#1786 最上級ダンジョン攻略開始!まず1層から!
ケルばあさんチェックもクリアし、「ほんと、〈エデン〉はいつもキレイだねぇ。安心して送り出せるさね」と手を振って送り出してもらった俺たちは、再び〈新世の樹界ダンジョン〉に入ダンした。
「クイナダは今回俺と同じパーティだ。最前線を突っ走るぜ! よろしく頼むぞ」
「うう、なんか別の意味で緊張してきた。よ、よろしく~」
今回1班は俺、クイナダを確定とし、メルト、ミサト、トモヨに入ってもらった。
クイナダはさっき感傷が治ったばかりなのになぜか震えている気がする。いや、きっと気のせいだろう。
「最前線か、俺に任せておけ。どこから来ようとも俺が全て吹き飛ばす!」
「メルト様かっこいいー!」
「豪華なメンバーだよね! このメンバーなら最上級ダンジョンだって難なく突破出来ちゃう気がするよ!」
魔法アタッカーのメルト、ヒーラーのミサト、タンクのトモヨだ。
物理アタッカーのクイナダが確定枠だったのでバランスを取ってこのメンバーにしてみた。
まさに最前線を進むのに適したバランスだな。
足を踏み入れたダンジョンは、昨日と変わらない。上下左右前後斜め、全てが植物によって形成された階層だ。
「リーナ」
「サポートは任せてくださいまし。昨日のうちに階層門は見つけていますわ。カイリさんと一緒にナビしますわね」
「最初はちょっと探索メインにするつもり、階層門へは2時間ほどで到着できるルートで組んだよ」
「助かる」
サポート&ナビである10班に確認を取ると、こんな答えが返ってきた。
どうやら昨日のうちに持ち帰ったデータを分析し、独自のルートを練ってきてくれたようだ。昨日は忙しかったから疲れていただろうに。ありがたい。
「まずは最上級ダンジョンに慣れることから始めるぞ。他の班も、十分気をつけて進むように。昨日はカルアが罠を回避するスキル『罠突破』を使ったのにもかかわらず、足が地面に嵌まるという事態が発生した。足下にも十分気をつけてくれ」
「「「「はーい!」」」」
「ん。今度は嵌まんない。気をつける」
小さな注意喚起も忘れずに。
最上級ダンジョンはモンスターだけが脅威では無いのだ。
「必要があれば足場を凍らせたり、アイテムを使って戦いやすいフィールドにする手もあるからな。地形対策も必要があれば躊躇しないでくれよ」
なんだか上級下位ダンジョンの時を思い出す。あの時も環境対策がメイン。モンスターは二の次だった。
最上級ダンジョンもたまに足場が不利になることがあるので気をつけよう。
タンクは地形に左右されない飛行も地上戦も可能なトモヨを採用。
これだけで最前線を歩く1班の安全性が高まるというものだ。
「よし、それじゃあ出発だ!」
「「「「おおー!」」」」
注意喚起が終わったので出発だ。
まず、俺たち1班の役目は探索しつつ階層門へのルートを調べ、安全かどうかを確かめること。また、どんな罠やギミックがあるのか、その種類や傾向を探ることだ。
他の班が四方八方に広がり探索していくのを見送りながら、俺たちも出発した。
「『グラビティ・レビテーション』! 『重力加速』!」
「やっぱりメルト様の浮遊魔法って便利だよね~」
「私より先には行かないでよ~」
メルトの浮遊&加速のコンボは、こういう上下階層のあるダンジョンを探索するのに便利だ。
俺とクイナダとミサトが地上を、トモヨとメルトが空を飛びながら辺りを探索していく。
「あ、メルトストップだ!」
「私がやる! 『斬層結界』!」
「なに? うお!?」
トラップ発見。俺の『直感』さんが反応してくれたんだ。
どうやらクイナダの『将軍の勘』も反応したようで、一気にメルトの所までジャンプしたクイナダが斬撃の結界を張るが如く無数に剣を振るい、真上からメルトをむち打ちしようとしていた蔓の20本を弾き返す。
「ええ!? 私が通過したときは大丈夫だったのに!?」
目を丸くしたトモヨが慌てて戻ってくる。
そう、実はメルトが今通過した地点はすでにトモヨが通った後だったのだ。
安全だと思っていたところにトラップが発動してメルトも面食らった様子だな。
「危なかったねメルト様」
「ああ。どうやらここのトラップは1度目では攻撃してこないタイプらしい」
「二段構えみたいだな。ミサトは油断せずにいつでも結界を張れるよう準備しておいてくれ」
