#1725 生産ギルドの代替わりとテストの順位発表!
テスト明けの金曜日。
今日はテストの返却日だ。
本当は月曜日にテスト返却、火曜日に卒業式が予定されていたのだが、月曜日にはSSランク戦が入ってしまったのだから仕方ない。
テストで赤点を取るとSSランク戦に出場出来ないルールがあるからな。採点はSSランク戦前に終わらせなければいけなかったのだ。
採点お疲れ様です!
まさかテストが終わってから翌日には全校3万人超えの生徒の採点を終わらせ、順位まで確定させて朝に掲示板へ貼るとか、相変わらずどんな能力してるんだろここの学園。スキルバンザイ!
「いやぁ、学園の実力ってすごい」
「ゼフィルス君? 私知ってるよ? 学園が頑張ったのはSSランク戦のためだって。SSランク戦を提案したのって、ゼフィルス君でしょ?」
「その通りだハンナ! とても楽しみだな!」
「もう、ゼフィルス君ったら、シエラさんが居たらなんとも言えない目で見られちゃうところだったよ?」
それはもしや、ジト目のことだろうか? しまった、今から浴びにいかなければ!
「ゼフィルス君、そろそろ学園行こっか」
「おう!」
でもハンナと一緒に登校する方が優先だ。
朝のいつもの登校風景が始まる。
「しかしSSランク戦に生産部門が無かったのは残念だったな。ハンナたちなら、かなり上位、いや、優勝間違いなしだっただろうに」
「もう、ゼフィルス君ったら。えへへ。でも今回は戦闘課のSSランクギルドを決める大会みたいだから仕方ないよ」
学園も卒業式間近で忙しかったようで、今回のSSランク戦はいわゆる戦闘ギルドと呼ばれているギルドのみが対象だ。いや、別に出場自体は生産ギルドでも出来るが、そのバトル内容は戦闘ギルド用のギルドバトル、〈城取り〉なのである。
生産ギルドが出場しても秒でやられるだけだ。
ハンナに残念だと言ったのは生産ギルドバトル部門、〈作品コンテスト〉が無かったという意味だな。
ぶっちゃけ今のハンナが本気出して〈作品コンテスト〉に参加したらどうなるのかとか、かなり見てみたいと思っているのは秘密。
きっとまた世界の常識を塗り替えてくれる記録を出すに違いない。
「そうだ、この前言った〈生徒会〉の代替わりね、今日なんだ」
「ミリアス先輩が正式に〈生徒会〉を脱退するっていうあれか」
「うん。他のギルドもそうみたいだけどね。みんな一斉に今日の放課後みたい」
「了解だ。となると、後は卒業式を残すのみか。寂しくなるな」
「私も、なんだかミーア先輩がいない〈生徒会〉なんて考えられないくらいだよ」
少ししんみりした空気。
今日は、ほとんど卒業式の前日みたいなものだ。
〈生徒会〉を始め、生産ギルドなどではテスト明けの今日、最上級生の脱退が行なわれるところも多いらしい。
そうして卒業式でそのまま旅立っていくのだ。
「ゼフィルス君、ちょっとだけ手を繋いでも良い?」
「もちろんだ」
「ありがと」
そう言ってハンナは俺の手を取る。
毎日メイスを振るっているなんて信じられないような柔らかい手が触れてきた。
ミリアス先輩はそれだけハンナにとって大きな存在だったんだな。
「…………」
「…………」
しばらく無言のまま進み、あっという間にいつもの分かれ道に到着する。
「私ね、ミーア先輩にお礼いっぱい言うね。今までありがとうって」
「ああ、そして門出を祝福してやれ。おめでとう、がんばれって」
「うん。でも、なんだか大泣きされて抱きつかれそう」
「あ~、確かにイメージにバッチしハマるな。ハンカチ、いや、タオルがいるかもしれないな」
「うん。用意しておくね」
ハンナの脳内にはきっと、ギャン泣きしたミリアス先輩がハンナに抱きついて頬ずりしている光景が鮮明に描かれているだろう。俺の脳裏にも同じ光景が過ぎった気がしたんだ。
「それじゃあねゼフィルス君。今日はもう会えないかもしれないから、また明日ね」
「ああ。がんばれよハンナ」
「うん!」
そう言って手を振ってハンナを見送る。
寂しそうなハンナ。明日慰めよう。
◇
〈戦闘4号館〉の校舎に到着すれば、そこに居たのは1人の執事。
「ゼフィルス様、おはようございます」
「おはようセレスタン! 相変わらず、こんな時間まで待っていなくてもいいんだぞ?」
「そうは参りません。今日はテストの結果発表がある大事な日。ゼフィルス様を1人にさせていたら遅刻することもありえますので」
「な、なんて優秀な予測なんだ」
さてはセレスタン、プロだな?
