#1799 初レイドボス〈金箱〉回!我にレジェンドをー
「勝ったぞーーーーー!!」
「勝ったわーーーーー!!」
「勝ったのですーーーー!!」
「ん! 勝利」
大勝利にバンザイ!
HPがゼロになったフェアリー、最後の1体が光に消えると、膨大なエフェクトが部屋で溢れ出し大量の素材が山のようにばらまかれたことで勝ったことを教えてくれた。
俺が勝ち鬨を上げればラナが続き、ルルが続き、カルアが続き、やがてギルドメンバー全員が実感してグッと勝利にバンザイしたのだ。
「あ! 階層門出たよ!」
「こっちは〈金箱〉! しかも3つ!」
「うひょー! お宝だーーー!!」
トモヨの声に振り向けば、エフェクトが徐々に晴れていき、大きな階層門がその姿を現したのだ。
さらにカイリが見つめる先には3つの〈金箱〉が出現。早速目を〈金箱〉にしたニーコが飛びついていた。負けていられない!
「〈金箱〉ばんざーい!!」
「ゼフィルス、落ち着きなさい。下級生が見ているわよ」
「なにゅん!?」
しかし素早く俺の脇腹を突ついてきたシエラによってブレーキが掛けられた。
はっ!? 俺はいったいなにを!?
「〈金箱〉が3つよ! すごいわ!」
「はい。ラナ様お見事でした」
「ん。開けるのは任せて」
「ここはルルが開けてあげるのです!」
思い出した。俺には負けられない戦いがあったのだ!
「俺も開けるぜ――あにゅん!?」
「だから落ち着きなさいってゼフィルス」
あかん。今日のシエラのブレーキが強烈。
いかんいかん、少し暴走気味だったかもしれない。落ち着かなくては。
「こほん。もう大丈夫だシエラ。俺は落ち着いた(キリッ)」
「…………」
俺がキリッとした顔で振り向けばシエラが――なぜかジト目だった。
なんだか知らないけどやったぜ!
どうしよう、レイドボスの〈金箱〉とシエラのジト目。どっちに集中すればいいかわからないよ!
「表情が一瞬で緩んでるわ」
「なに!?」
しまった。幸せすぎてせっかくのキリッとした勇者顔が崩れてしまったか!
でもジト目で見てくるシエラが近いんだもん。仕方ないんだもん。
「ゼフィルスお兄様! 早く来るのです! ゼフィルスお兄様が来ないと〈金箱〉は開けられないのですよ!」
「俺としたことが! 確かにその通りだ、今行くぞルル!」
「…………」
シエラのジト目を背中に浴びながらキリッとした顔を崩さないよう意識しつつ〈金箱〉へと向かう。
今日はより難易度が高い気がするぜ。
「ゼフィルス先輩がキリッとした顔をしているですの!」
「でもちょっと手遅れだと思うんだよ!」
「さっき思いっきりはっちゃけてたもんね」
おかしいな。俺のキリッとした顔の効果がいまいちな気がする。
でもきっと気のせいだろう。
さて、いよいよレイドボスの報酬だ。
レイドボスはギルドの力全てを出し切る勢いで戦わないと勝てないようなとんでもボス。
ランク1ダンジョン、最初に遭遇したレイドボスであの強さである。後半のレイドボスがどれだけとんでもない存在かは想像するまでも無いだろう。
当然その報酬はとんでもなく素晴らしい物になる。
この前ノーアが『ドロップ革命』したような、レジェンド級のドロップが手に入るようになるのだ! このレイドボスの報酬こそ、〈ダン活〉の最強装備、最強アイテムの一角に分類される。
さらには――〈金箱〉確定。〈金箱〉確定なのだ!
これだけ強いボスだからな、〈金箱〉確定は当然だろう。〈銀箱〉以下が出ない。なんて素晴らしい響き!
