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#1803 〈ネファイブ〉戦決着!巨大なボスの上を取れ




 第二形態でHPがちょうど半分を切ったところで〈ネファイブ〉の大技が飛び出す。

 なんと身体をぐるんぐるん捻る予備動作をし始めたのだ。

 植物だからってそんなひねり揚げの如く捻って身体は大丈夫なのかと少し心配になる動作。


「今度はなに!?」


「アタッカーは退避! キキョウ、もしかしたら出番かもしれないぜ」


「がんばります!」


 基本ボスというのは大技を出す時、予備動作を大きくとる。

 それがデカい技であればあるほど予備動作にも時間と行動を伴うのだ。

 そして〈ネファイブ〉がしたのは、まるでユニークスキルでも撃つのではないかという長い予備動作。

 これはマズいと全員が察して退避したのだ。

 この辺、ボス戦のスペシャリストである〈エデン〉のメンバーだぜ。素早い。


 そして〈ネファイブ〉は身体がもう捻りきらないというところまで捻ったかと思うと、そこで一度ピタリと止まる。


「来るぞ!」


 一瞬の溜めのあと、勢いよく身体を戻した〈ネファイブ〉は、その回転力に合わせて大量の蔓を大回転させ、さらに花から大量の種隕石を発射しまくったのだ。

 本来ならば全体攻撃、大量の蔓の鞭によるミキサービンタと種隕石による360度攻撃。根元も激しく動いており取り付くこともできない。

 故に安全地帯なし。スキルで防がないとどうにもならないのに結界を破壊できる種隕石もプレゼントしてくるので、下手なタンクではやられてしまうという大技。


 ――スキル『ネネネネネ・ミキサー隕石』だ。

 だが、〈エデン〉の多様性を侮ってもらっては困る。


「キキョウ、やったれ」


「はい! 『羨ましいからそれ禁止』!」


「ジャオオオオオオオオオオオオオオオオ…………??????」


 キキョウのユニークスキル爆発。

 大技『ネネネネネ・ミキサー隕石』は禁止にされてしまった。

 するとどうなるのか。さっきまでの蔓の鞭によるミキサーのような回転は消え、種隕石も消え、残ったのは回転する〈ネファイブ〉本体のみだ。


「遠距離攻撃発射だ! 大技行け!!」


「キキョウが止めたらアリスが撃つの! 『神の(イカヅチ)』ー!」


「隙だらけですの! 『エターナルフロスト』!」


「いきますわよクラリス! 大チャンスですわ――『レボリューションセンチュリー』!」


「お嬢様、絶対に近づかないでくださいよ――『トリリオン・レイソード・イグニッション』! 弾かれますからね!」


「あの花を狙う――『アルティメットノヴァ』!」


 ズドドドドドドドドン。

 ただその場で回転するだけになってしまった〈ネファイブ〉にギルドメンバーの遠距離攻撃が次々叩き込まれていく。

 スキルが禁止されてしまったので、完全に回転するだけの存在になってしまったからな。隙だらけなんだ。大技打ち込み放題。そうして大ダメージを受けながらも回転が終わったが。


 回転が終わった〈ネファイブ〉は――なぜか目を回した。

 植物って目を回すんだ!? と思うレベルのふらふら状態。

 本来なら『ネネネネネ・ミキサー隕石』スキルはここまでがセット。大技発動のため、発動後はちょっとふらふらになって隙が生まれるという状態になる、はずだったのだが、キキョウのおかげでスキルは禁止。なのにデメリットだけ発生というとんでもない事態になってしまった。


「近距離メンバー今だ! 突撃だーーー!!」


 もうこの隙だらけ、逃せないよね。


「『神峰(しんほう)の宝刀』!」


 まず斬り込んだのは――クイナダ。

 良いスピードだよ!

 六段階目ツリーの一撃はズドンという腹に響く音を鳴らして〈ネファイブ〉のHPを大量に削った。


「うおおりゃああ!! 『怠慢と堕落の剣』! 『惰性と堕弱の一撃』! 『脆弱と漫然の一閃』!」


「『森界熊エキサイト』! 『クマンパンチ・ストレート』! 『クマンネイル・アッパーカット』! 『クマンネイル・チョッピングライト』! 『ビッグクマン・ギガデストロイフィスト』!」


