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#1670 レアボス〈ヌーガ〉戦。シェリア精霊王降臨!




「『英勇転移(ブレイブポート)』!」


「ゼフィルス、ナイスよ!」


「おう! ラナはシエラに回復だ!」


「任せて――『回復の祈り』!」


 ボスのダウンに『テンペストセイバー』を使い突っ込んでいき、そのまま1段目のHPバーをゼロにして転移で帰還。

〈スターライト〉を一度着陸させるとか、隙をさらすことになるので基本転移か飛行で帰還するのが最善。


 そのため今回接近戦ができるのは転移持ちの俺だけというパーティになっていた。


 俺なら今みたいにダウン直後に飛び出しても転移で帰還できる。

〈スターライト〉は鬼のように強いが、その運用方法には気をつけなければならない点がいくつかあるのだ。


「ありがとうラナ殿下」


 回復されたシエラがラナにお礼を言う。

 これも注意しなければいけない点。

 今まで〈乗り物〉は、受けたダメージが全て装備者に反映されるシステムだった。

 しかし、ユニークスキル『戦車姫最終奥義・戦車覚醒』を使ったことでその仕組みが一部変わり、搭乗者がそれぞれ受けたダメージ判定は搭乗者自身が負う形に変更されているのだ。


 まあ、こっちが攻撃できるようになるのだから、向こうからも攻撃が当たるようになるのは道理だよね。という感じだな。


 おかげで盾を出しているシエラもフィードバックで多少のダメージを負っていたのだが、ラナがしっかり回復。ついでに継続回復も延長だ。


 と、ここでボスの形態変化が終わり、第二形態に移る。


「テネブレア様、お願いいたします――『テネブレア・ダウンダーク』!」


「オオオオオ!」


 せっかく第二形態になったボスに無慈悲に入れられるデバフ。

 第二形態になった〈ヌーガ〉はさらに大きくなって20メートル級となり、コウモリの翼だったものが漆黒の闇を思わせる天使の翼に変化していた。

 筋肉は引き締まるどころかさらに盛り上がり、より逞しい体つきに変化している。

 強そうだ。


「オオオオオ!」


「エステル右だ!」


「! 『アクセルドライブ』!」


 俺が名を呼んだ直後にエステルは回避。

 次の瞬間には大量の黒い羽根が飛んで来ていた。直線範囲攻撃だな。

 まるで銃弾の雨だ。

〈ヌーガ〉は両腕が6本もあってただでさえ手数が多いのにさらに翼の羽根まで攻撃に使ってくるのだから厄介だ。


「攻撃再開だ! ――『ゴッドドラゴン・カンナカムイ』!」


「全方向から攻撃よ! ――『大聖光の無限宝剣』!」


 だが、こっちの攻撃はさらに厄介。

 俺のカンナカムイとラナの無限宝剣がズドドドドドンと命中。

 凄まじい大ダメージを出していく。

 しかし、それよりも凄まじいダメージを出している存在がいた。


「お願いします、精霊の力を今ここに――『大地の怒り・エレメントテラ』! 『大海の荒れ・エレメントアクワ』! 『大気の哀しみ・エレメントヴェントゥス』!」


「「―――!」」


 シェリアである。

 大精霊テネブレアがデバフを掛け、シェリアの側に居る聖精霊が、シェリアの魔法を実体化してガンガン放っていく。


 その凄まじい魔法力による五段階目ツリーの魔法の連打で『ゴッドドラゴン・カンナカムイ』を上回っているのだから凄まじい。

 ええい! 俺の『ゴッドドラゴン・カンナカムイ』だってLVが育てばもっと強くなるんだからな! 今はMP消費がデカすぎるからLV5に抑えているだけだい!