数は最低3箱ドロップするのだからマジパナイ。〈金箱〉3箱確定とかね、もうね、ヤバいですよ。
あのとんでもボスでも思わず周回したくなるのも分かるだろう。
まあ、道中で周回するには専用なレイドボスの笛が必要なのだが、近々欲しいところだ。
「それじゃあ〈金箱〉を開けるぞ! 開けたい人ー!」
「「「「「はーい!」」」」」
「それじゃあクジ引きの出番だな!」
たくさんの手が挙がったので、恒例のクジ引きの出番だ。
なお、俺は1つ開けるのは確定。ギルドマスターだからな!
2つの当たりくじを混ぜる。さあ、当てることができるのは誰かな?
「当たったのです!」
「当たりました!」
「大当たり大当たり~。当たりくじを引いたのは、ルルとマシロだーー!」
いえーい!
当たりくじを高らかに上げてアピールするのは、ルルとマシロ!
当たったのはまさかの純真無垢の代表たちだった。やはり欲深いものには妖怪が……! ええい妖怪退散!
「ええー! ルルにマシロ、いいわね!」
「ん。羨ましい」
羨ましいという名のお祝いを浴びながら、それぞれ〈金箱〉を選ぶ。
「マシロ、これにしておきなさい! この中に良いのが入っている気がするわ!」
「は、はい! ラナ殿下、なんで分かるのですか?」
「勘よ! マシロも勘を鍛えるのよ!」
「はい! 頑張ります!」
「マシロンマシロン、それは鍛えてどうにかなるものじゃないよ!?」
「でも、マシロンならやれる気もする」
マシロがなんかラナからとんでもない薫陶を受けていた。シヅキがツッコんではいるものの、エフィの言う通り、マシロならいつか出来そうな気もするから恐ろしいものだ。
「それじゃあルルは~、これなのです!」
「おお~。アリスもこれがいいような気がしたの!」
「それじゃあとても良いものが入っているかもしれませんね」
「ルル先輩、あたいたちも近くで見ていいかい?」
「もちろんなのです!」
こっちではロリ幼組が集まっていた。ルルが選んだ〈金箱〉の前にアリス、キキョウ、ゼルレカが囲み――あれシェリアがいないな。
「ゼフィルス様」
「だからシェリアは背後に忍び寄らないで?」
いたよ! 後ろに! いつものシェリアで安心だ!(?)
分かった分かった。ルルが開ける時は記念にスクショを撮るから。
そう説得してまずは俺が残りの〈金箱〉の前に座る。
「よーし、ではまず俺から開ける。刮目せよ!」
そう宣言すれば俺の周りにみんな集まって来た。
レイドボス初めての宝箱、その中身とはいったい?
いざ!
「ああ〈幸猫様〉〈仔猫様〉〈愛猫様〉、いつもありがとうございます! どうか良いものください! よろしくお願いいたします!」
いつものお祈りをしてパカリと開ける。
届けこの思い!
そうして中に入っていたのは――レシピだった。
レイドボスの報酬に現物は少ない。その多くがレシピなのだ。
そしてそれは――レジェンド色に輝くレシピだったのだ。
「か、輝いてるわ!」
「前にノーアさんが『ドロップ革命』した時と同じですわ」
「これが、最上級の証なのかもしれないわね」
ラナ、リーナ、シエラを筆頭にそのレジェンド色のレシピにざわめく。
これは、例の〈超幸運の世界樹薬〉のレシピの時と同じだ。
つまり、レイドボスの報酬はレジェンド色で現れるということである。
「エステル頼む」
「はい『解読』です!」
レシピをすぐに『解読』してもらえばその文字が読めてきた。これは――。
「〈妖精女王伝説シリーズ全集〉!! 装備レシピの全集だ!」
「装備レシピ全集!? 本当なのかい勇者君!」
「おう! 見てくれニーコ!」
いきなり全集、しかもスゲえのキターーーーーー!!
