#1703 オルク育成計画開始!強くなっても戦闘不能!?
「うおおおお! 『上級召喚盤起動』! 俺の召喚するモンスターはこれだーーー! いっけーーー! ホネデスさん!」
「ホネデス!」
「あ、自己紹介どうも」
「いくぞホネデスさん! 『ダークネススピア』!」
「ホネデス!」
「ワ――――――」
オルクが召喚盤で召喚したのは、なんと上級下位ランク5のレアイベントボス――〈ホネデス〉だった。
あそこはアランたちが周回しまくって召喚盤もいくつかゲットしていたからな。
【サタン】の発現条件達成用とは別に、オルクにも召喚盤が貸与されていたのだ。
「うおおおおおおおおお!」
「ホネデス!」
オルクが〈ホネデス〉と共に突っ込み、黒く染まった槍を突き刺し天使に痛打を与える。
〈ホネデス〉も同時に槍で突くダブル突だ。そこそこのダメージが入る。
「うおおおりゃあああ!」
「ホネデス!」
「ワ――!」
天使の反撃がオルクに放たれるが、〈ホネデス〉が代わりにそれを受け、オルクは槍を突き刺すことを選択。いいぞ!
「『闇十二連槍』!」
「ホネデス!」
そこへ〈ホネデス〉も加わり、かなりの攻撃を繰り出していた。
「まさか、たった数時間でここまで変わるとは……! ゼフィルスの指導は恐れ入るな!」
「まあな!」
俺の横で腕を組み、オルクの活躍を見るアランが、最初わなわな驚愕の目で見ていたのに瞬時に極めて良い笑顔に変化して言う。
アランにとってもオルクは未熟者という認識だったようで、ようやく戦力の仲間入りを果たしたのが嬉しいようだ。
「ゼフィルスに頼めばあるいは、と思い連れてきたが、これを見ると正解だったと分かる。ゼフィルスよ。助かったぞ」
「まだまだこれからだぞアラン。今ようやく五段階目ツリーを開放したところじゃないか」
アランにとっても〈エデン〉との合同攻略にオルクを連れてくることは賭けだったようだ。しかし、そこは性根が清らかな筋肉(?)のアラン。
オルクを成長させるために骨を折ったようだ。良いやつだよなぁアランって。
「ホネデス!」
「うっ!」
「「あ」」
だが、それも一瞬。オルクが天使の攻撃を受けて吹っ飛んでいた。〈ホネデス〉で受け損なった模様。そのままダウンしてしまう。あ、討ち取られちゃった。
「ホネデス……」
術者が戦闘不能になったので〈ホネデス〉も消えていく。
それを見てアランが膨らませた腕を組み呟く。
「まあ、まだまだ鍛え方は足りないが……なぜかあいつはどこかしらでミスをするんだ」
うむ。俺もアランの言葉に同意する。
オルクってなぜか途中まですごく良い感じなのに――最後に負けるんだ。
不思議すぎるんだけど?
とりあえず〈復活の秘薬〉で復活させてもらい戦線に再び送り込む。
まあスタイルはできた。後はそれをコトコト煮詰めるだけだ。
今はまだ〈ホネデス〉しか居ないが、今後はもっと色んなモンスターと契約するだろう。そのモンスター全てと熟練の域まで連携出来れば、オルクは化けるんじゃないかと思う。きっとな。でもどうしてだろう、強いオルクのビジョンが見えないんだよなぁ。不思議だ。
「あああああ!?」
「また吹っ飛ばされてる」
「ポーション急げ!」
「おーらオルク、しっかりしろ! 今キュッと効くやつを飲ませてやるからな!」
「いや、自分で飲めるから! そんな筋肉で捕まえないで!? 自分で飲むから離して――むぐっ!?」
オルクのプレイヤースキルはまだまだで、さっきから吹っ飛びまくっていた。見事な吹っ飛び具合だ。逆に感心するぞ。
だが、その度に筋肉が駆けつけ手厚くムキムキの腕で抱え込み、そっとポーションを飲ませてあげていた。なんて優しい光景なんだ(?)。オルクが歓声を上げるのも分かる。
「お、守護型がようやく倒れたぞ」
「ショートカット転移陣が起動したな! よし、みんな登録だ!」
「「「「応!」」」」
現在65層。守護型ボスとの戦いを見せてもらったが、〈筋肉は最強だ〉はそこそこ安定している。
なにしろメンバーの4人が【サタン】、1人が【ルシファー】だ。
ゲーム時代じゃ考えられなかったメンバーズ。まさに何それである。
さらにステータスアップで防御力を増した【サタン】はかなり頑丈。
攻撃を生身で受けても平気なそのボディで弾き、筋肉で連携して倒していた。
オルクは……まあちょっとは役に立っていただろう。
多少の足手まとい感はあるものの、頑張ってる。まだまだこれからだ。
また、オルクはついにLV30になり、五段階目ツリーを開放した。
SPも多少は振り、いくつかのスキルを使用可能している。
次は六段階目ツリーを目指さないとな。
「それじゃあ一旦休憩だ!」
「「「応!」」」
男同士なのでダンジョンは21時までやる予定だ。
目指せ放課後の2日で〈聖ダン〉攻略! ダンジョン週間までに上級中位ダンジョンを抜けてやんよ!
