#1768 〈エデン〉は混沌を絶対倒す作戦を発動する!
「最後の巨城は〈ギルバドヨッシャー〉の手に渡ったか、さすがだなぁ。ここからは中盤戦だ! 作戦通り行くぞ! 小城マス取りでも〈ギルバドヨッシャー〉に負けないぜ!」
「「おおー!」」
さすがは〈ギルバドヨッシャー〉。
最近の〈エデン〉はほぼ巨城マスを総取りに近いレベルで確保してしまうため、5城しかゲットできないとか久しぶりだ。
〈ギルバドヨッシャー〉は4城なので、本当にギリギリの戦い。
これで小城Pで負けていれば、ほぼ互角のポイント差になっただろう。
だが、小城マス取りの速度は〈エデン〉の方が速い。
速さメインのメンバーで揃えてきたからな!
しかし、ただ小城マス取りするだけでは二流だ。
〈ギルバドヨッシャー〉は一流のギルド。絶対中盤でも色々仕掛けてくるに違いない。
俺もリーナを通し、すぐに全体に指示を出さんとする。
「リーナ、聞こえるか!」
「『こちら混沌ですわ!』」
「また混沌ですわになってんぞ!?」
以前の〈ギルバドヨッシャー〉戦同様、【エウレカカオス】の通信妨害が強力!! もう超強力!!
だが一度は直撃を喰らった攻撃(?)だ! 俺の腹筋はギリで耐えきった!
俺は1つの指示をリーナに出す。これが俺たちの混沌対策だ!
◇
「『リーナ、聞こえるか!』」
「こちらリーナですわ!」
「『また混沌ですわになってんぞ!?』」
『ギルドコネクト』をゼフィルスさんに繋いだところ、ゼフィルスさんが息を詰まらせたのが分かりました。
これは、また妨害が蝕んでいますわね。さっきからバンバンこちらに侵食してきてますわ。ですが、
「シュミネさん!」
「はい! 『妨害アロマセラピー』!」
シュミネさんが使ったのは妨害系のスキルを無力化するアロマセラピーを放つスキル。
シュミネさんは妨害スキルのスペシャリスト。索敵、地図、通信を妨害することはもちろん、『幻惑迷森』や『敵意迷渡』は相手の召喚獣を惑わせてしまいますし、逆にこうして妨害スキルを無力化するスキルも使えるのですわ。
「ゼフィルスさん、こちらリーナですわ!」
「『! 感度良好!』」
「通信回復しましたわ!」
これが対オスカーさん用の通信妨害対策ですわ。
すぐに次に取りかかりますわ!
◇
「『ゼフィルスさん、こちらリーナですわ!』」
「! 感度良好!」
「『通信回復しましたわ!』」
ナイスリーナ、シュミネ!
混沌の通信妨害はシュミネで防げる。初動から何度か妨害されていたようだが、本拠地に配置したシュミネが良い仕事をしているな!
「例の作戦を実行するぞ! 絶対に中盤で決める、カイリとの連絡を密にしてくれ!」
「『承知いたしましたわ! 〈ギルバドヨッシャー〉は依然として〈エデン〉と対人戦をしないよう、細心の注意を払いながらマスを確保しておりますわ!』」
〈ギルバドヨッシャー〉は対人戦が弱い、わけではないが強くもない。
その強さの本質は戦略だ。
故に、対人戦は戦略という広い盤面の一戦法でしかないと考えている。
六段階目ツリーを開放すると使ってみたくなる衝動に駆られるはずだが、〈ギルバドヨッシャー〉は完全に対人戦を仕掛けずに行動していた。
「ゼフィルス君!」
「カイリ! よく来てくれた! ――カルアはツーマンセルをチェンジだ! ミジュと行動してくれ!」
「ん!」
ここでカイリと合流。カイリとミジュのツーマンセルとパートナーをチェンジし、俺とカイリ、カルアとミジュというメンバーに変更して解き放つ。
「カイリ、早速だが頼む」
「うん! 『無限収納』! 〈竜の箱庭〉――起動!」
俺とカイリのツーマンセルは移動無し。保護期間が張られたマスで、カイリに『無限収納』から〈竜の箱庭〉を取りだしてもらった。
これ、2つ目の〈竜の箱庭〉。
リーナが持っているのとは別の、〈竜ダン〉でゲットした2つ目の〈竜の箱庭〉である。
〈竜の箱庭〉が立体的な地図を写しだす。だが、まだ何カ所か霧で隠れて見えない部分があった。マッピングしてない箇所だ。しかし、安心してほしい。
「霧を払うよ――〈全地図探査〉!」
これはカイリの職業スキルではない。消費アイテムだ。
とあるUFOっぽい円盤の機械が〈竜の箱庭〉の上からビームを発射すると、霧で隠れていた箇所が見えるようになる。
そう、このアイテムは、『フルマッピング』を疑似的に使用することができる最上級アイテムなのだ。グッジョブ!
