#1796 初の最上級ダンジョンレイドボス、第一形態戦
「HPバーは3本! しかしこれは!?」
「本体はどこよ!」
「みんな同じに見えるわ」
レイドボス・連型。
それは見た目ほぼ同じのフェアリーの群だった。最初に話しかけてきた独特な口調をする個体の姿は見えない。あいつは最後に出てくるからな。
そう、この特殊フィールド30.5層に登場するフェアリー種、その全てがボス扱い。
特殊フィールドのモンスターを全て倒すことがクリアの条件だ。
『やっちゃうよー!』
『やっちゃおー!』
『はじけちゃおー!』
「来るぞ!」
そう言った瞬間、大量のフェアリーから一斉攻撃魔法が発射された。
「示し合わせたような一斉攻撃ですの!?」
「ミサト、カタリナ、キキョウ、トモヨ! 反射メイン!」
「オッケー! 『全反射』!」
「お任せを――『真・守護結界反射術』!」
「わ、分かりました! ――『罰当たり』!」
「跳ね返しちゃうよ――『主の盾』!」
対して俺たちはミサト、カタリナ、キキョウ、トモヨで反射系スキルを発動。
出現した結界や盾にフェアリーたちの魔法がぶつかると反射し、全てをフェアリーたちに返すことに成功する。
『『『『きゃー!』』』』
『返ってきたー!』
『返しちゃヤー!』
だがほとんど影響なし。
バラバラに動く1メートルほどのフェアリーは、その反射攻撃をほとんど受けずに避けてしまったのだ。
「多少の被弾あり、ですが、HPが減りませんわ! マシロさん、見破ってみてくださいまし!」
「はい! 『シークレットアウト』! えっと、何もありません!」
リーナが見るのは群の上空。
そこにはHPバーのアイコンがデカデカと表示されていた。
本来ならばボス本体の近くにあるはずのHPバーがあんなところにある。
故にリーナはマシロに指示、だが、マシロの目でもってしても発見に至らず。
「やはりこれは、ボス本体というものがないボスということか?」
「レイドボス・連型のデータ収集は任せて。なんだったら〈戦艦・スターライト〉も出すよ!」
「それは温存しておいてくれカイリ。まずは俺が攻撃を仕掛けてみる!」
メルトたちが分析し、カイリたちサポート班が動き出す。
これがダンジョンランク10などのモンスターならば、個々で動くためタンクが挑発スキルなどでかき乱し、そこにアタッカーの遠距離攻撃などで崩して突撃させるのが有効だ。
しかしさっきの一斉攻撃がタンクの行動に待ったを掛ける。
あれほど一糸乱れぬ攻撃ということは連携しているということ、戦力も把握していないうちに下手に挑発を発動すると、一斉攻撃で狙われる可能性があった。
なにせ推定300体のフェアリーだ。その攻撃1発のダメージが10だとしても、全員から狙われれば3000だ。まずタンクでも助からない。集中的に狙われることは避けなければならないだろう。
しかも、明らかに1発1発の攻撃がそこそこ強く、あの一斉攻撃の直撃を受ければパーティが崩れかねない。そんな攻撃だったのだ。
4人は気軽に反射していたが、ぶっちゃけ4人掛かりで防御しないと防げない攻撃だったということだ。ボスの1回の攻撃を4人で防御しないとダメってボス強すぎやん。
これがレイドボスだ。〈ヘカトンケイル〉や〈ヘルズノート・バベルガリッチ〉を思い出す火力だぜ。
下手に攻撃するとアタッカーにも降り注ぐため、まずは様子見を選択した形。
そこで俺が威力偵察に前へ出る。
「俺に任せろ!」
「ゼフィルス、頼むぞ!」
「おうよ!」
メルトに背中を押され、一気に前へ出ると――剣をフェアリーたちのいる中心地に向けて魔法をぶっ放す。
「『フルライトニング・スプライト』!」
『なになに~?』
『なんかきたー』
『きゃー!』
それは避けても無駄で、フェアリーたちの群の中心でドデカい花火が爆発したんだ。
よし、ここからだ。
『『やったなー!』』
『燃えちゃえー!』
『凍っちゃえー!』
『痺れちゃえー!』
瞬間、反撃発生。
俺の方へ300体全ての攻撃は放たれたのだ。
まあ、そうなるって知ってたから俺が先行したんだけどな。みんなに見せるために。
「『完全勇者』!」
だが効かない。
大量の魔法のシャワーを、俺はちょっと決めポーズをしながら受けきった。
『『『き、効かない~!?』』』
「ふははははは! そんなものは効かーん!!」
「何やってるのよゼフィルス、早く戻りなさい」
しまった。ついノリの良いフェアリーの言葉にノリで返してしまった!
