#1671 クル〈パーフェクトビューティフォー〉クル!
「撃破ーーーー!!」
「ナイスよ! ゼフィルス!」
「おう! ラナも素晴らしかったぜ!」
〈スターライト〉の手すりから一緒にエフェクトに沈み逝くレアボスを眺めていたラナとハイタッチ。
普通なら後衛のラナと前衛の俺では位置的にこうもすぐハイタッチはできない、これも〈スターライト〉に乗りながら戦うという超特殊な環境のおかげだな。
「ゼフィルス、お疲れ様」
「シエラもお疲れ様だ!」
パチン!
おお! シエラも今日は素直にハイタッチ。
いつもならこうもボス戦が上手くいきすぎると「上手くいきすぎじゃないかしら?」とか難しいことを考えてしまいそうなものだが、今日は素直にお祝いな様子だ。
良いじゃないか!
「シェリアもやるか!」
「はい。お疲れ様でした」
パチンとシェリアともハイタッチ。
そういえばシェリアとハイタッチするのは初めてかも? 勝利後はいつもすぐにルルの下に向かっていった記憶しかないんだぜ。
「あ! 出入り口と転移陣が出現したわ! 宝箱は〈金箱〉よ! あ、あ! しかも4つ!」
「〈パーフェクトビューティフォー〉キターーーーーー!!」
「すぐに着陸します」
眼下を見下ろすラナが出現したそれらを報告してくれる。
オープンフィールドのボス部屋で、最初に出たところよりもかなり移動してしまったが、出入り口の門と転移陣は宝箱を中心として出現するので俺たちのほぼ真下だ。
そんなことよりも重要なことがある。
それはな――――〈金箱〉が4つってことだよ!!
よっしゃーああああああああ!
「あれ? ご主人様どこ!?」
「姉さま、上、上です」
「ってわわわ!? みんな退避、たいひー!」
おっと俺たちが下がってくる前に門から入ったみんなの姿が!
その近くまで下降すると、タラップを下げて俺たちも降りる。
「イエイ! ボス撃破したぜーー!」
「「「「わーーー!!」」」」
まるで凱旋だ!
タラップを降りたらみんながお祝いしながら出迎えてくれたんだ。
なんだろうこれ、超気持ちいい!
これも〈スターライト〉の能力なのか!?
「凄まじいですねこの〈スターライト〉は、私も操縦してみたいですが」
「ク、クワァ?」
「安心してくださいゼニス。私はあなた一筋ですから。乗っても攻撃手段がありませんしね」
「クワァ~」
「私は出来ますけどね! 『万能騎乗』スキルありますから!」
〈スターライト〉を見て羨望の視線を向けるのはアイギスだ。
【竜騎姫】のアイギスでは〈戦艦〉に乗っても攻撃スキルは使えない。ドライブ系だけとなるだろう。なら、ゼニス一筋の方が良きだ。
ちなみにアルテは『万能騎乗』のおかげで〈戦艦〉に乗っていてもスキルや魔法が使えたりする。とはいえ、こちらは『解放』系スキルを持っていないので槍スキルや盾スキルなど、装備に頼ったスキルは使えないんだけどな。
使えるのは『スイッチ』系、『突撃』系、『ドライブ』系、『回復』系となる。
十分有用だ。とはいえアルテの場合は小回りが利くヒナたちの方が合っているので今のところボス戦で使わせるつもりはない。
そして最後に、優雅にタラップを降りてきたエステルともハイタッチ。
「エステルもお疲れ様だ! 素晴らしい操縦だったぜ!」
「そう言っていただけて嬉しいです。ですが、まだまだです。最後もシエラ殿が居なければ〈スターライト〉が取り付かれてしまっていました。精進いたします」
「期待しているぜ! 聞いてくれればいくらでも手を貸そう!」
「ありがとうございます」
エステルの意欲が高いと俺たちも助かる。
六段階目ツリーではその職業の真価を発揮する。
ようやく俺の目指す完成形が形になってきた!
