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ゲーム世界転生〈ダン活〉~ゲーマーは【ダンジョン就活のススメ】を 〈はじめから〉プレイする~  作者: ニシキギ・カエデ
第三十八章 S&A!パワーキャリーで六段階目ツリー開放大爆発!

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#1705 オルクの悲劇?未踏破の最奥ボスに挑むんだ!?




「いくぞハニーさん! ホネデスさん! ジェットトリプルアタックだ!」


「アクニャー!」


「ホネデス!」


「うおおおおおおおおおおおお!」


「その調子だオルク!」


 最奥ボス手前の救済場所(セーフティエリア)でオルクの新しいモンスターを召喚して練習中。

 かなり良い感じになってきた。

 ちなみにあの悪魔猫はハニーさんと命名されている。

 オルクとは相性がいいのか、最初からオルクについていくことが出来ている、素晴らしいスペックのネコだ。


「筋肉!」「筋肉!」「うおおおおお筋肉!」「マッスルゥゥゥゥ筋肉!」


 筋肉たち14人が横並びになり、スクワットで応援する姿が熱い。

 奇数組が腰を落とせば偶数組が立ち上がり、偶数組が腰を落とせば奇数組が立ち上がる。リズムに乗って応援中だ。そのタイミングには寸分の狂いもない。なんで合わせられるんだろうね?


「どうだゼフィルスよ。オルクも様になってきただろう?」


「おう! これならボス戦に投入してもいいかもしれないな!」


「へ?」


 アランの問いかけに俺も腕を組んで頷く。

 道中3回も戦闘不能になってきたオルクにチャンスをあげてほしいってことだな?

 いいだろう。

 最初のボス戦パーティは、君に決めた!


「よし、最初のメンバーは、アランとオルクだ!」


「はーっはっは! 名誉ある最初の攻略者に名を連ねるかもしれんとは! 我が筋肉もここまで来たか! ――やったなオルクよ、オルクもその栄えあるメンバーに選ばれたのだぞ!」


「へ?」


 アランが凄まじく筋肉を膨らませて全身で嬉しいをアピールする。

 だが、オルクは理解できないような表情でポカンとするだけだ。どうしたのだろう?


「まあ、そうなるだろうな」


「なんだかなつかしいな。俺も最初はこんな気持ちだった」


「みなが通る道でありますな」


 メルト、ラウ、ヴァンが口々にオルクを見て呟く。

 その瞳には同情の念が籠もっているように見えた気がしたが、きっと気のせいだろう。あれは分かりみが深いという瞳に違いない。


「あ、あのゼフィルスさん? すまねぇ、俺途中意識を手放していたようでさ、いまいち理解できなかったんです。もう一度言ってもらってもいいでしょうか?」


「途中で意識を手放したってどういうことだし!? こほん、今度は手放さないでくれよ? この〈猫猫ダン〉の最初の挑戦者メンバーだが、俺、メルト、ヴァン、アラン、そしてオルクの5人でいくことにした!」


「…………」


「俺の筋肉がワクワクしているぞ!」


 俺の宣言になぜかオルクは白目になっていた。意識手放してない?

 なお、アランは「おらワクワクすっぞ」とばかりにアップ中だ。

 筋肉が躍動を始め、他の筋肉メンバーたちが羨望と敬愛に満ちた目を向けながらスクワットして祝っている。スクワットってお祝いだっけ?

 端的に言えばちょー盛り上がっていた。オルク以外。


「よし、いくぞ!」


「え?」




 それから料理アイテムを食べてバフを得て、俺たちは最奥の扉の前に立っていた。


「な、なあゼフィルスさん、マジでここって未踏の奥地なんだ、ですよね? 誰も攻略したことないんですよね?」


「そうだぞ~。俺たちが最初の踏破者になるんだ!」


「待って! 待ってゼフィルスさん! あのな、踏破者になるのには必要なことがあると思うんだです!」


「必要なこと?」


「あ、あれ? 分かってない? いや、最奥のボスを攻略しないと踏破者にはなれないんだですよ?」


「もちろんだ! 一緒にボスを撃破しようぜオルク!」


「…………へ?」


「あれは、致命的に話が噛み合ってないな」


「ゼフィルス初心者がゼフィルスと話すと、よくなるやつだ」


「自分たちはすでにゼフィルス先輩の言いたいことがよく分かるであります!」


「それって噂のゼフィルス済みってやつじゃ!?」


 うむうむ。みんなよく分かっている。

 そう、ボスなんて倒してしまえばいいんだよ!

