#1772 〈SSランクギルドカップ〉後夜祭突入!
〈SSランクギルドカップ〉。通称、SSランク戦が無事に終わり、俺たちには第一回優勝ギルドという名誉と、〈エデン〉にはSSランクギルドという新しい称号ランクが与えられることになった。
「SSランクギルド昇格やったぞーーーー!! よっしゃー!!」
「わーいなのです!」
「わ、わーいわーい!」
「もうゼフィルスったら、もうそれ何度目よ。ルルもハンナも、いい加減ゼフィルスに付き合わなくてもいいわよ?」
「まあまあシエラさん、いいじゃありませんの今日くらいは」
「……そうね」
ここは第一アリーナの〈エデン〉専用控え室。
そこで俺はもう何度目かも分からない、優勝トロフィーをよっしゃーと掲げていた。
たまに表彰状を掲げてのよっしゃーもするぞ。
もうこれがたまらんのです。飽きずに何回もやれる!
毎回乗ってくれるルルとハンナにはマジ感謝だ。
シエラはちょっとあきれ顔だけど、リーナに言われて仕方ないわねみたいな微笑を浮かべているのでよし。
俺たちは今控え中、この後に行なわれる後夜祭に出席するためだ。
〈エデン〉は優勝ギルドなので参加確定。とはいえそれは俺とシエラだけなので、他のメンバーは引き上げてもいいのだが、明日は卒業式。
先輩たちと過ごす最後の夜ということもあってみんな残っていた。
「どうだハンナ? 優勝トロフィーだぞ!」
「もうゼフィルス君それ3回目だよ? 優勝おめでとう!」
「はーっはっはっはー!!」
ちなみにここにはハンナや〈アークアルカディア〉組もいたりする。
いろんな企業が〈エデン〉のメンバーを探しているのだとかで、こっちに避難してきたらしい。ここなら学園が守ってくれるからな。関係者以外立ち入り禁止なのだ。
また、そのおかげでハンナにもこうして褒めてもらえるので俺は大変気分が良い。
「もうゼフィルスったら、次は私にも持たせなさいよ!」
「いいぞラナ! 優勝おめでとう!」
「嬉しいわね!」
さらに優勝トロフィー授与ごっこまでしちゃって全然テンションが下がらないのだ。
これまであったどの大会の優勝よりも嬉しい。
それは、俺の努力が実を結び、こうして学園一の最強ギルドであると証明されたからだろう。
ついにここまできたという達成感もあってテンションが上がったままいつまで経っても戻って来ないのだ。
「そろそろ後夜祭の準備が整うようです」
セレスタンからの報告が来た。俺ではなくシエラに。
「それじゃあ、いい加減ゼフィルスを戻さないとね」
「できるのですかシエラさん?」
「ええ……」
そんなことを言うシエラが、今度は表彰状を掲げ、トロフィーを掲げるラナとツーショットを撮っているところにやってくる。そして、
「ふはははははは! 良いスクショが撮れたんだぜ――」
「……ツン」
「――ほぐふぁっ!?」
「ゼフィルス!?」
「ゼフィルス君!?」
瞬間、俺の脇腹にとんでもなく心地よい衝撃が走ったんだ。
振り向けばジト目のシエラが……どうやら俺は、ジト目のシエラから脇腹にツンとされてしまったらしい。それを認識した瞬間、一度は降りてきたテンションが、また元気良く打ち上がろうとする。しかし。
「セレスタンから報告よゼフィルス。後夜祭がもうすぐ始まるらしいわ。だから落ち着きなさい」
「なんだって!」
俺は打ち上がろうとしたテンション君を抱えて戻し、シエラの話を咀嚼した。
後夜祭。これは俺と学園長が企画した、卒業生へのプレゼント。
学園長は〈SSランクギルドカップ〉の締めでとても素晴らしい演説をしてくれたよ。
これなら企業側が挙って中位職の卒業生を求めてくれるに違いない。
「セレスタン!」
「ここに」
「おっとそこに居たかセレスタン。準備はどんな感じだ!?」
「本当に一発で戻って来ましたわ……」
現実に戻って来た俺がセレスタンに首尾を聞く。
その傍らでリーナが目を丸くしているのが目に入った気がしたんだぜ。
