#1691 〈竜ダン〉最奥ボス〈ラヴァ〉戦に突入!
最奥の救済場所でレアボス撃破宣言をしてメンバーを決めた後、サティナさんには〈笛〉を吹いてもらい、俺たちはしっかりミリアス先輩作の美味しい料理を補給してパワーアップしていた。
「うおおおおお! 力が溢れてくるぞーーー!」
「すっごいパワァーなのです!」
先日、無事ミリアス先輩もLV60に至った。
竜の肉は凄まじく経験値が豊富だったようで、ミリアス先輩の目も輝いてたってハンナも言ってたっけ。
今回の料理も、そんなドラゴン肉料理だった。これが美味い、凄まじく美味かったんだ。口に入れれば蕩けるような肉で、もう噛めば肉汁が溢れ、美味さの暴力が口の中どころか身体全身を襲い、食べきれば腹の底から力が湧いてくる。これがドラゴン料理か!
「1戦のみVITとRESが40%上昇って、これ本当に料理バフなの?」
「私のINTとRESも40%ずつ上がってるわ! これで勝てるわよ! ――エステルも安心なさい!」
「ああ、ラナ様が大はしゃぎで、とても心配でございます」
「なんでよ!」
性能におののくシエラと胸を張りまくってなぜかエステルに心配されまくるラナ。
これぞ上級最高の料理だ! だが、最上級料理はこれのさらに上をいく!
LV100の時に作った料理とか、マジで凄いから。驚くのはまだ早いぜ?
「〈幸猫様〉たちへのお供えは、これに決まりだな! ニヤリ!」
「レアボスの報酬が素晴らしいものに確定した瞬間」
「おう。エフィも分かってるな!」
これだけ素晴らしい料理だ。
お供えをお約束すればきっと報酬だって――ふはは!
「よーしボス部屋に挑むぞ!」
「「「「おおー!」」」」
「出発だー! いってきまーす!」
「「「「「いってらっしゃーい!」」」」」
「まるでピクニックなんだよ……!」
「絶対ボス部屋に潜る時のテンションじゃないですの!」
多くのメンバーに見送られながら俺たち5人はボス部屋の扉を潜った。
最後にカグヤとサーシャの戦慄の台詞が聞こえて来てさらにパワーアップした気分だぜ!
「これはまた、いったいどこなのかしら?」
ボス部屋の光景を見て、シエラが息を飲む。
「洞窟っぽいのに洞窟じゃないわ、空が見えちゃってるじゃないの!」
「溶岩に囲まれたフィールド? とりあえず今までと変わらないっぽい」
「にゅ?」
最奥のボス部屋は、とても大きな空間だった。空は高く、とても洞窟の中とは思えない。しかし、暗く塗りつぶされている。
だが、見た目としては今までの〈竜ダン〉の洞窟内と雰囲気は変わらない。
そこら中に溶岩が流れ、溶岩の滝が流れ、その溶岩に囲まれた大きな大地。
決戦場のようなところに俺たちは居た。
「来るぞ」
俺の言葉にシエラがこの前〈竜の試練〉で手に入れたばかりの大盾、〈アストロ・ルミナス・ドラゴスケイル〉を構える。
星と竜の絵が描かれた、非常に強力な盾である。
それと同時にエフェクト発生。これはレアボスポップのエフェクトだ。
レアボスを呼び出すことには、無事成功したらしいな。さすがはサティナさんだ。
そうして登場したのは当然〈竜〉。
場所はまさかの溶岩の中。
そこからズン、ズン、と大地に響く足音が轟き、溶岩の海からその姿を現す。
体長15メートルにも及ぶ体に溶岩を纏った4脚のドラゴン。
―――〈溶岩大帝・ラーヴァエンプドドラゴン〉だ。
溶岩をその身から流し続ける姿は壮観で、驚きのあまりちょっと固まりそうになってしまう。胸や首、腕や背中からは暗黒と溶岩が混ざった色の水晶のようなものが飛び出ていてとてもかっこいい。首は長く上に伸び、気高い姿。尾は2本でこれもかなり長い。
この迫力のあるかっこよさ、まさにドラゴン。
「これが、ここのレアボスね」
「シエラ、頼んだぜ!」
「ええ、任せて――『四聖操盾』! 『シールドフォース』!」
さすがはシエラ。
全く飲まれずスキルを使う。
シエラの体から離れた自在盾は、シエラの意思で自在に動く。
さらにまずは挑発スキルを使って自分に注目を集めた。
「ゴアアアアアアアア!!」
「! みんな後ろに! 『シールド・テラ・クワトロ』!」
開幕は溶岩ブレスから始まった。
シエラの4つの小盾が巨大化して防御する。
溶岩ブレスは光線じゃない。まるでウォータージェットの溶岩版だ。