 ふう。ちょっと負け惜しみを言いつつ、さすがは魔法力特化型のダメージディーラーは違うとシェリアを頼もしく思う。


「『オーバードライブ』! シエラ殿、ドライブ系が全てクールタイムに突入しました!」


「任せなさい――『アブソープション・ワン・フォートレス』!」


 エステルのスキルがクールタイムに入っても御安心。

 シエラが巨大な盾で防ぐからだ。


 俺とシェリアとエステルはこの間に攻撃発射。


「『フルライトニング・スプライト』!」


「『ハイエレメントバースト』!」


「『レード・セーゼ・スラスト』!」


 うわぁ強いや。

 シェリアだけではなくエステルも強い。

 ドライブ系が使えないとシエラに防御役を任せたら、自分は攻撃に集中するという非常に上手い運用で切り替えた。


 エステルの素のSTRは1500程度。ここに『オーバーブースト』1.8倍とシェリアの『リース』系1.3倍が合わさって2.1倍になり、装備のステータスも加わって3200を超えている。ここにさらに攻撃力バフなどが加わってくるのだ。

 これで六段階目ツリーの槍の連射を浴びせれば、第二形態は凄まじいダメージを受けていった。


 第二形態はその羽根と豪腕から繰り出される槍六本の脅威が主で、羽根を連射しながら槍を投げるという凶悪な行動までしてきて防御スキルを粉砕してくる。

 下手なタンクだと、飽和攻撃に耐えきれない凶悪な形態だ。特に本来は空から一方的に攻撃してくる超厄介さを合わせ持つ。

 だが、〈スターライト〉とそれに乗車する俺たちは強かった。


 第二形態の攻撃は全てエステルが回避したりシエラが受け止め、こっちの攻撃はじゃんじゃん叩き込んでいって――ほとんど被害の無いまま第三形態を迎えたのだ。


「シェリア、ここで解放だ!」


「はい! 『大精霊様、全六霊機降臨』!」


 瞬間、シェリアを中心に6属性全ての大精霊が降臨した。

 今までエステル、ラナ、シエラ、俺に貸し出されていた精霊は一度返却され、その全てが大精霊となって降臨したのである。


 これぞシェリアの奥義。

 全ての精霊を大精霊にする、超奥の手だ。なお、まだこれでもユニークスキルではない。


「『ダブルエレメントリース』! 『エレメントリース』! 『全属性精霊リース』!」


「助かるわ!」


「どんどん撃つわよ!」


「ありがとうございます!」


 ここでシェリアが再びリースする。

『ダブルエレメントリース』は1人に対し、なんと2体の精霊をリースすることの出来るとんでもない魔法だ。

 これでグラキエースとテネブレアをシエラにリースし、VITとRESを大上昇。


 1体を貸し出す『エレメントリース』はラナに、これはトニトルスをリースしてINTを大上昇。


 最後の『全属性精霊リース』は半端なくて、六段階目ツリー。

 なんと1体大精霊を貸し出せば、LV10の時、全種類のステータスが1.3倍になるという凄まじい性能を誇る。

 一番やられちゃいけないエステルにイグニスを貸しだし、エステルは全ステータスを上昇! 今回はAGIも上がっているため、〈スターライト〉の速度も上昇だ。


「ゼフィルス殿」


「俺はいい! それよりもそろそろ形態変化が終わる。次だ! 行けシェリア!」


「! はい!」


 俺の掛け声にキリッとした、いつもと本当に別人のような表情で杖をクルリと一回転させ、手を交差し、両手杖――〈樹界大精霊の森聖杖〉を前へ向けて構えるシェリア。――そして。


