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ゲーム世界転生〈ダン活〉~ゲーマーは【ダンジョン就活のススメ】を 〈はじめから〉プレイする~  作者: ニシキギ・カエデ
第三十九章 〈SSランクギルドカップ〉戦―学園トップギルドは!?
2012/2077

#1755 〈百鬼夜行〉対〈ミーティア〉戦!初動の結果




「さあやって参りました、準々決勝の第2試合! 〈百鬼夜行〉対〈ミーティア〉の対決です!」


「おお! 珍しくスティーブン君が熱くなってる!」


「はい、僕は〈百鬼夜行〉と〈ミーティア〉の対決は、実は全試合観戦しておりまして、ずっと注目していました」


「今判明した新事実ーーー! スティーブン君が追っていたバトルだったとは驚きだーーー!」


「僕も驚きました。まさかこんなカードが……よくぞ当たってくれましたという心境です」


「盛り上がってきたわね。私も〈ミーティア〉には仲の良い友達がいるから、勝ってほしいわね」


「おおっとユミキさんも注目しているーーーー!? これは私も目が離せなくなってきたーー! 果たして勝つのは!? Sランクギルドの矜持を見せつけ、今回も〈百鬼夜行〉が持っていくのか!? それとも最後の意地を見せつけ、今度こそ〈ミーティア〉が勝利するのか!」


「〈エデン〉戦よりも注目している人が多いかもしれないわ」


「さあ、間もなく試合開始です」


 ◇


 こちらは赤チーム〈ミーティア〉の本拠地。

 試合開始まで残り30秒。


「行くわよみんな! ここで勝って、〈百鬼夜行〉との因縁に終止符を打つわ!!」


「「「「おおー!」」」」


「みんな、悔しさをバネにここまで頑張ってきたのだわ。絶対に勝てる。だから、全力を出し切りましょう」


「「「「おおー!!」」」」


 ギルドマスターアンジェとサブマスターマナエラによる最後の発破がギルドメンバーを押す。全員が気合いを入れ、今か今かとその時を待った。

 そして上空スクリーンのタイムがゼロになり、試合開始。


 視点は観客席のゼフィルスに移る。


 ◇


「試合開始ね!」


「みなさん、勢いよく二手に分かれて走り出しています! 〈百鬼夜行〉が早い! 北と南、両方でかなりの速度で進行してますよ!」


「〈百鬼夜行〉のあれ、〈クマライダー・バワー〉!」


「〈ミーティア〉もスピードで負けてはいないわ、あれは〈魔法使いの箒杖〉に跨がるツーマンセル! 低空飛行で駆け次々とマスを手に入れているわね」


「両者凄い初動だな!! 片や〈乗り物〉、片や箒杖による神速のダッシュ! 考えたな! 〈ドーナツクロス〉フィールドでは巨城が固まっている! 速度が速ければ速いほど有利だ!」


〈ドーナツクロス〉フィールドは東西に本拠地、南北に巨城の密集地があるシンプルなフィールド。

 だがシンプル故に密集地を征した者が全ての巨城を制してしまうこともある。

 なによりも初動は速度が大事。


 そして〈百鬼夜行〉では〈クマライダー・バワー〉を採用。ギルドに4人も居る「熊人」全員が4台の〈クマライダー・バワー〉に跨がり、さらに2人を乗せることで圧倒的な小城マス取得を見せつけていた。


 これには俺も驚いたよ。考えたな。


「〈馬〉などに騎乗するのとは違い、〈イブキ〉や〈クマライダー・バワー〉などの〈乗り物〉は操縦するために小城タッチが難しい。それを補うために2人を乗せ、操縦役と小城タッチ役を分けた訳か!」


「ゼフィ先輩、私もあれやる?」


「面白いな! ミジュは〈エデン〉でカルアの次に速い。そんなミジュが〈クマライダー・バワー〉、いや〈クマエンジェル・バワード〉を使えば、素早く大人数を巨城へ運べる。2人どころか10人運んだって良い。これは検討の余地が大いにあるぞ!」


 ミジュの提案に俺は思案する。これはそれほどまでに画期的な戦法だったんだ。

 ゲームの時、乗っているキャラをあそこまで細かく動かすことはできなかった。

 故にこんな戦法はゲームに無かったんだ。しかしここはリアル。新たな戦法が生まれてもなんら不思議では無い。

 この戦法をベースにして魔改造すれば――ふはは!

〈スタダロード戦法〉を上回る新たな戦法の可能性が見えた気がした。


 さすがはSランクギルド〈百鬼夜行〉……!

 よくこんな戦法を思いついた! やはりクマは全てを制するのか!?

 あとで戦法名とか聞きに行かないと!


