#1690 壁画が凄い!これは学園長に報告するしかない
凄まじいお宝150個をゲットした俺たちは、もうホクホクを通り越してアツアツだった。むしろアゲアゲだよ! フォオオオオオオオオ!!
しばらく狂ったあと。ようやく落ち着いて一息吐く。
「いや~、お宝ザックザックだったねぇ~」
「前の上級下位だと卵なんかもあったのよ、今回は無かったみたいで残念だわ」
「私のゼニスが居たところですね。つまり、これは竜の宝物庫だったと?」
「チェーンダンジョンのレアイベントは報酬が宝物庫とな!? なるほど、それはありえる仮説だ。ということはだよ? 未だ見ていない上級中位の〈火山ダン〉にも、宝物庫があるってことじゃないかい!?」
「!! それは行ってみるしかないわね!」
ニーコとラナ、そしてアイギスがニッコニコだった。
ほほう、ニーコもラナも素晴らしい着眼点だ。その通り、〈火山ダン〉にも凄いレアイベントがあるんだよ。ただ六段階目ツリーを開放していないと厳しいのでスルーしたんだけどな。〈火口ダン〉もそうだったが、ランク9のレアイベントは難易度高すぎるんだよなぁ。
「ゼフィルス先輩! 今度は壁画! 壁画見よ!」
「おっとそうだったな! 今回の壁画は凄そうだぞ~」
「ここはルルが〈幼若竜〉を使うのです!」
「ルルお姉ちゃんい~な~」
「安心するのですアリス、次の機会には代わってあげるのです!」
「やったー!」
アルテに言われて次は巨樹に描かれた壁画のステップに移ると、ルルがシュチャっと立候補した。アリスが隣で羨ましがったりして、約束してニコパする2人の和み度が高すぎる!
ほらシェリアなんかエリサに支えられてるし。
「こほん。それじゃあルル、やってくれ!」
「あい! 『絵解き』なのです!」
さっきルルが獲得した〈幼若竜〉を掲げ、ルルが元気良くスキルを発動する。
すると壁画が読めるようになっていく。見るでは無く読むである。相変わらず非常に不思議な光景だ~。
「こ、これは、にゃにゃにゃ!?」
「な、なんですとー!?」
「お、落ち着きなさいフラウ、アルテさんも!」
「何事ですか!?」
そして先頭にいたフラーミナとアルテがまず叫んだ。
フラーミナなんか犬人なのに「にゃにゃにゃ」である。これは非常事態!
カタリナとロゼッタが素早く2人を支えてあげたが、2人はそれに気が付かないくらい驚愕していたんだ。
「こ、こここここりは! モンスターの進化系統大全集!?!?」
「この壁全てに画かれたもの、全部ですか!?」
ニーコも驚愕だ! エステルなどの普段冷静なメンバーも驚愕を顕わにしている。
「モンスターの進化系統が載ってる! すっごい載ってる! わ、わ、わ、〈ヒュドラ〉から〈オロチ〉、そして〈ヤマタノオロチ〉!? 〈海皇神リヴァイアサン〉!?」
「〈バハムート〉の次は――〈炎竜神バハムート〉!? 〈大地神ベヒモス〉!? なにこれ!?」
特に顕著なのがテイマー系のフラーミナとアルテだ。
目はもうキラッキラを通り越してギラッギラ? 頬も高揚していて見るからに大興奮ですというのが分かる。
「これはまた、凄い情報が飛び出してきたわね」
「〈竜〉種だけではなく全モンスターってところがポイントだな」
「新種発見が多そうですね、お嬢様……?」
「この大発見、しっかりお爺様に報告せねばなりませんわ! テイマーさんたちに衝撃が轟きますわよ!」
「……報告は避けられないでしょう。衝撃が轟くどころかトドメになりそうな雰囲気なのですが……」
シエラ、俺、クラリス、ノーア組は冷静沈着!