「この場に集いしは6属性全ての大精霊! 精霊の王よ、今こそ我らの呼びかけにお応えください――『精霊王降臨』!」


 これがシェリアの最終奥義にしてユニークスキル。

 6体の大精霊がこの場にいるとき発動可能というとんでもない条件ではあるものの、この場にさらに1体、精霊の頂点でもある最強の精霊王を降臨させるスキルである。


 バァンと〈スターライト〉の外、上空に光の柱が降り注いだかと思えば、7体目である精霊の王がその姿を現した。


「これが、精霊王!」


 その姿は緑色のドレス姿の美女。

 髪はプラチナブロンドで目は瞑っていた。手を広げ全てを包み込むような慈愛に満ちた人の姿で降臨。

 身長は6メートルほどで、その周りには小さな精霊が無数に飛び交っていた。


「――――!」


「オオオオオオ!」


 ここで第三形態の形態変化が終わる。

 その姿は先程のかっちょいい人型からは大きく変化して、まるでポセイドン。

 悪魔の三つ又の槍を6つ持ち、背中の漆黒の天使の翼はヒレの翼となり、足はタコを思わせる極太の8本の青い触手に変化していた。

 これが〈悪魔陣地帝王デーモンアビスエンペラー・ヌーラガンデモン〉の本来の姿である。


「タコになっちゃった!」


「あのスキンヘッド、タコの頭だったのですか!?」


 この変化にはラナもエステルもびっくりだ。

 だが、驚いている時間は無い。チャンスだ。


「やってしまえシェリア!」


「はい! 精霊王様――『天変地異・エレメントヘヴン』!」


「――――!」


 初手、精霊王の天変地異。

 まるで空間が割れたのではないかという非常に強烈な断絶の音が響き渡り、火、氷、雷、光、闇、聖、それぞれの属性の波動が一瞬にして〈ヌーガ〉を襲ったのだ。

 たった1発でHPが実に1割半も削れるというとんでもない威力である。

〈ヌーガ〉も本来の姿をお披露目した瞬間にこんなダメージを受けて、さぞ驚愕したことだろう。ヘイトが思いっきりシェリアに向いたのが分かった。


 だが、攻撃の手は緩めない。


「攻撃開始だ!」


「『大聖光の無限宝剣』!」


 ラナ、本日『大聖光の無限宝剣』何回目!?

 そう思わせる攻撃がじゃんじゃん降り注ぎ、〈ヌーガ〉を削って行く。

 これでいきなり2割近くのHPが吹き飛んだな。マジパナイ。


「―――――!」


 精霊王は通常攻撃もエグい。

 精霊王が力を貸すと、周囲に居る精霊たちが応えてじゃんじゃん属性魔法攻撃の雨を降らせるのだ。途切れない。

 シェリアの近くにいる大精霊、ルクスとサンクトゥスも加わり、凄まじい火力を生み出していた。ガンガンHPが削れていく姿は爽快だ。


「俺も行くぜ――『ゴッドドラゴン・カンナカムイ』!」


「オオオオオオ!」


「触手には当たりません! 高度を維持します! 『アクセルドライブ』!」


 ここでちょっとした不幸。

〈ヌーガ〉の触手はもうボス部屋の地面をもの凄い勢いで這っており、そこら中の廃墟は砕けまくっていた。ダンジョンオブジェクトであろうが、ボスは粉砕できる法則。

 これ、地面に居たら逃げ惑うしかないんじゃないの!? というような怪獣の侵攻っぷりだった。


 まさにこの表現は的確で。

 もしこの足に飲まれると捕まってしまい、投げられたり、潰されたりして大きなダメージを負うのだ。

 地上で巨大ダコと戦うのはあかん!


 ならば空中ならばいいじゃない?

 そう、不幸とはこの触手なタコ足、一定以上の上空には届かないのである。

 エステルはその一定以上の上空を飛行しながら回避行動中。

 まさかのタコ足無効処置だ。

 これには〈ヌーガ〉も涙目だろう。


「オオオオオオ!」


 結局〈ヌーガ〉は追いかけながら槍を投げるというさっきと同じ行動しか取れなくなった。

 翼をはためかせて飛んでは来るものの、その場合はエステルが『オーバードライブ』などで距離を取り、遠距離攻撃を維持。エステルの方が速いのでできる戦法だ。

 タコ足が重いのか、基本地面に降りて行動するようになってしまった〈ヌーガ〉にはまさに最悪の相手である。


 まさかこのまま良いところなしで終わるのでは?

