#1675 シエラ覚醒!ついに来たる【盾姫】最強の戦法
「イエス、〈金箱〉バンザーイ!」
「出たわね! しかも今度は守護型ボスの革命版だわ! ナイスよノーア!」
「ほーっほっほっほ! ですがまだこれからですわラナ殿下! ここから最上級品を当ててみせますわ!」
みんなテンション高い!!
ツインズボス終了後、〈金箱〉は1個、レグラムたちによってボコられたBのところに現れた。
哀愁を感じさせながら消えていったAの場所はスルーし、Bが残してくれた〈金箱〉に集まる俺たち。
守護型ボスの革命成功はすなわち徘徊型ドロップ。
つまり最上級品がドロップする可能性がある。しかもこのダンジョンはランク9。ということは最上級ダンジョンでも最高峰のダンジョンの品がドロップする可能性があるのだ!
これがワクワクせずにいられようか? いやいられまい。
ただ革命でレシピが出ると作製できるまで時間が掛かるので、できれば現物の方がちょっと嬉しいな~。
さて、なにが来るのか。
「ノーア、開けて良いわよ」
「私ばかり悪いですわ! 今回はシエラ様が開けてくださいまし!」
2班のメンバーはシエラ、レグラム、オリヒメさん、ノーア、クラリスだ。
まあ、この中で宝箱を開けたがるのはノーアしかいなかったので、ここまでの道中ではノーアが開けて来た。
しかし、ここでノーアが遠慮し、パーティリーダーでもあるシエラに譲る。
おお、珍しい展開だ。せっかくの展開だし、俺もフォローするとしよう。
「そうだな。まだこのダンジョンに入ってシエラは1度も開けてないだろう? 開けてみたらどうだ?」
「そうね……分かったわ。それでは開けさせてもらうわね」
クールにそう言うと、スッと〈金箱〉の前に進み、大盾を――なぜか側に置いて手を合わせてお祈りをする。
シエラも慣れたものだ。たまにしか宝箱を開けないが、しっかりお祈りが染みつい――ゲフンゲフン、身についている。うむ。
あと、あのいつでも取れる位置に置かれた大盾は、きっと他意はないんだ。
「〈幸猫様〉〈仔猫様〉〈愛猫様〉。いつもありがとうございます」
俺も心の中で祈る! ありがとうございます! 良いものください! 届けこの思い! うおおおおおお!
そう念を送っていると、いつの間にかシエラが宝箱の縁を掴んでいて。パカリ。
ああ! しまった。見逃したぜ! いや、まだ見逃してない。むしろここからが本番だ!
いったいなにが当たるんだ!?
そうしてドロップしたのは1つの――龍の意匠が彫られた指輪だった。
「のわあああああああああ!?!?!?」
「ちょ、どうしたのよゼフィルス!? びっくりしたじゃないの!?」
それを見た瞬間、俺は思わず感銘のセリフが口からドバッと出てしまった。
こ、これこれこれこれこれはーーー!? これキターーーーーー!!
いや待て、落ち着け俺、はしゃぐな、いや無理。こんなのはしゃぎたい!
「お、俺の『直感』さんがこれは凄まじく良いものだと叫んでいるんだーーー!」
とりあえず残っている理性を総動員してなんとか『直感』さんのせいにすることに成功!
よし、よくやったぞ俺の理性! エステル、早く、早く『解析』を掛けるんだ!
「えっと、では鑑定しますね――『解析』! 名前は、〈竜の叡智〉? 効果は――え? これは!」
「どうしたのよエステル。これはどんな効果があるの? ゼフィルスがなんだか爆発寸前みたいになっちゃってるわよ」
「盾を構えておいた方がよさそうかしら?」
なぜかシエラに警戒される俺。
くっ、一度盾を構えられたら突破出来る気がしないぞ!
なんてこった! そう思っていると、『解析』してくれたエステルがみんなに発表してくれる。
「この指輪の効果は『ユニークスキル効果延長』ですね。前に出た〈竜の腕輪〉に似ていますが、こちらは効果延長の特化型みたいです!」
「おっしゃーーーーーー!!」
瞬間、俺は我慢しきれずに噴火した!
