#1748 第5回戦、試合開始!〈中央巨城〉の戦い!
ブザーが鳴り、試合開始。
〈集え・テイマーサモナー〉は全員一斉に騎乗して駆け出した。
騎乗するのは〈集え・テイマーサモナー〉のもはや代名詞となったモンスター、――〈戦車鳥ピュイチ〉系列。
現在いくつか進化している個体もいるが、この〈ピュイチ〉こそが初動での主戦力だ。
35人中30人がこの〈ピュイチ〉を持っており、全員が騎乗することが可能。
アイシャを含むテイムスキルなどを持っていない5人も誰かが2人乗りで後ろに乗せることで行動可能にしている。
「「「「「『モンスタードライブ』!」」」」」
そして全員が一斉にドライブ系を発動。
凄まじい速度が起こる。
35人全員が超速で走り出したのだ。
これが〈集え・テイマーサモナー〉がAランクギルドでトップクラスに居る理由の1つ。
初動を圧倒的な数とスピードで制す、全員騎乗型〈ロードローラー戦法〉だ。
「いつものようにやる、いつものようにやる。大丈夫! 大丈夫!」
「カリン、しっかりしてよね!」
「ま、任せろい!」
カリンも2人乗りしている組の1つ。後ろに乗っているのはエイリンだ。
エイリンは【ドールマスター】。正直、〈ピュイチ〉以上の速度を持つドールがいないのでカリンと一緒に〈ピュイチ〉に騎乗している。
また、プレッシャーにビビっておるカリンの励まし役も兼ねていた。
カリンは以前1人で〈エデン〉の大部隊と戦ってやられて囲まれてしまった経験を持つ。〈エデン〉の強さはカリンが一番よく分かっているのだ。
〈集え・テイマーサモナー〉がその速度をもって最初に狙うは、〈中央巨城〉〈南西巨城〉〈北東巨城〉の3城。
お互いの本拠地からちょうど中間にある、お互いのギルドが取り合う巨城だ。
そこへ〈集え・テイマーサモナー〉は部隊を3つに分け、なんと12、12、11という大胆な人数を飛ばして制圧に出た。
これが〈集え・テイマーサモナー〉の攻略法。
ツーマンセルとか〈スタダロード戦法〉とか、後続なんてものはない。どこよりも先に大部隊を送り一気に巨城を落としきる。まさに速攻の作戦。
その後、南東側にある〈東巨城〉〈南側西巨城〉〈南側東巨城〉を手に入れるという、この〈土勢山〉フィールドではポピュラーな作戦だった。
なにせこの〈土勢山〉フィールドは広すぎて、相手側にある巨城まで非常に遠く、特に〈集え・テイマーサモナー〉の本拠地から〈北側西巨城〉まで最短で46マスも掛かるのだ。しかも直線ではなく対角線上に何十マスも走らなくちゃいけないので、距離は2キロメートル以上。うん、無理。
それは〈エデン〉も同じ条件なため、まず来ないだろうと思われる。故に最初狙うのは〈中央巨城〉〈南西巨城〉〈北東巨城〉の3城でオーケー。そう思っていた。
だが、そこを狙ってくるのが〈エデン〉なのである。
場所は〈中央巨城〉付近。
「〈エデン〉、こっちよりも4マスくらい速い!?」
「やば、そんなに速いの!?」
〈中央巨城〉に先に隣接したのは――〈エデン〉だった。
最近では速度で負け無しだった〈集え・テイマーサモナー〉の面々は全員が驚愕の表情。
カルアは〈ピュイチ〉よりも速い。ずっとずっと速い。
それについていくゼフィルス、レグラム、オリヒメ。
ゼフィルスは相変わらずAGI装備。否、それだけじゃなくなんと『勇気』まで使っていた。カルアは『神速』を使っていて、もうとんでもない速度になっている。
レグラムは馬のダンディ君に騎乗し、その後ろにはオリヒメという布陣。
1回戦でも見せた、超速の4人だった。
しかも〈中央巨城〉を回り込んで来て囲い、〈集え・テイマーサモナー〉に隣接を取らせない気だ。
「ま、負けるかーーー! エイリン、タッチ準備! あれ行くよ!」
「なんとしてでも取って、カリン!」
「『シン・バースト・Z・モンスタードライブ』!」
「『ナンバーワン・ソニックスター』!」
ラスト1マス。〈中央巨城〉の南東マス(図AA―27)。ここの隣接を〈エデン〉に取られたらもはや〈集え・テイマーサモナー〉に〈中央巨城〉の確保は無理。
絶対に取らなくちゃいけない場面。カリンはユニークスキルを発動。
それは神速のモンスタードライブ突撃。
Z軌道、つまり2回のV字ターンすら可能にする、超強力な超速突撃技だ。