 そう思うも、〈ヌーガ〉は諦めなかった。最後の奥の手をここで切ってくる。


「あ! あれは――ユニークスキルのエフェクトだわ!」


 そう、忘れているかもしれないが〈ヌーガ〉はレアボス。

 なんと最上級に足を突っ込んでいるユニークスキルを使うことができるのだ。


「シエラ!」


「任せて」


「オオオオオオオ!」


〈ヌーガ〉の身体が赤色のエフェクトに光る。

 あれは『悪魔陣地帝王デーモンアビスエンペラー流・世紀末の大海津波エンドオブタイダルウェイブセンチュリー』。


 それは名前のように世界に終焉を呼ぶような大津波。

 このボス部屋という名のフィールドでさえ全てを飲み込むような超巨大な津波の一撃だった。

 ボスの背後から発生した超巨大な津波が俺たちに迫る。


「な、なにあれ!?」


「津波です! 大きい、これは避けられません!」


「私が防ぐわ」


 大地どころか空を飛ぶスターライトすら飲み込むような大津波にラナとエステルが叫ぶが、シエラは冷静だ。ここでシエラが強力な防御スキルを発動する。


「全てを吸い込み防ぎなさい――『プラネットドアヘヴン』!」


 瞬間、展開されている4つの巨大な小盾が〈スターライト〉を囲むように展開すると、ガチャリと開いた(・・・)

 まるで盾がドアのようにして開いたその先にあったのはヘヴン。

 天国へのドアが開かれると、津波はまるで引き寄せられるように天国へと吸い込まれていく。

 これは全ての攻撃を吸い込み消滅させる、対全体攻撃用の強力な防御スキルだ。


「きゃあ!」


「大丈夫かラナ、掴まれ!」


「ゼフィルス!」


 だがボスのユニークスキルは凄まじく、〈スターライト〉が凄まじく揺れてラナが倒れそうになった。すかさず俺が抱えてダウンを防ぐ。あぶなっ!


「クールタイムが終わりました! 精霊王様! 『天変地異・エレメントヘヴン』!」


「――――!」


 シェリアの精霊王がさらに天変地異を起こす。

 災害には災害をぶつければいいじゃない。無数の竜巻が起こり、津波を直撃。

 先程と攻撃内容が違う気もするが、精霊王の天変地異は気まぐれだ。

 その気になれば津波を起こすことも竜巻を起こすことも可能である。


「晴れなさい!」


 バンとシェリアの一言と共に津波が割れる。

 そう、津波は完全にシエラとシェリアが防ぎきってみせたのである。

〈スターライト〉へのダメージは皆無だ。


 だが、これでも終わらなかった。


「オオオオオオオ!」


「見えているわ! 『オープン・ザ・サウザンドシールド』!」


 津波に乗り、ボスが〈スターライト〉よりも上空から襲ってきたのである。

 真上から乗り込み、その吸盤で〈スターライト〉に吸い付かんとする〈ヌーガ〉。しかし、シエラにはちゃんと見えていた。

 真上に張られた千の小盾により、完全にボスを受け止めたのである。

 隙だらけだ。


「ナイスシエラ! 今だー! 『勇者の剣(ブレイブスラッシュ)』! 『インフィニティ・バニッシュセイバー』!」


 向こうから〈スターライト〉に来てくれるとは好都合。ここで決める!


「『神の天誅』!」


「『ハイエレメントバースト』!」


「オオ、オオオオオオ!?」


 まさか足の下から攻撃を受けるとは思わなかったのか、〈ヌーガ〉が悲鳴を上げる。そこへ。


「落ちてください――『彗星槍(すいせいそう)』!」


「オオ!?」


 ズドンとエステルの最強技、投げ槍の一撃が見事に決まり、エステルの槍はそのままボスを貫通して雲を晴らした。暗黒色の雲が晴れ、ボス部屋に青い空から光が注ぐ。

 ここでトドメを刺す!


「トドメだ――『天光勇者聖剣あまのひかりのゆうしゃせいけん』!」


「オ」


 ズドーンと衝撃。

 俺の『天光勇者聖剣あまのひかりのゆうしゃせいけん』を受け、ついに〈ヌーガ〉のHPがゼロになる。

 すると、〈ヌーガ〉は一瞬固まったあと、千の小盾からずるりと落ち、津波の引いた地面に落下して、そのままエフェクトの海に沈んで消えていったのだった。





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