#1674 歯ごたえのある守護型?シエラ、ついに悟る!
「ようやく、歯ごたえのある相手が出てきたかしら?」
そう、シエラがとてもかっこいいセリフを呟く。
おお、ついにか!
ここは〈竜ダン〉の20層。
道中、山の下と言うには広大すぎるフィールドを突き進み、俺たちは20層に到着していた。
浅層ではLVも上がらないので〈イブキ〉でかっ飛ばして歯ごたえのあるモンスターを探した結果、20層まで来てしまったというオチだ。
そしてシエラが見たのが20層守護型ボス。
そこに居たのは2体の〈亜竜〉、〈ツインズターボエンジンドレイク〉。
亜竜にターボエンジンってどういうこと!?
そう思うのも無理はない。なにせこの〈ドレイク〉種、半分以上機械でコーティングされていたのだから。
元々〈メタル〉コーティングなどがされていてそっち系の素養があった〈ドレイク〉系列だが、ついに機械化に乗り出した模様だ。
脚と尻尾に車輪がついた三輪構造をしており、まるで〈竹割太郎〉を思わせる動きで猛スピードで接近し攻撃してくる。しかもツインズである。
「ゼフィルス、ここも私にやらせて。さっきから手応えが微妙だったのよ。ここで強いボスと戦わないと、なんだか感覚が狂いそうだわ」
「そんなことを言われちゃ許可を出さないわけにはいかないな。シエラ、行ってこい!」
「おーっほっほっほ! また出番ですわよクラリス! 殲滅ですわ!」
「相手は脚が速そうです。十分に気をつけてくださいお嬢様」
「祝福するわね――『プレイア・ゴッドブレス』!」
シエラに頼めば同じ2班のノーアとクラリスも出る。
ノーアが一緒だから出番が多いのだ! 理由はお察しである。
ちなみに2班のメンバーは、シエラ、ノーア、クラリス、レグラム、オリヒメさんである。
かなりソード系なメンバーだが、〈竜〉系の類いは剣と相性がいい。というか相性が悪くないと言った方が正しいか。
〈竜〉や〈亜竜〉は『斬撃耐性』などを持ち合わせていないのだ。素のステータスが高いのでそういう耐性が必要無いとも言う。
そんなわけで今回も2班に任せた。
「「ギャアアアアアアアアオ!!」」
「『四聖操盾』! 『オーラポイント』! 『攻陣形四聖盾』! 『シールドスマイト』! 『グロリアススマイト』!」
すぐにシエラがヘイトを取る。
手段は4つの小盾による波状攻撃がメインだ。
最近のツインズはHPを共有しているしハンディも共有するクセに、ヘイトは共有しないというアンビリバボーな戦法を使うボスが多くなってきたため、稼ぐヘイトを管理しつつ、味方と協力してツインズの戦力を分散させようという狙いだ。
「『ウェポン革命オールマスター』ですわ! 『カバーカウンターインパクト』!」
「ギャアアアアオ!?」
「今日も私は絶好調ですわ!」
片方のAはシエラが受け持ち、もう片方のBはノーアが疑似タンクをする。
ノーアの周りに大量の武器が現れ、一気にカバーからのカウンターを決めて1体を受け持った。
その直後にカラーンと鳴る鐘の音。ノーアの持っている武器を見てみると、その中の1つが新しい武器に変わっていたのである。
その名も〈聖なるヒヒイロ鐘〉。例の〈教会ダン〉レアイベントボス戦の時に〈キッド〉からレシピドロップした、挑発効果のある武器だ。あのあと、早速アルルに作ってもらい、ノーアが装備することになったのだ。ノーアは挑発に難があったが、それを解決する非常に強力な武器の登場である!
「狩らーんですわーー!」
「ギャアオ!?」
鐘でぶん殴った! 多分そのカラーン意味違うぞ!?
「お嬢様、なんかイントネーションが違いますよ! カラーンですって!」
クラリスにもそう聞こえたか。
どうやらノーアにとって鐘の音は狩らん狩らんと聞こえるらしい。
間違っていない気がするから不思議だ。
シエラはその間に横に逸れ、もう1体を引きつけて2体を離さんとする。
「さあ、こっちに来なさい――『守陣形四聖盾』! 『シールド・テラ・クワトロ』!」
「さすがはシエラ殿だ。スムーズに敵を引きつける手腕、見事! 『天空絶光・疾駆無秒閃々』!」
「支援しますわ! 『リジェネプロテクト・オールキュアバリア』! 『星の歌』!」
レグラムがシエラが引きつけたAをラッシュ系で斬りまくり、オリヒメさんが全体に〈継続回復〉〈防御バフ〉〈状態異常回復〉〈バリア〉を付与する。
加えて『星の歌』を歌い始めた。これは歌っている間はパーティ全員に全ステータスの大上昇のバフが掛かる非常に有用な魔法である。
「ギャアアアアオ!」
「と、飛びましたわ!?」
「あの体型で飛べるのですか!」
おっとここで衝撃。なんとBが背中から機械的な翼を広げたかと思うと、猛スピードで車輪を唸らせ、飛んで見せたのである。ハンググライダーのような滑空に近い飛行だ。さらに口や機械的部分からブレスと砲撃を発射。地面に居るメンバーを攻撃しだしたのである。
「1体は地に、1体は空からの攻撃を行なうツインズボスですか……! ならば――『零千』! 『千剣の翼モード』!」
翼相手なら、こっちも翼だと言わんばかりにクラリスの剣が集まって飛行機を形作った。もちろんそれにノーアも乗り込む。
「おーっほっほっほ! 逃がしませんわ! 『レボリューションセンチュリー』!」
「あ、お嬢様がこっちに来ると狙われるのですが!?」
「ギャアアアアオ!」
「ほら、来たじゃないですか!」
「『エンプレス・オブ・カバー』!」
「シエラ様!」
「防御は任せなさい」
「! 心強いです!」
Bが狙うのはノーア。
おかげでノーアを乗せているクラリスも巻き込まれそうになるも、ブレスをシエラの巨大な自在盾が防いだ。
かっこいい。シエラが相変わらずかっこいいよ!