 対して〈ミーティア〉は、以前にも使った〈魔法使いの箒杖〉を使った戦法。

 2人1組で箒杖に跨がり低空で空を飛びながら次々と小城を取りつつ、『追い風』などのスキルを使って高速で南北へと向かう〈ミーティア〉。


 だが、その戦法は危険だ。

 ついにお互いのギルドが南北の巨城密集地で会う。


「その戦法はダメなの―――『羨ましいからそれ禁止』!」


「出会い頭の一撃です!」


 キキョウがそれに素早く反応する。

 そう、〈百鬼夜行〉は〈ミーティア〉と出会った瞬間、ギルドマスターホシ先輩が勢いよく〈クマライダー・バワー〉から飛び降りて、ユニークスキルを発動したのである。

 だが、〈ミーティア〉はこれを一度喰らったことがあった。その対策も万全だった。


「『ホイッスル』!」


「『警笛』!」


 それは挑発スキル。

 なぜ挑発スキルをギルドバトルで? と思うが、その目的は音にあった。


「みんな箒杖から飛び降りたわ! 北側は――あれは見たことがあるわね!」


「クエナの足場結界だな! ダウン回避!」


「音で合図を送り、自ら箒杖から飛び降りてダウンを回避したのね」


 禁止されるのは織り込み済み。

 禁止されるまでのプロセスにこそ意味があった。

 初動でみんなが固まっている時、ここで禁止にされるとみんなバラバラに行動してそこら中で対人戦している時よりも断然リカバリーしやすい。


 つまり被害を最小限に抑えることを〈ミーティア〉は選択したようだ。

 笛を吹いたのは、南北どちらでホシ先輩にぶつかったとしても、それを反対側の仲間に知らせるためだろう。

 実際、ホシ先輩が現れたのは北側だったが、南側で禁止にされた〈ミーティア〉メンバーもしっかり結界の足場などを張りダウンを回避している。


 上級部門・公式最強職業(トップオブジョブ)ランキング第八位、【嫉妬】のユニークスキルはこうして最小限の被害で防がれた。


「巨城に最初に到達したのは、当然〈百鬼夜行〉ですね!」


「でも〈ミーティア〉も自力で走ってたどり着いたわ。あ、対人戦が始まったわよ!」


「この〈ドーナツクロス〉フィールドは巨城が4城も密集しているせいで南北では対人戦が勃発しやすい。〈ミーティア〉はやる気満々だぞ」


「〈百鬼夜行〉も応戦しているわ」


「うわ! お互い被害が大きいわよ! 巨城そっちのけで何してるの!」


「ラナ様ラナ様、ブーメランです。我々も同じことしましたから」


 この〈ドーナツクロス〉フィールドは対人戦こそが重要。

 相手の陣地に侵入したいという思惑と、侵入を防ぎたいという思惑が交差し、対人戦が勃発するのだ。


〈百鬼夜行〉の方が速く、赤本拠地のある東側に侵入してこようとするが、「やらせるかー」と言わんばかりに〈ミーティア〉が迎撃。いつもの一斉攻撃で〈百鬼夜行〉の先陣を吹き飛ばした。


「すっごい威力なのです!」


「ええ。かなりINTを育てていますね。それに装備は」


「あれは〈エデン店〉の新作、上級上位(ジョウジョウ)級の杖ですわ! 〈ミーティア〉は全員揃えてきてますわよ!」


「南側はハクが出てきたな。そして対するはマナエラ先輩! サブマスター対決か!」


「北側はホシ先輩対アンジェ先輩です! ギルドマスター対決ですよ!」


「どっちが勝つの~?」


 南側では今俺が言ったようにハク対マナエラ先輩の戦いが勃発。

 北側ではホシ先輩対アンジェ先輩のギルドマスター対決が勃発した。キキョウは、やっぱり同じ【嫉妬】であるホシ先輩が気になる様子だ。


 先手は〈ミーティア〉。マナエラ先輩を中心に次々と魔法を撃ち込みながら移動している。

 まるで移動砲台だ。

 撃つときには立ち止まる必要はあるものの、その隙を完全にカバーしあっていて、お互いの連携力の高さを感じさせる。


〈百鬼夜行〉も負けてはいない。ハクを中心とした「獣人」部隊が魔法と素早さでどんどん追い詰めんとしていく。いや、現在攻略中の巨城を守るように展開していった。


 片やノーカテゴリー、片や「獣人」カテゴリー部隊だ。

 やはり〈ミーティア〉が不利か。だが、〈ミーティア〉の粘りは驚異的だった。


 ◇


 状況が動いたのは試合開始6分。


「あ! 〈ミーティア〉の〈ジャストタイムアタック〉なのです!」


「ああ! 3人退場しました! さらに巨城を1つ先取です!」


 移動しながら虎視眈々と狙っていたのだろう。

〈ミーティア〉は〈ジャストタイムアタック〉を撃つと見せかけて、なんと巨城を攻略中の〈百鬼夜行〉の部隊に打ち込んだのだ。保護期間が明けた瞬間を狙った絶妙な攻撃。さらには巨城まで先取してしまったのである。


 これには会場中がどよめいた。

〈百鬼夜行〉は〈ミーティア〉からの襲撃を迎撃するため、少人数で巨城を攻略していたため時間が思ったよりも掛かり、隣接の保護期間が明けてしまったのだ。そして、おそらくこれは〈ミーティア〉の仕込み。

