目の〈金箱〉をオープンした。

 2箱目の〈金箱〉から出たのは――レシピ。レジェンド色に輝くレシピだったんだ。

 それを『解析』した結果、とある重要なアイテムだと分かった。


 その名も――〈ダンジョンワールド・エンド・テレポート〉。俺はこれが分かった途端、わなわなと震えることになった。


「〈ダンジョンワールド・エンド・テレポート〉?」


「効果は、〈そのダンジョンの最奥へと転移する〉ですね。〈テレポ〉よりも弱くなってないでしょうか?」


「待てエステル、重要なところを読み飛ばしているぞ!」


 そう、〈ダンジョンワールド・エンド・テレポート〉は〈転移水晶〉や〈テレポ〉と同じ系統の転移アイテム。〈転移水晶〉がダンジョンの外との相互通行、〈テレポ〉がそのダンジョン内で行ったことのある階層、場所ならどこでもひとっ飛び、という内容なのに対し、〈ダンジョンワールド・エンド・テレポート〉は最奥に転移するのみ。これでは〈テレポ〉の下位互換では? と思うのも仕方がない。


 しかし、この〈ダンジョンワールド・エンド・テレポート〉には、特別な効果があったのだ。それが。


「ここだ。〈1人だけ行ったことの無い人を連れて行ける〉という部分だ!」


「あ!」


「つまり、そういうこと!?」


 ここでリーナが気が付く。続いてクイナダも気が付いたようだ。

 そう、今までは行ったことのある場所にしか転移できなかった。

 だがこのテレポートは、行ったことのないキャラでも1人だけ最奥に連れて行けるアイテムなのだ!!

 つまりは――階層更新が凄まじく捗る!


 例えば〈エデン〉に新しい人物を迎え入れたとして、またダンジョン階層を更新しなおし、攻略者の証を取得させるのは非常に効率が悪い。

 ゲームでは最上級ダンジョンに挑むということは、すでにギルドではキャラが厳選し終え、準備万端になっているという意味である。ついでに最上級生になっているはずだ。つまり、ここから新しいキャラを迎え入れても育てる時間がない。

 それを短縮するためだろう、最上級ダンジョンでドロップする転移アイテムが現れるのだ。――それが、


 この〈ダンジョンワールド・エンド・テレポート〉。通称〈エンテレ〉なのだ!


「これは通称〈エンテレ〉と名付けよう!」


「なんだか〈エデン〉にちょっと名前が似ていていいわね!」


「これについても語り合いたいところだが、今はそれよりも次へいこうか!」


 これの有用性について語っていたら、きっと日が暮れてしまうだろう。

 俺は楽しみは先に取っておく意味を込めてクイナダに次を促したんだ。


「それじゃあ3箱目いくね?」


「どんどん開けるのよー!」


 微妙な空気を取り払い、ラナの応援を胸にクイナダが3箱目に取りかかる。

 中に入っていたのは――またもレジェンド色のレシピだったんだ。

 早速エステルが『解読』すると、レシピが読めるようになる。


「こいつは――〈森界(しんかい)(おおかみ)新王(しんおう)牙王剣(がおうけん)〉!?」


「武器のレシピなのです!」


「大剣ですわ!!」


「でもこれも「狼人」専用装備みたいですよ?」


「……がーん!?!?」


 そう、それは――大剣のレシピだったんだ。

 最上級ダンジョンのレジェンド色に光るレシピに書かれた大剣。

 それを聞いて反応した立ち上がらんばかりのノーア。しかしクラリスがレシピを読み上げ「狼人」専用武器と知ると、背景に雷が落ちたような顔をしてしなしなになっていた。こんなノーア見たことないよ。


「ラナ殿下が言っていた通り、凄まじく強い能力値なんだけど、「狼人」専用か~。しかもレシピ」


 クイナダが嬉しそうな、はしゃぎたそうな、でも残念そうな雰囲気で言う。

 ラナの勘は良く当たる。これ、クイナダにそのまま剣を作って装備させたら、とんでもない強さになっただろう。まさに大当たりの装備だったんだ。


 こうなってくると最後の1つも怪しい。


「最後の1箱、良いの当たりますように!」


 クイナダが最後の〈金箱〉を開ける。

 そして中に入っていたのはまたも――レジェンド色に輝くレシピ!

 エステルが『解読』をすると、それはなんと――シリーズ全集だったのだ。


「〈森界(しんかい)(おおかみ)新王(しんおう)シリーズ装備全集〉!?」


「防具の全集ですの!」


「しかも〈森界狼新王〉って、さっきの〈森界(しんかい)(おおかみ)新王(しんおう)牙王剣(がおうけん)〉と同じシリーズだよ!?」


「ということは?」


「はい。これも――「狼人」専用ですね」


「〈バルフ〉「狼人」専用装備落とすの多くないかしら!?」


 最後の装備は、またも「狼人」専用、しかもシリーズ全集だったのだ。

 ラナの言うとおり、マジ「狼人」専用装備が多い。というか〈バトルウルフ(最終形態)〉のドロップで「狼人」専用装備って3種類しかないはずなんだけど、それがピンポイントでドロップしたってこと!?


 これ、絶対〈幸猫様〉に願い通じてるって! 今まで〈ビューティフォー現象〉が来なかったのも、きっとこのためだったんだ!!

 俺は〈幸猫様〉との繋がりを感じた。いつも見守ってくださり、ありがとうございます!


 ということはあれですね? 〈幸猫様〉はあれをお望みということですね!?

 任せてください! 俺が責任を持ってしっかり揃えます!


「ゼフィルス?」


「な、なんでもないぜシエラ!! ところで、どうして盾を構えているんだ?」


「〈金箱〉4箱の時のあなたの行動を忘れたのかしら?」


 おかしいな。俺が〈幸猫様〉のご意志を受け取っていたら盾を構えたジト目のシエラが側に居たんだ。ひゃっほう!!

 なんだかよく分からないが、気分が良くなる! やったぜ!


「「「「「あ!」」」」」


 とそこで俺たちの右手に違和感。否、触り慣れた感触。

 この感触を、俺たちは知っている。


 全員、49人全員がそれを感じたようだ。


「みんな行くわよ! せーので上へ掲げるの! ――せーの!!」


「「「「「せ!!」」」」」


 全員で右手のものを持ち上げてそれを翳してキラリする。

 そう、そこにあったのはこの〈樹界ダン〉の――攻略者の証だった。


 俺が音頭を取る前にラナがせーのと言っちゃう不具合はあったものの、49人全員がこれを取得することに成功。


 つまり俺たちは今日――最上級ダンジョンを攻略したんだ。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゲーム世界転生〈ダン活〉1巻2022年3月10日発売!
― 新着の感想 ―
ハンナちゃんの攻略者の証回収が捗るな クイナダには後日装備を買いに来ていただいて…
クイナダへのお土産がとんでもない事に! レシピのは後々発送?
クイナダさん分校行きが取りやめになるか、行ってもすぐに帰ってきそうw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