#1798 レイドボス連型〈フェアリークイーン〉戦決着
「よーし、ここで大技行くぞ! アリスとサーシャは俺に続け! 『インフィニティ・バニッシュセイバー』!」
「あいー! ひーさつ! 『神様はお怒りです』!」
「ユニークスキルいきますの! 『全ては凍り付き溶けることは無い、永久のニブルヘイム』!」
『『『『きゃー!?』』』』
『やられちゃうー!?』
『痺れちゃうー!?』
『凍っちゃうー!?』
総攻撃により第二形態の数がだいぶ少なくなってきたが撃破には至らず。だが、ダウンが終わった直後のタイミングを狙い、最後のフィニッシュを叩き込んだことでほぼ全滅させることに成功した。
「残り30体! アタッカーは各自1体に集中だ!」
「任せるがいい――『天空絶光・疾駆無秒閃々』!」
「わたくしもやりますわ! 『竜絶兵砲・Vドラゴンバスター』!」
1対1にもつれ込めば〈エデン〉のアタッカーがやられることはない。
30体まで減ってしまった第二形態は、ここで全てが光になった。
『ああー! いけないんだいけないんだ! もう完璧に怒っちゃったんだからね!』
するとまたフィールドに声が聞こえ、そのモンスターが現れる。
それはさっき、ちょっと威厳のあるセリフを言っていたのと同じ声だった。あっちはキャラ作り、こっちが素だな。
「こいつは……」
「ちっさ! なんか大物感出して出てきたのに、さっきの普通のフェアリーたちよりもちっちゃいよ!?」
「か、可愛いです」
メルトが驚きの声を発して途中で失敗し、ノエルとラクリッテが感想を述べる。
登場してきた第三形態。連型の名に恥じない総勢300ものフェアリー種。
その中心にして先頭を飛んでいたのは、70センチにも満たない小さなフェアリーだった。冠を被っている。
「『看破』! こいつが〈フェアリークイーン〉、このフェアリーたちの親玉か!」
メルトの言う通りこれが親玉だ。連型の最強にして力の中心。
第三形態のフェアリー種は3つの種類が存在する。第一形態や第二形態で登場した、身長150センチクラスの一般フェアリー。魔法や武器を使うが、こいつらは一般兵だ。
そして第三形態から登場する2メートル級フェアリー種。これが20体ほど。それらは近衛兵とでも言えばいいか、幹部級の力を持っている。
最後に〈フェアリークイーン〉本体、身長65センチというちんまさに加え1体しか登場しないが、こいつが一番強い。その等級は王級と言っていいだろう。
一般兵を相手にしていたと思ったら、いきなり王級モンスターが横から割り込んで来てぶっ飛ばされることがあるのだ。あれマジ勘弁なんだよ。
そう、第一形態ではワンパターン、揃いも揃って魔法を使う一般兵の集団だった。
第二形態では武器使いや状態異常攻撃が混じったために出来ることの幅が大きく広がった。
そして第三形態では、一般兵の中に幹部級と王級が加わった、とんでも集団となって襲ってくるのである。
さすがにこれは『直感』さんの力を借りるしかない。
「『直感』さんから警報! あの大きい20体は一般フェアリーよりも強いぞ! こいつらは幹部級と呼称する! そして先頭に居る小さいフェアリー、〈フェアリークイーン〉はもっと強いぞ! 各種で眷属と本体並の力の差があると思え!」
「普通のボスは眷属と本体だけだけど、ここでは本体級が20体もいて、さらにその本体級よりも強い王がいるってこと!?」
「! 了解ですわ! ――みなさんまずは一般フェアリーを倒すのですわ! 20体の幹部級フェアリーにはマークを付けます! 天使部隊フィナさん、トモヨさん、エフィさん、それにヴァンさん、レグラムさんは幹部の相手をお願いいたしますわ!」
カイリの的確な表現でみんなしっかりイメージできたようだな。
そしてリーナ、俺の言葉に即座に作戦を練ってみんなに通達する手腕は相変わらず最高だ!