「ギャアアアアアオ!」
「あなたは地上に居なさい。『完全魅了盾』!」
「ギャアアオ!?」
Aも翼を広げ、空に飛び立たんとするが、シエラが完全にタゲを取ってそれを封じる。
さすがはシエラ、完璧にタンクをこなしているな。
しかも1体だけじゃなく、ちゃんとノーアたちの方も見ている。
「空を飛んでいる相手ではなかなかカウンターが取れませんわ!」
「レグラム、Bを叩き落としてちょうだい」
「任せるがいい」
相変わらずAを斬りまくっていたレグラムだが、シエラに言われて視線が空を高速で駆けながらブレスと砲撃と突撃でクラリスとノーアと戦うBを見る。
「『天動天空・瞬脚』!」
そして一瞬で空を駆け、Bの側面に追いついた。
空を駆けることにおいて、レグラムの右に出る者はそうはいない。
「『神斬』!」
「ギャアアアアアアオ!?」
一閃!
レグラム個人では最強となる一撃を叩き込み、クリティカルを奪い取ったのだ。
「ああ!? 一撃でクリティカルですわ!」
「お見事です」
クリティカルを取られたBはそのまま墜落。間違い無くダウンするだろう。
だが、それをそのままにするレグラムたちではない。
「オリヒメ行くぞ!」
「もちろんです!」
オリヒメさんが『星の歌』をやめ、コンボスキルを発動する。
「「『天海星・ウラヌスネプチューン・キャリバー』!」」
星降りの一撃。上から隕石のような剣がズッドンと突き刺さり、そのまま地面に縫い付ける。
「ギャオ!?」
「あなたはここにいなさい」
AがダウンしたBに反応して素早く助けに行こうとするが、もちろんシエラの盾が行く手を塞いだ。
さあ、総攻撃の時間だ!
「『天海の雷神』! 『天海の雷鳴剣』!」
「『天海の津波』! 『天海の雷鳴声』!」
ズドーンッ、バチバチビリビリ。
さらに2人のコンボ攻撃が突き刺さる。
サチたちが魔装、あるいは神装を開放してエネルギーを全放出するような攻撃を三連続で叩き込んだのだ。これはとんでもないダメージが入ったな。
だが、これには続きがある。
「レグラム様へ――『ミラクル・レディ・ネプチューン』!」
「オリヒメに――『ミラクル・ジェントルマン・ウラヌス』!」
ここでレグラムとオリヒメさんがユニークスキルを発動。似ているような名前のこのスキル、実は効果もそっくりだ。
その効果はオリヒメさんの場合、【ウラヌス】限定でクールタイムを全回復。レグラムの場合も同じく【ネプチューン】限定でクールタイムを全回復するのだ。
――つまり。
「『天海の雷神』! 『天海の雷鳴剣』!」
「『天海の津波』! 『天海の雷鳴声』!」
ビクンビクン!
あのとんでもないコンボ攻撃が――もう一周!? そして。
「「『天海星・ウラヌスネプチューン・キャリバー』!」」
とどめの一撃がズドンとBの背中から身体を貫いた。
加えてノーアとクラリスも攻撃を加えていたこともあり、そのHPは簡単にゼロになってしまう。
「ここで『ドロップ革命』ですわ!」
もちろんノーアは忘れていなかったようだ。
これで運が良ければ、徘徊型の、ひいては最上級の装備などが手に入るだろう!
そして膨大なエフェクトの海に沈んでいくBと、「え? もう、終わり、なの?」というきょとんとしている元気なAが消えていくと、その後には〈金箱〉がドロップしていた。
ふはははははは!
「わかったわ。歯ごたえが薄いというより、このパーティが強すぎるのよ」
あ、ついにシエラがそう悟ってしまっていた。
うむ。レグラムとオリヒメさんのコンボが、あまりにも強烈すぎたな!