だが、クラリスが祈りのポーズをし始めたぞ? はて? ここに宝箱はもうないぞ?
「ゼフィルス様! 撮影お願いいたしますわ!」
「おう! 任せておけ!」
パシャパシャ。
壁画は非常に多く、花が咲いたような姿の樹冠、その壁を1周するレベルで大量の情報が書かれていた。
全部撮影するのに1時間を要したよ。いやぁ大変だった。
「お疲れ様ですわゼフィルス様! これでお爺様が喜びますわ!」
「喜びますかね?」
ノーアがキラキラした目で労ってくれるが、クラリスはなぜか遠い目だ。空には何も無いぞ?
1時間もすればみんな結構落ちつくもので、未だに興奮しているのはフラーミナとアルテ、ニーコくらいだ。
そろそろ良いだろう。記録も取ったしな。
「よし、撤収だ!」
「「「おおー!」」」
「「「えええ!?」」」
約3人には後でスクショしたデータを提出すると約束して出発。
どうやら俺が撮影している間にこのレアイベント特設フィールド自体の探索もしていたようだ。
「それが聞いてよゼフィルス! な~~~~~~~んにもなかったのよ! お宝も、〈竜〉素材も全部よ!」
「加えてモンスターも居ませんでした。完全にもぬけの殻、救済場所状態にありました」
「なぜか地面が懐かしく感じたデース」
とはラナ、シズ、パメラからの報告だ。パメラの報告は、まあずっと飛んでたからね。
〈竜ダン〉のレアイベントにして上級ダンジョン最大の難所、〈竜の試練〉を突破した俺たちは、こうして〈スターライト〉に乗って入り口まで戻ってレアイベント特設フィールドを後にした。
◇
「学園長、ゼフィルスさんから報告が上がってきました」
「……へ? ま、まさか、〈竜〉種が出ることが確認されたばかりなのに、もう攻略なんてことはない……じゃろ?」
「はい。攻略ではありませんでした」
「ほ、ほぉ~~~~。なんじゃ、ビビッたわい」
コレットの報告に深~~く溜め息を吐く学園長。
ついこの前、ゼフィルスから「深層で〈竜〉種が出てきました! おっきいです!」と報告があったばかりだ。
また、〈竜共のハープ〉でテイムできるかも試してみる的なことも言われた。
〈竜〉を、今後は自由にテイムできるようになる?
それを聞いてほけったのは言うまでもない。
もちろん熱~いお茶で意識が戻って来たのも言うまでも無い。だが、敢えて言う!
つまり今回はその報告だろう。
ゼフィルスが〈竜共のハープ〉を使った結果報告だ。
ならば……多分「〈竜〉種テイムできましたー! 10体くらい!」というこちらの想定を上回る報告に違いない。
学園長は覚悟を決めた。多少のことでは驚かない、覚悟して受け止めてやるという気概を発揮させる表情でコレットに先を促した。
さあ、10体だろうが20体だろうが来てみるがよい!
そう覚悟する学園長――しかし。
「レアイベントを攻略したことで大量の宝箱を獲得し、壁画を見ることができたようです」
「ん?」
レアイベント? レアイベントってあれじゃよね? 上級職が分かるやつ。
そんなことを考える学園長。思っていたものと違っていた。
ただのレアイベント報告。普通はただのと言えないかもしれないが、ゼフィルスの報告にしては大人しい方だ。学園長はホッとした。だが、それも束の間だった。
「〈金箱〉の数は約150箱だったそうです」
「げふげふ!?」
学園長がむせた。想像より桁が2つくらい違う。10個でも驚いただろうに、実際は150である。その全部が〈金箱〉? まさに桁違い。
え? ゼフィルス君たちなにしたの!? そう動揺の激しい学園長。
「ごほんおほん。え? 150?」
「はい」
「え? 全部〈金箱〉……なの?」
「そうみたいです」
「(そうみたいですじゃないんじゃが)!?」
まさかの〈金箱〉総数に学園長の頭がすごくフリーズする。
コレットの返事も軽かったのも要因だ。
これ、絶対なにか起こるやつだよ!