エステルには頑張ってほしい。俺もいくらでも手を貸すと約束した。
「シェリアお姉ちゃーん!」
「はーいルル~」
「あ」
一方タラップから降りてきたシェリアは、さっきまでのかっこよさはどこいったのか。なんだか見慣れた、少し緩いシェリアに戻っていたんだ。
ルルにデレデレしてる。否。
「シェリアお姉ちゃん、すごいの!」
「シェリア先輩、ボスの初撃破、おめでとうございます」
「ありがとうございます2人とも~。はぁ、癒されます~」
「あ、戻ってる……」
アリスとキキョウがお祝いの言葉を告げればデレっとした顔のシェリアが2人を抱きしめたんだ。なんだかゼルレカがとても目を点にしているように見えたのは、きっと気のせい、だったらいいな。
うむ。かっこいいシェリアモードは終わってしまったのだ。
さて、そろそろメインディッシュといこうか。
「ゼフィルス! 早く来ないと先に開けちゃうわよ!」
「おう! 今行く!」
俺が歩けばみんなも続く。
目指すは4つの〈金箱〉!
「き、〈金箱〉が4つもあるっす」
「レアボスだったの?」
「そうなんだよ。もうびっくりだったぜ!」
「びっくりで済ませてしまうギルドマスター!」
「私たちの方がびっくりしたですの!」
ナキキとミジュが核心を突いてきたので俺は鷹揚に頷いた。
カグヤとサーシャのツッコミが気持ちいいんだぜ。
「ではこれより、上級上位ダンジョンのランク8、〈教会ダン〉レアボスの〈金箱〉を開けたいと思う!」
「「「わー!」」」
「では最初に、俺から――」
一番良いものを選んでやるんだぜ。
頼んだぜ『直感』さん! しかし、俺の『直感』さんが「こいつが一番良さそうだぜ」と指すものの前には、すでにラナが立っていた。にっこりしている。
ぐ、ぐぬぅ!? これでは手が出せない!
仕方ないので他のにする。
「これだ! ああ〈幸猫様〉〈仔猫様〉〈愛猫様〉! 素晴らしい〈パーフェクトビューティフォー〉現象をありがとうございます! ありがとうございます! どうか良いものをお願い致します!」
1つの〈金箱〉の前に座り、真剣に祈る。
高級なお供えも用意させていただきますと添えて思いを告げる。
届けこの思い! いざ!
みんなが見守る中、パカリと〈金箱〉を開けると、中に入っていたのはとあるレシピ。
すぐに『解読』してもらえばのたくった文字が読めるようになる!
「これは、アクセ系! 〈天魔百華アクセ・万能シリーズ〉、ば、シリーズだと!?」
万能シリーズ!? と言いそうになって慌てて言い直す。
「シリーズ系なの!? しかもアクセサリー? どんな種類があるのよ!」
「シリーズ系のアクセサリーは初めて来たわね」
「ルルたちに合うでしょうか?」
来たのはアクセ系のレシピ。しかも〈万能シリーズ〉の文字がついているやつだったのだ! アクセサリーでシリーズ? どういうこと?
こいつはすげぇんだぜ。
今までシリーズとは武器では〈ヒヒイロカネ武器〉や〈竜武器〉などがあった。
武器の種類全てが作れるようになるという破格のレシピ。
防具ではシリーズが揃っていればシリーズスキルが発動する。
装備の多くにはちゃんとシリーズが組み込まれており、同じシリーズを組み合わせることでシリーズスキルを発動させて、さらなる強化を目指すのが鉄板だった。
シリーズスキルじゃないと得られない効果もあるため、これが非常に重要だったんだ。
そしてこの〈天魔百華アクセ・万能シリーズ〉は、
「他のどんなシリーズにも成れてしまうアクセみたいだぜ!」
そう、普通なら特定のシリーズ装備を合わせないとシリーズスキルは発動しない。
しかしこの〈万能シリーズ〉なら、どんなシリーズにも合わせられる万能のアクセサリーなのだ!
2つのシリーズ装備を付けてギリギリシリーズスキルが発動しない時でも御安心。
これを身に着ければ足りないところを補い〈シリーズ×3〉スキルが発動できるのだ!
す、素晴らしすぎる! 超優秀!
2つアクセを装備すれば〈シリーズ×4〉も可能!
ただ複数のシリーズは選べず、1つの〈天魔百華アクセ〉につき1つのシリーズにしか合わせられないので注意な!
例えば〈勇者竜装備〉と〈黒竜装備〉のシリーズを装備していたら、どちらかにしか成れないというわけだ。これは当然だな! 両方のシリーズになれたらさすがに強すぎる。
これはまさに最上級装備。〈万能シリーズ〉バンザイ!
「「「「おおおお!」」」」
最初は意味が分からなかったメンバーも、その意味を説明するとわっと盛り上がる。これの凄さ、分かってもらえて俺は嬉しいぞ!
