#1692 〈ラヴァ〉戦、向こうが二回変身するのなら!
「ゴアアアアアアアア!!」
「第二形態だ! シエラは今のうちMPの回復を!」
「了解よ。――ゼフィルス、さっきはありがと」
「ゼフィルス、助かったわ」
「おう、任せておけよ!」
お礼を言うシエラとラナの目が真剣だ。なんとなく顔が赤い気がするのは溶岩の熱のせいだろうか。俺は気にするなという感じに返すんだ。
シエラは一度目を瞑ると、再び開けた時には強い気力に満ちていた。
「今度は不覚を取らないわ」
シエラの雰囲気と台詞がかっこいい!
俺も気合いが入るというもの!
〈ラヴァ〉はレアボス。正直〈竜巣洞〉の番人よりも強い。
シエラやエフィが求める、マジで強い相手である。
俺も全力で指示を出すぜ!
「エフィは大天使フォーム! ルルも変身してしまえ!」
「イエス! 『大天使フォーム』!」
「おおー! 『変身・プリンセスメイクアップ』なのです!」
大きな叫びと共に形態が変化していく〈ラヴァ〉。
第一形態なんて準備運動だったと言わんばかりに身体中に流れる溶岩が、まるで血管のように身体中に規則正しく流れ始め、2対4枚の翼が生える。
竜鱗は黒色、その上を血管のように流れる溶岩を纏った姿は禍々しくもかっこいいと思わせた。
「これが、第二形態!」
「翼の発達具合からして空を飛ぶな! ――ラナ!」
「飛ぼうとした瞬間に撃ち落としてやるわ! 『大聖女の祈りは癒しの力』! 『大聖光の無限宝剣』!」
ラナの攻撃魔法。
今のラナは〈白の玉座〉を装備しておらず、着けているアクセサリーは『回復強化』や『回復速度上昇』の回復補助アクセだ。
加えて『竜祝回復威力大上昇』の付いた〈竜祝のタリスマン〉。
全ては回復を強化する装備スキル。
『大聖女の祈りは癒しの力』によって攻撃も含め全てが回復扱いになってしまったラナは、それはそれはもうとんでもない威力の攻撃魔法をぶっ放せる。
今までは回復に専念してもらっていたが、形態変化が終わった瞬間はほぼ無防備。
ここでラナは宝剣を解禁してぶっ放した。
「いっけー!」
その数24本。
『大聖光の無限宝剣』は先日LVを1つ上げて2となり、24本の宝剣が撃てるようになった。ラナ的にはもっと優先的に『大聖光の無限宝剣』にSPを振っていっぱい撃ちたいらしいが、他に優先して振らなければいけないスキルがあったので待ってもらっていたのだ。だが、それもようやく一段落したので『大聖光の無限宝剣』にSPを振り始めたところ。これからどんどん本数が増えていくだろう。
そして優先したのは『聖命オーバーブーストLV10』だ。
これはINTを『オーバーブースト』させるスキル。これによって1.8倍になったラナのINTは2000の大台を突破した。
魔法の威力もどんどん上がっているのである。パナイ!
そして形態変化を終え、4枚の巨大な翼を広げ後ろ脚で立つポーズで咆哮を上げる、そんなかっこいいポーズで産声を上げた〈ラヴァ〉に次々宝剣が降り注いだ。
「ゴアアアアアア!?!?!?」
「こっちよ! 『完全魅了盾』!」
「ぶった切れ――『天光勇者聖剣』!」
同時にシエラと俺のスキルも突き刺さる。
そして。
「『エル・セイバー』! 『エル・セイバー』! 『エル・セイバー』! 『エル・セイバー』! 『エル・セイバー』! 『エル・セイバー』! 『エル・セイバー』! 『エル・セイバー』! 『エル・セイバー』! 『エル・セイバー』! 『エル・セイバー』! 『エル・セイバー』!」
「『魅惑のラブリーヒーローソード』! 『大回転超切斬』! 『ヒーロー・スターレイ』! 『ヒーロー・バスター』! 『ヒーロー・バスター』! 『デュプレックスソード』! 『神世界インフィニティ』!」
凄まじいアタッカーのスキルが〈ラヴァ〉を襲った。
「ゴアアアアアア!」
「逃がさない!」
「なのです!」
俺がなぜ2人に変身するよう指示したのか、それは第二形態の〈ラヴァ〉が飛行形態だからだ。
形態変化が終われば必ず空を飛ぶ。そこが隙になる。
空を飛ぶ時はこっちに攻撃してこないからな! 攻撃し放題なのだ!