学園長は確信した。だが、まだ半分だ。次は壁画タイム。
「それとです……壁画には――全モンスターの進化系統が載っていたそうです。こちら、現像した写真と簡単に纏めた資料になります。凄いですよ」
「…………ほ?」
おかしいな。訳が分からない。
差し出された報告書を震える手で受け取ってペラペラ捲る学園長。
その表情は最初は驚愕に、次にはガクブルに変化し、次は遠い目になった。
絶対コレットの言う「凄いですよ」で済ませてはいけないほどの大発見だったんだ。こんなものが発表されたらどうなってしまうのか、学園長の脳裏にその光景が走馬灯のように素早く過ぎった。そして意識を手放した。
「がふっ」
「ああ学園長! お気を確かに! まだゼフィルスさんたちは〈竜ダン〉を攻略していませんよ!?」
まるでこの先もっと大きなことが起こるんですよと言わんとする――いや言っているコレットからそっとお茶を手渡され、無意識にズズズと口へ。
「あっつぁ~~~~~!!」
学園長の意識はちゃんと戻ってきた。
◇
いやぁレアイベント〈竜の試練〉熱かったわぁ。
未だに熱が抜けない。また鍵をゲットしたら挑みたいものだ。
だが、残念ながら今のところドロップ無し! 無念。
レアイベント〈竜の試練〉をクリアして2日後、俺たちはついに最奥へと到達していた。
「なんだか、あの〈竜の試練〉? を経験しちゃうと呆気なかったわね」
「あれはボス100体抜きでしたからね。まさしく規模が違いました」
「最奥ボスはもうちょっと手応えあるかしら?」
「あると思いますよ?」
「楽しみね!」
ラナとエステルがとっても物騒なことをおっしゃっていた。
だが、気持ちは分かる。
なにせ徘徊型の〈暗黒竜〉すらも簡単に屠ってしまったのだから。
もうこれ、レアボスクラスじゃないと満足出来ないんじゃないの?
「よ~し、なら〈笛〉を吹くか!」
「え、いいの!?」
「もちろんだ! 最初の最奥ボスはレアボスでいくぞ! 挑みたい人は挙手!」
「はーい!」
「ラナ様が挑まれるのでしたらもちろん私もお供します」
「レアボスね。私も、少し物足りなく思っていたところだったの」
「ルルも! ものが足りないと思っていたのです!」
ラナが元気良く手を挙げればエステルも挙げる。
さらにはシエラやルルまで! あとルル、物足りないな、物が足りないじゃないぞ?
ここに登場するのは〈竜〉のはずなのに、レアイベントの報酬もあってパワーアップしたメンバーにとっては、もはや難易度はそう高くは無くなってしまったようだ。
「それじゃあ、挙手した中から選ぶぞ。ヒーラーはラナ、タンクはシエラ」
「やったわー!」
「全力を尽くすわね」
「アタッカーは俺、ルル、それとエステルはレアイベントの時に大活躍したし――」
「私! やりたい、やりたい、強く立候補する」
「それじゃあエフィでいこうか」
「! 大感謝!」
最後のメンバーはエフィに決まった。
アレだな。物足りないと主張するメンバーズになってしまったぜ。
「いきなり〈笛〉吹いてレアボスですの!?」
「しかも決め方がすっごく軽かったんだよ!?」
「ゼフィルスたちにとってはもう上級ダンジョンのランク9であっても楽勝ってこと!?」
「や、やべぇ……。この後の展開が容易に見えた気がするぜ」
サーシャ、カグヤ、クイナダ、ゼルレカのツッコミが心地良い。
こうして俺たちは、〈竜ダン〉最後のボス戦に身を投じることになったのだった!




