#1797 連型にだってHPバーは3本ある!
レイドボス・連型との戦いもみんなだいぶ慣れてきた。
「リーナ、防御するときは必ず4人、そしてなるべく毎回スイッチするよう心がけてくれ!」
「防御スキルによるクールタイムは1人が背負うものではなく、ギルド全体で背負うというわけですわね!」
俺はリーナにレイドボスの戦闘の仕方を伝授していた。
さすがはリーナ、俺が一を言えば十を吸収してくれる。
レイドボスとは、レイド戦を仕掛けるボスということ。
集団戦をしているのは俺たちなのだ。集団には集団の戦い方というものがある。
今まで5人パーティの場合、タンクが1人で攻撃を受け持っていたが、ここでは複数人で受け持つ必要があり、同時に1人が受け持つ必要がない。
その連携の代表がクールタイムだ。
1人の場合、クールタイムが終わるまで、別のスキルで代用して凌ぐ必要があるが、レイドボスではまず防御に全力を出さなくてはならない関係上、クールタイムが終わるまで別のスキルを使って代用なんてできない。だが、こっちには複数の味方がいる。
ならば、クールタイムが終わるまでの間、味方に代わってもらえばいいのだ。
1つのスキルは個人のものに在らず。レイド戦の場合、1つのスキルはみんなのスキルとして計算する。
故に毎回防御メンバーを交代させて、クールタイムが終わるまでの時間を捻出するのだ。
これ、指揮官が全てのメンバーのクールタイムを熟知している必要があったのだが、ここはリアル。クールタイムが回復した人、いける人は合図を送ることで指揮官が指示を送りやすいように出来る。
リーナが指揮できるようになれば俺も前線に出られるので、現在伝授中だ。
『きゃー』
『負けちゃうー』
『倒されちゃうー』
『やられちゃうー』
「数が減ってきたぞ! もう少しだ! 圧力をどんどん高めろ! ちゃんと狙うよう心がけろ!」
当初300居たフェアリーはもう100も残ってない。
数が少なくなれば攻撃の手数も少なくなるので、圧を高めて一気に殲滅していく。
今まで適当に撃てば当たる、だったのもよく狙う必要が出てきたのでそれも指示する。
「攻撃来るぞ!」
「ラナ殿下、メルトさん、マシロさん、そしてゼフィルスさん!」
「! おっしゃ任せろ!」
「防御ね! ――『神の守り』!」
「こっちは俺が歪める――『グラビティ・デトネーション』!」
「はい! 頑張ります! ――『天球の反転結界』!」
「前線出るぜ――『ブレイブシールド・イグニッション』!」
再び一斉攻撃に4人で対応。
相手の数が減ってきて威力もそこそこ減退しているので、純タンクじゃない俺たちでも防御が可能だ。
さらに俺ご指名。これは「指揮はわたくしに任せて前線で暴れてきてくださいな」という意味だろう。
ふはは! さあ、いっちょ頑張っちゃいましょうかね!
防御スキルで相手の攻撃を防ぐと、前衛メンバーに指示。
「懐に飛び込むぞー! 前衛メンバーは俺に続けー!!」
「ようやく出番だな!」
「任せるがいい!」
「ん。待ってた」
「全部ボコボコにする」
俺の言葉に今か今かと出番を待っていた前衛メンバー、ラウ、レグラム、カルア、ミジュを初めとして残り少ないフェアリーたちの所へ飛び込んだ。
「いくぜー! 『インフィニティ・バニッシュセイバー』!」
「『戦槍乱舞』!」
「ん――『512・ヘル』!」
「私も前に出よう――『必殺の太刀・六閃華』!」
「ルルも出るのです! 『神世界インフィニティ』! 『ヒーロー・セイバー・モーメント』なのです!
「『雷拳』!」
「『大忍法・影渡り』! からのー『くノ一流・桜雨』デース!」
「ゼニス急降下です――『アルティメット・ドラゴンクロウ』!」
「ここだ――『天空華息吹・ヴァーテックスエッジ』!」
「私個人だってやるんだからねー『神宝剣・アマネタチ』!」
「ようやく放てるよ~。ウーちゃん、ルーちゃん、フーちゃん、『我に勝利を取ってこい』!
「「「ウォン!」」」
「私も行ってきます――『エル・バランレード・ラグナロク』!」
「崩し、吹き飛ばす! ――『獣王無尽』! 『神獣拳闘気合爪破凱』!」
「私もこのビッグウェーブに乗りますわ――『ビッグウェーブデトネーション』!」
「お嬢様、私も行きますから、突っ走らないでください――『ディバインセイバー』!」
「よーし、ワダラン、私たちも突っ込むよ! 『ブラストエンゲージストライク』!」
「ガアアア!」
「フェアリーでは――クマには勝てない。――『ビッグクマン・ギガデストロイフィスト』!」
「ミジュちゃんのどういう理屈かわからないんだけど!? でもちょっと分かるのが不思議!? 『必殺・絶刀』!」
「おっしゃ! チマチマやってるのは性に合わなかったんだ! 『ライフフォース・アトミック』! 吹っ飛べー!」
「動き封じちゃうね! 『デス・ペナルティ』!」
「接近戦に応じてくれるフェアリー募集――『ジェットバーストフェニックス』!」
『『『『きゃーーーー!?』』』』
ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドン――――!!!!