そしてルルは、変身すると飛べるのである。
エフィはいわずもがな。
〈ラヴァ〉が飛び立っても、構わず攻撃を続けられる!
「『大聖光の十宝剣』! 『大聖光の四宝剣』!」
「ゴアアアアアアアア!!」
「『ゴッドドラゴン・カンナカムイ』!」
「ゴアアアア!?」
〈ラヴァ〉は飛び立つとブレスを吐いてきた。さっきよりも威力の高い溶岩ブレスだ。
これは『大聖光の十宝剣』とほぼ相殺した。ラナもドラゴンも強すぎ!
だがその後の宝剣4本は見事に串刺し、大きなダメージを与える。〈四ツリ〉魔法なのに『上竜鱗』すら貫通するこの威力よ。
続いて俺の『ゴッドドラゴン・カンナカムイ』は竜の姿で〈ラヴァ〉に噛みついた。
だがこれでも落ちない。
「なかなかやるわね! これならどう! 『神の天誅』!」
「ゴアアアアアア!?!?!?」
ラナが無慈悲な天誅を食らわせる。
天から舞い降りた特大の光線が〈ラヴァ〉に直撃。
下からは雷の竜『ゴッドドラゴン・カンナカムイ』が、上からは『神の天誅』が落ちて挟まれる構図。
苦し紛れの巨大溶岩球はシエラの盾が全部防いだ。さすがシエラ!
「『エクストリーム・エルフォース』! 『エクストリーム・エルフォース』! 『エクストリーム・エルフォース』! 『エクストリーム・エルフォース』! 『エクストリーム・エルフォース』!」
「『エネルギーチャージ』!」
エフィは銃型の杖から魔法を発射して追撃し、ルルはエネルギーをチャージした。
もうやりたい放題。
これだけ好き勝手攻撃してもヘイトを心配しなくて良いのもシエラの『完全魅了盾』で常にタゲがシエラに向いているからだ。
おかげで俺たちは好き放題攻撃をぶち込むことができる。そして。
「墜落したわ!」
「〈竜〉のレアボスには『落下防止』があるはずだ。つまりは純粋なダウンだな! 全員総攻撃!」
「とう! 『ヒーロー・セイバー・モーメント』!」
すでに総攻撃だった気もしないでも無かったが、ダウンを捥ぎ取ったならば総攻撃は基本!
〈空島ダン〉から『落下耐性』が登場するようになり、ボスは大抵落下系の攻撃が効かなくなってしまった。故に、墜落すればそれは落下ではなくダウン扱いである。
上空でダウンすれば、それは落下関係無く地面にゴロンするのである。
まず躍りかかったのはルル!
『エネルギーチャージ』で溜めていた威力を剣に移して六段階目ツリー『ヒーロー・セイバー・モーメント』を発動。これはルルの必殺技だ。
相手のバフを無視する特大範囲攻撃の一撃は、ズドンと直撃した瞬間2つ目のHPバーをがっつりと削った。
凄い威力だぜ。
デバフに加えて変身、そして料理とラナのバフも入っているからこその、この威力だな。
「『テンペストセイバー』! 『勇者の剣』!」
「『ジェットバーストフェニックス』! 『エル・セイバー』! 『エル・セイバー』! 『エル・セイバー』! 『エル・セイバー』! 『エル・セイバー』! 『エル・セイバー』! 『エル・セイバー』! 『エル・セイバー』! 『エル・セイバー』! 『エル・セイバー』! 『エル・セイバー』! 『エル・セイバー』!」
「とう! 『ヒーロー・バスター』! 『ヒーロー・バスター』!」
俺とエフィも追いついて総攻撃を食らわせると、2つ目のHPバーがゼロになり、何もしていないのに第二形態が終了してしまう。
威力高ぇ!! 完璧に決まったな!