だが、それもシエラの巨大盾はしっかりと受けきる。
「バフを送るわよ! 『大聖女の祈りは癒しの力』! 『守護の大加護』! 『獅子の大加護』! 『迅速の大加護』! 『聖魔の大加護』! 『耐魔の大加護』! 『病魔払いの大加護』! 『光守られし聖なる奇跡』!」
ラナがバフを掛け終わると、ようやく溶岩ブレスも静まった。
「これは、地面が溶岩に」
「地面が無くなっちゃったのです!?」
「エフィは空から、ルルは俺に付いてこい! 回り込むぞ! デバフをプレゼントしてやるんだ!」
「了解! 『天空飛翔』!」
「あい!! 今のうちに『看破』なのです!」
強力な溶岩ブレスは地面を一時的に溶岩エリアにしてしまう効果がある。
溶岩が冷めるまでは地面にボコボコ溶岩が煮え、進入不可エリアとなってしまうのだ。
だが溶岩ブレスという大技を使ったばかりのボスは、少しの間動けない。
その間に俺たちは回り込み、ルルが〈幼若竜〉で『解析』を掛ける。
「分かったのです! あれは〈溶岩大帝・ラーヴァエンプドドラゴン〉というのです!」
「ナイスだルル! 通称〈ラヴァ〉と呼称するぞ! 俺に続けー! 『テンペストセイバー』! 〈五ツリ〉以上で攻撃だ!」
「『完全魅了盾』!」
「了解! 『ヴァーミリオンプロミネンス』!」
〈溶岩大帝・ラーヴァエンプドドラゴン〉、通称〈ラヴァ〉に向け、俺はソニック系を発動、一気に接近して斬る。
〈四ツリ〉スキルは『上竜鱗』を抜けずにダメージは大幅カットされるので〈五ツリ〉以上を指示する。
続いてシエラの小盾、いや、今は『シールド・テラ・クワトロ』によって巨大化した盾が〈ラヴァ〉を襲った。
『シールド・テラ・クワトロ』はMPを消費し続ける代わりに小盾を巨大化する優秀なスキルだ。
〈竜の試練〉の時もその巨大な盾で〈スターライト〉を守ってくれた。
そして『完全魅了盾』。必ずタゲを得ることのできるこのユニークスキルでガツンと巨大盾を〈ラヴァ〉にぶつける。タゲが完全にシエラの方を向いたな。
エフィは攻撃を開始。
飛翔で空を飛ぶことで溶岩を回避。そのまま遠距離攻撃をしながら徐々に近づいていく。
「ゴアアアアアアアア!!」
「警戒しろ! 『勇者の剣』!」
「わわわ! すっごい連続の火球なのです!?」
「いや、あれは溶岩球だ!」
続いて〈ラヴァ〉がしたのは火球の連射。いやただの火球じゃない。溶岩球の連射だった。
「当たった地面が溶岩になったわ!」
「防ぐわ――『守陣形四聖盾』! 『カバーシールド』!」
これにはシエラがすぐに対応。
シエラに向かってくる溶岩球はラナも射程に入っているほど広範囲に撃たれていた。
しかし、巨大化した盾の『カバーシールド』がそれを防ぐ、『カバーシールド』はただの〈二ツリ〉スキルだが、巨大化している『シールド・テラ・クワトロ』は〈六ツリ〉だ。さらに『守陣形四聖盾』で永続効果を付与。
巨大盾は溶岩球の連続をガンガン弾いていきその全てを受けきった。さすがだ!
だが、〈ラヴァ〉もここで終わらない。
「ゴオオオオオオオ!」
「大きい!」
最後に巨大な溶岩球を連続で放ってきた。これは、シエラの巨大盾でも抑えきれず、吹っ飛ばす。
「『クイーンオブカバー』!」
シエラはすぐにギアを上げ、上位スキルのカバーでこれを防ぐ。防ぐ防ぐ。
さすがはシエラだ。あっちは任せて俺は攻撃だ。
「ルル、頼む!」
「あい! 『プリンセスラブリーチャーム』!」
「『ディス・キャンセル・ブレイカー』!」
「ゴオオアア?」
ルルの『プリンセスラブリーチャーム』はオールステータスデバフだ。
しかも重複可。
目に入れても可愛いしかないルルのチャームによって、全てのモンスターはデバフに掛かってしまうのだ。
「いくぜ〈勇王竜剣〉! 『ドラゴンロードハウル』! 『ソウルブレス』!」
ここで俺は武器〈勇王竜剣〉の武器スキルを発動。剣から出たドラゴンの咆哮は次の攻撃に波動を込め、ノックバックを無効にし、威力を大幅にアップさせる。
さらに『ソウルブレス』は【勇者】か【竜】系の名の付く職業が使う次の攻撃に魂を込め、これまた威力を特大上昇させるスキルだ。
「『天光勇者聖剣』!」
「ゴアアアアアア!?」
良い一撃が入った! これは相当なダメージが出たな!
