#1689 〈竜の試練〉大報酬!クルクルクル150%!
「お、みんな来たか!」
「……なんでゼフィルスが居るのよ」
「な、なに~!? ぼくたちが一番乗りじゃないだってー!?」
「ゼフィルスお兄様が居るのです! ルルたち、強大な敵を打ち倒してきたのです!」
「打ち倒してきたの~」
「そうか~」
俺がそこで待っていると、ぽっかりと空いている大きな穴から続々とメンバーが上がってきた。先頭はシエラ、横にニーコたちが続く。
俺に気が付いたルルとアリスがててて~と駆けてきてアピールしてくるんだ。
なにこの光景。最高なんだけど。
「ここは、〈竜樹〉の頂上なの?」
「だな。見ろ、樹冠が晴れていくぞ」
「樹の枝が動いていくのかね! モンスターでもないのに興味深い……まさか最後はこの〈竜樹〉をみんなで打ち倒す、なんて展開にならないよね?」
「はっはっは、それは無いから安心しろって」
「…………」
シエラたちが到着すると、それまで上空を隙間無く覆っていた樹冠が開き、枝が横に倒れ、葉や枝によって広場が形成されていく。
そうして出来たのはぽっかりと開いた器型の広場だった。
全ての竜種を倒し、〈第一竜巣洞〉から登ってくると、普通はこうして樹冠が開くギミックが隠されている。
「凄いわね……ところで、なんでゼフィルスはここに居るのかしら?」
「そりゃあ、ここに『英勇転移』で転移してきたからだな!」
「…………」
「おっと、リーナから通信が来たぞ、ここに〈スターライト〉を着陸させるそうだ」
「……はぁ、分かったわ。――みんな、集まって!」
なぜか溜め息を吐かれた不思議。はて?
シエラが声を張ると、広場の端から「「「おお~」」」と外の景色を眺めているメンバーたちも即で戻ってくる。さすがはシエラだ。
するとすぐに〈スターライト〉も到着して、1班、3班、9班、10班、そして〈採集無双〉の面々が降りてきた。
「もうゼフィルスさん、急に転移でどっか行くなんて、驚いたではありませんか」
「いやぁ悪いなリーナ。ここに来なくちゃ行けない気がしたんだ」
そう言ってこの場は誤魔化す。
例の件はまだ極秘だ。いずれ【救世之勇者】イベントの話をするにしても、まだ準備がいる。
そして、全員が集まったところで声が聞こえてきた。
『汝らの試練突破、実に見事であった。我らは、汝らの〈竜の試練〉の突破を認めよう』
「あれ見て!」
「最初に扉の上に居た、竜の石像ですわ!」
ラナが指さした先にあったのは――石像。
それもすっごく見覚えがあった。あれはこのレアイベントの扉の前に居た、喋る石像に違いない。
俺のイベントだけじゃなく、ここにも駆けつけてくださるフットワークの軽さよ。
というか本来はこっちが通常イベントで、【救世之勇者】の方が特別なんだよな。
通常イベントでもお世話になります!
『〈竜の試練〉突破者に、我らが宝を授けよう』
「お宝かい!?」
『改めて、試練の突破、実に見事だった』
その瞬間、一部に枝が多く重なり合い巨大な箱を形成する。
あの形は――宝箱だ! しかも超巨大宝箱!
さらに周囲の光景も変わっていき、壁だった部分一面に壁画が描かれていく。
「ふぉおおおおおおおおおお!! 絶対あれはお宝に違いない! ぼくの『お宝レーダー』が今、これまでにないほど反応しているんだ!」
最初の第一声はニーコのフォーだった。ビューティフォー!
「あんな大きいの、見たことない」
「いったいどれだけのお宝が詰まっているのよ!!」
カルアとラナも大興奮の様子だな。さあお楽しみの時間だ!
「ワクワクが止まらないな! アレにはきっと、これまで倒しに倒しまくった〈竜〉ボスの報酬の全てが詰まっているに違いないぞ!!」
「ふぉおおおおおおおおおお!!」
ニーコテンション高っ!
だがそれも当然だろう、何せ、レアイベントで100体〈竜〉ボス制覇を成し遂げたのである。
途中、素材も宝箱もドロップしなかったとなれば、ここに掛かる期待は想像を絶する。
ニーコの目に「宝」と書かれているのが見えた気がしたんだぜ。
俺たちが全員で近づくと、それは唐突に起こった。
まるで樹に意思があるように、それまで絡まっていた枝がほどけて開き、中からは枝で出来た雛壇のような階段、その段差に積まれた大量の〈金箱〉が現れたのだ。
その数――約150箱。
「うっひょーーーーーー!!」
「うおっしゃーーーーー!!」
思わずニーコと一緒にシャウトしてしまった俺を誰が責められよう!!