リーナの言うとおり、あの20体の幹部とクイーンを好きにさせておくと被害が増す。故にマークできるメンバーを張り付かせて制御するのが理想的だ。それが飛べるメンバーなら最善だな!
ゲーム時代はそこまで細かに動かせなかったが、リアルだと1人1人の意思で相手をマークできるし、こりゃ相当有効な手段だな。
「天使部隊は『大天使フォーム』していいぞ!」
「了解です教官」
「よーし、本気で抑えちゃうよー」
「全部撃ち落としちゃう」
「「「『大天使フォーム』!」」」
「相手が動くわよ! 『神の天誅』!」
天使部隊がユニークスキルで変身すると、向こうも動き始めた。
それと同時に形態変化のエフェクトが切れたので攻撃開始。
ラナが真上から六段階目ツリーの強力な魔法を叩き込んだ。
だがそれに幹部3体が迎撃に回ると、残りの幹部や一般フェアリーは魔法などで攻撃を仕掛けてくる。
「全力で防ぐわ――『プラネットドアヘヴン』!」
「数なら数で行こう――『時代最強ノ姫侍』!」
「そのノリ乗ったデース! 『究極忍法・多重分身の術』デース!」
シエラが攻撃を別の空間に放り込むドアを開けて攻撃を防ぎ、続いてユニークスキルを発動したリカとパメラの召喚と分身、総勢40体が躍りかかった。
ナイスリカ、パメラ!
召喚体と分身たちに即座に襲い掛かるフェアリーたち。一般フェアリー単体はユニークスキルたちよりも弱いが、数で来ると厳しい。
さらに幹部級が飛んでくると、いきなりリカの姫侍が1体消されてしまう。
「なんと!」
これにはリカも驚き、急ブレーキ。
姫侍たちと一体となって先陣を斬り込むのがリカのスタイルだが、飛び込む場所が非常にとんでもないデンジャラスな場所であると見抜いたのだ。
「いっくデース分身たちー!」
「『忍法・影分身雷竜落とし』デース!」「『忍法・炎・爆裂丸』デース!」「『忍法・影分身爆裂丸』デース!」「『巨大手裏剣の術』デース!」「『毒手裏剣』デース!」「『三属性手裏剣乱舞』デース!」「『豪炎斬波』デース!」「『氷結斬躯』デース!」「『雷斬り』デース!」「『くノ一流・一雨一度』デース!」
パメラの分身たちによるスキル連打攻撃。
それはたくさんの一般フェアリーを巻き込んで倒しまくったが、その中から飛び出してきた幹部級がグサリ、なんと分身パメラを何体も返り討ちにしてしまったのだ。
「なんデスと!?」
パメラもリカみたいになる。
「みんな気をつけろ! 特にあの幹部級、思った以上に強いぞ!」
リカとパメラはナイス威力偵察。
やはり百聞は一見にしかず。幹部級がどれほど強いのか、召喚体や分身たちを使って確認したのだ。
一般フェアリーだけならばなんとかなる。だがそこに幹部級が混じっていたら一気に劣勢に陥る可能性がある。それをギルドメンバーはみな理解しただろう。
「き、来ました! 2体です!」
「アリスとキキョウはあたいが守る!」
「守るのは私の仕事だよー!? 『能力封印の社』!」
幹部級がキキョウたちを襲わんとする。数は2体だ。
立ちはだかるのはキキョウとゼルレカ。キキョウが1体を止め、ゼルレカが1体を止めようとする。しかし。
『燃えちゃえー』
『凍っちゃえー』
『痺れちゃえー』
「悪戯しちゃダメなのー! 『電光雷轟』!」
そこに一般フェアリーたちも加わるのだから対応しきれない。
アリスは幹部級に撃とうとしていた攻撃を一般フェアリーの攻撃の迎撃に使わざるを得なかった。
そんなことが各地で起こる。
「全体回復行くよ! 『スペリオールエクスヒール』!」
「次は私が回復します! 『アルティメットハートヒール』!」
「限界を超えてオーバー回復です――『ハイエルフの祝福』!」
「回復は任せてよ! アタッカーは思う存分アタックしてね! 『ダークマターエネルギー』!」
しかし大丈夫。〈エデン〉には強力なヒーラーがたくさんいるのだ!