これにより、〈竜の箱庭〉が完全版となる。
「探すね――『立体地図レーダー完備』! 『レーダー地図・弱所大看破』!」
『立体地図レーダー完備』が敵味方を色で教えてくれるようになり――そしてこれが本命、『レーダー地図・弱所大看破』によって〈ギルバドヨッシャー〉の弱所を探るのだ。
本来ダンジョンなら敵の少ない場所、弱い敵のいる場所などを看破するスキルだが、なんとギルドバトル中に使うと、相手ギルドの弱所、転じて戦闘職以外の相手がどこに居るのか看破し探ることができるスキルなのだ。これがどういうことかというと――。
「対象は――オスカー君!」
ジュン……!
そんな効果音と共にスキルが1つの人物を照らした。オスカー君の現在の居場所だ。
そう、支援職ならばこれで居場所が分かってしまうのだ。
これが対〈ギルバドヨッシャー〉戦の対策。
〈ギルバドヨッシャー〉の要は――オスカー君だ。
俺は、これまでのギルドバトルから、オスカー君の探知こそが〈ギルバドヨッシャー〉最大の強みであると確信していた。マジ混沌。
しかし、オスカー君自体の戦闘力は大したことない。だって戦闘職じゃないもん。
なら『レーダー地図・弱所大看破』で居場所がわからないか? と思ったのが切っ掛けで、なんとカイリのこのスキルを使えばオスカー君の居場所を特定することが可能だったのだ!
「リーナ! オスカー君討伐隊を出撃だ! 場所は西、図Q―23地点!」
「『了解ですわ! すぐに指示を出します!』」
「俺とカイリも行く!」
「うん!」
地図のマスはチェスなどのようにアルファベットと数字の組み合わせで伝えることが可能だ。
これでオスカー君の居場所は〈エデン〉全体に共有された。
狩りの時間である。
◇
「混沌混沌! フローラルな香りが混沌を侵食しているーー!?」
「どうしたのだオスカー君! もっと詳しく教えてくれ!」
「混沌!」
「なに!? 〈エデン〉の混沌臭がフローラルな香りに邪魔されてる!? それじゃあ分からないぞ!?」
こちらは図Q―23とゼフィルスたちがやり取りしていた地点。
オスカーの探知に謎の妨害あり。
混沌臭を嗅ぎ分けることができる謎の嗅覚を持つオスカーだが、シュミネが放つ『妨害アロマセラピー』によって混沌臭がフローラルな香りになってしまったのだ。これでは混沌が嗅ぎ分けにくい! オスカーは絶賛ピンチに立たされていた!
