#1790 最上級ボス〈金箱〉回!世界樹の幸運よ来たれ
「うおっしゃー! 最上級ダンジョンボスの――初の〈金箱〉だーーー!」
「やりましたわーー!!」
「いえーい!」
ドロップした〈金箱〉を見て思わずノーアとカグヤとハイタッチ。
シャウトしてよっしゃーした。
ふははははは! 最上級ダンジョンの〈金箱〉ゲットだぜーーー! しかも革命済みだ! ふははははは!
俺たちはとても喜んだ。だがよっしゃーは長くは続かなかった
「あ! 結界が無くなったわ! みんな、突撃よ!」
「なぬ!?」
そう、今まで何か不思議な力でパーソナルフィールドに入れなかったラナたちが――というかラナが入ってきたからである。
よし、一緒に祝おう!
「ラナもハイタッチしようぜ!」
「仕方ないわね! いえーい!」
〈金箱〉に向かっていたラナを巧みな話術で誘導してハイタッチさせる。
仕方ないと言いつつ満更ではなさそうなのがラナの可愛いところだ。
「『神頼み』しておいたからきっとレアドロップが当たるに違いないよ!」
「しかもしっかり『ドロップ革命』済みですの!」
「たはは~、ほんとゼフィルス君は〈金箱〉にはいつも全力だよね。でもあれ? 『ドロップ革命』って等級が1つ上のものをドロップするんじゃなかったっけ? 最上級ダンジョンの上ってもう無いんじゃ?」
「間違ってるぞミサト。正確にはドロップテーブルを1段押し上げる、だ。通常ボスはレアボスドロップに、守護型ボスは徘徊型ドロップに、そして階層ボスは希少ボスのドロップになるだけだ。つまりこのダンジョンの徘徊型がドロップする物がこの中に入っているだけで、正確には等級が1段上がっているわけでは無い」
「さすがだなメルト、まさにその通りだ」
俺が説明しようとしたら、さすがのメルトが訂正していた。
その通り、『ドロップ革命』をすると守護型ボスドロップが徘徊型ボスドロップになる。
本来徘徊型ドロップは等級を1段上のものをドロップすることがあるため、ミサトが感じていることでも間違っては無いんだけどな。
「ということは、徘徊型がどういうものをドロップするのか、ということだね!」
「そういうことだな。俺の予想では徘徊型が落とすのは、もうこれ以上ないという究極の装備なんじゃないかと思う」
「究極の装備!?」
「また何か凄い名が出てきたですの!」
俺の言葉にカグヤとサーシャがとても良い合いの手を入れてくれて話しやすい。
テンションアゲアゲ状態がさらに上がってしまいそうだ。
「ゼフィルス。落ち着きなさい」
「あ、はい……」
なお、ブレーキシエラがこっそり後ろから囁いてくるのでテンションが天井を突破することは無かった。セーフ。
これがジト目だったら危なかったぜ。
「こほん! まあ言うなれば、最上級装備の中でもずばぬけて性能が良い装備なんかがドロップするんじゃないかとにらんで――そう、俺の『直感』さんが囁いてくるんだ!」
「なるほどね! 私も、この中にはなんだか良い物が入っている気がするわ!」
「マジで!?」
「なんでゼフィルスが驚いているのかしら?」
なんでも何も、ラナの勘は本物。
え? 俺の『直感』さん? ダンジョンの中では大人しいものですよ。
もちろん究極装備というのは〈ダン活〉プレイヤーとしての知識だ。
しかしラナが入っている気がするというのなら、その可能性は非常に高い。
ついに貯めに貯めまくった〈装備強化玉〉を使うときが来たのかもしれない……!
「こほん! 開けてみれば分かる! 長い話は開けてからにしよう! それじゃあ早速開けるぞ!」
「待ってましたわ!」
「早く開けてくれたまえ、ぼくはこの中が気になって仕方ないのだよ」
「このパーソナルフィールドのルールとか、もっと色々意見を交わさなくちゃいけないようなことがいっぱいあるはずなんだが……」
「たは!」
〈金箱〉の前にはノーアと、いつの間にかニーコがくっついてた。
いつの間にくっついたんだニーコは!? まったく、だがくっつきたい気持ちも分からなくはないのでよしとしよう。
メルトの呟きが聞こえた気がしたが、俺は華麗に耳を素通りさせて〈金箱〉の前に屈んだんだ。
「ああ、〈幸猫様〉〈仔猫様〉〈愛猫様〉! いつもありがとうございます! 是非良い物をお願いいたします!」
「ぼくからもお願いするのだよ!」
「私もよ!」
ニーコとラナの応援に支えられ、俺の祈りは届いた気がした。
――よし、今だ!
