#1685 〈竜樹〉到達。そこで待つ6つの大試練!
「〈黒竜〉、撃破したよー!」
「ナイス8班!」
「「「イエーイ!」」」
ルキアの声にナイスを送ると、サチ、エミ、ユウカが両手でそれぞれとハイタッチしていた。相変わらず仲が良い。シャロンとルキアも負けずにハイタッチしていたよ。
〈黒竜〉撃破はかなりのインパクトだったな。
「いやぁ、強かった~。ルキアちゃん、あれで〈黒竜〉の素早さとか下がってたんでしょ?」
「そうだよ~。私もびっくり。耐久半端ないし、速いし、時間停止しないとヤババな時もあったしね」
「あ、そうそう! 時間停止助かったよ~。ありがとね!」
「いえいえ、どういたしましてだよ~!」
シャロンとルキアはだいぶうち解けたのかだいぶ話が弾んでいるな。
実際〈黒竜〉は強かった。〈スターライト〉にあれほど接近を許した〈竜〉は〈黒竜〉が初である。
さすがは俺たちの装備に採用される〈竜〉種だ。
ちなみに他の班はというと。そっちも全て終わっていた。
「いやぁ、いきなり全ての〈竜〉が止まってびっくりしたよ。ぼくは今後、ルキア君と一緒したいね」
「攻撃したい放題だったっすね! 私もついに『ドラゴン・クラッシャー』を叩き込めたっすよ!」
ルキアの『クロノス』の影響が他の班にも届いていたんだ。
おかげで最後まで残っていたニーコ率いる7班や、接近攻撃オンリーの9班もトドメを刺すことが出来た様子だな。ナキキも〈ジェット〉相手には使えなかった超強力な竜特効ハンマーをガツンと入れてトドメを刺してたよ。
「ゼフィルスさん、次が来ましたわ!」
「よーし、全員〈エリクサー〉で回復だ! このままの調子で全部倒しきるぞ!」
「「「「おおー!」」」」
それからも渦巻き状に〈竜樹〉に接近する俺たちに、〈竜〉種ボスが次々と襲い掛かってきた。
次は強力な〈竜〉種が6体同時にやってきて、やっと倒しきったと思ったら次は同じのが12体同時、おかわり2倍盛りがやって来て、みんな焦ってたりしたなぁ。
あの時ばかりはエステルに逃げてもらいながら甲板の後方から総攻撃したね。
最終的にフィナの範囲内の飛行型モンスターを転落させる『天秤天落』や、メルトの『アーカーシャ・グラビティ』で一部を叩き落として時間を稼ぎ、各個撃破に持ち込んで撃破した。
こんなことを繰り返していたら、ついに〈竜樹〉の周りを飛ぶ〈竜〉種が居なくなっていたんだ。
残りは洞の中にいる6体の〈竜〉種のみ。
「周囲に敵影無し、残りは〈竜樹〉の中にいる6体ですわ!」
〈竜の箱庭〉を確認し、情報をくれるリーナに手を上げて礼をする。
「よし、それぞれパーティを送り込むぞ! 手分けして最後の〈竜〉種を屠る! 担当は2班、4班、5班、6班、7班、8班! カタリナは足場結界や『結界移動』『結界牽引』を用いてそれぞれパーティを送ってほしい!」
「お任せくださいな!」
洞の中に居る〈竜〉種はそれぞれのボス部屋に居るので、かち合ったり、参戦現象が発生することはない。故に1パーティずつ送る。
〈スターライト〉に留まるのは、
1班、俺、カグヤ、サーシャ、ラクリッテ、ノエル
3班、ラナ、エステル、シズ、パメラ、トモヨ
9班、セレスタン、ラウ、カタリナ、ミジュ、ナキキ
10班、リーナ、カイリ、ヴァン、シュミネ、
〈採集無双〉、モナ、ソドガガ、アンベルさん、タイチ、サティナさん、
の4班+1班で24人。
1班と10班は指揮担当。3班はエステルが操縦者で行けず、9班はカタリナが所属しているので残ってもらった形。
出撃するのは、
2班、シエラ、ノーア、クラリス、レグラム、オリヒメさん
4班、ルル、シェリア、アルテ、キキョウ、アリス
5班、メルト、ミサト、カルア、リカ、アイギス
6班、フラーミナ、ロゼッタ、クイナダ、ゼルレカ、マシロ
7班、ニーコ、フィナ、エリサ、シヅキ、エフィ
