#1765 控え室メンバーズ!決勝戦選抜メンバー決定!
「ついに、この時が来たか!」
「混沌!」
「嗚呼、分かるぞオスカー氏よ。これからとてつもなくワクワクする出来事が起こるのだ。この日のために対エデン用の特効アイテムも用意した。共に弾けようじゃないか!」
「こんとーーーーーん!!」
「やべぇ、混沌野郎が何を言っているのか分かっちまう。それに、俺はなんで決勝戦に出場することになっているんだ? この謎、誰か答えて?」
「それは俺もマージ分からない」
「震える」
こちら〈ギルバドヨッシャー〉の控え室。
〈ギルバドヨッシャー〉のギルドマスター、インサーと、サブマスター、オスカーが肩を組んで笑っていた。
側には理解を放棄したそうな表情をしている神官ことシンジと、首を振る魔殴ことジョウ。そして絵になるポーズを取りながらキラキラエフェクトを振りまいている戦慄ことエドガーの姿があった。
もちろんそれだけではない。ここには実に〈ギルバドヨッシャー〉の決勝戦出場メンバーが全員集まっていたのだ。そこに補欠はいない。
みながワクワクした表情で、スクリーンを見つめていた。
そこに書いてあるのは『〈SSランクギルドカップ〉――決勝戦!』の文字。
〈ギルバドヨッシャー〉はほぼノーカテゴリーのギルドにもかかわらず、とうとうここまで勝ち進んで来たのだ。
対する対戦相手の名は――〈エデン〉。
今まで何度もギルドバトルを行ない、切磋琢磨して共に(?)強くなってきた。
まあ、今のところ全戦全敗だが。
「いよいよフィールドが決まるぞ! ――チルミ君!」
「はいはーい! どんなフィールドに決まってもお任せあれだよ!」
インサーが声を掛けたのはこの〈ギルバドヨッシャー〉の地図担当、【ワールドマッパー】のチルミ。
彼女がいなければ作戦は練られない。
メンバー全員が見守る中、スクリーンに映るラダベナとムカイの両先生が会場を盛り上げ、大型モニターに映ったフィールドをスロットのように回転させて、ランダムに決勝戦フィールドを決めていた。
会場中に轟くドルルルルルルという回転音。会場のドキドキが最高潮に達したとき、それはピタッと止まる。
「ほう! まさかここに決まるとはね! 〈SSランクギルドカップ〉決勝戦のフィールドは―――〈Z〉フィールドだよ!」
――――うおおおおおおおおおおおおおおお!!
決定。
それは決勝戦にふさわしい、バトルフィールド。
停止したモニターに映っているのは〈Z〉フィールドだった。
「「「「ほほほほ~~~~~う!」」」」
こちら〈ギルバドヨッシャー〉の第一声。
みんな「ほほう」言い過ぎ!
「〈Z〉フィールドか!」
「混沌!」
「これはまた面白いフィールドになったな!」
「登場するのは2年半ぶりか? まさか俺たちの代でとはな!」
「まさに決勝戦の舞台にふさわしいフィールドじゃないか! ひゃっほー!」
「しかし2年半の間、一度も選ばれなかったフィールドだ。〈エデン〉は大丈夫か?」
「おいおい、相手はあのゼフィルス氏だぞ?」
「そうだそうだ。それよりも自分たちのことをもっと考えるべきだ」
「〈エデン〉のこれまでの戦歴を見れば初のフィールドと言えど油断はできない」
「ああ、全力で楽しまないとな!」
フィールドが決まってみんなワクワクのドキドキだ。
かなり久しぶりに決まったフィールドなので〈エデン〉のメンバーはみな初めてのバトルになるはずだが、もちろんゼフィルスなら何かしら仕掛けてくるだろうという謎の信頼があるので問題は無い。
「チルミ君! 地図をここへ!」
「はいはーい! 『地図起こし』!」
いつの間にか置いてあった大テーブル。そこに広げられた巨大な紙の地図。
紙だがアイテムであり、チルミがスキルを使えば浮き出てくる〈Z〉フィールドの地図。
「チルミ君、第32番のデータを頼む!」
「はいでーす――『ブクマデータロード』!」
チルミのスキルが再度発動されると、何やら様々な書き込みがされたイラストが〈Z〉フィールドの地図上に浮き出てくる。
これは以前かき込んだデータ。
チルミは以前使用し、そこにかき込んだデータごと地図を起こすことが可能なのだ。
さすがは【ワールドマッパー】、地図特化型では最高位の職業である。
「では、作戦をおさらいしよう」
いつの間にか地図の周りには〈ギルバドヨッシャー〉の面々が囲っていた。
これより〈ギルバドヨッシャー〉の内密な作戦会議が行なわれる。
◇
「おいおい〈Z〉フィールドじゃんか! こりゃまたとんでもないフィールドになっちまって」