もの凄い衝撃を辺りに響かせながらフェアリーたちを強襲していく。
遠距離攻撃ばかりで待機していたメンバーも多かったからな。ようやく接近戦が解禁されて気合いが入りまくってたぜ。
こうなってしまえばフェアリーたちはなすすべもなく。集団もバラバラにされてしまい各個撃破。1つ目のHPバーが消えると同時にフェアリー全てが消えたことを教えてくれた。
「みなさん、まだHPバーは2本残っていますわ! 油断なさいませんように!」
しかし、すぐにリーナからの指示が飛ぶ。
全部倒したからといって油断はしてはならない。だってHPバーがまだ2本も残っているのだから。
このHPが残っている意味とは?
「最奥ボスと同じなら、形態変化が来るか!」
「ですがこれは最奥ボスではありませんわ」
「アリーナで戦ったレイドボスを思いだすんだ! あいつらも形態変化してただろ? レイドボスは形態変化すると思っておいた方がいいぜ」
「! 確かに」
メルトとリーナが警戒しながら相談しているところに入り、アリーナの〈ヘカトンケイル〉や〈ヘルズノート・バベルガリッチ〉たちのことを思い出させた。あれもHPバーは3本あり、形態変化を起こしていた。
レイドボスというのは、形態変化するのだ。最奥ボスと同じように。
「! 来るぞ!」
『よくも可愛い妹たちを~』
『次は私たちが相手だー』
『お覚悟ちょうだい!』
「それを言うならお命頂戴デース!?」
第二形態。
それはちょっと成長した、150センチメートルくらいのフェアリー集団だった。
先程の子どもっぽいフェアリーとは変わって、お姉さんっぽいフェアリーだ。
ただその手には、武器が握られている。
弓、剣、盾、槍、棍、杖、などなど。
そう、第二形態のフェアリーは武器を使ってくる。
「来るぞ! シエラ、シャロン、カタリナ、ヴァン!」
「『アブソープション・ワン・フォートレス』!」
「『防壁召喚』! からの『神域の壁』!」
「『多重プロテクト小舟結界』!」
「はっ! 『ロード・オブ・オリハルコン』!」
「これは!」
タンクが防御スキルを発動した直後、フェアリーの半分がその場で止まり、遠距離攻撃を放ってきた。
それは魔法と物理が半々。強力な弓矢や砲撃もたくさん降ってきたのである。
先程の第一形態対策にRESを積んだり、対魔法防御をしているとここで大きなダメージを受けてしまう。
さらには、フェアリーが大量に上空から襲ってきたのである。
『毒毒の剣~』
『麻痺麻痺の槍~』
『ピヨピヨのハンマ~』
『くらえ~!』
そう、第二形態のフェアリーたちは接近戦も出来る。
それどころか自ら飛び込んで来るのである。
しかも自ら宣言しているように、状態異常攻撃まで使うようになっているのだ。
かなり危険な攻撃だな。しかし。
「私の盾を、舐めないでくれるかしら?」
「神域に入っちゃダメなんだよ!」
シエラとシャロンの防御が光る。
盾を突破しようとしたり、上空から入ろうとしたフェアリーがガガガガガガガツンっという気持ち良い音を出しながらぶつかって――突破出来なかったのだ。
「今だ! カタリナ、足場を!」
「はい――『足場結界大展開』!」
「おっしゃラウ! 先陣は任せた!」
「任せておけ!」
『盾盾の盾だよー!』
『効かないんだよー!』
「そんなもの――『獣王の拳を防げる訳無し』!」
『『ひゃーー!?!?!?』』
先陣はラウが切った。
カタリナの足場結界を素早く駆け上がると、盾を構える2体のフェアリーに防御破壊攻撃をぶちかまし、粉砕してしまう。
「ナイスだラウ!」
「むっ、出遅れたか! 『二刀斬・如法暗夜』!」
『『『迎撃だー!』』』
「魔法攻撃は全てタンクが防ぐ! 近距離メンバーは存分に当たれ!」
「感謝する――『白羽流し』! 『一刀斬・月光閃華』!」
続いてリカも早い。
後衛のフェアリーの攻撃はタンクに防いでもらうのはもちろん、前衛のフェアリーの攻撃も防がなければいけない。リカが得意とするところだ。
先陣を切ったリカが『白羽流し』で攻撃を流しながら反撃を打ち、続いて『一刀斬・月光閃華』でカウンターを当てる。
「私も参加しますわー! 『わたくし、輝け』! 『ミョルニル』!」
「!? お嬢様、そんなの使ってはいけません! 『トリリオン・レイソード・イグニッション』!」
続いてノーアもカウンター狙い。ただその前に自分に一時的に注目を集中する『わたくし、輝け』を使ったことで、全前衛フェアリーから狙われてしまった。
しかしノーアはそれも見越して巨大ハンマーのカウンターでぶっ飛ばす。
ぶっ飛ばせなかったフェアリーはクラリスが千剣をぶっ放して吹き飛ばした。
おお! 今のカウンターでかなりの数が光になったぞ! すげぇ度胸だ!