「次は私よ!」
俺が終われば次はラナの番。
ラナもレシピだった。
俺の『直感』さんとラナがこれだと見極めた宝箱、いったいなにが?
そしてレシピを『解読』すればそこに書かれていたのは、
「〈【大罪】職武器・全オプションシリーズ〉のレシピって書いてあるわ!」
「【大罪】職武器のオプションだとーーーー!?!?!?」
そ、それ超欲しかったやつ!!
間違い無く最上級!
レシピのまんまだ。
専用装備には、特定の〈オプション〉系を装備し、強化することが可能なものが存在する。
そして上級下位級である【大罪】職の専用装備には、それをパワーアップさせる〈オプション〉というのが存在するのである!
しかも〈全オプションシリーズ〉!
これ1つで7種類全てのオプションを作製できるのである!
よっしゃーああああああああ!
「これで【大罪】職の専用装備が更にパワーアップするぞ!!」
「そ、それって私の本がもっと強くなるってことですか!?」
「ええ!? あたいの大剣もか!? うおおお! おっしゃーー!!」
「たはは~。これは予想外過ぎるんだよ~」
「こ、これ以上強くなって良いのかな!? 今の時点でも私の防衛モンスターを突破出来たギルドって皆無なんだけど!?」
「大丈夫だ! 俺が全部許す!!」
我が〈エデン〉の【大罪】職であるキキョウ、ゼルレカ、ミサト、フラーミナが良いリアクション。
今の時点でも十分強いのに、更に強くなるのだ!
良いのかって? 良いに決まってんじゃん! 俺が許しちゃうよ!
「この調子だー! どんどん開けるんだ!」
「では僭越ながら、ルルと私が!」
「開けちゃうのです!」
続いてはシェリア。
なんと贅沢にもロリと一緒に共同作業だという。
あ、あのさっきまで凜々しかったシェリアが完全に元に戻っている!
「これは――〈天魔槍・セラス〉という槍ですね」
「槍武器か! しかもステータスヤバいな!」
これも間違い無く最上級。
レシピでは無く、武器だった。片手槍だ。
「どうやら天使と悪魔に特効があるようです」
「良いの当たったなぁ!」
これもかなりいいものだ。飛べる槍使いということでアイギスに使ってもらおう!
間違い無く〈ドラゴンランス〉よりも強いぞ!
「最後は――エステルは忙しそうだからシエラ、頼む!」
「わかったわ。久しぶりに開けさせてもらうわね」
エステルは〈幼若竜〉で忙しそうなので、今回はシエラに開けてもらう。
大盾を一旦仕舞い、〈金箱〉の前にしゃがんでお祈りするシエラ。
そしてパカリと開けた〈金箱〉に入っていたのは、
「これは――〈宙移動装置〉というアイテムです」
「宙移動? 見せてエステル」
なんとシエラが当てたのは、これまた最上級。しかもこれは――!
シエラが首を傾げてエステルのところで鑑定結果を読む。
その効果はなんと。
「パーティで空中移動ができる? え? 本当に?」
「おお!」
そう、なんとこれ、ダンジョン限定だがパーティで空中移動が可能になるアイテムなのだ!
発動中はスキル・魔法・ユニークスキルが使えないので戦闘で使うには心許ないが、誰でも空を飛べるとあって一気にシエラがみんなの関心を掻っ攫っていったよ!
「すげぇ! 全部大当たりだ! 〈パーフェクトビューティフォー〉最高!」
「あ、ゼフィルスがまた!」
「やっほーシエラ! 一緒に踊ろうぜ!」
「きゃー!」
「あ! ゼフィルス先輩がまた暴走したぞ!」
「それほどの大当たりだったってこと!?」
「シエラ先輩に最後の〈金箱〉を頼んだのは、まさかこのため!?」
「盾を構えられなくして攫ったですの!」
「あー! ゼフィルスったら何やってるのよ! 次は私だからね!」
ガシッとシエラの背中に手を回して引き寄せると、クルクル開始。
ゼルレカやクイナダ、カグヤやサーシャのセリフはもはや聞こえないのに、なぜかラナの声はよく聞こえた。
まずはシエラをよく回し、陥落させたら次はラナ!
「〈パーフェクトビューティフォー〉ありがとうー!」
「きゃー!」
俺はたくさん回ってしまった。