「第三形態なるぞ! エフィとルルも2つ目の変身を見せてやれ! 『カリスマ』
バフもプレゼントだ!」
「いつの間にか変身対決に! でもそれ乗った――『天使最高位突撃・ウリエル』!」
「有り寄りの有りなのです! ルルもやっちゃうのですよ! ヒーローの変身は2回あるのです! 『究極変身・ヒーロープリンセス』なのです!」
相手が2回目の形態変化なら、こっちだって2回目の変身だ!
エフィとルルの上級ユニークスキル発動!!
エフィは4対8枚の大天使を超える高位天使、別名ウリエルモードへと大変身。
ルルは最初の変身からさらに磨きが掛かり、パワーアップバージョンという見た目の――変身マニアがいたらさぞ涙を流しながら喜ぶだろう姿に大変身した。
ヒーロー系だが、プリンセス要素が組み込まれた動きやすいアイドル衣装っぽい胸アツ装備に身を包んでいたのだ。
変身系は3分間、ステータスなどを爆アゲしてくれる性能を基本としている。
2回変身するには1回目の変身をしていることが条件で、さらなるパワーアップを約束するのだ。さらに制限時間も回復して2回目の変身から3分間変身状態が続く。
加えてエフィは、『大天使フォーム』の特性である『エル』の名の付くスキル・魔法なら連続使用する場合クールタイムを無視する効果も引き継いでいる。
さらにウリエルの特筆すべき点は弱点攻撃。なんと攻撃に全属性が乗り、一番耐性の低い属性ダメージを参照、加えてVITとRES、どちらか低い方で参照するというおまけ付きだ。何それ強すぎない?
つまり、相手がVITが低く雷属性が弱点だった場合、まさにSTRと雷属性の攻撃として計算するのだ。『エル』の名の付く全攻撃が対象である。
Q.クールタイムを無視して弱点攻撃を連打する? A.イエス。
マジそれ、なにそれ、どういうこと!? である。
【ウリエル】は元々STRとINTを共有し操る特性がある職業。そのユニークスキルも当然、STRとINTを操る性質があるのである。強すぎ! さすがは【天使】職のアタッカー特化型。
だが、ルルの変身はそれすらも超えるとんでもヒーロー性能。
ステータスは爆上がりする上変身中は〈デバフと状態異常を無効〉、〈飛行可能〉で〈スキルのMP消費をゼロにする〉。ここまではまあいいだろう。いやよくないが、この次に来る効果がハチャメチャすぎて見劣りするので、大人しく感じてしまうのだ。
そして最後の効果は〈クールタイムも4割減少を加算する〉である。
最後の言い方変じゃないか? と思うだろ? 4割減少を加算?
これ、実はルルが元々持っている『剣撃系クールタイム減少』に加算するという意味だ。
『剣撃系クールタイム減少LV10』の効果は「剣撃系のみ、スキルのクールタイムを4割減少する」である。つまり2回変身中はクールタイム8割減少で使用可能ということになるんだ。つまり、『姫騎士覚醒』のように連発できるのである。……3分間。
加えてルルは『真・小回り剣技』の効果でスキルの回転も速い。
2回攻撃が可能なのだ。それはつまり――『姫騎士覚醒』しながら2回攻撃が可能という意味になる。
あとがき失礼します。
今日はもう1話行くぞー!




