#1710 レアイベント報酬! 竜関係は報酬うまうま!
『汝、試練に、よく打ち勝った、褒美をやる』(※意訳:試練に打ち勝つ者よ。よくぞ突破して見せた。そなたたちには試練を乗り越えた者だけが手にする褒美を与えよう!)
「ありがとうございます!」
レアイベントボスを倒すと、ボス部屋に居るのに例の声が聞こえた。
ちょっと勝ったにしては片言竜は味気なかったので、俺が勝手に脳内変換しておいたよ。やっふー!
その瞬間、目の前に宝箱が10個ドスンと置かれたのだ。10個! 10個である!
しかも、全部〈金箱〉だ! レアイベントボスは〈金箱〉確定!
さすがはチェーンダンジョン、チェーンダンジョンさすが!!
「こ、こんな数の〈金箱〉見たことねぇよ!」
「安心しろってオルク、〈竜ダン〉のレアイベントをこなせば、最低でもこれのさらに10倍以上を拝むことが出来るぜ」
まあ、ボスはこの20倍出るけど(小声)。
「じゅ、10倍!? 〈金箱〉100個ってこと!?」
「おう! 写真見るか?」
「なにこれすっげぇえええええええ!?!?!?」
〈金箱〉10個も凄いインパクトだ。だが、オルクは即でそんな認識すら書き換えられてしまった。いったい誰がこんなことを―――俺さ!
最低100個と言ったが、俺たちの時は150個だった。すげぇインパクトなんだぜ。
この写真はいつも大切に持ち歩いています! こうして人に見せると楽しいです!
「せっかくだからスクショをパシャリと。良い記念になったぜ」
「俺もいつかこんな埋もれるような〈金箱〉を手に入れてやるんだ!」
俺は目の前の10個の〈金箱〉をスクショに収め、オルクは150個が映る写真を見てうおーと気合いを入れる。うむ。がんばれ!
「あれは一般人が手に出来るものなのだろうか……?」
「実際手にした俺たちが実在するんだからできるだろう……いつかはな」
「なんだか今更でありますが、自分たちはとんでもないことをやり遂げたんだという気がしてきたであります。あれを1発突破って、考えてみればとんでもないでありますな……」
メルトとラウがはしゃぐオルクを生暖かい目で見つめ、ヴァンが少し遠くを見ていた。
もちろんオルクはそんなことには気が付いていない。うむ。気のせい気のせい。
「さあ! 早速〈金箱〉を開けるぞ!」
「「「おおー!」」」
早速〈金箱〉オープンだ!
なんと今日は豪勢に、1人2箱! 1人2箱である!(重要な2回)
〈幸猫様〉〈仔猫様〉〈愛猫様〉! いつも見守ってくださりありがとうございます!
大感謝します! 良い物ください!
〈金箱〉の中身は、〈竜武器〉の類いやレシピ、竜系防具のシリーズレシピに〈竜〉の名の付くアイテムが何点か。あと〈上級転職チケット〉というハズレが1枚だった。
「また〈幼若竜〉が当たってしまったな。しかも2つも」
「これはまだ持ってない班に送ろうぜ。これで合計7つだ! 良い感じだな!」
そう、〈竜〉の名の付くアイテム部門では〈幼若竜〉が当たってしまった。しかも2つ。素晴らしい!
これは人数分あっても良いくらいの超アイテムなので、この調子でどんどん当たって欲しい。
ふとマリー先輩が「これがうちのギルドのとっておきや!」と言って貴重な〈幼若竜〉を見せてくれた日のことが頭に過ぎった。
それが7体……。うむ。あとでマリー先輩にも見せにいってあげよう!