オスカーの謎の探知能力の真髄は嗅覚なのだ。
シュミネの妨害は、オスカーの混沌的嗅覚を的確に突いて封じていた。
「ええい、とにかくスキルを使うんだ!」
「『カオスレーダー』! 混沌!」
「なに!? 敵接近だとな!?」
カイリからの探知スキルに激しく反応し、オスカーが混沌注意報を発令していた。
「混沌!」
「ここにいると危険なんだな? よし、すぐに移動だな!」
指示を出しているのは元サブマスターのオサムス。
現サブマスターと元サブマスターのツーマンセルとか、そこはかとなくとんでもやべぇが、ギルドバトル中にそんな小さなことを持ち込むなんてことは一流の〈ギルバドヨッシャー〉はしないので安心だ。
オサムスはこう見えて元サブマスターに居たほど優秀な男だ。
混沌語もマスターしており、しっかりオスカーを守りながらも危機回避に動いていた。しかし。
「混沌!」
「読まれている!? ジャミングが邪魔されているのか!?」
「――『カオスシグナル全カット』! ……混沌!」
「〈六ツリ〉のジャミングを使ってもここに接近する混沌は払えない、か。こうなったら逃げに徹する! 【道案内人】の誰かを捕まえるのだ!」
「混沌! 『カオスサーチレーダー』! 混沌!」
完全に自分が狙われているとなぜか知ったオスカーの混沌的な説明で、オサムスは何が何でもオスカーを逃がそうと決断する。
先程ラナとエステルの猛攻から最後まで逃げ切った【道案内人】ペアを捕まえ、オスカーを連れて行かせて逃がすことにした。
今オスカーを討ち取られるわけにはいかない。
そしてその決断は、ギリギリ間に合った。
「居たわ! 『大聖光の十宝剣』!」
「混沌!」
オスカー討伐隊が到着したのだ! 討伐隊の代表、ヒーラーのラナによる先制攻撃が放たれた!
「うおおおお!? 回避ー! 『こっち来い』!」
「またなんですぞーー!? 『その道、案内と違います』!」
「オスカー君を頼むぞ!」
「こんとーーーん!!」
なんとか【道案内人】がオスカーを確保!
逃げ始めたのだ。
ここからはオサムスも別行動、オスカーを逃がすために1人で別方向に逃げた。
追ってくればめっけもんだが、さすがにそう上手くはいかず、エステルたちは【道案内人】たちの方へまっすぐ向かう。
「今度こそ逃がさないわ! ――エステル!」
「はい。今度はこちらが追いかける側です――『ドライブ全開』!」
追いかけてくるのは〈戦艦・スターライト〉。エステルとラナのツーマンセル(?)だ。
さっきは突破されないよう、キーパー的な感じで守りに徹していた(?)が、今度はこっちから仕掛ける番。
まるで水を得た魚のように〈白の玉座〉に座ったラナが良い攻撃を連射する。
「その混沌をこっちに渡しなさい! 『神の天誅』!」
「ひいいいい! 『その道、案内と違います』!」
「混沌!」
カオスだ。
こうなるとオスカーは連れられるだけで、全てを【道案内人】にお任せするしかない。
いや、そうでもない。オスカーも十分貢献していた。
ラナとエステルはリーナの指示の下、非常に効率よくオスカーたちを追い詰めていた。この辺は赤のテリトリーで赤マスが多く、保護期間を張って逃げることはできない。
ならば空マスへ向かいたい【道案内人】、保護期間さえ張れれば2分間も逃げられる。そうなればクールタイムは回復し、追いかけっこは【道案内人】が有利だ。スキルが使えればどんな人たちからも逃げられると【道案内人】たちは確信していた。
だが、空マスが遠い。ラナとエステルが行かせてくれないからだ。
しかし、ここで活躍したのがオスカー。どう判断したのか不明だが、「あっちは混沌が少ない!」的な混沌語で【道案内人】を誘導し始めたのだ。
「混沌!」
「あっちか! 『猛烈な道案内ダッシュ』!」
「混沌!」
「お任せあれですぞ! ――『案内オーエス』!」
「な!」
回り込んだと思ったらエステルの裏をかいて【道案内人】が突破したのだ。
マズい、このままでは空マスへの侵入を許してしまう!