 ということでヴァンを先頭に門を潜っていく。

 だが、オルクの足は動かない模様だ。しかし。


「さあ、行くぞオルク!」


「あ~~!?」


 アランに背中をバシンと叩かれてオルクは扉を潜ってしまった。

 俺も続く。


「アラン、最初はヴァンがタンクをする。折を見てスイッチしてみてくれ」


「了解だ! 上級のネコに俺の筋肉がどこまで通用するのか、試してやる!」


 どうやらアラン的にもこの世界のネコは筋肉に勝ると考えている様子だ。

 さすがは〈ダン活〉のネコ。

 当然〈猫猫ダン〉のボスはネコである。クマは出ないので安心してほしい。


 俺たちが扉を潜ると、そこに居たのは大小様々な5体のネコ。


「メルト、『看破』だ!」


「『看破』! あれは――〈五体猫戦隊・ネコレンジャー〉? いや待て、これは1体扱い? ツインズの5体版か!?」


「なんと!」


 メルトの『看破』にヴァンが思わず目を見張る。

 そう、今までツインズは多く出てきた。2体で1組だ。

 しかし、ここに居たのはなんと5体のボス。

 眷属とかそういうのではなく、全てがボスというとんでもないボスなのだ。

 しかも単体で相当強いネコが5体。オルクが超震えているように見えるのは気のせいではないだろう。


 だが、俺はメルトの側に寄り、あることを指摘する。


「いや待てメルト、ツインズじゃない。HPバーがそれぞれあるだろう。名前は右から〈茶〉〈白〉〈赤〉〈黒〉〈灰〉だ」


「! つまり、こいつは〈食ダン〉のボスに近い系統ということか?」


「そのようだな」


〈五体猫戦隊・ネコレンジャー〉という1つのボスではあるが、固体名もあるという不思議ボス。1本のHPバーがそれぞれにもあるため、各個撃破することが可能だ。

 だがここは上級の最奥ボス。形態変化が起こるだろう。HPバーが3本ではなく、各1本しかないのに形態変化は起こるのかって?

 その辺は追々説明する。


「ニャー!」


「「「「フシャニャー!」」」」


「ヴァン、ユニーク発動!」


「いきなりでありますか! 『第二拠点建造』!」


〈赤〉以外の4体のネコがいきなり襲い掛かってきた。瞬間、俺はヴァンに指示を出し第二拠点を出してもらう。

 ボス部屋は大きく、第二拠点が出せるほどその部屋は広い。

 ズドーンと城が建つと、俺たちはすぐに中へと入った。


「ヴァン、ヘイト稼ぎは後回し、まずはどんどん城を強化しろ!」


「はっ! 『城壁展開』!」


〈四ツリ〉『城壁展開』はシャロンの『防壁召喚』と同じく防壁を生み出すスキル。

 これはユニークスキルの拠点に発動されていると消えない特性のある壁だ。


 だが、相手はネコ。

 軽々と壁を飛び越え、まず4足歩行の2メートル級の身体を持つ〈茶〉と〈灰〉が拠点に飛び込んで来たのだ。


「今だ! 防御スキル起動! 壱、弐、参!」


「はっ! 『防御に勝りし壱ノ城』! 『気合いで打ち勝つ弐ノ城』! 『最後の砦の参ノ城』!」


〈五ツリ〉のヴァンの防御スキル。増える城シリーズ。

 第二拠点の周りにまるで壁のように配置される城が3つ。

 本丸である第二拠点を守る領城だ。


「「ニャン!?」」


「分断成功!」


「なんと! こんな手があるとは! さすがはゼフィルスだ!」


 すると2足歩行であり1メートル級の身長を持つ〈白〉〈黒〉は拠点まで来られず、その場に踏みとどまってしまう。

 ちなみに最後の5メートル級お化けネコである〈赤〉は奥でふんぞり返っている。

 こうしてまんまと〈茶〉と〈灰〉だけを拠点に誘い込むことに成功すると、アランが筋肉をひけらかしながら褒め称えてくれた。ちょっと気分が良い。


「迎撃に入るぞ! ヴァンはそのまま拠点を維持! 俺たちは侵入者を撃退する!」


「なぜかボス部屋に侵入した俺たちが撃退側にいる……これがヴァンの力か」


 侵入者を撃退しようとしていたのはボスたちのはずなのに、なぜか逆転しているミステリー。

 これが拠点の魔力よ。なお、これを〈一夜城戦法〉と言う。


「ヴァンは防壁を壊されないよう維持してくれ。それとエリア魔法を頼む! ――オルクは召喚だ!」


「了解であります! 『この城は、我が主城なり』!」


「はっ! そうだった――『悪魔召喚』! 『上級召喚盤起動』!」


「アクニャ!」


「ホネデス!」


 ヴァンの『この城は、我が主城なり』は第二拠点内で戦う時限定で、内部の味方のステータスを大幅に上昇させる〈五ツリ〉のエリア魔法だ。

 続いてオルクが〈ハニーデビルキャット〉のハニーと〈ホネデス〉のホネデスを召喚する。


「ホネデス!」


「あ、自己紹介どうも」


 はっ!? 体が勝手に!