「それに比べ、武器と防具は微妙だったな」
「俺たちがすでに装備しているものの方が強いからな。仕方ない」
レアイベントボス産とはいえ所詮は上級中位。
全てを上級上位もしくは最上級装備に更新した俺たちからすると、わざわざ換装する類いのものではなくなってしまっていた。
なにしろ次は最上級ダンジョンに入ダンするのである。
ならば最上級ダンジョン装備の方が欲しいのは自明の理だ。
「…………へ?」
そんなことを呟くメルトとラウを、オルクは信じられないものを見る目で見つめていた。
「お、壁画があったであります! 『絵解き』!」
ヴァンが見つけたのは奥の部屋にあった古代っぽい雰囲気の壁画。
早速〈幼若竜〉を使って『絵解き』すれば、かなりの情報量が描かれていた。
「これは――「犬人」や「狼人」、加えて「兎人」などの上級職でありますか!」
さすがは竜の名の付くレアイベント。いつもよりも壁画の枚数が多い。
ここには、なんと「犬人・狼人」と「兎人」の上級職、その発現条件のヒントがびっしりと描かれていたんだ。
「そのようだな。中位職の【大群部族犬長】に【群守る犬の守護者】、【ワンダフルブリーダー】に【ウルフハンター】。そして高位職は――」
「クイナダが就いている【大軍一将之真神】に、フラーミナが就いている【傲慢】。加えて【狼剣闘王】、【雷速空戦雷狼】、【幻想麒麟児】……。「狼人」の俺でも聞いたことがないのが混じっているな」
「お、ラウでも知らないのがあったのか?」
ラウは「獣人」カテゴリーの【獣王】に就いてはいるが、元々は「狼人」カテゴリーの職業を目指していたらしい。
【雷狼】の上級職である【雷速空戦雷狼】にはあこがれがあったのだという。そして【幻想麒麟児】は聞いたことが無いそうだ。それ麒麟に変身しちゃうやつだからなぁ。〈ダン活〉プレイヤーからは「麒麟児ってそういう意味だっけ!?」ってコメントがよく上がっていたっけ。
「そして、【大群の犬力王】に【モフモフ選手権世界一】。これも聞いたこと無いんだが……【モフモフ選手権世界一】?」
そっちは「犬人」下級職、【モフワン】の上級職である高の中だ。
モフモフすぎる優しさで包み込み回復してくれる、ヒーラーである。
「モフモフで回復って、何それ最高じゃん!」「埋もれたい」と、ゲームではかなりの人気を誇っていた職業だ。だがこの世界では発見されていないらしい?
それはいけない。広めなければパシャパシャ。
「おお、さすがは〈エデン〉。冷静だな」
「アランはなんでポーズを取ってるんだ?」
「ふ、筋肉を決めているとき、心が落ち着くのさ」
「なんと、そんな効果があったでありますか! ――メモメモ」
「メモらなくていいぞヴァン」
振り返れば筋肉たちが集団でマッスルポーズを取っていた。なお、オルクは除く。
どうやらこれが〈筋肉は最強だ〉流のリラックス方法らしい。
話を聞いて飛んで来たヴァンが影響されてメモを取り始めていたよ。ヴァンは女子の前でマッスルポーズを取る気なの? どうしよう、サーシャとカグヤにバチンと気絶させられるヴァンが見えた気がしたよ。気のせいになってほしいな。
まあ、ギルドによって色んなリラックス方法あるよね。ちなみに〈エデン〉流では温泉だ。
「こっちが「兎人」。まさか他にもカテゴリーが描かれているとは」
「あ、ああ。普通は一種類ばかりだもんな。だが上位の〈竜ダン〉のあれを見ると……」
ラウの言葉にメルトが頷き思い出すような仕草をする。
きっと〈竜ダン〉のレアイベントをクリアした時に出現した壁一面の壁画を思い出しているのだろう。
〈竜〉のチェーンダンジョンは報酬が良いのだ。
ちなみに、あの写真はすでに研究所に提出済みだ。
ミストン所長たちが狂喜乱舞してたよ。〈ガンゴレ〉の販売を打診されたときはさすがに心配になったほどだ。あれで何する気だし。いや、移動に使いたかったのだろうが、上級ダンジョンに入る気か?
「中位職の【ギャンブルバニー】に【ホッパーラビット】。高位職ではミサトが就いている【色欲】に――」
「ルキアのやつが就いている【先駆の時兎】があるな」
そういえばここに居るメルトとラウって「兎人」と交流の深いメンバーだったな。
そう考えると、なんだかここのレアイベントで「狼人」や「兎人」の上級職が判明するのってなんだか運命を感じてくるんだぜ。ちなみに偶然だぞ?
また、【ギャンブルバニー】は【バニー】の上級職。【ホッパーラビット】は【ジャンピングラビット】という職業の上級職だ。
「残りの高位職は【セージ】の上級職で【癒しの賢兎】と【マスター・セージ】。【癒しの賢兎】はミサトが目指していたやつだな」
「【ヴィジョナリーシーフラビッツ】は【タイムラビット】の上級職。ルキアは【先駆の時兎】を目指していたから就かなかった職業だな……」
「そして最後は【氷結雪兎】の上級職、【雪と氷の白兎】か」
「なぜか、あの騒がしい「兎人」の中でこれだけとても淑やかに感じるのはなぜだろうか」
「分かる」
あ、分かるんだメルト。
なんだか同じ「兎人」をよく知る者としての深い実感が感じられるコメントだったんだぜ。2人の中では「兎人」は騒がしい存在らしい。
あと、なぜか俺の方をチラッと見る2人。
俺は華麗にスルーしてスクショを構えた。
一通りパシャパシャして記録を残しつつ、レアイベントも突破し、最奥へと到着。
〈黒現迅亜竜・マラガストル〉、通称〈マラガ〉を倒し、ついに筋肉たちは上級上位ダンジョンへの入ダン条件を満たしたのだった。