テストの掲示板を見ていて遅刻。そんな自分が容易に想像出来てしまう不思議!
ハンナと一緒に登校するときは時間をズラし、結構遅めに登校しているので、一歩間違えば遅刻することになるのだ。
「こほん、それじゃあとりあえずテストの結果発表を見に行くぞ」
「畏まりました」
時計を見れば確かにあまり時間が無いのでセレスタンがいるのは助かるかも、と考えを改めた俺は、肩で風を切りながら堂々と進む。
テストの結果が張り出されている掲示板の前の廊下には、いつも通り多くの人がその結果を血走った目で見つめていた。
あと赤点一覧の前でorzしている学生がなんか多い気がする。
「お、おい、あれを見ろ! 〈勇者〉と〈微笑みの執事〉が来てるぞ!」
「なに!? み、道を開けろ!」
「また人の波が左右に分かれていくわ!」
「相変わらずすげぇ光景だぜ」
なぜか俺が進むと人波が左右に分かれていく、不思議だ。だがもう慣れた。
あまり時間も無いのでありがたい。
そのまま真っ直ぐトップ層の人たちが張り出されている場所まで来ると、まず1位を見る。そこには――。
第1位・ゼフィルス 点数900点
第1位・シエラ 点数900点
ふははははははははははははは!!
しゃああああああああああ!!
今回もバッチリ満点取ってやったぞーーーーー!!
たとえダンジョン週間中に勉強出来なくても俺の〈ダン活〉愛に陰り無し。陰りは無いのだーーーー!!
「おめでとうございますゼフィルス様」
「ありがとうセレスタン! やっぱり1位は最高だな!」
なお、セレスタンはいつも通り3位だった。
セレスタンもいったいどうなってんのかな? 今回は899点なんだけど??
ちなみに3位以降の一覧がこちらだ。
―――――――
第3位・セレスタン 点数899点
第4位・ヘカテリーナ 点数898点
第5位・オリヒメ 点数896点
第5位・レグラム 点数896点
第7位・メルト 点数885点
第8位・ラナ 点数884点
第9位・アイシャ 点数880点
第10位・ミサト 点数879点
第11位・カタリナ 点数875点
第11位・ラウ 点数875点
第13位・ケイシェリア 点数874点
第14位・シヅキ 点数873点
第15位・ラムダ 点数858点
―――――――
15位までは前と同じメンツだな。
順位は結構入れ替わっているみたいだが。
シエラは相変わらずの満点!! 素晴らしい。
お、ラナが8位か! なんか回を重ねるごとに順位が上がってきているんだよな。
アイシャやラムダなど、点数ががっつり減った人も多いっぽい。だからラナが繰り上がってきたのか?
「全体的に、平均点は落ち込んでいる感じか?」
やはりダンジョン週間中にダンジョンに行きまくった影響が出ているのかもしれない。
「そのようです。ですが〈エデン〉のメンバーに赤点者はいません」
「それを聞いてホッとしたぜ……!」
一番心配だったカルアはキャリーの役目が終わった瞬間、即でテスト勉強行きになったからな。
とても寂しそうに「にゃあ」と言っていたが、構わず連れていったんだ。
おかげで平均点を超えるくらいにはしっかり勉強はできたらしい。良きかな。
よっし! これで安心してSSランク戦に挑めるぞ!
なお……。
「赤点に俺の名前がある……? うそだろ?」
「俺SSランク戦のためにいっぱいダンジョン潜ったのに……!?」
「こんのアホバカマヌケー!」
「ほびゃー!?」
なんだか赤点一覧の前で騒ぎがあったようだが、俺はそれに構わず悠々と教室へ向かったのだった。




