#1688.5 【救世之勇者】専用イベント〈勇竜の秘宝〉
前書き失礼いたします。
本日2話目! 楽しんでいってください!
俺は今、1人〈竜樹〉の頂上にいた。
みんなを送った後、リーナに断ってここに〈英勇転移〉で転移したのだ。
なぜ俺が最後の試練に参加せず、みんなに任せたのか。その理由がここにある。
「『ゼフィルスさん、そろそろ最後の竜が倒れそうですわ!』」
「助かるリーナ」
リーナの報告を聞いてドキドキしながらその時を待った。
それは、本当に一瞬の出来事だった。
俺は気が付けば――白い空間にいた。目の前には例のレアイベントフィールドの入り口に居た、竜の石像が立っている。
「来たか」
これはゲーム時代にもあった現象だ。この場所に居るのは俺と竜の石像だけ。
〈竜樹〉も他のなにもかもいつの間にか消えており、本当に白一色で影すら無いような場所だ。
ここは【救世之勇者】以外発生しない特殊イベント空間。
ここで、【救世之勇者】のエンディングや俺の4つ目のユニークスキルに繋がる、大きな切っ掛けを得ることができる。
俺はこの場所に一番乗りしなくちゃいけなかった。
というより【救世之勇者】だけこの世界に飛ばされるため、みんなの前で発生するとなにが起こるか分からなかったのだ。ゲームではその辺の説明は無かった。
俺は、こうして竜100体が全て撃破されたときに一番乗りでここに1人で居たかったのだ。故に最後の番人の戦いをみんなに任せた経緯がある。
『【救世之勇者】よ。汝が率いていた者の強さ、しかと見せてもらった』
「みんな強いだろ? あれなら安心して任せられるだろう?」
『さすがは【救世之勇者】に選ばれた逸材である。――【救世之勇者】よ、世に危機が迫っている。その真の力を開放し、世を危機から救ってくれ』
そこで話は途切れる。代わりにアイテムが落ちてきた。
それは丸い玉。濃いオレンジ色の光沢を煌めかせる【救世之勇者】専用アイテム。
――――〈勇竜の秘宝〉だ。
これこそ【救世之勇者】の4つ目のユニークスキルを使用可能するために必要なアイテム。
これが欲しくて〈竜の試練〉に挑戦したまである。
まだ、これの使用条件を満たせていないが、これで1歩近づいたな。
「ありがとう竜の石像。その世の危機、俺が救ってやる」
〈勇竜の秘宝〉を手にしたところで俺はそう宣言する。
時は動き出した。
〈救世イベント〉、やっぱりこの世界は、そっちの方向へ進んでいるんだな。
俺に任せておけ。そのための準備は――着々と進んでいるからさ。
『――感謝する』
空間が戻った。




