#1809 最奥のレイドボス〈バトルウルフ〉戦―決着!
「「「「「ウォーーーーーーーーン!」」」」」
「『統率』系だ! フィナ!」
「『天秤の行方』!」
バフ&挑発されてもヘイト関係無く一緒に行動する『統率』スキル。
それを〈バトルウルフ(最終形態)〉は即で使いやがった。
だがフィナによる『天秤の行方』でバフはデバフへと反転。
「まずは歴代のボスに各班対応を当てる! リーナ、頼めるか?」
「お任せくださいまし!」
「「ウォーーーーン!」」
「あの〈第四形態〉、ユニークスキルを使いやがっただと!?」
「た、たははは~。眷属がユニークスキル使ってくるとか、レイドボスがヤバすぎるんだよ~!」
ここで眷属の1体がユニークスキル特有のエフェクトに包まれる。
〈バトルウルフ(第四形態)〉はオルトロスのような双首の〈バトルウルフ〉だ。それぞれの首が〈闇属性〉と〈氷属性〉を司っており、そのユニークスキル『バトルウルフ流・闇氷柱豪雨』は全体攻撃である。
つまり、他の〈バトルウルフ〉を担当していたメンバーにも降り注ぐということ。
しかも驚くべきは、一眷属でしかないモンスターがユニークスキルを発動したことだ。ユニークスキルとは本来レアボスの技。その威力は非常に大きい。
まともに食らえば間違い無く戦闘不能者が出るほどに。
「私が防ぐわ――『プラネットドアヘヴン』!」
だが、〈エデン〉のタンクをその程度でやれると思われては困るぜ。
飛び出したのは〈エデン〉の頼れるサブマスターシエラ。
シエラが六段階目ツリースキル『プラネットドアヘヴン』を発動すると、上空に4つのドアが開く。それは天国へ通じるドア。
上から降り注ぐ闇と氷の魔法の雨を吸い込み、地上に一切の被害も出さずにバタンとドアが閉じてそのまま消えてしまったのだった。
「うわっ、相変わらずシエラさんのスキル強っ!」
「私たちのトップ盾は伊達ではありませんね」
エリサとフィナが間近でそれを見てその頼もしさに呟く。
「エリサ、まずはこいつらが〈即死〉するか試してくれ!」
「眷属は〈即死〉で一掃するのが定石よね! 次はこっちの番よ!」
「押し込みます――『天盾飛翔突撃』!」
「ウォン!?」
「ワンちゃんは箱に入ってなさい――『万魔宮殿』!」
眷属は〈最終形態〉の周囲で暴れまくり、その対処にパーティごとで分かれてぶつかっているが、そのうち4体を巻き込む形でエリサの魔法が放たれたのだ。
さらに効果範囲から出ていた1体をフィナが『シールドバッシュ』の上位ツリー『天盾飛翔突撃』でぶっ飛ばし効果範囲へ押し込んだ。
これにて眷属5体が『万魔宮殿』内に迷い込む。
「今です姉さま!」
「『睡魔女王・集団睡民』! ユニークスキル――『エンドレスエンド』!」
ドクンと放たれる桃色のエフェクト。
『万魔宮殿』では『睡眠無効』を持っていても封印してしまう。
ボスが相手だと『封印無効』すら持っているので出来ないコンボだが、眷属ならばあるいは? この歴代の〈バトルウルフ〉は本当にボス補正すら持っているのか? それをまず確かめる狙い。
エリサの渾身の〈即死〉コンボは、一定の成果を見せた。
「5体中3体が〈即死〉判定です!」
「〈第四形態〉と〈第二形態〉だけ残ったよ!」
「ボスだと思っていたが、ボス補正がないのか?」
「倒したのは一と三と五、レアボスが残った形ですわね! 分断しますわ!」
フィナとエリサの報告にリーナも素早い分析で把握する。
眷属は3体がエリサの魔法によって〈即死〉した。
そう、この歴代の〈バトルウルフ〉はあくまで眷属、少なくとも通常ボスだった第一、第三、第五はボス補正を持ってない。故に〈即死〉で一掃することが可能なのだ。
しかしレアボスだけは倒せない。こいつらは無効持ってるんだよね。
せっかく出てきてもらったのに悪いが、第一と第三と第五には心の中ですまんと言っておく。この眷属、最初に〈即死〉で屠ってしまうのが最善なのだ。
「ナイスエリサ! 分断行くぞ!」
ここで分断戦法発動。〈バトルウルフ〉に有効なのは、戦力の分断だ!