道は分かるし、すでに誰かが本日通っていれば10階層毎の鍵も開いている。俺たちが補助するのでボス攻略も早い。
すると放課後の2日分で攻略も可能だ。六段階目ツリーにはそれだけの力がある。
だが攻略を進めるだけでは物足りない。せっかく〈エデン〉と〈筋肉は最強だ〉の合同攻略なのだ。交流を深めるのも大事。
「アラン先輩」
「君は、確かヴァンだったな?」
「はい! アラン先輩、自分にどうかお力添えをお願いしたいのであります!」
「ほう。筋肉絡みか? いいだろう。よほど困っているとみた。言ってみるがいい」
「はい! 実は自分、女子に動じてしまうことが多く、何事にも動じない心を持つというアラン先輩にご指導をお願いしたいのであります!」
「なるほどそういうことか! 任せておくが良い! 筋肉は全てを解決する。筋肉を育てれば緊張にも打ち勝つ何事にも動じないボディが手に入るだろう! さあ、俺と筋肉を鍛えようじゃないか!」
「よろしくお願いするであります!」
「なあメルト、ヴァンのやつ」
「ラウ、言うな……」
約1名筋肉に染まるメンバーも出たが概ね順調に交流も進んだ。
俺はオルクに、アランはヴァンに足りないものを叩き込んだのだ。
ヴァンが女子を前にぶっ倒れない日が来るのかは――まだ分からない。
夕食を食べて最奥へ。〈筋肉は最強だ〉から3人出してもらい、〈エデン〉からは2人が一緒に最奥ボスに挑戦する。
「我が筋肉に死角無し! 『サタンアウトバルクアップ』!」
「【サタン】ってなんでこのスキルがあるのかすごく疑問だったんだが、どうしよう、今はすごく疑問が解消されてる……! すっきりと!」
筋肉を膨らませて〈ハンドエル〉の巨大ハンドを迎撃していくアランに今までの疑問が解消されたのを俺は密かに感じて身震いした。
ゲーム時代から【サタン】は筋肉と親和性高いと思ってたが、まさに筋肉のための職業だったのだと今分かったのだ。分かりたくなかった!
この感覚、どうすればいいんだよ!
「『ゴッドドラゴン・カンナカムイ』!」
「オ―――――――!?」
もうこうなったらぶつけるしかない!
ボスよ、この気持ちを全て受け止めやがれーー!
「やっべぇ。六段階目ツリー強すぎるだろ!? え、これ、俺もこれから覚えるって事だよな?」
「ホネデス!」
「え? ぐばああああ!?」
「あ、オルクがやられたぞ!?」
こうして最奥ボス〈ハンドエル〉戦も無事に終了。
これをさらに4回繰り返して〈筋肉は最強だ〉の15人全員に攻略者の証を取得させた。
「こ、こんなに簡単に攻略者の証手に入れて良いのか!? 俺、今までほとんどおんぶにだっこでここまで来たんだが……!?」
「気にするなオルク。今まではスタイルが決まっていなかっただけだ。これからがんばっていけばいい!」
「お、おう! ありがとうアラン! 俺、これから頑張るよ!」
「その意気だ! だが基礎の筋肉も忘れてはいかんぞ? とにかく筋肉は育てておけ」
「う、うっす!」
とにかく筋肉は育ててきたアラン。
オルクも技術はまだまだだが、結構瞬発力的な動きはできるようだし、やっぱり基礎が鍛えられていた結果? なのだろう。だからといって〈エデン〉に筋トレを導入する気はないが。
「まあいっか。――今日はここまでだ! 〈筋肉は最強だ〉のみんな! お疲れ様! 明日は―――〈猫猫ダン〉に向かう! 俺たちも攻略していないダンジョンだが、俺たちの後ろに付いてくれば問題無い! 明日もよろしくな!」
「「「本日はありがとうございました!!!!」」」
バッと横三列に並んだ筋肉たちが俺の言葉に体育会系のノリで礼を言う。腹の筋肉から声を出したと言わんばかりのビリビリくる衝撃波にちょっと圧倒されたのは秘密だ。これが体育会系の覇気!
その日はこれで解散し、翌日からは今言ったように、上級中位ダンジョンの続きに取りかかったのだった。
「ここが、〈猫猫ダン〉……!」
「果たして筋肉たちを連れて来たのは正解だったのか。だけどなぁ」
猫が溢れるこの空間に似つかわしくない筋肉が14人。
当初は〈上級の狼ダン〉にしようかと思っていたのだが、昨日のオルク育成計画を機に予定を変更。〈猫猫ダン〉を攻略することにしたのである。
なにせ、ここには猫悪魔にしてオルクとの連携にぴったりなモンスターが出るのだ。
ここは契約させてあげたいところ。
〈ダン活〉の猫は強い。それはそれはもう強い。
故にオルクの助けになること間違い無しだ。
「ゼフィルスよ、いいのか? 〈猫猫ダン〉はまだ誰も攻略していない未踏破のダンジョンだろう? シエラ嬢に怒られないか?」
「メ、メルトよ。そこは予定通り〈上級の狼ダン〉を攻略した、ということでどうか1つ」
「…………そうか。バレなきゃいいな」
メルトが不穏なことを囁いてる!
否、きっと大丈夫だ。でも一応みんなを口止めしておかないとな。