 そこを狙っていたのだろう。〈ミーティア〉は十分削れた巨城ごと、〈百鬼夜行〉のメンバーを撃破して見せたのである。見事な作戦勝ちだった。


 だが〈百鬼夜行〉もただ黙ってやられていたわけじゃなかった。

〈ジャストタイムアタック〉の隙を突き、ハクがユニークスキル『九尾大妖狐グラ・シャ・クイーン』を発動。

 結界を張っていたタンクごと〈ミーティア〉の守りを打ち砕き、強力な一撃を叩き込んだのだ。


 これで〈ミーティア〉は2人が退場。

 南側では最終的に、巨城の取り合いで2城を〈百鬼夜行〉、残り2城を〈ミーティア〉が先取した。


 そして北側である。

 こちらでは激しいアンジェの猛攻をホシが防ぎまくっていた。

 アンジェは早くも決めにいく。


「喰らいなさいホシ! あなたのために用意したとっておきよ――ユニークスキル『シューティングスター・アトランティス』!」


 アンジェの職業(ジョブ)は「女」カテゴリーしか就くことのできない上級職、高の中――【流星の魔女】。

「それ流星??」と多くの疑問の声を頂戴したアトランティス落としを発動。

【嫉妬】はすでにユニークスキルを使っている。この特大のユニークスキルを防げるか!?


 だが、【嫉妬】は罪深き【大罪】職。


「『完全コピー魔法・真・それ私もやるー』!」


 なんとホシは、ユニークスキルと全く同じ技、他の人のユニークスキルをコピーして発動した。


「な、な!!」


 これは【嫉妬】の六段階目ツリー。

【嫉妬】は条件が揃えば他の職業(ジョブ)のユニークスキルをすら発動出来る。なにそれ罪深すぎる。

 故に上級部門・公式最強職業(トップオブジョブ)ランキング第八位なのだ。


 上空でアトランティス同士がぶつかり合い、しかし相殺せずにそのまま降ってくる。


「アンジェ先輩! 『全方向(ぜんほうこう)激多重結界防御壁げきたじゅうけっかいぼうぎょへき』!」


「クエナ!」


【多重展開結界師】のクエナがユニークスキルで味方を守りセーフ。しかし。


「今なの!!」


「「「「うおおおおおおお!!」」」」


「「ああ!?」」


「巨城が取られた!?」


 だがこの隙にホシはダメージを受けるのも構わず前に出て〈ミーティア〉が削っていた巨城を横から先取していた。

 これは〈ミーティア〉にとって大きな大打撃。


 残り空き巨城は現在〈百鬼夜行〉が攻略中の1城のみ。

 現在〈百鬼夜行〉が2城、〈ミーティア〉が1城を先取、このラストを取れれば〈百鬼夜行〉は大きな有利を取れる。

〈ミーティア〉は絶対にこれを先取したい。


「みなさん、一斉攻撃よ! この一撃に賭けるわ!」


「させないのよ!」


〈ミーティア〉の一斉攻撃は〈ジャストタイムアタック〉と同義。

 ホシが最後の巨城攻略中のメンバーを庇わんとする。だが、一斉攻撃で狙われたのは巨城ではない、ホシの方だった。


「『シューティングスター』!」


「「「「「『アルティメット・フレアバースト』!」」」」」


「ああ! 狙いは私なの!?」


 これはマナエラも使っていた、巨城と思わせて対人を狙う初見殺し戦法。

〈ミーティア〉が〈ジャストタイムアタック〉を得意とするが故につい巨城狙いだと思ってしまう心理を突いた、〈ミーティア〉の作戦だった。

 そしてこれは――成功。

 大量の〈六ツリ〉の一斉攻撃がホシを襲った。


「『罰当たり』! 『究極嫉妬盾』!」


 しかし、ホシは自分にできる最強の防御スキルを使って生き残る。むしろ『罰当たり』カウンターで〈ミーティア〉の1人を退場にするほどの健闘。

 だが、先ほどのユニークスキルと合わせて受けたダメージはかなりのもので、引かざるを得ない状況に追い込まれた。


「ホシさん!?」


「ホシ先輩を下げて! 回復を!」


「!! ――今よ! 巨城を確保!」


 アンジェはこのまま追いかければホシが討ち取れるかも、という追い打ちをしたい気持ちをグッと我慢して、冷静に巨城の獲得を選択した。

 相手はあの〈百鬼夜行〉、もし深追いしていたら手痛いしっぺ返しが待っていた可能性もあった。まだまだ試合は始まったばかりなのだとアンジェは気持ちを落ち着かせる。


 初動の結果、〈百鬼夜行:4城〉、〈ミーティア:4城〉を獲得した。




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ゲーム世界転生〈ダン活〉1巻2022年3月10日発売!
― 新着の感想 ―
コピー魔法の情報も事前入手しておきたかったですねえ ガルタイガに鎖鉄球供与しちゃったゼフィルスなら情報もうっかりこぼしたかも……
ミーティアの作戦勝ちになるか!?
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