「ふわ、ふわわわ!? なにこれ、すっばらしいじゃないの!!」
「ん! ん! 金色、たくさん! すっごい、たくさん!」
「これは、いくつあるのだ?」
「軽く見積もっても100はある、いやもっと、150個近くはあるな」
「たはは~すっご、こんなに〈金箱〉が並ぶとか、壮観だよメルト様!」
ラナとカルアが目を輝かせ、リカが圧倒されたように言えば、見かけは冷静なメルトが即で数を言い当てる。
傍らにいるミサトが、いつものようにメルトをからかうのも忘れて肩に抱きついているのが印象的だ。
「これは開け甲斐がありそうね――カルア! ちゃんと毎回お祈りを忘れないように! いえ、この際みんなで今、お祈りするのよ!」
「ん!」
「それは名案だぞラナ!!」
「本当に名案、なのか?」
ラナの名案によってここで一斉にお祈りを決行することになった。
リカの呟きは俺たちの耳には入らなかったんだぜ。
「ああー〈幸猫様〉〈仔猫様〉〈愛猫様〉! 素晴らしい〈金箱〉を約150個も!! ありがとうございます! とてもありがとうございます! どうぞ中身も良いものをお願いいたします!」
「「「「お願いいたします!」」」」
みんなでお願い。願いよ〈幸猫様〉たちに届け!
俺はこれまででかつてないほどにお祈りした。
そう、ここレアイベント〈竜の試練〉の報酬は――本来〈金箱〉100個。
これは最大数で、〈竜〉を撃破した数だけ宝箱が増える仕様だ。
100体倒せば100個〈金箱〉確定とか何それ最強! そんなの全部倒すに決まってる! そこに〈幸猫様〉たちの恩恵も加わってくるのだからパナすぎる!!
その結果がこの約150個の〈金箱〉! これはあとで大クルクル祭りを開催しなければなるまい!!
しかもである。さらに凄いのはこの中身の方なのだ。
「掛かるのよー!」
「はっ! やっべ、スクショ撮らなきゃ!」
この壮観、記録に残さなければならない!
俺はカメラマンにジョブチェンジしてパシャパシャする。
「まずはこれよ! 私の勘がこれは凄いものだって言っているわ! いざ、オープン!」
トップバッターはラナ!
躊躇も何もすっ飛ばしていきなりすっさまじいと豪語する〈金箱〉を開けにいっていた。何それ羨ま! パシャパシャ。
「これは、タリスマンじゃないの! エステル!」
「『解析』! これは――〈竜祝のタリスマン〉というそうです。効果は『竜祝回復威力大上昇』と――これは! 『回復妨害無効』がついています!」
「なんですって!」
「いきなりやべぇの当たっちゃった!?」
ラナと俺の叫びが重なる。
だがきっと注目した場所は異なるだろう。
多分ラナやエステルが注目したのは『回復妨害無効』の方だ。
その効果は文字通り、回復魔法を妨害されない。
実はこれ、〈回復〉カテゴリーを妨害されないという意味なのである。
これがどういう意味か分かるだろうか?
ラナは『大聖女の祈りは癒しの力』の効力で全ての魔法に〈回復〉のカテゴリーを付与することができる。
これにより、なんとラナの魔法は全ての妨害を無効化することが可能になるということなのだ!
今まで『大聖女の祈りは癒しの力』は『大聖光の十宝剣』などをぶっ放す時にしか使ってこなかったが、今では〈光の浄衣〉の『【聖女】回復クールタイム軽減LV10』によって、常に掛けっぱなしにすることが可能になっている。
常に攻撃も含め全てが妨害スキルされないラナのできあがりだ。
ナニコレツヨイ。
ちなみに妨害というのはそのまんま、失敗させたりキャンセルさせたり、追尾能力を攪乱したり、ドロー系スキルで引き寄せたり、などのことである。この前【強欲】のモニカが使ってきたあれだな!
攻撃スキルで相殺したり、防御スキルで受けたり、回避スキルで回避することは妨害ではないのでそこは無効化できないぞ。あくまでラナの魔法に作用する邪魔を無効化するという意味だ。
加えて俺が驚いたのはもう1つのスキル『竜祝回復威力大上昇』の方である。
これも全く同じだ。〈回復〉カテゴリーの威力が大上昇するという意味なんだ。
ホワイ?
普通ならね、回復魔法の効果が上がって弱い魔法でもHPを大回復できるなど、かなり使い勝手の良いスキルだ。だが、これもラナが持っただけで大化けする。
そう――『大聖光の無限宝剣』など、宝剣の類いの威力も大幅に上昇してしまうという意味なのだ!