「前に戦った〈12つ星〉フィールドに似てるわね! でも、こっちの方がよりZっぽいわ!」
「中央の観客席が俯瞰するとZの文字に見えるフィールドですね。巨城は9城、ですがポイントなのが、その多くの巨城が相手の本拠地と同じような距離にあり、取りにくいという部分ですわ」
「その通りだリーナ。ちゃんと覚えているな」
「それはもう、猛勉強しましたもの」
決まったフィールドはなんと〈Z〉フィールド。
丸型のフィールドの中央にZ型の観客席が配置されている形。
このフィールドの特徴はなんといっても巨城の距離がお互いさほど離れていないこと。
つまり、先取合戦になりやすいのだ。
〈ジャストタイムアタック〉の真価を見せるフィールドと言い換えて良い。
Zの観客席の南北に本拠地が配置され、西に3城、東に3城の巨城が配置されている。
これを〈西1巨城〉〈西2巨城〉〈西3巨城〉。
〈東1巨城〉〈東2巨城〉〈東3巨城〉と呼称する。
そしてZ観客席の内側に3城、〈北Z巨城〉〈南Z巨城〉〈中央巨城〉が配置されていた。
この巨城の配置が絶妙で、特に〈西2巨城〉〈東2巨城〉〈北Z巨城〉〈南Z巨城〉〈中央巨城〉の5城がお互いの本拠地から狙うとき、さほど距離が大きく変わらないのだ。マス数で言うと大体40マス前後で隣接が取れる。
さらに5城ばかり気にしていると、残りの〈西1巨城〉〈西3巨城〉〈東1巨城〉〈東3巨城〉も奪われる危険性があるのだ。
この4城はお互いの本拠地に多少寄ってはいるものの、〈救済巨城〉というにはあまりに本拠地から遠く、約20マスほど離れている。
つまり9城全てに警戒が必要で、何から取るべきなのか取得選択が必要となるのだ。加えて〈ジャストタイムアタック〉の時間配分、相手がどの巨城を狙いに来るのかの予想図、被害が出た場合それを最小限に留めるための作戦など、練るものがたくさんありすぎるのだ。
正直リーナには苦労を掛けたと思う。
今までやって来たギルドバトルの中でも、〈九角形〉と同格の最上級フィールドに分類される場所、それが〈Z〉フィールドだ。
今まで選ばれたことがほとんど無かったらしいが、決勝戦で出てきたか~。
「ではまずメンバーを決めるぞ!」
「お願いいたしますわ!」
控え室に48人全員が集合し、まずはメンバー決めから入る。
「まず俺、シエラ、ラナ、エステル、カルア、シャロン、シズ、パメラ、メルト、ミサト、リーナ、カイリ、フラーミナ、ラウ、ノーア、クラリス、カグヤ、シュミネ、ゼルレカの19名は確定」
準決勝で出場しなかった13人のメンバーと、俺たち確定枠6人を合わせて19人。
残りの16人を決めていく。
「ここはまさに最速メンバーがいないと勝てないフィールドだ。足の速さを優先させてもらう。よってセレスタン、ルル、ノエル、アイギス、レグラム、オリヒメさん、ロゼッタ、フィナ、ルキア、アルテ、ミジュ、クイナダの12名には入ってもらいたい」
これで31名が決定。
ここから〈ギルバドヨッシャー〉の性格と戦法を鑑みて、残り4人を選択する。
「そして残りの4人だが、リカ、カタリナ、エリサ、そして――ナキキに入ってもらいたい」
「なんとっす!?」
「私が入ってないのですが?」
「シェリアはアリスやキキョウの面倒を見てあげてくれ」
「そういうことなら承知しました」
「あのゼフィルス先輩、自分も入っちゃってよろしいんっすか!?」
「よろしいぞナキキ。その破壊の腕で、巨城を速攻で落とすんだ!」
「う、うっす! 頑張るっす!」
ああ、残念という声も多少聞こえたが、それよりもみんながんばってという声援が多く寄せられた。
火力最強格のシェリアやシヅキ、アリスやサーシャ、サチ、エミ、ユウカなどは今回お留守番。
〈ギルバドヨッシャー〉のメンバーを見るに、ガチの火力対決でシェリアやシヅキクラスは必要にならないだろう。それよりも巨城優先メンバーを組みたい。
タンクやヒーラーもおそらくそこまで必要無いということでこのメンバーにした。
「みんながんばってねー」
「観客席で応援しています!」
「みなさん、勝ってくださいね!」
「こちらは任せてください。私がいる限りこの子たちの安全は保証されます」
「そ、そうか。よし、みんな応援も頼むな!」
アリスとキキョウとマシロの純粋な応援と、シェリアのよく分からない波動を浴びながら手を振って見送り、俺たち出場選手たちも作戦をおさらいする。
「リーナ、これからの作戦をドンッと頭に叩き込んでくれ。分からない部分はどんどん聞いてくれ」
「ゼフィルスさん、お願いいたしますわ!」
さあ、〈ギルバドヨッシャー〉よ。本気で作戦練るからな!