8班、サチ、エミ、ユウカ、シャロン、ルキア、
の6班30人。
「〈竜樹〉に接近します!」
エステルの言葉にみんな気を引き締める。
残りの〈竜〉種が飛び立ってこないか警戒しながら〈スターライト〉を接近させ、洞に近づいたタイミングでカタリナが足場を展開した。
「『足場結界大展開』!」
「行ってくるわ」
「頼んだぜシエラ!」
空中に結界の足場が出来た途端2班が素早く結界に乗り移り、そのまま駆けて洞に向かって行く。
「うわ~、ちょ、怖っ!」
「姉さまは飛べるでしょう」
「あ、そうだった!」
「では教官、行って参ります。飛んでいくので結界は不要ですよ」
「あのフィナ君、ぼくは飛べないのだが?」
「大丈夫です。ニーコさんは私が抱えていきます」
「や、やさしくしてくれたまえ?」
7班も出撃。
以前までフィナに抱えられていたエリサも『悪魔飛行LV10』を持つ体装備〈妖魔の飛魔翼〉を装着しているため飛行が可能だ。
となれば、7班で飛行できないのはニーコだけとなる。
ニーコはフィナがガッチリと羽交い締めにして飛んでいった。
「ああああああああああああああ!?!?」
なぜかニーコの悲鳴が心地よかったのは秘密だ!
この調子で6つのパーティを送りこむことに成功したのだった。
◇
ここは5班が担当する洞、〈竜樹〉の中では上から2番目の位置にある大きな洞に、滑り込むようにして入り、着地する。
その侵入してきた姿もまた竜。
アイギスの相棒、ゼニスだ。
その背中からメルト、ミサト、カルア、リカが降りる。
アイギスは当然乗ったままだ。
「これは」
「なるほどね。だから飛んで来なかったんだ」
「ん。リザードマン?」
「雰囲気が違う、おそらく伝説に残る竜人のようなものではないか?」
「クワァ!」
「ゼニスもリカさんに近いことを言っています。あれは竜であると」
5人が降り立った場所は巨大な空洞。
本当に1つの樹の洞なのかと、信じがたいような広い場所だ。その大きさは上級中位ダンジョンのボス部屋にも匹敵する。つまり、ゼニスがここで飛んで戦闘行為をしても支障がないくらいの広さがあるのだ。
さすがは竜が住まう場所。
だが、その主の姿は予想とは全く違う小ささ。
そして、想像していたどんな竜とも違う姿をしていた。
その姿は人型。
2足歩行に250センチメートルの高身長。さらに4メートルを超える大槍を手に持ち、身体は全身が黒い竜鱗に覆われていた。
加えて顔は完全に竜だった。カルアがリザードマンに見間違えた理由でもある。
『汝、良くここまで試練を突破した。見事である』
「声が――モンスターが喋ってる!?」
「なるほど、確か上級下位でも会話は成立したとゼフィルスは言っていた」
『然り。我はここ〈第二竜巣洞〉の番人、〈ドラグローブ・竜・ランスピア〉。挑戦者よ、我を打ち倒し、見事最終試練を突破して見せよ』
瞬間、空気がガラリと変わる。〈ドラグローブ・竜・ランスピア〉、通称〈ランスピア〉が、大槍を構えたのだ。
これにはタンクであるリカが前へ出る。
「名乗りだと! ならば返さねばならぬな! ――我が名はリカ! その最終試練を突破させてもらう者なり! 『名乗り』!」
「来るぞ! 『マジックブースト』!」
「『色欲の鏡』!」
「『神速』!」
「ゼニス――『人竜一体』!」
「クワァ!」
リカの挑発スキル『名乗り』に反応し、全員が自身に強化を掛ける。
瞬間、一瞬で大槍がリカに迫った。
「『受け払い』! ――!」
まずは『受け』系の防御スキルで様子見。左手の小太刀で受ける。
ここから払い、相殺を狙うスキルだが、リカが払えたのはギリギリだった。
「重い!」
『よく払った!』
そう〈ランスピア〉が叫ぶとさらに突き、それだけに終わらず、次々と突きを繰り出してきた。しかし、スキルエフェクトは無し。つまり、この重い突きは通常攻撃だ。