そう、この〈竜〉の名の付く〈竜の叡智〉は、俺が今装備している〈竜の腕輪〉と同系統。
否、その特化型パワーアップ品だ。
〈竜の腕輪〉の効果はユニークスキル限定の若干の効果時間延長と威力上昇だった。
だが〈竜の叡智〉はユニークスキル限定の効果時間延長だけだが、その能力は比べものにならないほど上昇している。なにせ特化型だ。
なんとその延長時間、2.5倍。
加えて1戦闘1回効果のユニークスキルであれば2回まで発動可能になるというのだからとんでもない。
俺が〈竜の叡智〉を装備できれば〈勇気〉の効果時間は7分半にまで上昇するということだ! 天使系の『大天使フォーム』も然り!
『姫騎士覚醒』だって40秒発動可能になるし、覚醒系が大化けすることがわかるだろう!
〈竜の腕輪〉と重複させることはできないが――ハッキリ言おう。最高です。
しかも〈竜の叡智〉はアクセ装備だ。シリーズ装備を崩さずに装備できるとかもう最強。これは絶対に装備するしかない!
クルクル回るしかない!
俺はガードを固めているシエラ――は諦めて、いつの間にか近くにいたリーナに手を伸ばして。
「そうはさせないわ」
シエラにカットされた。
おお!? いつの間に小盾が割り込んで!?
「ゼフィルス、落ち着いて。落ち着きなさい」
「これが落ち着いていられるかー! これがあれば、夢の、夢のあの技ができるようになるんだ!」
「夢のあの技?」
「シエラ」
「な、なによ改まって」
俺は今まではしゃぐ心が爆発していたのが嘘のようにキリッとした顔をすると、シエラが持っていた指輪、〈竜の叡智〉を取り、シエラの前にしゃがみ込む。
「これはシエラに使ってほしいんだ」
「んな!?」
「ちょ!?」
「ええ!?」
そしてそのままシエラの右手を取って指輪を指にはめる。薬指だが、右手なのでセーフのはずだ。
だが、その様子を見ていた周囲の女子たちと、シエラ本人からも驚愕とどよめきが起こる。
指輪プレゼント!
この〈竜の叡智〉。
いったい誰が装備するのか、俺が装備すれば先程言ったとおり『勇気』が鬼強くなるだろう。
天使系ならば『大天使フォーム』の効果延長だ。『姫騎士覚醒』持ちもヤバい。
そんな中、俺が選んだのは――シエラだ。
シエラにこそ、この〈竜の叡智〉はふさわしい。
俺は非常に真剣でキリッとした顔で指にはめてシエラを見ると。
「あれ? シエラ?」
「…………」
なぜかシエラが左手の大盾で顔を隠していらっしゃった。
えっと? 感想とかは。
そんなことを思っていると、隣からわなわな震えるラナ襲来。
「ちょ、ちょっとどういうことよゼフィルス! なんでシエラなのよ!」
「うお!? いや、待てラナ。これには深く深く深い事情があってだな」
「そんな事情はどうでもいいわ!」
「いやどうでもよくはねぇよ!?」
今「なんで?」って聞いてきたのに!?
「あわわ。シエラさん、横から見ると顔真っ赤だよ。耳まで真っ赤だよ」
「あんなシエラさん、初めて見たよね~」
「羨ましいな。私もゼフィルス君に、あんな風に指輪をはめられてみたい」
「分かる。あんなの女子全員のあこがれだよ!」
「す、すごい光景でした。なんだか、私は見ていただけでお腹がいっぱいになってしまいました」
サチ、エミ、ユウカを中心にノエルやラクリッテたちまで集まって何やらヒソヒソ。
みんな若干顔が赤いのは気のせいだろうか?
「こほん! ごっほん! 聞いてくれラナ。これには理由があるんだ!」
「理由なんか聞かないわ! なんで私じゃないの!?」
「いや聞いて!? ラナは〈白の玉座〉を着けたらアクセ枠無いし、そもそも〈竜の叡智〉が効果を発揮するユニークスキルじゃないだろ!?」
「むむむ~!」
ラナがとても暴走中。おかげで俺は一気に冷静になってしまった!