ミサト、マシロ、シュミネ、エリサがタイミングをズラしながら順番に全体回復を掛けていき、この乱戦で不意にダメージを受けてしまうアタッカーでも十全に戦えるようにしていた。
「今のうちに一般フェアリーを倒せ! 回復はヒーラーが担当するぞ!」
「幹部級がすごく強いんだけど!? 何このダメージ!?」
メルトの言葉にクイナダが一撃で減ったHPを見て驚愕していたが、2秒後にはHPがフルに戻ったので再度突撃して行ったな。
「『総大将』! まさか、一般フェアリーに加え、幹部級が加わっただけでこうも戦況が狂わされるとは――!」
「リーナ、ノエルとラクリッテを上手く使うんだ! バフを常に意識しろ!」
「了解ですわ! ノエルさん、全体のバフを強めてくださいまし!」
「もうやってるよー! 『音速リズム』! 『エールベストパフォーマンス』!」
『あそこに集中攻撃だよー!』
『『『『たー!』』』』
「ラクリッテさん、正面にユニークスキル全開ですわ!」
「は、はい! ポン! 現れるのは最高最強の幻、重力すら惑わす宇宙をここへ見せよ――『ギャラクシーイリュージョン』!」
『『『『『みゃー!?』』』』』
ここでラクリッテが自身最強のユニークスキル、『ギャラクシーイリュージョン』を発動。
正面、フェアリーたちが集まる場所が巨大な宇宙に変化した。
無重力状態に体の制御が効かず、フェアリーは狙いを上手く付けることができない。魔法は明後日の方へ飛んでいく。
隙だらけだ。
「今だ! 手が空いた者は宇宙空間に一斉攻撃だ! 『ゴッドドラゴン・カンナカムイ』!」
「ここが正念場だね! みんな威力3倍! 『アルティメットテンションエール』!」
「討ち滅ぼします――『メイド・フォーシス・バルカン・グレート』!」
「いきますよゼニス! 『神竜の業火・ファイナルエクシードブレス』!」
ズドドドドドドドドドドドドン!
宇宙空間に囚われてしまったフェアリーたちに一斉攻撃が突き刺さる。
ノエルの『アルティメットテンションエール』で威力が3倍になった攻撃たちにより、その場所に居たフェアリーたちを大量に倒す事に成功する。
「ナイスラクリッテ!」
「はい!」
俺がラクリッテにグーするとラクリッテも元気に返事を返す。
「きゃー!?」
だがそこで、カタリナの方から悲鳴が上がる。
「!? クイーンが動いていますわ!」
いつの間にか行動を起こしていたクイーンが、カタリナの作っていた足場結界などの複数の結界を粉砕してカタリナへ迫っていたのだ。
「カタリナはやらせないよ! 『全軍、我が下に集まるがいい』! 『我が軍勢よ。蹂躙せよ』!」
「『グロリアスシールド』! なっ!? 〈五ツリ〉の盾が簡単に!?」
『こんなので私を止められると思わないでね!』
タダでさえ強い幹部、だがクイーンはさらにその上を行く。
カタリナの結界もロゼッタの防御スキルも〈五ツリ〉以下ではほとんど足止めにもならない。さすがはレイドボスだ。
フラーミナのモンスターたちも飛び掛かるが、その圧倒的な力でフラーミナのモンスターにもどんどんダメージを与えていく。
「このクイーン、3人じゃ止まんないよ!?」
「上、幹部が2体来てます!」
「やっば! ユニークで対処! 『犬力の犬』!」
さらにそこへ幹部2体追加。
これは非常にまずい、そう思って奥の手を切るフラーミナたちだったが、そこへ救援がくる。
「はいはいそっち行かないでねー『エルシール』『エルシール』!」
『『きゃー!? くっついてとれなーい!?』』
「トモヨさん!」