当たったのはレイドボスのその名を継ぐ、このボスで落とすシリーズ装備の最高峰の1つ―――〈妖精女王伝説シリーズ全集〉!!
〈フェアリークイーン〉が落とす装備シリーズで最高峰の装備だよこれ!!
だって〈妖精女王〉の名前に、プラス〈伝説〉までついてるもん! 伝説だぞ!
すぐにニーコが反応し、わらわらとメンバーたちが集まってそれを見る。
「全集! しかもなんだいこの数値! 凄いじゃないか!」
「これが最上級ダンジョンの装備シリーズ全集。凄まじいなんてものじゃありませんわね……!」
「ん。これ、装備したい。装備してみたい!」
「『群体勝機』スキル、眷属などの能力が特大上昇する効果もあるから、エージェント猫を扱えるカルアや、精霊を扱えるシェリアなんかにぴったりだな!」
「私もですか!」
「わあ! シェリアお姉ちゃん凄いのです! ルルは新装備になったシェリアお姉ちゃんが見たいのです!」
「ゼフィルス様、すぐ用意してください」
「お、おう。マリー先輩の店が落ち着いたらな? 次はルルの番いってみようか」
「はいなのです!」
無駄にキリッとしたシェリアを落ち着かせて、次はルルの番。
いや、シェリアは全然落ち着いていない気がするが、気のせいということにしておいた。俺はスクショを構える。
ルルは可愛くお祈りしてから、パカリと〈金箱〉を開けた。パシャパシャ。
「これもレジェンド色のレシピなのです!!」
パシャシャシャシャシャ!!
「すぐに『解読』です!」
「読めるようになってきたのです。これは――〈伝説の妖精女王杖〉と読めるのです!」
「おお!?」
パシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャ!!!!
ババンと掲げて見せてきたルルのレジェンド色のレシピに書かれていたのは、〈伝説の妖精女王杖〉。
マジで? それさっきの〈妖精女王伝説シリーズ全集〉とセットの杖だよ!
「ルルもシェリアお姉ちゃんに良いものが贈れそうなのです!」
「――!! ルルがそこまで私を――あふん」
「シェリアちゃんが倒れたーー!」
「大丈夫です。いつものあれです」
どうも俺が当てたレシピでシェリアの専用装備が当たってしまったことに、ルルも何かをシェリアに渡したかったらしい。
その純粋無垢の心に浄化――ではなく撃ち抜かれたシェリアはいつも通り夢の中に旅立っていったよ。エリサがしっかり支えているのでセーフだ。フィナはいつも通り。
「最後はマシロね! いっちょ見せてあげるのよ!」
「はい! マシロ、いきます!」
ラナの勘的にこれが一番とんでもないという〈金箱〉が、今開けられる。
〈妖精女王伝説〉よりもすごいものとは? 本当にそんなの出ちゃう気なの!?
みんなでお祈りしたあと、マシロが宝箱を開けると、そこにあったのは、なんだか力のありそうな――縦笛。
「これは! まさか笛!? ――エステル!!」
「『解析』です! これは――〈レイドボス呼ぶ竜笛〉というそうです!」
「笛キッターーーーーーーーー!?!?!?!?!?」
「「「「「わあああああああああ!!」」」」」
笛、それは〈ダン活〉の世界で知らない者は居ない。一気に歓声が上がる。
名前の通りだ。これはさっき言った――レイドボス周回に必要な笛だあああああああああ!!
マジで初っぱなからキターーーーーー!?!?!?
「これは、レイドボスを呼ぶことが出来る笛とのことです! 回数は4回」
「おっしゃああああああ!! これはまた凄まじいものが当たったぞ! これでレイドボスも周回できる、新たなレジェンド級の入った〈金箱〉をゲットし放題狩り放題だ!!」
イエス笛バンザイ! 〈幸猫様〉バンザイ!!
〈エデン〉の邁進はまだまだ終わらない。レイドボス周回、早速やってみようじゃないか!!