しかし、さすがに〈竜の叡智〉レベルの凄まじい装備は取り合いが白熱するな。
だが、これには譲れない訳がある。
それを、実際にお見せしよう。
◇
続いて、再びボス戦、25層守護型ボス。
ここに登場したのは〈ミズチ〉。
ヘビのようで龍でもない、〈亜竜〉系に分類される身体の細長いボスだ。
進化していけば〈龍〉系統になれるため、なかなかのスペックを持つボスである。
ここに挑んだのはまたも2班。
しかし、その戦闘方法は、今までと大きく変わっていた。
「シエラ、教えた通りにやれば大丈夫だ」
俺がそう言うと、頷いて前に出るシエラ。
その腕には1つの指輪とアームレットが光っていた。
「……わかったわ。――行くわよ『四聖操盾』! 『完全魅了盾』!」
シエラが初っぱなから選択したのは、なんとヘイトを稼ぐスキルではなく、ユニークスキル。
タゲを固定させる――『完全魅了盾』だ。
ガツンと命中。
「シャアアアアア!!」
「『鉄壁』!」
案の定〈ミズチ〉はシエラを集中的に狙う。
だが、シエラはヘイトを稼ぐようなことはせず、その場に留まり続けて〈ミズチ〉の攻撃を全て受けきった。
「これは、なんと凄まじくやりやすい――『天空絶光・疾駆無秒閃々』! 『神斬』! 『轟光閃破』! 『雷速天空・閃断』!」
「大技行きますわよ! ――『ウェポン革命オールマスター』! 『レボリューションセンチュリー』! 『アグニ』! 『ビッグウェーブデトネーション』! 『ウェポンマスターストリーム』! 『トルネードレボリューション』!」
「了解です――『千聖操剣』! 『ホーリーレイソード』! 『ディバインセイバー』! 『インフィニティ・ジ・エンド』! 『トリリオン・レイソード・イグニッション』! 『操剣山雨』! 『天覆千斬風』! 『合天千剣・破斬』!」
「『天海の雷神』! 『天海の雷鳴剣』!」
「『天海の津波』! 『天海の雷鳴声』!」
「「『天海星・ウラヌスネプチューン・キャリバー』!」」
ズドドドドドドン!
こちらも初っぱなからの大攻撃の連打。
あまりにも後先考えていない攻撃群。
こんなに大技ばかりで攻撃してしまえばヘイトを山ほど稼いでしまうことは必至。
シエラのユニークスキルの効果が切れれば、真っ先にタンク以外が狙われてしまうだろう。
しかし、そうはならない。なぜなら。
「『完全魅了盾』!」
「シャアアアアア!!」
まだ『完全魅了盾』の効果時間中だというのに、シエラがまた『完全魅了盾』を当てたのだ。
これの意味はつまり――効果のかけ直し。
そう、『完全魅了盾』の効果時間の最中にもう一度当てると、効果が上書きされるんだ。
「『完全魅了盾』!」
「シャアアアアア!?」
バンッと当てられて再びタゲ固定。
その間に他のメンバーは攻撃し放題。
なにしろ、タゲが固定されているから狙われないのだ。ヘイトをいくら稼ごうが、ヘイトをほとんど稼いでいないはずのシエラからタゲが外れない。
そう、シエラが『完全魅了盾』を当て続ける限り、〈ミズチ〉は他のメンバーにタゲを向けることが出来ないのだ。
これが〈竜の叡智〉をシエラに渡した最大の理由。
ヘイト稼ぎという不安定な行動を超越した技がまさにここにあった。
―――『完全魅了盾』。
なぜ〈ダン活〉では【盾姫】系統がタンクで最強と呼ばれていたのか。
その答えがこれだ。
ヘイトの概念完全無視――絶対タゲ常時固定戦法。
そう、ゲーム後半〈竜の叡智〉が手に入った【操聖の盾姫】がパーティにいると、他のメンバーが狙われないのである。
これぞ、〈上級部門・公式最強職業ランキング〉第七位に選ばれた職業の力だ。