それぞれの〈バトルウルフ〉同士を引き離す。
「リーナ、第二には8班を、第四には9班を当ててくれ! 第六はそのまま2班と3班だ!」
「了解ですわ! 『マルチコネクトネットワーク』!」
「俺も出る! 『テンペストセイバー』!」
4パーティを眷属に当てて、残り6パーティでレイドボス本体に当たる。
レイドボスの〈最終形態〉はマジ強い。
なにせ5つの首がそれぞれ違う攻撃をしてくるのだ。それぞれの首を班で担当する勢いじゃないと防げない。
しかも、この巨体で動きがやや俊敏だ。基本的に前後に動くだけだが、時折クルッと半回転して前後が入れ替わるのが厄介だな。
「! 〈第六形態〉がユニークスキルを使います!」
「! 周囲の人たちは退避ですわ! 巻き込まれますわよ!」
「リーナ、4班を送る!」
上級中位ランク7〈大狼の深森ダンジョン〉レアボス、〈バトルウルフ(第六形態)〉。頭が横並びに4つある〈バトルウルフ〉だ。
もちろんこいつも倒したことがあるのだが、全員が経験あるわけではない。
故の2班3班担当だ。このパーティなら、全員が倒した経験があるからな。
そのユニークスキルは4つの頭を生かし切った『バトルウルフ流・狼超分裂』。
ボス級のステータスを持った〈バトルウルフ〉がさらに4体に分裂するユニークスキルだ。ちなみに頭は各1つずつになる。
これにてボス級眷属が9体、本体が1体の計10体の〈バトルウルフ〉が部屋を蹂躙する、とんでもない環境に変貌するのがこのボスの怖いところだ。
もう3体倒しているから計7体だけど。
「クゥーン…………」
「〈バトルウルフ(第二形態)〉が倒されましたわ! 8班はすぐにレイドボスへ合流してくださいまし!」
「了解よ!」
「姉さま、私が抱えてあげます。爆速で飛びますよ!」
「自分で飛べるよフィナちゃーーーん!?」
まずはこの中では最弱の〈バトルウルフ(第二形態)〉を撃破、それを皮切りにして9班も〈バトルウルフ(第四形態)〉を撃破することに成功する。
「「キャイン!?」」
「まったくもー! あっちこっちいかれたら纏めて倒せないでしょ! 『大聖光の無限宝剣』!」
「いえラナ様、倒していますよ。今ので分裂体を2体倒しました――『ファースト・クレイジー・リボルバー』!」
続いて〈第六形態〉の分裂もラナが2体仕留め、続いてシズも1体にトドメを刺したことでユニークスキル解除。
本体が自分で解除する間もなく強制解除させられたことで大きな隙を作った。
「今ですわ! 『レボリューションセンチュリー』!」
「『操剣山雨』!」
そこへノーアとクラリスがズドン、ユニークスキル後の硬直時にドデカい攻撃を入れられたことで〈第六形態〉もダウンしてしまう。
「「「「クゥーン」」」」
その後の総攻撃で〈第六形態〉も撃破。
残りはレイドボス、〈最終形態〉のみ。
「2本目のHPバー、無くなります!」
「「「「「ウォーーーーーン!!」」」」」
眷属召喚も掃討し、その後〈エデン〉メンバー全員にフルボッコにされた〈最終形態〉は、ついに2本目のHPバーも全損し、再び形態変化状態に移行した。
「みなさん、今のうちに補給してくださいまし! あと少しですわ!」
「ぐびっと、美味し~! よーし、最後まで歌っちゃうよ! 『プリンセスアイドルライブ』!」
「天使組はいつも通り、ここで大天使フォームだ!」
「「「「『大天使フォーム』!」」」」
「さっきみたいに形態変化の炎をそのままブレスにして撃ってくる可能性もある。全員、気を引き締めろよ!」
全員が補給&バフをてんこ盛りにして準備万端。
形態変化が終わると、そこには〈バトルウルフ〉の本当の〈最終形態〉。
なんと背中から巨大な1対2枚の翼を生やしていた〈バトルウルフ〉が居たのだった。
「「「「「ウォーーーーーン!!」」」」」
「ええ!? 〈バルフ〉飛ぶ気!?」
その通りである。最後の形態になった〈バトルウルフ〉は――飛べるのだ。
バサッと翼を広げ、羽ばたき、どうやってその巨体で飛んでいるのかわからない摩訶不思議な力で浮き上がる〈バトルウルフ(最終形態)〉。
もちろん、飛ばせるわけがない。十分浮いたところで指示を出す。
「よし、今だ――メルト、フィナ!」
「いかせるか! 『アーカーシャ・グラビティ』!」
「「「「「ウォーーーーーン!?」」」」」
「『落下防止』スキルがないのですか? 『天秤天落』!」
そう、実は〈バルフ〉は、なぜか『落下防止』スキルを持っていないのだ。今まで空を飛ぶことが無かったからかもしれない。
メルトが杖を向けると極大な重力魔法が〈バトルウルフ〉にのしかかる。
それでも落ちずに耐えていた〈バトルウルフ〉に追撃のフィナのスキルが発動。
フィナの前に現れた天秤が傾――かずに両方落ちると、ついに〈バトルウルフ〉も落っこちた。しかもそのままダウンしてしまう。あの高さから落っこちればダウンする、計算通りだ!
「「「「「ウォーーーーーン!?」」」」」
「殺生すぎるんだよ!?」
「今だーー! 総攻撃だーーーー!!」
「「「「『姫騎士覚醒』!」」」」
クイナダのツッコミに思わずニヤけそうになるのを我慢して、総攻撃。
全員からとんでもない量の攻撃が一気に降り注ぐ。これはひとたまりもない攻撃! だが、レイドボスのHPは伊達ではない。
「「「「「グオオーーーーーーーーン!!」」」」」
3本目のHPバーが残り3分の2になるほど削られた〈バトルウルフ〉だったがその身は健在!
