#1789 2パーティ推奨ボス、最上級守護型ボス初撃破!
「みんな! ここはおそらく2パーティ推奨ボスだ! 3パーティ以上は入れず、さらにボスは最初から1ハンディ状態にあると俺たちは結論付けた!」
ざわわ。
メルトとの会話は近くに居たメンバーも聞いていたが、全体に通達するため声を張って周知する。
「ガオオオオオオオオオン!」
「よく分かりませんが分かりましたわ! 要は倒せば良いんですのよ! いつも通りですわ! 『超カウンターブラスター』!」
「ああ、お嬢様が見事な脳筋様に……でもおかしいですね。言っていることが尤もだと感じます」
「クラリス、それはいったいどういうことですか!」
「ガオオオン!?」
なぜか俺たちの協力謎解きプレイの感想にノーアとクラリスのコントが返ってきたんだぜ。だが、ノーアの言う通り。ぶっちゃけいつも通りだ。
2パーティでボス戦なんて〈竜ダン〉以外の上級上位ダンジョンでは毎回していたからな。
それもこれも、最上級ダンジョンから始まるこの複数パーティプレイに慣れさせるためだった。
ノーアの「いつも通りですわ」のセリフは、俺が今まで教えてきた成果とも言える言葉だったんだ。ちょっと嬉しくなったよ。
「1ハンディが最初から付いていたボス、そういうことだったんだね! それじゃあ、ここからは本気でやっちゃうよー! 『色欲の鏡』! 『攻撃力ドレイン』! 『防御力ドレイン』! 『魔法力ドレイン』! 『魔防力ドレイン』! 『素早さドレイン』!」
「いいぞ! ミサトに続け! みんな本気解禁だ!」
今までの様子見から一転――本気解禁。
「ガオン?」
なぜかボスのウルフさんが少し怯えた表情をしたような気がしたが、きっと気のせいだろう。
「動きを止めるぞ――『アーカーシャ・グラビティ』!」
「『ゴッドドラゴン・カンナカムイ』!」
「『エターナルフロスト』ですのー!」
ミサトのデバフがヒットしてステータスが下がると、そこにメルトが重力をプラスして動きを止め、俺とサーシャの強力な〈六ツリ〉魔法がヒットした。
これまでで一番ダメージが入る。
「ガオオオオオオオオオン!」
「お、バフアイコン! ミサト奪え!」
「オーイエー! 『パーフェクト・バフ・ドレイン』!」
ミサトを甘く見てもらっては困る。相手をデバフ状態にする『ドレイン』系の他に、相手がバフをしてもそれすら『ドレイン』してしまう【色欲】のエナジードレインはまさに底なし。〈相手はずっと弱体化したまま〉を維持するのにこれ以上の職業はない。
「ここまでされると、ちょっと可哀想に思えるわね――『アジャスト・フル・フォートレス』!」
「ガオン!?!?」
「防御勝ちキタ!! 今だクイナダ! やれい!」
「『狼王剣』!」
ズドバンッ!!
凄まじい衝撃が〈バーサークフォレストウルフ〉を吹っ飛ばす。
シエラの防御勝ちによって大きく仰け反ったところにクイナダのユニークスキルがズドンズバンしたのだ。
凄まじいダメージと共に〈バーサークフォレストウルフ〉は抵抗もできずにダウンした。
「ナイス! 総攻撃だーー!」
ダウンしたら総攻撃!
相当なダメージが入ったな。そして、10人で戦っているのに接触無し。
フレンドリーファイアも無しだ。今までやって来たことが生きているとしっかり感じられる。
「ガオオオオオオオオオン!」
「む、バーサク状態か! ヘイト無視が来るぞ! シエラ、やってしまえ!」
「任せなさい――『完全魅了盾』!」
バンッ!