「はい。全て滞りなく。就職を希望する学生たちは第二アリーナへ移動してもらい、企業の多くがそれに続いて向かったとのことです」
「ふっふっふ。そうかそうか。さすがは学園長だ!」
さすがはやり手の学園長。
万事上手くいったらしい。
後夜祭では、「〈SSランクギルドカップ〉終了お疲れ様でした~」「先輩たちと過ごす最後のお祭り!」という側面の第一アリーナ会場と、「ザ・就活イベント!」「これが最後のチャンスだ! うおおおおお!」という側面の第二アリーナ会場に分かれる。
俺たちが参加するのはもちろん第一アリーナだが、学園の本命は第二アリーナだ。
先輩たちが上手くいってくれることを切に願う。
と、ここでアナウンスが流れた。
「ピンポンパンポーン―――後夜祭の準備が整いました。みなさん、どうぞ会場入りしてください」
「よし、いくぞみんな!」
準備が出来たので、会場入り。
すでにどっぷりと日が暮れてしまっている。
まあ、決勝戦も夜になっちまっていたしな。
「ん! お肉いっぱい! 早い者勝ち!」
「あ、待てカルア、スキルは使うんじゃないぞ!?」
カルアがすぐにお腹を鳴らして飛び出して行ったよ。リカが追いかけていったし、きっと大丈夫だろう。
「第一アリーナの一部とはいえ、4分の1を使うとは大きな会場だよね」
「さすがに2キロ四方全て使うと遠すぎるからな。だが、お祭りの場と考えればこれくらいのスペースでも違和感無いんじゃないか?」
「そうかな? そうかも?」
会場は第一アリーナの4分の1のスペース、北西エリアで行なわれた。
クイナダがこんな大きな会場見たことないという感じで立食会場を見渡している。
とはいえお祭りとして見ればそう大きすぎる規模でも無い。
一つ一つ見て回り、気になるものは飲み食いしていけばいいのだ。
「クイナダさんとは、もうすぐお別れなんだね」
「うん。私もハンナちゃんや〈エデン〉のみんなと、もっともっと、あと1年一緒に居たかったけれど……」
先輩たちと過ごす最後の夜、ということは、つまり留学生たちとももうすぐお別れということでもある。
クイナダとはとても仲の良いハンナが隣に来て寂しそうに呟いていた。
留学生制度は、本校で学んだことを、分校にも広めてほしくて始めた制度。
クイナダは〈第Ⅱ分校〉の代表の1人で、トップクラスの1年生だった。
そして、留学生の中では一番の成功者でもある。
〈第Ⅱ分校〉からの期待はとんでもなく大きい。
俺たちとしては後1年一緒に居てもらいたいが、〈第Ⅱ分校〉からの期待を背負って留学してきたのだ、さすがにその期待は裏切れない。
「ゼフィルス君、なんとかならないかな?」
「さすがにどうにもならないな。卒業する先輩に卒業しないでと言うのと同じようなことだしな」
「そっか」
「だから、今日は目一杯クイナダと喋れ」
「うん! そうだね! そうするよ!」
ハンナからのお願いは叶えてあげたいが、さすがの俺でもどうにもできないことはある。俺としてもクイナダが抜けるのは色々痛いんだが、こればっかりは仕方ない。
クイナダは言わないが、〈第Ⅱ分校〉にも友達は多かったみたいだしな。
ハンナにはこうして憂いが残らないようにアドバイスするしかできない。
留学生組は終業式から1週間以内に出発し、各自で分校に戻るか、集団で戻るかを選ぶことができる。
クイナダは集団組、つまり〈第Ⅱ分校〉からの迎えの便に乗って出発するらしいので、あと1週間と少しでお別れだ。最後にすげぇ豪華なお土産とか用意したいな。なにがいいだろうか。
え? 自重さんよ、どうしたんだ? え? 旅に出たい? よし、いっておいで。――さぁて、クイナダのお土産何にしようかなぁ。(自重さん旅行中)
「混沌!」
「ゼフィルス氏!」
「おお! オスカー君、インサー先輩!」
考えに没頭していたら、いつの間にか後ろから見慣れた集団がやって来ていた。
さっき決勝戦で戦った相手、〈ギルバドヨッシャー〉のみなさんだ。