しかし、そうはならなかった。
「な、なんだあれはーーーー!?」
「に、2隻目ですぞーーーー!?」
「混沌!! こんとん! こんっ……ケヒュゥ、ケヒュゥ!?」
そう、なんと〈戦艦・スターライト2番艦〉、アルテ号が進路を塞ぎに猛烈な速度で接近してきたからだ。
これには【道案内人】は度肝を抜かれ、オスカーは混沌が豊富すぎて過呼吸気味。あまりの事態にオスカー、体が付いてこなかった模様!
「待たせたな!」
「じゃんじゃじゃーーん!」
その船首に立つのは〈エデン〉のギルドマスター、ゼフィルス。
その後ろからカイリが顔を出していた。
さらに何人ものメンバーが乗っている。
そう、東側にいたゼフィルスは、カイリの『無限収納』から〈戦艦・スターライト2番艦〉を出し、アルテが到着したところで乗り込んでメンバーの一部を回収。
そのままエステルと挟み撃ちを狙ってきたのだ。
「ん。速さなら負けない」
「私も。良いパンチをお見舞いする」
「ルルもチョッキンチョッキンにしちゃうのです!」
「牽制は私に任せて! 私のモンスターが誰1人通さないから!」
「たは! 動きを封じるなら任せてね」
同乗していたのはカルア、ミジュ、ルル、フラーミナ、ミサト、アルテだ。総勢8名。ラナとエステルを加えれば戦艦2隻にメンバー10名というこの配置。絶対にオスカーをここで仕留めるという気概が見える。
「混沌野郎さん、指示を!」
「こ、こんひょん……」
「力が入っていないんですぞ!?」
「部下さんがいないこんな時に!?」
「ナイスタイミングよゼフィルス! 『大聖光の無限宝剣』!」
「『レード・セーゼ・スラスト』!」
「いっくぞーー!」
「ん! ――『ディスアピア・モーメント』!」
「右から行く――『森界疾駆』! 『森界熊エキサイト』!」
前後から挟まれた【道案内人】2人とオスカーは急停止。
その隙にラナとエステルがとんでもやべぇ攻撃を発射! それ戦闘職でも受けるの厳しいやつ!
もちろん、ゼフィルスたちもそれに合わせて〈戦艦・スターライト2番艦〉から飛び降りた。
エステル号とは違い、アルテ号の上ではスキルが使えないのがネックなのだ。
カルアは全てを回避するユニークスキルを使用したまま突っ込み、ミジュは『森界疾駆』で速度を上げ側面へと回り込みながら『森界熊エキサイト』を発動。
クマンやビッグクマン系の攻撃の威力を、一時的に倍にする。
ミジュや、多分使わなくてもオーバーキルです!
「とう! 『瞬間移動』!」
「逃がさないでねウーちゃん、ルーちゃん、フーちゃん! 『我に勝利を取ってこい』!」
「鏡を操り道を塞ぐ! なんてね――『ミラークロスバリア』!」
ルルが飛び降りると同時に消え、フェンリル3兄弟が出発し、アルテ号から飛び降りたミサトが結界を操って逃げ道を塞ぎに掛かる。
「マズいですぞ!?」
「『神世界インフィニティ』!」
「こんひょん!」
「え? ぎゃああああああああああ!?」
「一撃ですぞーーーーー!?」
「あ、間違えたのです!」
【道案内人】の1名がここで脱落。
ラナとエステルの攻撃を避け切れたかと思いきや、ルルが瞬間移動してきて切っちゃったのだ。さらに、
「『512・ヘル』!」
「『ビッグクマン・ギガデストロイフィスト』!」
「『スピンターン』です――グハ!? ―――あああああああ!?」
「こんとん!?」
ここで残りの【道案内人】も呆気なく退場。
なんとかスピンとターンで回避を試みたが、ミサトのバリアにぶつかって弾かれ、フェンリル3兄弟にパックリされたところにルルが撫で撫で斬りして退場だ。
「オスカー君、ここでジ・エンドだーーーー! 『天光勇者聖剣』!」
「こんとーーーーーん!!」
ズドーーーーーンという巨大な音と共にオスカーは聖剣の光に飲み込まれ、退場してしまったのだった。