 くそう、味方なのに腹筋にくるぜ。


「俺の筋肉の強さを見せようではないか!」


「よし! アラン、迎え撃つぞ!」


「応!」


 迎えに行くと、すでに〈茶〉と〈灰〉は分かれていたようで、〈茶〉にはアランとオルクが、〈灰〉には俺とメルトが相手をする形になった。


 ◇


「ホネデス!」


「居たってよアラン!」


「オルクはいつの間に骨語を身に着けたのだ!? 早く我が筋肉語もマスターしてほしいぞ!」


「いや、別に骨語をマスターしたわけじゃねぇって。というか骨語ってなんだし!?」


 筋肉語があるのなら、骨語もきっとあるに違いない。

 人間の身体は摩訶不思議なものだ。骨語を操るのは人間じゃないが。


「ニャッフシ!」


「〈茶〉だ! 尻尾と、なんだあの肩から出ているのは!? 腕? もしくは翼か?」


「俺に任せておけ! 筋肉~~~『サタンデストロイオーバーパンチ』!」


「ニャー!」


〈茶〉は4足歩行。しかし、その肩の部分には黒色に染まる、なにやら腕のようなものが装着されていた。これが飛び込んだアランの筋肉的拳とぶつかり、相殺。


「筋肉はこんなものでは終わらん! 『サタンラッシュ』!


「アラン! 俺も行く!」


「ホネデス!」


「アクニャー!」


「ホネデスさん! ハニーさん! 付いてきてくれ! 『闇十二連槍(やみじゅうにれんそう)』」


 続いてはラッシュ攻撃。アランの両腕が黒く闇色に染まり、超連続パンチを繰り出す。それを補助するようにオルクが回り込んで闇の12連突きを繰り出したのだ。

 しかもそれだけに終わらず、〈ホネデス〉と〈ハニーデビルキャット〉も追撃。

 四方からの攻撃を敢行したのである。

 強い。これがゼフィルスの言っていたオルクの戦闘スタイル。


「ニャー!」


 ダメージは大きかったようで暴れ始める〈茶〉。

 口からは砲撃を吐き出し、右肩からの第二の腕と右前脚によるダブルひっかき、左側も同様の攻撃を繰り出し、続いて身体を180度ぐるんと半回転して尻尾でアランの拳を止め、続いてボディにも尻尾をぶち当てる。

 尻尾の先は丸い毛玉になっているが、攻撃の瞬間は硬くなっていた。まるでフレイルである。


「ぬう! 凄まじい威力だ!」


「大丈夫かアラン!」


「なんのこれしき! 我が悪魔の肉体はそんな攻撃では崩れることはないぞ! 『悪魔の身体』!」


 アランの【サタン】はタンク系。アランはそれをSTRとVITに育てている。

 さらには(だつ)装備でステータスも上がっているのだ。多少の攻撃ではびくともしない。さらにはバフを掛けてテッカテカ悪魔ボディにしてしまう。


「『マキシマムサタンフェストフォース』!」


「ニャアア!」


「ぐっは!?」


「オルクは注意しろ! こやつ、1体でも手強いぞ!」


「あぶねぇ!? VITを育ててなきゃ即死だったぜ! ぐびぐびっ」


 アランに対抗してきたのか〈茶〉の攻撃が増す。

 グンと速度を上げたと思ったらいつの間にかオルクの隣に居てひっかいてきたのである。モロ直撃するオルク。

 そのひっかきは第二拠点の一部をぶっ壊す程の威力があった。


 ポーションをぐびっといって回復。


 慌ててホネデスがグルリと振り返って「ホネデス」と叫び(威嚇)、ハニーは甘えるように「ゴロニャ~ン」と鳴く『悪魔の可愛さ』を発動して〈茶〉に攻撃力デバフを付与した。

 うん。ホネデスよ自己紹介感謝! でもそれ効いてないけどな。


「ホネデス!」


「見えた! 『闇引き込みサタンの呪縛』!」


「アラン!?」


「今だ! やれいオルク!」


 ホネデスの自己紹介になにを見たのか、アランが素早く〈茶〉にクリンチ(厚い筋肉で抱きしめる)をかましたのだ。脱装備状態で。正面から。

 暑苦しい筋肉に抱きしめられ、必死にいやいや抵抗する〈茶〉。

 なんだか本当に嫌そうに見えた気がするオルク。いや、きっと気のせいだ。

 このチャンスは逃せない。


「うおおおお! 俺に続けーー! ジェットトリプルアタックだ!」


「ホネデス!」


「アクニャーーー!!」


「『ダークドレインスペンサー』!」


「ニャー!!」


「おぐわっはあああああ!?」


 動けないところに3体から攻撃を受け、必死に尻尾のフレイルで反撃する〈茶〉。

 するとフレイルがオルクの腹にクリーンヒットして吹っ飛ばした。悲鳴が響き、オルクはダウンしてしまう。

 だが、ホネデスとハニーは構わず攻撃を繰り出し、1人の犠牲でついに〈茶〉のHPをゼロにすることに成功したのだった。

 しかしエフェクトに消えず、その場にズーンと横たわる〈茶〉が残される。




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ゲーム世界転生〈ダン活〉1巻2022年3月10日発売!
― 新着の感想 ―
オルクの“うっかり死”はなんとかしないといけないね。 裏ステータスの何かが低いんだろうけど。
ゼフィルス済みとはスゴい言霊だな! なんとなくお手つきされた女性キャラクターっぽいが。
オルク、ボス戦終了時にHP0で終わり 周回しないといけなくなるのでは…?
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