シエラに言われてみんなの下へ戻ると、無敵状態もそこで解除されてしまう。
「攻撃すると反撃がくるぞ」
「しかも一糸乱れず一斉攻撃。あれは、あの集団は、一個の個体と思って行動すべきですわ」
俺の言葉にすぐさまリーナが最適な考えを導き出す。
やっぱり一度見せないと分からないことは多い。
最初はうっかり攻撃して反撃で戦闘不能になるんだよ。
『『『『いっくよー!』』』』
「防御! ラクリッテ、シャロン、ロゼッタ、フィナ!」
「は、はい! ポン! 素晴らしき盾よ、皆を守れ――『グロリアスブクリエ』!」
「受け止めちゃうよ! 『ゴッドオリハルコンランパート』!」
「お任せください! ――『神守盾』!」
「教官には攻撃は届かせません――『天域大結界』!」
再び魔法の一斉攻撃が浴びせられるがこれも4人で防御。全員が〈六ツリ〉を使っているのでびくともせずに防ぎきる。
「これ、思ったよりもダメージ受けますよ!?」
「うそ~!? フィードバックでこのダメージ!?」
防御スキルで防いだはずなのに、ラクリッテやシャロンたちタンク組はそのフィードバックで受けたダメージに驚いたらしい。まあ、HPが3割くらい吹っ飛んだからな。1人で防いだら防御スキル使っていてもHPが全損する。それがレイドボスだ。
「ラナ、回復頼む! ゴッドブレスだ!」
「まっかせなさい! 『ヴァース・フォーチュン・ゴッドブレス』!」
ここでラナの最強継続回復魔法を発動。
これは六段階目ツリー。
全体に継続回復を付与し、さらにユニークスキルで2倍回復。
さらに相手を倒した時、HPが回復するという効果付きだ。
これが連型を相手にするのに最適な魔法なんだよ。
「一斉攻撃には最低4名で防御推奨と判断する!」
「回復魔法は必須ですわね!」
こうして防御面についてある程度目処が立ったので、攻撃を開始する。
「待たせたな! 攻撃開始だ! 遠距離攻撃準備! 俺に合わせて撃てー! 『ゴッドドラゴン・カンナカムイ』!」
「いっくわよー! 28本になった宝剣を受けなさい! 『大聖光の無限宝剣』!」
「フェアリーの多いところを撃ち抜きます! 『彗星槍』!」
「ん。数には数――『エージェント・レイド・クロネコ』!」
「『大精霊様、全六霊機降臨』! お願いします大精霊のみなさまお力をお貸しください――『天変地異・エレメントヘヴン』!」
「届けーなのです――『ヒーロー・スターレイ』!」
「『バースト・フォース・ガン・メイデン』! 一斉攻撃には一斉攻撃です――『メイド・フォーシス・バルカン・グレート』!」
「いっくのデース! 『大忍法・激炎龍爆楼』!」
「数で攻めるのですわ! ――『四戦兵砲・エーテル・バスター・クワトロ』!」
「飛んでいるから避けられるんだ――落ちろ! 『アーカーシャ・グラビティ』!」
「ゼニス、真上からいきますよ!」
「クワァ!」
「――『神竜の業火・ファイナルエクシードブレス』!」
「行くぞオリヒメ!」
「レグラム様とならどこまでも」
「「『天海星・ウラヌスネプチューン・キャリバー』!」」
「よーし、まずは手数で攻めるよー! 私は左ね!」
「はーい! 3つ撃っちゃいまーす! 私は真ん中!」
「油断せずに行こう、私は右だね」
「「「『神気個三波装砲撃』!」」」
「ちゃんとぼくを守ってくれたまえよ―――『エクスプロージョンガンショット』!」
「動き一瞬止めちゃうね! このタイミングで――『タイムストップ』!」
「こんな数のボス初めてですわ!(喜色) ――『レボリューションセンチュリー』!」
「お嬢様、前には出ないでくださいよ。今回は本気ですからね! ――『トリリオン・レイソード・イグニッション』!」
「全体に雷を降らせればいいんだよね! 『神の雷』~!」
「ニブルヘイムは取っておきますの! ――『エターナルフロスト』!」
「一直線に、貫く――『ヴァーミリオンプロミネンス』!」
「私も微力ながら戦います! ――『天光』!」
向こうが一斉攻撃なら、こっちも一斉攻撃したらどうなるのか?
答えは。
『『『『迎撃ーー!』』』』
向こうも一斉に魔法を放ちまくって迎撃してきた。
だが、お互いの攻撃が入り乱れてとんでもない光景が巻き起こる。
「シエラ、カタリナ、頼む!」
「任せて。こういう時のために控えていたのだもの――『エンプレス・オブ・カバー』!」
「はい! みなさんは私たちが守りますわ――『多重プロテクト小舟結界』!」
相殺されず、貫通やすり抜けてきた攻撃はシエラとカタリナのカバー系スキル・魔法によって防ぐ。こちらの攻撃は大きいものが多くいくつか相殺され、破壊されるものの、その多くはフェアリーたちに突き刺さった。
「! ダメージ入りましたわ!」
「見ろ、フェアリーが墜落し光に還っているぞ」
「こっちはむしろラナの魔法で回復していってる! 撃ち勝ったぞ!」
リーナのセリフに見ればボスのHPバーが削れたのが分かった。
ようやくまともなダメージが入ったのだ。
さらにメルトの言う通り、直撃を喰らった何体かのフェアリーが墜落し、光に還っていく光景が見て取れた。それと同時にHPバーが減っていく様子もだ。
「これは、フェアリーの数がHPに直結しているな。フェアリーを倒せば倒すほどHPが削られていくぞ」
「! 攻撃を続行しますわ!」
『『『『やったなー!』』』』
「反撃来るぞ! リカ、ヴァン、シュミネ、ナキキ!」
「全て弾いて見せよう――『制空権・神閃域』!」
「黄金の城よ、みなを守るであります! 『オリハルコン城』!」
「こちらに来るものは全て防ぎます――『聖域に立つ惑いの双子樹』!」
「お、おうっす! 任せるっす! ――『シールドオブセット』!」
迎撃したばかりなのに反撃まで来る。手数が凄い。
だが今のところ方法が魔法攻撃というワンパターンなのが救いだな。
とはいえ、それも第一形態が終わるまでだ。
まだレイドボス・連型との戦いは始まったばかり。