 続いて到着したのはゼルレカとミジュ。さすが、AGIが高い。

 ゼルレカがデバフを蓄積させ、ミジュはクマをエキサイトさせる。

『森界熊エキサイト』は自己バフ。クマたち大興奮スキルだ。クマン系とビッグクマン系の威力が一時的に最大2倍にもなる〈六ツリ〉である。超強力。

 そしてクマン系とビッグクマン系のパンチ発動。大きなダメージが入ったな。良い連打だ。


「クワァ!!」


「今ですゼニス――『ドラゴンラッシュ・エクスランスレイン』!」


 空からはアイギスが駆けつけ、『ラッシュ』系でがっつりとダメージを稼いでいくな。


 これによって大きく流れがこっちに傾いたのをつかみ取り、ついに2本目のHPバーもゼロにすることに成功する。


「いよいよ第三形態ね! 宝剣の準備はできているわ!」


 ラナが燃えている。

 クールタイムが終わり、また宝剣をぶっ放したくて仕方ないのだろう。

 なにせラナの『大聖光の無限宝剣』はLVが4になり、現在その本数は――32本。

 アカン、増えすぎだ! でもまだまだ増えるぜ? これが【大聖女】のお力よ。

 本数が増えれば増えるほどMP消費も増していくが、ラナのMPは潤沢だ。〈アルティメットエリクサー〉で回復もできるのでじゃんじゃん撃ちまくっていた。


 そんなラナに狙われてしまったボスに心の中で敬礼していると、ついにその形態変化が終わる。

〈ネファイブ〉の第三形態は、もう養分を吸収するために伸ばしていた根を全て戦闘へと回し、樹界を征服しかねないほどの大量の根を操るとんでもレイドボスに至っていた。


 その姿もずいぶん変化していて、まるでクラゲ。

 天辺に大きな一輪の花が咲いているのは相変わらず、だがその下はクラゲのように蔓と茎が広がり、蔓は毒手のように蠢いていた。一応地面に立っている感じなので浮いていないのが救いか。

 根は地面を征服するようにうねっており半分以上が本体を覆う盾となっていた。


「なによあれ、『大聖光の無限宝剣』よ!」


「あれ!? ラナ今途中まで感想を喋ってなかったか!?」


 おかしい、ラナのセリフが途中で『大聖光の無限宝剣』になっちゃってる!

 どんだけ撃ちたかったんだ!?


「ジャオオオオオオオオオオオオオオオオ!?」


 変身直後に大ダメージを喰らった〈ネファイブ〉が悲鳴を上げてラナに狙いを付ける。


「どこを向いているの? 『完全魅了盾』!」


「ジャオ!?」


 だが、いつも通りシエラがタゲを固定した。

 レイドボスを相手に1人のタンクが抑え込むとかクールタイム的に厳しいので即で他のタンクたちがシエラの元に集まっていく。


 これでアタッカーたちが攻撃できるようになったな。


「ゼフィルスさん! これ、反撃が結構厳しいぞ!」


「近距離系で攻撃するには完全に懐に潜り込まないといけないですが、確かにこれは、上下からの反撃を躱すのに苦労しますね」


 だが、早速超近距離型のラウとセレスタンから報告が入ってくる。

 相手はクラゲ形態だ。これまで通り本体を攻撃していると、上から毒手のような状態異常を誘発する蔓が攻撃してきて、下からは根っこが波打ち攻撃してくるという上下からの反撃を行なってくる。

 それを厳しいと言いつつもひょいひょい避けながら攻撃している2人よ。

 あ、ミジュが弾かれた。すぐアルテに言って回収してもらう。


「下からだと根が厳しい、ならば空だな! トモヨ!」


「見てきたよ! うん! 今なら飛行特効ないよ! 空飛べる!」


「よっしゃ! その報告を待ってたぜ!」


「では私の出番ですね」


「頼むぜエステル! ――アタッカーは空から攻めるぞ! 集まってくれ!」


 さすがは〈ネファイブ〉。伊達にたくさん()がついていない。

 大量の根っこは、波打つだけでも大きな衝撃をもたらし、後衛にもダメージを与えていた。狙われていないのに、根っこに動かれるだけでダメージが入るとか、それどんな地形よ。