実を言えば、今までも『回復強化』や『祈り系回復強化』などの装備スキルはあった。ラナ、むっちゃ装備してた。
そう、もうお察しかもしれないが、今までラナの『宝剣』系の威力が無茶苦茶強かったのは、この影響である。『回復強化』系の装備スキルが『宝剣』強化に直結していたのだ。拠点も巨城も大ダメージを受けるわけだよ。
それが今回、〈竜〉の名の装備を得てさらにパワーアップしてしまったのだ!
あかん。ラナの『大聖光の無限宝剣』を止められる者が居なくなっちゃうよ!
元から居なかった気もするけど!
だが、驚くのはまだ早い。まだ149箱も残ってる!
「こりはすっごいのです! ルルもすっごいの当てたのです!」
「アリスも凄いの当てたの! これ、〈竜の箱庭〉なの!」
「〈竜の箱庭〉2つ目当たっちゃった!?」
「ルルはもっと凄いのです! なんと〈幼若竜〉のぬいぐるみさんなのです!」
「〈幼若竜〉も2つ目当たっちゃった!?」
「ん。〈竜の腕輪〉ゲット」
「〈竜の腕輪〉も2つ目当たっちゃった!?」
続々と上がる報告にツッコミが追いつかない。
そう、ここは〈竜の試練〉。
試練の突破者に与えられるのは――〈竜〉の名の付く装備やアイテムたちだ。
それが約150個。
ちなみにレシピは無し。
全て現物である。
しかし、まあとんでもないものが目白押しである。
ダブることももちろんあって、〈幼若竜〉なんか最終的に4つもドロップしていたよ。かなりありがたい!
「ね、ねぇゼフィルス君、これ、本当に私がもらっちゃって良いの!? 〈竜の箱庭〉だよ!?」
「もちろんだカイリ。普段はリーナと一緒に使ってもらっていたが、すでにカイリのスペックなら1人で〈竜の箱庭〉を使いこなすまでになっている。普段はリーナの〈竜の箱庭〉を一緒に使ってもらって、必要があればそれを使ってくれ」
「すっごい感激! ありがとうゼフィルス君!」
〈竜の箱庭〉2つ目はカイリに贈られることになった。
とはいえ通信ができないため、普段リーナと一緒に行動するのは変わらないと思われる。そのため万が一があったときに使ってほしいと言っておいた。
「〈竜の目〉〈竜の重鱗両手盾〉〈ドラゴランスファイナル〉〈竜翼〉〈アストロ・ルミナス・ドラゴスケイル〉〈竜の威圧〉……」
「おお、おおお! 〈竜激のスコップ〉に〈竜激の斧〉、〈竜激の釣り竿〉も!!」
「とんでもない効果のものが多いですよ。これ、どうするんです?」
「もちろんみんなに分配だ! これでまたメンバーが凄まじくパワーアップすることだろう!」
「勇者君、勇者君! アイテムは是非ぼくにくれたまえ! 特に〈竜の目〉〈竜の威圧〉などを! それと飛べる装備の〈竜翼〉もついでに!」
「〈竜の目〉はリーナ行きだな! 〈竜の箱庭〉とコンボで使ってもらって。〈竜の威圧〉はエンカウント避け、これはカイリに持たせよう。残りの〈竜翼〉は空飛べるようになるか~。これはやっぱり射撃持ちに持たせたいな~。上から地上のモンスターを討ってくれる援護射撃があれば便利だよな~」
「う、うう、ひ、卑怯だよ勇者君、ぼくは研究がしたいだけなのに! 使わせる気だね!」
「これはニーコにプレゼントしよう!!」
「ふぉおおおおおお!」
「はーっはっはっはー!!」
ニーコに〈竜翼〉を貸与して、そのまま一緒にクルクル回る。
全部開け終えてテンションもマックス! ここからは――クルクル大祭りじゃーーーー!
「ああーー! またゼフィルスが踊り狂ってるわ!」
「しまったですわ! わたくしも参加しなくては!」
クルクル祭りにラナとリーナが素早く反応していた。
「シエラー、一緒に行くのです!」
「ええ、そうね。私の新しい大盾でゼフィルスを止めるわ」
「そうじゃないのです! えい!」
「あ」
「なんだ次はルルとシエラか? よーし一緒に踊ろうぜ!!」
「シエラも一緒に踊るのですーーー!」
「ちょ、ルル、ゼフィルス!? ひゃ!」
なぜか新装備の大盾を構えようとしていたシエラだったが。ルルに引っ張られてドーン。一緒に俺の胸に飛び込んで来たんだ。すぐに俺の手がルルとシエラの腰に回る。そうれクルクル大祭りの始まりじゃーーーーー!!
シエラとルルをクルクルすると次はラナ、リーナ、アイギス、フィナ、エリサ、カタリナ、サチ、エミ、ユウカ、ノエル、ラクリッテ、ノーア、サーシャ、カグヤ、ラナ、リーナとどんどん回っていき(2周目突入)。
俺は今日もたくさん回ってしまった。