「とう! 『フォースバーストブレイカー』! 『デュプレックスソード』! 『クレセントスラッシュ』! 『大回転超切斬』!」
「『星降りの光線』! 『ウリエルラッシュ』!」
「ゴアアアアアア!」
良い感じに攻撃が決まり始めると、タゲをシエラに固定したままの〈ラヴァ〉が尻尾で迎撃し始めた。
タゲではなく、反撃系のスキルである。
「あうち!」
「2本の尻尾が、さらに枝分かれ? 『グローリーバニッシュ』!」
「やったなーなのです! 『ディストラクションブレイカー』!」
スキルによる尻尾攻撃は、まるでクレーンゲームのアームのように開いて12本に枝分かれし、一気にルルやエフィ、そして俺を襲ってきた。
これがなかなか厄介で、かなり挙動が複雑だ。
さらに衝撃もあり、エフィも軽く当たっただけでかなりノックバックしていた。
ルルはノックバックに耐性があるし、攻撃に当たればMPを回復できるため、多少のダメージは問題無し。
「『楽園の雨』! 『回復の願い』!」
ラナからの回復も届き、HPが危険になることもない。
「攻撃、すごく重い、とても良き! 『アルティマス・グラディウス』!」
「それはなによりだ! いくぜ――『ゴッドドラゴン・カンナカムイ』!」
「ゴアアアアアアアア!!」
ズドンと抉り込むエフィ最強の接近攻撃スキルに俺の雷のドラゴンを叩き込む。
さすがは〈竜〉、凄まじい耐久力をしている。
だが、ここで〈竜〉が移動を開始した。
第一形態は普通の竜形態だが、今まではその場からほとんど動かなかった。
溶岩球や溶岩ブレス、尻尾による連撃しかしてなかったが、急に走り出してシエラに向かう。15メートルの巨大な身体なので速度も速い。
「シエラ!」
「! 『ディバインシールド』!」
すぐにシエラが巨大盾が4つ合体した『ディバインシールド』を展開する。
そこに〈ラヴァ〉は突っ込むと、さすがはシエラの巨大盾、完全にその動きを止めることに成功する。――と思われた。
「ゴアアアアアアアア!!」
「この距離で、ブレス!?」
なんと〈ラヴァ〉は巨大盾にゼロ距離でブレスをぶつけたのだ。
最初は拮抗していた巨大盾も、全エネルギーを叩き込まれたことで徐々に瓦解し最後には吹っ飛ぶ。
「シエラ、ラナ! 『ブレイブシールド・イグニッション』!」
「ゼフィルス!?」
巨大盾が吹っ飛び、大盾を構えるシエラの間に割り込むのは俺。
勇者最高の〈六ツリ〉防御スキル『ブレイブシールド・イグニッション』を発動。
左手の盾を翳すと半透明の巨大な勇者盾が顕現し、ブレスを全てガードする。
勇者の意匠が描かれた盾は近距離の巨大溶岩ブレスに全く負けず、その全てを防御した。
「まだまだーー!!」
それだけじゃ終わらない、俺はさらに一歩踏み出し、盾を〈ラヴァ〉の顔面に押し込んだ。
すると近距離すぎて溶岩の行き場が無くなり爆発。〈ラヴァ〉が蹈鞴を踏んで大きく下がったのだ。特大のノックバック!
「ゴアアアアアアア!?」
「かっこいい」
「わ、わ! ゼフィルスお兄様、つよつよなのです!」
エフィとルルがこっちを見てはしゃいだような声が聞こえてきた気がする!
「うおおりゃあ!! 今だ!」
「たりゃー! 『ウリエルバニッシュ』! 『グローリーバニッシュ』! 『ウリエルラッシュ』! 『アルティメットノヴァ』!」
「とう! 『インフィニティソード』! 『ヒーロー・バスター』! 『ヒーロー・バスター』! 『デュプレックスソード』! 『クレセントスラッシュ』! 『ヒーロー・セイバー・モーメント』!」
「『グロリアスバッシュチェイサー』! 『完全魅了盾』!」
「『神の天誅』! 『大聖光の無限宝剣』!」
「『スターオブソード』! 『インフィニティ・バニッシュセイバー』!」
ブレスの後は硬直が待っているのはさっき見たとおりだ!
さらに近距離ブレスが爆発して相当な特大ノックバックが発生して完全に硬直している。
ここで一気に攻撃を叩き込む! すると、〈ラヴァ〉がダウンした。
「ゴアアアアアアア!?」
「ダウン! 総攻撃だーーーー!!」
全員で総攻撃を叩き込むと、ついに一本目のHPバーがゼロになり、第二形態が始まった。