「オッケー! メルト様は私が守る!」
ミサトが勇ましい。
最上級ダンジョンともなればそのトラップも最上級。
最初に通る先頭は大体がタンクなので、2番目に通る人物に狙いを定めたトラップが発動することがあるのだ。
かと思えばしっかり先頭を狙うトラップもあっていやらしい。
ならばカルアみたいな最速の斥候を先頭に出し、続いてタンクが続く、という対策を講じても、昨日見たとおり、速い斥候封じのトラップまである始末。
マジ最上級である。対策取っていてもダメージが入るのだ。
この経験から〈ダン活〉プレイヤーたちは、トラップはみんな薙ぎ払って破壊。
という対策が染みついているのである。
まあ、本気で罠対策したければ【罠プロ】などの専門職が必要だな。
「むむむ、こうもトラップがあると厄介だよ~」
「もういっそ、全て薙ぎ払うか?」
「たはは! でもそれじゃあ探索にならないよ?」
なお、現在は探索中。
罠を調べるのも俺たちの役目なので破壊するわけにもいかないんだよなぁ。
まあ、探索し終わった後ならメルトと一緒に存分に薙ぎ払おう。
「『警戒網』! う~ん、なんか罠がそこら中にある感じだよ~。あ、モンスター接近中!」
「やっとか」
クイナダの索敵に感あり。と思ったところでリーナから通信が入った。
「『ゼフィルスさん、上からと正面から、2つの群が接近中ですわ!』」
「こっちもクイナダが捉えた。これから対処する」
「『ご武運を。1つは〈フォレスト〉系のモンスターですわ』」
そう言ってリーナの通信が切れたのでみんなに共有。
「群が2組接近中、〈ハイリーフウルフ〉と〈フォレストウルフ〉の群だ」
「正面と、あと上からも来てる!」
「少し下がって迎撃、トモヨ、受け止められるか?」
「もちろんだよ! 『エル・フォース』!」
「見えたよ!」
襲ってきたのは〈ウルフ〉系、その中でも全身が木の葉でフサフサの〈ハイリーフウルフ〉と、身体の一部が樹木になっている〈フォレストウルフ〉の群だった。
上から来るのは〈ハイリーフウルフ〉。こいつらは葉っぱをハンググライダーのように広げて滑空できるので上から奇襲してくることが多い。
〈フォレストウルフ〉は樹木を操り武器に仕立てて攻撃してくる〈ウルフ〉だ。
進化してんなぁ〈ウルフ〉。さすがは最上級〈ウルフ〉。
ほとんど同時接近だったので少し下がり、良い感じに迎撃出来そうなポイントで待ち構える。
「「「ウォン!」」」
ほぼ同時に飛び掛かってきたが、挑発スキルを使っているためトモヨへと集中。
トモヨは二枚盾を前に出して、いきなり六段階目ツリーで迎撃した。
「『主の盾』!」
「「「キャイン!?」」」
バンと登場したのはまさに神の盾。
神々しいまでに煌めく2つの超巨大な盾だった。
これは反射の盾。神に攻撃を加える愚か者に裁きと鉄槌と天誅を喰らわす。
真っ直ぐ飛び込んで来た2つの群は、思いっきり同時攻撃を仕掛けていたので反射により吹っ飛んだ。もちろんこの大きな隙は逃さない。
「ナイス! ――『フルライトニング・スプライト』!」
「『コキュートス・ゼロ・ディザスター』! 行け、クイナダ、ゼフィルス!」
俺の〈五ツリ〉でさらに崩すと、メルトが大技を使いながら地面を凍らせ平らに形成した。これならば罠は気にしなくて良い。
「いくよ! 『必殺・横薙ぎの大山顎』!」
「よし――ここで『フィニッシュ・セイバー』だ!」
フィニッシュ!
強力な迎撃によってHPをかなり減らしていた群は、クイナダと俺の突入をまともに受けてしまい、壊滅してしまうのだった。
「おっし、毛皮ゲットー!」
「とりあえず、六段階目ツリーや五段階目ツリーを使えば楽勝というのは分かったな」
「それだとヒーラーの出番がないんだよ~!」
「お、〈アルティメットエリクサー〉の素材、〈世界樹の実〉の採集ポイント発見! これでMPを気にせず撃ちまくれるな!」
「全力で戦えるというのは素晴らしいな」
「メルト様の鬼~! しばらく私はデバフ担当になりそうだよ~」
「あははは!」
探索はとても順調に進んだ。
採集ポイントも何カ所も見つけ、MPを気にせずに攻撃を撃ちまくれる。
そして2時間が経ち、リーナとカイリの予定通り、俺たちは揃って2階層への階層門の前に立っていた。