 しかし幸いにも第三形態では飛行特効は無し。空からの攻撃が可能になっていた。

 意識が完全に下に向かっている証拠だな。


「きゃー!?」


「根っこが邪魔で、進めません!」


 しかも進路妨害までしてくる。


「サーシャ、地面を凍らせてくれ! カタリナは足場結界を!」


「はい! 『全ては凍り付き溶けることは無い、永久(とこしえ)のニブルヘイム』!」


「お任せくださいまし――『足場結界大展開』!」


 サーシャのユニークスキル発動。一瞬で全体が凍り付き、ボスにダメージを与え、地面という環境もコチンコチンで根を封じ込めていた。

 さすがは〈ダン活〉最強の〈氷属性魔法〉。

 上の毒手は全て凍らせることはできなかったが、地面だけでも、根だけでも一定時間攻撃を防げれば問題は無い。


 この間にエステルが〈戦艦・スターライト〉を召喚(?)。アタッカーが乗り込んだ。

 根っこに進路妨害されていたメンバーはカタリナの足場結界を通じて乗り込む。


「地面、ひび割れた箇所多数! 根っこ、再び動き出しましたわ!」


「エステル、発進だ! 上昇!」


「はい! 『ドライブ全開』!」


〈戦艦・スターライト〉に乗り込んで発進。

 乗り込んだのは〈エデン〉のアタッカーがほとんどだ。あとラナ。

 ヒーラーなどの後衛はほとんどヴァンの第二拠点、あそこは根っこで着実にダメージを負っているが、まだまだ防げる。

 タンクは下に居るので、ボスの攻撃を下で引き受けてくれるのは非常に助かる。


 その間にアタッカーが上から攻撃を仕掛けるのだ。


「ボスより上空に出ました!」


「あの傘状の茎の上に飛び移るぞ! フラーミナ、クイナダ、頼む!」


「ウーちゃん! ルーちゃん! フーちゃん! ゴー!」


「はい! 『狼眷属召喚』! 『大軍一将宣戦』! 『狼軍・覇者突撃』!」


 傘。それはクラゲのように広がっているボスの茎のこと。

 傘のように見えなくもない。

 このダンジョンは1層内にいくつもの階層がある特殊なダンジョン。

 地面だけではない、このボスの傘だって飛び移れるのだ。2階みたいなものだな。階段ないけど。


 まずは安全を見せなければ始まらない。

 フラーミナのウールーフートリオとクイナダの狼召喚を頼りにしてまず傘の上が安全かどうかを確かめる。傘は見た目、地面と変わりない。

 つまり下からの攻撃は来る可能性があるのだ。

 だが、攻撃は意外なところから来た。


「ジャオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」


「花から攻撃来るぞ!」


「「「「ウォン!」」」」


 そう、傘の先端には花が咲いている、そこからウルフや狼たちに向けて種隕石を飛ばしてきたのだ。


「キャイン!?」


「回避して!」


 クイナダの狼が1体隕石の直撃を受けて光になる。

 さすがの威力だ。あれを喰らってはひとたまりもないだろう。

 だが、それだけだった。


「下からの攻撃、無し! 毒手も回り込んでくるだけです!」


「よし跳び乗るぞ! エステル、もっと寄せてくれ!」


「はい! 『オーバードライブ』!」


 そう、下からの攻撃が無かったのだ。

 全ては1階のタンクが引き寄せているおかげだな。

 おかげでアタッカーが警戒すべきは種隕石と、回り込んで来た毒手のみ。これくらいの対処なら余裕だ。

 種隕石を飛ばして迎撃してくる〈ネファイブ〉の動きを見切りながらエステルが花の真上へ〈戦艦・スターライト〉を寄せると、俺は空中からダイブした。


「ゼフィルス先輩!?」


「お兄ちゃん!?」


「いくぜ――『天光勇者聖剣あまのひかりのゆうしゃせいけん』!」


 ほぼ真上からの攻撃。

 ここが安全地帯。

 毒手はここまで届かないため〈ネファイブ〉の攻撃手段は種隕石のみ。そんなのを真上に打ち上げたら、重力に引かれて落ちてくるからな。自爆してしまう!

 故に真上には攻撃してこない。真上こそが安全地帯のできあがりだ。


 俺はそこに〈六ツリ〉の『聖剣』を叩き込み、ぶった切る。

〈ネファイブ〉はそれだけでビクンと一瞬硬直した。


「今だ!」


「とう!」


「ルルちゃんが行った!?」


「私も行きます。『神炎天罰』です!」


 俺の叫びにまず〈戦艦・スターライト〉から飛び降りたのはルル。

 続いてフィナが飛び、上空から強力な燃える天罰を落とす。それに続いて近距離系を得意とするメンバーが次々飛び降りてくる。


「急所はこの花だ! 全員、種隕石に十分気をつけて攻撃開始だ!」


「「「「おおー!」」」」


 花に攻撃を叩き込んだ方が明らかにHPの減りが良い。

 本来ならば俺たちが足場にしているこの傘からも攻撃が飛んでくるのだが、シエラたちが下でがんばって毒手全てを引きつけてくれているので楽に戦えている。

 これが〈ネファイブ〉第三形態の楽な攻略法だ。


〈戦艦・スターライト〉などの空飛ぶ〈乗り物〉がない場合は地面の根っこを根こそぎ破壊しながら攻撃していくという、地味かつ難易度の高い方法を取ることになる。

 総力戦だな。数が物言う戦いだ。


 だが、ここまでくれば急所むき出しの場所に攻撃し放題なので、種隕石と、たまに攫おうとしてくる毒手だけ気をつけていれば攻略可能なので楽だ。

 多少、傘を振ってこちらの行動を阻害したり、種隕石を放つ寸前で自分の前に引き寄せたりしてくることがあるが、俺が上手く教えたので大丈夫そう。


「ジャオオオオオオオオオオオオオオオオ!?」


「もう! 動かないの! 『クロノス』!」


「ジャ…………」


 ルキアの攻撃ストップ術を展開して動きを封じて総攻撃。

 この調子で大ダメージを与えていくとついに第三形態のHPバーもゼロになる。


 ピタッと止まった〈ネファイブ〉はそのままゆっくりと倒れていってしまい、傘に乗っている俺たちは危うく落下するところでなんとか〈戦艦・スターライト〉に帰還した。


 そして膨大なエフェクトを発生させて、〈ネファイブ〉は消えていったのだった。




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― 新着の感想 ―
ああ、冒険者が星になる光景しか浮かんで来ない。 ……………来れないかな?
これ、他のギルドは攻略できるんだろうか。
飛び降り...真下...安全地帯、そして上空を見上げると...ふむ
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