「ガオン!?」
バーサク状態のヘイト無視。『バーサク』系を使うモンスターがよく使う手だな。
効果は、HPがレッドゲージに突入していなくても怒り状態になれるのだ。
各メンバーに貯まっているヘイトを無視し、さらに自身の攻撃力や防御力を上昇させ、暴れまくる。
だが、シエラには効かない。
シエラの『完全魅了盾』はヘイト関係無くタゲを強制的に向けさせる。
タゲを奪うのだからヘイトがあろうと無視してようと関係無い。
「ガオ・オ・オ・オ・オーーン!」
「『鉄壁』!」
激しく暴れながらシエラに攻撃しまくる〈バーサークフォレストウルフ〉。
樹によるめちゃくちゃな軌道の攻撃や、自身の体当たり、切り裂き、肉球スタンプ、尻尾ビンタ。それを全てシエラが小盾と大盾で防いでいく。
使用スキルは〈三ツリ〉の『鉄壁』のみだ。さすがはシエラ、パナイぜ。
「『巫女狐の快方儀式』! 『巫女狐の大快癒儀式』! シエラ先輩のヒーラーは私に任せて!」
「オッケーカグヤちゃん! それじゃあ『桃色サンクチュアリ』!」
「私のやることなーい!」
珍しくヒーラーが忙しそう。さすがは最上級ダンジョン。
まあ、タンクが1名嘆いているけど。
「トモヨは大天使になってくれ、バーサク状態が解けたところを狙って『エルシール』連打だ!」
「オッケー! 『大天使フォーム』!」
「クイナダは溜めておいてくれ」
「分かったよ! ――『必殺の溜め』!」
「さすがはシエラ嬢、あの猛攻を軽く耐えるか――『グラビティ・ボール・エクス』!」
「デバフ掛かってるしな。シエラならあれだけで余裕だろ。〈三ツリ〉スキル使っているところからして明らかだ。それよりメルト、そろそろだ」
「――任せろ」
暴れまくっている〈バーサークフォレストウルフ〉はその動きが全く読めない。回転しながら攻撃したと思ったらジャンプしてトリプルアクセル尻尾薙ぎ。鬣の樹を伸ばして傘回しかという範囲攻撃を繰り出したりとむちゃくちゃだ。
だが、そろそろバーサク状態も切れるころだろう。
――よし、今だ。
「メルト!」
「『グラビティフィールド』!」
「ガオン!?」
『グラビティフィールド』はさっき一瞬でも〈バーサークフォレストウルフ〉を捉え動けなくした実績のある優秀なスキルだ。バーサク状態が消えた瞬間、メルトはこれを発動し、ボスの動きを止めた。
そこにトモヨが飛んできて。
「はいはいおとなしくしててねー! 『エルシール』! 『エルシール』! 『エルシール』! 『エルシール』! 『エルシール』! 『エルシール』! 『エルシール』! 『エルシール』! 『エルシール』! 『エルシール』! 『エルシール』! 『エルシール』!」
『グラビティフィールド』から抜け出そうとした〈バーサークフォレストウルフ〉を盾でくっつけて封じ込める。
こうなればもうあの大暴れもできず、動く事もできない。大チャンスだな。
「いくぞー! 総攻撃だ! 『天光勇者聖剣』!」
「ギャイン!?」
まずは俺が先制、『聖剣』系で動きを一瞬停止させる。あとはこっちのものだ。
「『グラビティ・メテオ・エクスボール』!」
「私も参加しちゃうよ! 『サンライト』!」
「『グロリアススマイト』!」
「全100本発射ですわ! 『レボリューションセンチュリー』!」
「私は1000本発射です――『トリリオン・レイソード・イグニッション』!」
「『氷龍』いくですの!」
動きを止めたら総攻撃。これボス戦の基本。
最近はトモヨだけでは止められない大型ボスも出てきたので、メルトと協力して身動きを封じ、そこへ一斉に総攻撃を叩き込む。
そしてトドメだ。
「『必殺・大神抜閃・破邪銀狼華』!」
クイナダが『必殺の溜め』で凄まじく溜め込んだ威力を大剣に乗せ、超強力な威力の上級必殺ユニークスキルを解放。
ズバシャアアアアアアアンッッ! という強烈な音と衝撃を生み出して一撃で残り1割以上残っていたボスのHPを全て吹き飛ばしたのだ。
「オ、オーン…………」
がっくりと無念そうにエフェクトの海に沈んでいく〈バーサークフォレストウルフ〉。
「さあ仕上げだ! ノーア! カグヤ!」
「おまかせーのですわ! 『ドロップ革命』ですわー!」
「はい! 〈金箱〉きてー! 『神頼み』!」
エフェクトが終わると、中からは〈金箱〉がドロップしていたのだった。