救援に駆けつけたのはトモヨ。なんと『エルシール』で盾に幹部を貼り付けてしまったのだ。1枚1体ずつ捕獲しているので2体まで貼り付け可能。そのままトモヨはクラリスたちの下までいき、幹部を倒してしまったのだ。
そうやってトモヨが幹部を捕まえ、どこかで〈天使サンドラッシュ〉戦法を使って片付けるという形で戦況を有利にしていた。
「他の幹部もみんなマークしましたわ! 後はクイーンだけです。ゼフィルスさん!」
「おう! 『英勇転移』!」
これにより幹部からの不意打ちなどを完全に抑え込むことに成功。
こうなれば、後のイレギュラーはクイーンだけだ。
幹部を1体切り捨てた俺が、次にクイーンをロックオンして転移する。
『みゃ?』
「『聖剣』!」
『みゃー!?』
「ゼフィルス君!」
「ここは俺に任せろフラーミナ!」
後ろに転移した俺に即で反撃してこようとしたことは褒めよう。
だが、『聖剣』は発動の早い一閃攻撃。俺の方が早かったな。
ぶった切られたクイーンが『聖剣』の効果で硬直する。たたみ掛ける。
「『ライトニングバニッシュ』! 『ハヤブサストライク』! 『ソニックソード』!」
『ちょこまかとー! 倒れちゃいなさい!』
〈四ツリ〉以下の攻撃で素早くスキルを回しながら反撃を回避する。
このクイーンの攻撃は当たると洒落にならないので、大技使ってスキル硬直で避けられないというのは避けたい。低い等級の攻撃を使い、即回避に移りながら削っていく。これは――時間稼ぎだ。
俺は1人で戦っているんじゃない。これは――レイドなのだ。
「待たせたわねゼフィルス――『完全魅了盾』!」
『みゃ!?』
そこにやって来てくれたのは我らがサブマスターのシエラ!
巨大化した小盾による『完全魅了盾』がヒットすると、俺に魔法を撃とうとしていたクイーンが振り返り、シエラを攻撃する。
俺に背を向けたな? 大チャンス!!
「『天光勇者聖剣』だ!」
『み―――』
ズドーーーンと強力な衝撃。
シエラによってタゲを強制変更させられてしまったクイーンへ容赦なく俺の〈六ツリ〉がヒットした。もちろん、これだけでは終わらない。
そこへ舞い降りてきたのは――アイギス。
「『ドラゴンラッシュ・エクスランスレイン』!」
「ナイスタイミング!」
『聖剣』系の硬直で動けなかったクイーンに、ドラゴンラッシュが炸裂。槍とゼニスの爪の強力な連打がヒットし、大ダメージを与えたのだ。
そこに、俺が飛び込む。
「トドメだ――『フィニッシュ・セイバー』!」
フィニッシュ!
『う、うそだ~…………』
ここで俺の『フィニッシュ・セイバー』が輝くと、クイーンのダウンを取ることに成功する。
「クイーンに総攻撃だーーー!!」
「『全軍一斉攻撃ですわ』!」
「28本の宝剣をお見舞いするわよ! 『大聖光の無限宝剣』!」
ここで手の空いているみんなでクイーンに総攻撃。
クイーン自体のHPはそう多くはない。フェアリー自体300体もいるからな。
1体1体のHPは多くないのだ。
これが決め手となり、ついにクイーンがエフェクトに消えると、後は掃討戦。
幹部も気が付けば7体まで減っていたのでそのまま空が飛べるメンバーでマークしてもらい、一般フェアリーを相手に集団戦で殲滅。
エフィが超笑顔で4体の幹部を追加で屠り、トモヨが2体の幹部を駆除したところで残りは幹部1体。
これはレグラムとオリヒメさんが仲の良さを見せつけるコンボ攻撃で討ち取った。
こうして始まった900体のモンスターが登場するボス戦、レイドボス・連型戦に、俺たちは勝利したのだった。