「ヒーラーへ攻撃を行かせるな! ここに防衛ラインを敷いて防ぐぞ!」
「『五隕星重力砲魔法陣』! 状態異常攻撃が混ざっているぞ! 『耐性』を抜かれたら厄介だ!」
「シュミネ、ここを任せても良いか? ユニークスキルだ!」
「わ、私ですか!? はい! やってみます――ユニークスキル『世界樹召喚』!」
「おお!? シュミネが全力出すっす!?」
ここでシュミネがユニークスキル発動!
最初はこの場面で任せられることに驚いていたシュミネも素早く切り替えて力を振るう。瞬間、巨大な――それはそれは大きく樹高50メートルもの大きく立派な樹がシュミネの背後に立ってきたのだ!
これは世界樹、〈樹界ダン〉の新世界樹は外側から見ることができないため同じものかは不明。どっちも違ってどっちも良い!
世界樹は神聖な光を発すると、味方に継続回復と防御力魔防力バフ、さらに状態異常完全耐性を付与した。
味方をかなり硬くしたな。
形態変化が終わったばかりで数がまた300に戻ったフェアリーたちは圧が強い。故に味方を防御バフするのは大正解だ。ノエルも頑張っているが、このユニークスキルの方が強いので上書きする。
さらにはそれだけでは終わらない。この『世界樹召喚』は、シュミネの六段階目ツリー魔法の起点として使用することができるのだ。
つまり、『世界樹召喚』を使っていないと使えない魔法が存在する。
「『ハイエルフの楽園』!」
これは回復系最強魔法の1つ。
シュミネの世界樹が召喚されているとき、大継続回復、デバフ無効、状態異常無効を付与するのだ。
デバフと状態異常を無効。マジパナイ。
なお、これは『世界樹召喚』と『ハイエルフの楽園』、両方のスキルがLV10になってないと完全な無効にならないのだが、そこは育成済みなので安心してほしい。
俺たちもフル装備で各種『耐性』や『状態異常耐性』を積んでいるが、全種類積んでいるのはタンクやヒーラーくらい、アタッカーはそこまで『耐性』が万全ではないため、状態異常無効を付与したのだ。これが全種類の状態異常を操るフェアリーには突き刺さる。
これで警戒すべきは純粋な攻撃のみとなったわけだ。
「攻撃が後衛ヒーラーに飛んできたぞ! シュミネ!」
「はい! 『神の木の力・樹界』!」
『じゅ、樹界だ~!?』
『にゃんだとー!?』
『かたーい!?』
シュミネが最強の回復魔法を使ったことで反撃で後衛が狙われてしまったが、ここでシュミネ最強の防御魔法も発動。
『神の木の力・樹界』はシュミネの世界樹があるとき、どんな攻撃も一度だけ防ぐ魔法だ。俺の『完全勇者』に似てるな。
正面に展開された樹界に一斉攻撃が命中するが、フィードバック無しで完全に防ぎきった。
「ナイスだシュミネ! 世界樹の守りも張っておいてくれ!」
「はい! 『世界樹大結界』!」
「ヒーラーは何かあったらこの後ろに隠れろ!」
シュミネの『世界樹大結界』はシュミネの世界樹があるとき、世界樹に大結界を張る自己防衛魔法だ。世界樹はスキルなのでもちろん破壊可能、むしろこれがないとシュミネのユニーク級とも言える魔法たちが使えないので守る必要がある。
『世界樹大結界』は世界樹自身を守る魔法だな。もちろん、これが張られている世界樹は、後衛の盾としても使えるので存分に活用してもらいたい。
「後衛フェアリーの対処はわたくしリーナが指揮しますわ!」
「頼んだ! 俺は前に出る!」
ここで戦場が2つに分かれ、俺が前衛フェアリーを、リーナが後衛フェアリーを担当する。さあ、ここからが本番だ! そう思っていたのだが。
「慣れてきたわ――カウンター行くわよ」
「マジで?」
「――『カウンター・レイ・ストリーム』!」
『『『『きゃー!?』』』』
シエラが前衛フェアリーの隊列を思いっきり崩してしまい、多くのフェアリーがダウンした。うむ。
「総攻撃チャンスだー!」