それからまた歴代の〈バトルウルフ〉6体を召喚したのである。
「また〈バルフ〉たち!」
「まずは第一、第三、第五を〈即死〉で沈めます! シズさん!」
「了解です――『フェイタル・サード・シューダン』!」
「ウォン!!」
「ん! 〈即死〉効かない?」
〈最終形態〉がファイナルラウンドで作り出した〈バトルウルフ〉は、即でリーナがシズに言って〈即死〉で討ち取ろうとするものの失敗。
そう、ファイナルラウンドで作り出された〈バトルウルフ〉たちは――〈即死〉も効かなくなっているのだ。
「正攻法で討ち取るぞ! まずは分断だ!」
「「「「「はい!」」」」」
「あっちもなでなで、こっちもなでなでで忙しいのです!」
空を飛ぼうとする〈最終形態〉、周りに展開する歴代の〈バトルウルフ〉たち。
だが〈バトルウルフ〉戦に慣れていた俺たちは、〈最終形態〉を抑えているうちにすぐに歴代たちを倒しきる。
「「「「クゥーン」」」」
「倒したわよ!」
ラナの声が響くと共にまたも第六形態が「クゥーン」する。
2回目の登場の歴代たちもこれで倒し終わったな。
「「「「「グルルルルル! ウォオオオオオオオオン!!」」」」」
すると突如〈最終形態〉の挙動が変化。
怒り爆発で大きめのスキルエフェクトを身に纏わせたのだ。
「あれは!」
特大のエフェクトが、まるで天にまで伸びるが如く燃えるように〈バトルウルフ〉を包み込む。これはとんでもない攻撃が来るかと誰もが身構えた。
これは〈バトルウルフ〉の最強スキル『バトルフォール・ディザスターブレス』。
一度大ジャンプをして、空から大地を炎で焼き尽くすような強烈な5属性ブレスを叩き込むスキル。
地面全てを覆うように広がるブレスなため、当然全体攻撃だ。超強力な。
あの〈ヘルズノート・バベルガリッチ〉が最後に使ったような氷の全体攻撃に近い。
しかも今回は5属性。〈ヘルズノート・バベルガリッチ〉戦の時のようにシエラが〈氷属性ダメージ100%カット〉をしても防げない攻撃だ。
でもな、そんな攻撃も防げちゃうメンバーがいるのだ。タイミングが命。
「「「「「ウォーーーーーン!!」」」」」
〈バトルウルフ〉が大ジャンプした。
――よし、今だ!
「キキョウ、禁止だ!」
「『羨ましいからそれ禁止』!」
「「「「「ウォン!?」」」」」
悲しいかな〈バトルウルフ〉。
最強攻撃スキルを禁止にされ、大ジャンプしていて空中で突然制御を失った〈バトルウルフ〉。なんとか翼を広げて姿勢を保とうとするが。
「『グラビティ・メテオ・エクスボール』!」
「『神宝弓・サウザンドストリーム』!」
「『ホーリーレイソード』!」
メルト、ユウカ、クラリスなどによる容赦ない真上から降る攻撃に加え、様々な遠距離攻撃がその隙を襲い。さらに。
「これで、終わりです『天秤天落』!」
「「「「「ウ、ウオオーーーーーーーン!」」」」」
クールタイムが終わったばかりのフィナの『天秤天落』により落下。
再びダウンしてしまった。
「2度目の総攻撃だーーーーー!!」
これが突き刺さって3本目のHPバーも残り3分の1になってしまう。
〈バトルウルフ〉も頑張った。すごく頑張った。
〈第二形態〉、〈第四形態〉、〈第六形態〉の時のユニークスキルも疑似的に使い、俺たちを追い詰めようとする。特にレイドボスが〈第六形態〉のユニークスキルで疑似的に5体になった時はみんなも驚いていた。
まあ、本体を攻撃すると元に戻っちゃうという特性があるため、即でお帰りいただいたが。
「「「「「グルウォオオオオオオオオオン!!」」」」」
最後は怒りモード爆発。
「今度こそ勝つんだー!!」「負けねぇ! 自分たちはまだ負けてねぇ!」と言わんばかりに吠える〈バトルウルフ(最終形態)〉――――だったが。
「『鎮静の一曲・ラブ&ピース』!」
「「「「「ウォ~~~ン」」」」」
怒りを一気に沈静化されてしまい放心状態に! そして。
「『天光勇者聖剣』! トドメだ、クイナダ! やれーー!」
「『必殺・大神抜閃・破邪銀狼華』!」
「「「「「ウォン!?」」」」」
ズバンと一閃。
『聖剣』によって隙だらけとなったところへクイナダのユニークスキルの一撃が炸裂してビクンと硬直する〈バトルウルフ(最終形態)〉。
そのHPは、ゼロ。
そして〈バトルウルフ(最終形態)〉は、立ったまま膨大なエフェクトの海に沈んでいったのだった。