「くっ! 『制空権・刀滅』!」
下級職のスキルではこの連続攻撃は受けきれないと判断し、リカは〈四ツリ〉の防御スキルを切る。
そこら中で相殺のエフェクトが発生し、ガンガンガンと金属がぶつかる音が1秒に何度も聞こえるほどの連続攻撃が繰り出される。
だが、スキルも使ってない連続突きではリカの防御は破れない。
全てを防御し、相殺し、ヘイトを順調に稼いだ。
「『64フォース』!」
「『グラビティ・ロア』!」
ここでカルアとメルトが攻撃。
『神速』の影響で凄まじい速度で斬るカルアと、重力の光線をぶっ放すメルト。
『汝、その程度、我には効かぬぞ!』
「にゃ!?」
「なに!?」
瞬間、メルトの『グラビティ・ロア』がスキルエフェクトを光らせた大槍の薙ぎ払いによって相殺されてしまう。ついでにカルアは斬ることは出来たが、それは〈四ツリ〉。なんとダメージがほとんど出なかったのだ。
『汝、我の『竜鱗装甲』は生半可な攻撃は通じぬ』
「マジ!? ならデバフならどうよ! ――『攻撃力ドレイン』! 『防御力ドレイン』! 『魔法力ドレイン』! 『魔防力ドレイン』! 『素早さドレイン』!」
「『竜祝投天槍』!」
『ふん!』
ミサトがデバフをばらまき、いつの間にか真上を取ったアイギスが槍投げで攻撃する。これも〈四ツリ〉だ。
だが、これは再びスキルエフェクトを光らせた大槍の薙ぎによって弾かれてしまう。
「遠距離攻撃に強いか、ならば――『残像双・一太刀』!」
「ん! 『256ジ・エンド』!」
ならばとリカが攻撃をすり抜けながら相手を斬る『残像双・一太刀』で突っ切る。そこへはカルアも続く。さすがは仲の良い2人、リカの攻撃に寸分違わず合わせ、〈六ツリ〉を決めてきたのだ。
ついにまともなダメージが入る〈ランスピア〉。
「この距離は、私の距離だ! 『必殺の太刀・六閃華』!」
「ん! 『512・ヘル』!」
『良い!』
リカの六属性攻撃がメガヒット。加えてカルアもしっかり最強のスキルを決め、中々のダメージを与える。
だが、これを受けた〈ランスピア〉はノックバックもせずに反撃、大槍を全力で振り回したのだ。
「ぬぐ!」
「ん! 『回避ダッシュ』!」
「リカちゃん、大丈夫!? 『ヘブンズハート』!」
「助かる!」
カルアはギリギリで回避したものの、リカが直撃して吹っ飛び、ミサトのすぐ側まで後退。すかさずミサトが回復。だが、その瞬間、踏み込んだ〈ランスピア〉の大槍が、竜の頭の形の幻影を浮かばせて大技の突きを放った。
『ハッ!』
「『ミラークロスバリア』! きゃあああ!?」
「ミサト!」
「リカ!」
ミサトがギリギリで〈四ツリ〉の『ミラークロスバリア』を差し込むが、見事に全てが割られてリカとミサトに直撃した。
強い。
相当な衝撃がメルトたちの頭を駆け巡る。
だが、その瞬間に3人は、リカとミサトへ追撃を差し込もうとする〈ランスピア〉へ反射的に攻撃していた。
「『アルティメット・ドラゴンクロウ』!」
「『グラビティ・メテオ・エクスボール』!」
「『エージェント・レイド・クロネコ』!」
『ぬうう!』
ゼニスの爪が鋭く切り裂き、メルトの重力に引かれたメテオが直撃し、トドメにカルアの猫津波が攻撃しながら〈ランスピア〉を押し戻した。全てが〈六ツリ〉である。
「大丈夫、リカ?」
「私は問題無い」
「わ、私もなんとか~。というかあんな簡単に結界壊されるの? とりあえず『オールハイヒール』!」
リカは刀を構え、ミサトは盾を向けながら杖をクルッと回して全体回復。
ピンピンしていた。ダメージは結界による減退と防具のおかげでミサトですら3割も入ってない。
だが、今の攻防だけで相手が油断ならない相手だと全員が理解していた。
「全員、油断するな」
メルトの言葉に全員が気を引き締め直した。