あまりの速度に逃げることはできず、下手をすれば3回突撃を喰らってやられてしまう【ビーストテイマー】の優秀なユニークスキルである。
カリンの持つドライブ系の中でこれが最も速いため、これを直線に使い、神速の勢いで〈中央巨城〉の南東マス(図AA―27)を取らんとした。
対してカルアも少し出遅れる形でユニークスキルを発動。『ナンバーワン・ソニックスター』は一瞬で移動する、ほぼ瞬間移動みたいな移動スキル。止まった瞬間隙が出来るのが難点だが、ほぼ瞬間移動なので非常に優秀なスキルである。
ユニークスキル同士が小城へ伸び、ほぼ同時にタッチした。
そして染まったのは――赤色。
「にゃ!?」
ギリギリのギリギリでなんとか〈集え・テイマーサモナー〉がマスを確保したのだ。カルアは1歩前のマスまで吹き飛ばされてしまった。
「あっぶなーー!!」
「ナイスカリン! ――みんな、すぐに攻略に入るよ! 全員攻撃開始! 隣と合わせて!」
心臓をドキドキさせながらカリンが叫ぶ。〈中央巨城〉の隣接がまさかの間に合わない一歩手前だったのだ。しかも、本当にギリギリのところで隣接ゲットに成功とか、初っぱなから心臓に悪すぎた。
エイリンがすぐに周りに指示して〈中央巨城〉の攻略に入る。
「俺たちもやるぞ! カルアもじゃんじゃん叩き込め! 『ライトニングバニッシュ』だ!」
「ん! ひっかけ黒猫たち――『エージェント・レイド・クロネコ』!」
「〈エデン〉も攻撃を開始したよ!」
「エイリン! 全力の大技行くよ! 〈モンスターカモン〉! 来てバンちゃん! 『ハイパービーストモンスター』!」
「ガッテン! おいでませ――私の黒騎士様! 『パーフェクトドール』!」
カリンが呼び出したのは――なんと〈暗黒竜〉。
〈竜ダン〉の徘徊型ボスがご登場だ。
そしてエイリンが呼び出したのは、かっこいい20メートル級の黒騎士様。
ユニークスキル『パーフェクトドール』のおかげでもはやドールの面影は無し。本物と見間違うほどの完璧な黒一色全身鎧の騎士だった。そして。
「「出でよギルド最強の化身―――〈暗黒竜騎士様〉!」」
リンリンコンビ最強のモンスター第三弾!
〈暗黒竜〉に黒騎士様が合体した姿。
〈暗黒竜騎士様〉のご登場だった。珍しく偽者じゃない(?)。
「「「「おおおおおおおお!!」」」」
これには〈集え・テイマーサモナー〉メンバーも沸く。
これは奥の手中の奥の手。というか〈集え・テイマーサモナー〉最強の化身だったからだ。
それをいきなり切る豪快さ。
ギルドメンバーが沸きまくり、会場も爆発したような大歓声。
「さらにガイちゃん、ケルちゃんもカモン!!」
カリンの『三体導入』がものを言う。
〈巨人メタルゴーレム〉から1段階進化し、〈巨人メタル・ガイア〉になったガイちゃんと、例の本物じゃ無いケルベロス戦法で活躍(?)し、今では本物の〈地獄の門番犬ケルベロス〉へと進化を遂げた、三つ首のケルちゃんも突撃する。
最初っから全力全開、〈集え・テイマーサモナー〉最強を含むモンスター軍団が一斉に〈中央巨城〉へ攻撃を開始した。
もちろん、〈エデン〉も負けてはいない。いつの間にか〈エデン〉も後続5人が駆けつけて合流していたのだ。そして。
「大技いくぞ! 〈ジャストタイムアタック〉だ!」
〈エデン〉も必殺の〈ジャストタイムアタック〉を発動する。
同時着弾攻撃。今では非常に有名となった技だ。
その内容も〈集え・テイマーサモナー〉はよく知っている。
もうこうなったら、発動前に巨城を落とすしか無い。
「いっけーーー〈暗黒竜騎士様〉ぁ!!」
「みんなもがんばってーーー!」
「「「「「おおおおおおお!!」」」」」
モンスターに〈ジャストタイムアタック〉をさせることは難しい。
故に、〈エデン〉が同時着弾攻撃する前に全力攻撃を叩き込む。
「「「「おおおおおお!」」」」
「いくぜ――『天光勇者聖剣』!」
「『512・ヘル』!」
ズドドドンと衝撃。
〈エデン〉7人の〈ジャストタイムアタック〉対〈集え・テイマーサモナー〉の12人と大量モンスターの一斉攻撃が巨城を揺らす。
そして〈中央巨城〉のHPはゼロになり。
立った旗は――白。
〈中央巨城〉は――〈エデン〉のものとなった。
「あれ?」
カリン、今度は一歩及ばず、残念。