俺は〈金箱〉をパカッと開いた。
すると中からは――レアリティで言うところのレジェンド色に煌めくレシピが入っていたのだ。
「な、なにこれ!」
「キラッキラなのだよ! こんなの見たことがないよ!」
「おおお!」
レシピがレジェンド色に光輝いているとか、初めての現象。
これにはラナもニーコも、そして他のメンバーも驚きを隠せないようだ。
俺も驚いた。一発目から〈レジェンドレシピ〉が来るとは!
これは最上級ダンジョンの徘徊型とレアボス、そしてレイドボスからしかドロップしない、まさに究極のレシピ。
その性能は通常ボス産やエリアボス産よりも高く設定されており、〈ダン活〉でトップクラスの装備やアイテムが書かれているんだ! まさにレジェンドレアと呼ばれるにふさわしいレシピ! それがこれなのだよ!
「ルル、『解読』を頼む!」
「あい! 『解読』なのです!」
さきほど〈バーサークフォレストウルフ〉を『看破』したときから腕に〈幼若竜〉を抱きっぱなしのルルに『解読』してもらい、レシピを読めるものへとしてもらう。
ここら辺は他のレシピと変わらない。
まあ、このレジェンドレシピを『解読』するには最高LVのスキルが必要だがな。
「読めるようになってきたぞ。これは――むむむむむ! こ、これは――〈超幸運の世界樹薬〉レシピだとーー!?」
「な、なんだねそれは! 勇者君、詳しく! すっごく詳しく! 解説早よ!!」
「聞いて驚けニーコ、こいつはな、俺たちが〈幸猫様〉〈仔猫様〉〈愛猫様〉によって付与されている『超幸運』の効果を、一時的に付与できる〈ポーション〉のレシピなんだ!!」
「な、なんだってーーーー!?!?」
俺の説明にニーコがどっひゃーと驚くリアクション。素晴らしいリアクションだ!
ふはははははは!!
これはまたとんでもない物をドロップしたぞ!
「ちょーっと待ってくれたまえ! え? ぼくの聞き間違いかい? それは人様を誰でも『超幸運』に出来ちゃうお薬なのかい!?」
「まさにその通りだな。〈銀箱〉や〈金箱〉のドロップ率が格段に上がるぞ。使用する素材も、どうやら〈樹界ダン〉でゲットできる〈世界樹の葉〉や〈世界樹の実〉で作製可能らしい」
「大変だよ! これは世紀の大発見だ! 今から大量に素材を確保しに行かないと!」
俺はニーコにレシピを手渡すと、穴が空くくらい見つめるニーコ。まあ、実際穴は空かないけどな。空かないよね?
しかし、改めて初っぱなからとんでもない物をドロップしてしまったな。
誰でも『超幸運』付与。それ、この世界だとまた違った意味を持つだろう。
チラッと振り返ってシエラを見てみると、リーナやセレスタン、メルトなどギルドの頭脳を集めて緊急会議を開いていた。俺もこっそり参加してみる。
「リーナ、これが及ぼす効果がどれほどか分かる?」
「いえ、正直見当が付かない影響が出ることは確実ですわ。――セレスタンさんは?」
「僕たちの手には負えないでしょう。流通するにしても、学園にまず話を通さなくては。まず学園長に報告ですね」
「1つ分かるのは、これが金のなる木だということだ。さすがは〈樹界ダン〉と言ったところだろう。どんな黄金の実でもこの薬には敵わないだろうな。これがハンナ女史の手で量産された日には……物の価値が大変動を起こすに違いない」
うむ……。
これもハンナに任せれば大量生産は可能だ。
しかし、すでに〈幸猫様〉たちのドロップは学園に教えているし、そうとんでもないことが起こることでも……いや、あるか。
だから学園もまだ〈幸猫様〉のことを秘匿してるんだもんな。
売るにしても、ひとまずは学園公式ギルドだけになる予感。
まあ、いいだろう。どんどん手を広げていけば良いのだ!
そして行く行くはこの世界にも素晴らしい装備を溢れさせて……ふはは!
こうして最上級ダンジョンボスの〈金箱〉は最初からとっても好調なスタートを切ったのだった。
あとがき失礼いたします。お知らせ!
ついに〈ダン活〉初となる短編集01巻が発売しました!
また、コミックス5巻も同時発売!
短編集01巻とコミックス5巻の発売は――2025年10月1日本日です!!
TOブックスのオンラインストアでセット購入していただいた方には、特別SSを2点プレゼント! リカの着替え中カラーイラストも付いてくるよ!
短編集01巻は、これまで発売した〈ダン活〉小説1巻から5巻の特典集!
オンライン特典SSが5点、電子特典SSが5点(全て1万字)が収録されております!
さらに本巻だけのオリジナル、シエラ視点の書き下ろしも1万字付き!
全てがWebでは公開されていない、オリジナル〈ダン活〉物語集です!
オススメですよ~!
是非是非ご購入ください!
これからも〈ダン活〉をよろしくお願いいたします!




